荒ぶる季節の乙女どもよ。を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
ぎくしゃくとガラス越し、軋み近づき荒れ狂う自意識と性。そのケイオスを前に、唐突にシステムが牙を剥く。
学校サイドから突きつけられた、男女交際禁止と曾根崎部長の退学。
栄光と破滅に向かって走る列車へ、少女たちは乗り込む。
今度は戦争だッ!!
というわけで、一気に最終盤に突っ込んだ荒乙ラスト一個前である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
正直『急だなー』という感じはある。ラスボスとして立ちふさがるには、教頭と校長が代表する学校権力には顔がなく、これまでも強敵として存在感があるわけではない。
倒した相手が蘇って…というには、ミロ先ハメて楽勝だったしな…
ずっと自意識と人間関係に悪戦苦闘、ドッタンバッタン大騒ぎを続けててきた彼女たちも、抗えない社会に包囲されており、その強権に立ち向かうことこそ最後の闘争…っていうのも、多分ちょっと違う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
結局力点はアホくさい思春期特有の、アホくさい恋と友情と性にどう向き合うか、にあるのだろう。
グイッと進んだ状況は、それを時間内にまとめ上げるための”箱”というか…ぶっちゃけデウス・エクス・マキナ的なアレかなー、とも思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
このままネトネト自意識バトル続けて、部活内のヒビが広がったりくっついたりをクローズで追っかけてると、後一話じゃ終わらんしな…。
さて、お話は遂に部に貼られていた”純潔”が陥落するところから始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
お曾根にとって十条さんは大事な友達だが、他の連中にとっては知らない人。知らず広がっていた部長の世界と、それを共有してない本郷ちゃんの世界が、ギシギシ当てこすりで軋む。
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わがままフェアリーに脱皮した曾根崎パイセンは、後に語るように文学的自我(過去の自分)と現実的自我(現在の自分)に分裂していて、それを冷静に読解もしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
本郷ちゃんが冷たく語る正論をどっかで認めつつ、友達の擁護もしたい。しかしその時口から出るのは、背伸びした文芸用語でしかない。
変化、分裂と隔離は今回重要なモチーフで、部員全員がそこにいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
もーちんは例の友情河原で、自分のセクシャリティを隠しつつ、和紗に問いかける。
自分に言い聞かせるように、『普通でなければいけない』と呟きつつも、自身それを信じてはいない。
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同性のトモダチとはセックスできない、そもそも前提からして選択肢に入らない”ノーマル”にショックを受けて、もーちんは『友よ!』の抱擁を拒絶する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
和紗だけが幼さの地平に取り残されて、もーちんは街を見る。常識で窒息するか、”非・ノーマル”として廃絶されるかしかない場所に、目線を合わす。
そこにどんな表情があるか、カメラは切り取らない。和紗が気づけない親友の変化(成長、と言っていいかは最終回の転がし方次第だ)を、僕らが見ることはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
どんな顔で、もーちんは”非・ノーマル”である自分を、”ノーマル”な街を見つめたのだろうか。
僕はそれがとても気になる。
僕自身はヘテロセクシュアルだが、街が持つ”ノーマル”な空気では窒息する気質で、だから勝手にもーちんに共鳴してこのアニメを見てきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
性選択だけが人間を規定するわけではないけども、和紗がのんきに傷を付けたように、”ノーマル”を当然視する視座はそこからはみ出したものを窒息させていく。
もーちんは菅原氏に電話を切られ、和紗には気づかず弾かれて、この世に寄る辺ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
それでも、自分の身の丈に”街”が合わせてくれるわけではないことくらいは判るから、彼女はスックと立ち上がった。
『友よ!』と抱擁すれば全てが解決する時代は、もう終わってしまったのだ。和紗はそこに取り残される
一方本郷ちゃんは、きれいに終わったようで終わっていない恋を、ガラス越しに遠く睨みつける。惨めさの中に悦楽を見つけて、まだしがみつく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
ミロ先にとって、あのホテルで勝負は終わった。自分があるべき場所、本郷ちゃんがいるべき距離を掴まえた
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その充実は、本郷ちゃんにとってはガラス越しの結末である。自分を綺麗に置き去りにして、本命の恋に微笑むミロ先を、ネコ科の肉食獣のように睨む少女。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
恋破れた惨めさの中に性のうずきを、生きている実感を見つけた彼女は、その作家性にかけて引く気がない。惨めさこそが文学だ! くらいの境地だ。
それはそれでオリジナリティ溢れいい感じだと思うが、同時に自分がミロ先の世界からガラス越しに隔離されて、一生徒としてしか視界に入らない事実を冷たく認識している、ということでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
お姫様だと思い込めるなら、惨めさなんて感じない。自分は負けたと冷静に判断できる読解力が、良いか悪いか
それも状況が転がり、恋の暴走特急が行き着く所まで行った後で見えてくるのだろう。…やっぱ素直に要素煮込むには、もう二話くらい欲しいな…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
個人的に本郷ちゃんのゴールは”書く”ことだと思うので、ミロ先と過ごした輝きと惨めさがどう彼女の”文学”に繋がったかは、しっかり見たいネ。
一方、惨めさから逃避したいのが菅原氏で、クソロリコンに身を委ねることで、強ぶった自分をぶっ壊したい自暴自棄が踊る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
悪趣味な部屋で、なーに魔王みてぇな面してんだオメー!!
