歌舞伎町シャーロックを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月2日
袖すり合うも他生の縁、垢擦り合えば他人じゃない。
謎めいた飄々の奥に何かを隠す、男子高校生モリアーティ。変人探偵との関わりを値踏みするべく、八天の湯で裸の付き合い。
そこに割り込む犬猿雉、消えた桃太郎の謎解き三昧。獣相に涙が薫る、人情芝居始まり始まり。
という感じの、四話目にして結構な変化球である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月2日
歌舞伎町イーストの混沌に慣れた辺りで、銭湯という密室から動かないどっしりした展開。三匹のお供を鏡にして、男三人の奇妙な関係をじっとり照らす落ち着いた描画。
これが少し作品に慣れた頃合いで、ジリジリと染み渡ってくる。
今回は探偵入札もビカビカネオンも抑えて、地道な人情展開である。話してばかりだと地味になるからか、トンチキマスクを被った色物バンドが、シリアスな物語を素直には飲ませてくれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月2日
結構シビアな話ししてんだが、どうしても笑っちゃうんだよな…基本全裸だし。
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今回の特徴である奇妙な外装、ファニーな味わいにシリアスな土台ってのは、この作品全体の構造かもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月2日
奇人変人が集まる現代のソドムに、似つかわしくない湿った情感。その中心にいるのは、一見軽やかな高校生、ジェームズ・モリアーティ。
”陽”の気を漂わせつつ、挙動の端々に重力が滲む。
モリアーティがホームズの同居人、ワトスンに興味(あるいは嫉妬)を抱いているのは間違いない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月2日
そこには明言されないホモセクシュアルな匂いがあり、性的倒錯の気配が漂う。
炊事に洗濯、”女”の仕事を、ピンクに着こなすドラッギー。
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モリアーティはサラリとピッキングかまして、探偵と助手の私的領域をマジマジ覗き込む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月2日
『それは元々、俺の特等席だ』と言わんばかりの…しかし重さと湿度を表には出さない探りは、小夜師匠をダシに使った裸の付き合いへと雪崩込んでいく。
風呂の名前も”ハッテン”だし、やっぱゲイネスが薫るな今回…
足運んでみりゃそこはフツーのスパ銭で、女もいれば友情もある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月2日
ひげ剃りを貸し借りする関係性を、泡まみれに覗き込むワトスンくんのガタイ。
一体、高校生と変人探偵の間に何があるのか。僕らも敷居の奥を覗き込みたくなる。
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それははぐらかされつつ、チラチラと片鱗を見せ、また引っ込む。断片的な情報が想像を呼び、更に踏み込みたくなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月2日
秘密が本質的にエロティックならば、探偵は扇情的な職業なのかもしれない。微かに見えるからこそ、追いたくもなるのだ。
ここら辺、ワトスンくんは深追いしない。助手だからね。
銭湯の作法を何も知らないワトスンくんを、バカじゃんバカじゃんと煽りつつも、モリアーティはよく面倒を見る。あるいは、至近距離で観察する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月2日
おそらくそれが、三枚目のチケットをわざわざ出した理由なのだろう。商売敵か恋敵か、とにかく運命に導かれ、ホームズの隣を奪った男のケツを見たい。
そんな思惑を横において、フツーじゃない被り物と遭遇してしまうのが”イースト”である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月2日
犬猿雉に、不在の桃太郎。探偵勝負はサウナに持ち込まれ、動きのないままジリジリと温度が上がる。
謎を前にして、ブツブツ一席ひねり出した探偵を見る、嬉しそうな眼。
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奇っ怪な状況でもブレることなく、シャーロックの眼は凶行を目に止める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月2日
腫れ上がったキジの拳、結構重たいバンドメンバーの感情。それはデカい被り物に隠されてなかなか見えないが、確かに存在している。
三匹のお供の複雑な関係は、多分探偵と助手と犯罪王の三角関係に擬されている。
不在なる桃太郎の発見自体は、兄ちゃん探偵のつまらない事件であっという間に暴露されていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月2日
不完全な隠蔽工作、最初から存在しなかった桃。
三角関係を決定的に揺さぶる、三角形の第四辺はどこにある…? まだ使われていない大ネタって言うと、アイリーン・アドラーかマイクロフトか。
メタネタはさておき、色物の仮面はシリアスな殺人をコメディに変えて、なかなか本質を教えてくれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月2日
探偵は悲壮な告白を前にほくそ笑み、熱々の高座で一席ぶる。犬から雉への巨大感情は、シラフでやられると多分ちょっとクサい。
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表情を読みきれない仮面が、逆に妙なペーソスを生んで少し悲しく、イーストらしい事件だな、と感じさせた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月2日
ワトスンくんは外見で他人を判断しないので、その悲しみに共鳴して涙を流す。猿と高校生はシラケ面、落語探偵は高座邪魔されてご立腹である。
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奇妙な仮面被ってても殺人は殺人、悲劇は悲劇である。しかし落語探偵は、それしかネタに出来ないし、それをネタにすることでしか探偵になれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月2日
そんな壊れ方に、モリアーティは多分共鳴し愛着している。ぶっ倒れるタイミングも角度も、ほぼ一緒の二人。
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年も生き方も全く違うようで、どこかが似ている他人同士。落語がつなぐ二人の過去を、少しだけ垣間見る銭湯脇。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月2日
自分が事件を暴いたから、小夜師匠はやってこない。そんな普通の道理を、変人達はなかなか飲み込めず、愚痴をたれて牛乳で流し込む。
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警察が乗り出すシリアスな事件でも、トンチキな被り物は外さない。やっぱあの三人は、こっち側の三人のシャドウに思える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月2日
噺家になりたくて、ひとり座った公園の高座。砕けた夢はまだ疼き続け、長い腐れ縁がズッシリ尾を引いている。それは一方通行で、不可思議な縁だ。
タイミングとしては息ぴったり、言ってることは正反対。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月2日
同居人に甘えるように、掃除仕事を増やすホームズの厄介さを考えると、存外憎からず思っているのかもしれないけども。
なかなか、ホームズとモリアーティの距離感は発展しない。
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軽口に交じる感情が、どれだけ”リアル”なセクシュアリティを孕んでいるのか。『前世からの縁』ってのが、