瞳の反射も、ガラス越しに似て遠い写像である。
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新菜は拒絶するような、受容するような不思議な手付きで三枝と繋がり、その瞳は嫌悪と憎悪で一杯一杯である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
セックスさえすれば、別の自分になれる。
そんな願望を、思い返せば物語の開始時から語っていた彼女は、嫌いだと思い知らされた自己像を破綻させるためのハンマーとして、セックスに接近する
でもそれは、やっぱり”嫌なこと”なのだ。薄いスネ毛と、暗闇の中の鼻毛。突きつけられた生々しさに、新菜は全力の拳を振り下ろす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
『鼻毛が白かったので、思わず殴っちゃいました』
カミュの”異邦人”かテメーは。不条理と反抗か。
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しかしそこには結構明白なロジックがあって、暗闇の中の白は自分を捉える檻である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
三枝によって早熟な自我を絡め取られ、特定の世界の、他者の、自己の読み方を(それと知らせず)強要されていた新菜は、鼻毛のリアリティに直面することで、檻を認識して殴り飛ばす。
年長男性による隠微な支配関係。”父”の君臨にNOを突きつけることで、新菜は一皮むける。素直になれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
他の部員がガラスや”非・ノーマル”に捕まる中、ある意味曾根崎に続いての『2ー抜けた!』ともいえる。
まぁマジでクソみたいなクソ大人だったんで、殴り倒して良かったよ、多分。
菅原氏が白い迷妄から抜ける中、和紗は全然気持ちを整理できないまま、自分とも他人とも向かい合えないねじれの位置のまま、親友と対峙する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
カメラワークの妙味で、一見真っ向勝負のように見えて、上から見ると斜めにズレる距離感
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ガラスとカーテンがお互いを見えなくしているのに、真正面から『友よ!』と抱き合える(もーちんが拒絶した間合い)を演じる捻れが、和紗を捉え続けている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
菅原氏が褒め称えるような、立派なオトナじゃありえない。それでも友達でいるために、惨めな敗北者でいないために、きれいな答えに身を寄せる
風が爽やかに吹いて髪を揺らしたところで、全然きれいな青春になんて落ち着いていなくて、負けたくないし取られたくない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
でも、その迷い道大爆走でいいのだ。空が抜けるように青くなくたって良いのだ。荒ぶる季節なんだから。
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そんな青春のグニャグニャを、泉もなかなか素直には受け止められない。(あるいは自分のグニャグニャを預ける主体として、和紗を信頼しきれない)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
あふれる麦茶と思い。菅原氏が殴りつけた”鼻”のリアリティを、泉は和紗の”性”をスカすために使う。
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お互いの思いはやはり窓ガラス越し、皮一枚隔てたところでぼんやり霞んでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
性も自意識もさっぱり掴めないまま、彼氏彼女の形だけが整ってしまった二人。その外辺を埋めるために、”みんながやってるから”でセックスを乞い、中身のない”大事にしたいから”で遠ざける。
ダイレクトにちんぽこ突っ込んでも、十条さんみたいに社会と正面衝突するわけで、一概に泉のスカしが悪いとも言えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
ただ現状として、文芸部員が向き合うものは軒並みガラス越し、遠くにある。
なーにが”LOVE”だ。鏡の中の自意識だ。
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自己矛盾を冷静に観測して、自己嫌悪に慰めを見出しそうになったパイセンを、天城くんは正しく引き寄せる。鏡になって、素敵な曾根崎り香を反射してくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
そんな幸福な関係は、あっという間に敵に回った学校社会に押し流され、退学は文芸部の一大問題へと発展していく。
十条さんの時は『でしたっけ?』だった本郷ちゃんが、身内的にかけられると大慌てな所が、現金で人間的だなぁ、と思う。まぁそんなもんだよね!!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
あっという間に進展する強烈な圧力は、ガラス越しに愛しい部長を奪っていく。
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校長も教頭も、メガネを掛けて目は見えない。非人格的な圧力の装置だ。ミロ先とは違う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
ある意味戯画化されているからこそ、不条理な力を持ちうる外部と、少女たちはいきなり向き合うことになる。
さー最終決戦だぞ!(流れ出す”SEVEN DAYS WAR”)
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まだまだ煮込めそうな断絶を描いておいて、状況は唐突に先に進んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
ミロ先を人質(あるいは共犯者)に、駆けつけた先生たちを見下ろす文芸部員。ガラスは合いている。世界と生身で向き合えている。
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もう戦うしかない! 何しろ、戦いは始まっちゃったんだから!!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
その開き直りが、グダグダガラス越しに悩んでいた想いを一気に動かして、クライマックスを爆裂しうるのか。
文芸部最後の戦いが、社会を有益に変えうる賢い挑戦ではなく、空回りで終わる青春喜劇になりそうな気配は、なんとなく漂う。
多分まぁ、その方が良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
ずーっと自意識と狭いサークルに向き合い続けて、巨大な社会の影すら見てこなかった物語が、なんかデカいもんをぶっ倒して終わるのも違う感じするしね。
愚か者が、愚かしく突っ走って戦う。その中で、ちっぽけな自分に何か、一つ答えなり、問いかけなり残せたら。
それでお話が収まるくらいに、グツグツ自意識と笑いと愛おしさを煮込んできたお話でもあると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
そのための最終決戦として、半ば強制的に”VS 無理解な世間”を引っ張ってきた感じもあるしな。
どうあれ、状況は煮詰まった。間違えだらけのバカ達が、最後に投げ込む大間違い。存分に咲いて散れッ!
どういう形であれ、狂騒は次回で終わる。思いに決着がつこうと、形を得られなかろうと、来週出たものがこの物語最後の咆哮だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月14日
それにちゃんと耳を澄ませて、ガラス越しではなく俺も受け取りたいと思う。もう一つ二つ、グラっと煮込んでくれたほうがより好みではあったが…。
次週最終回、楽しみである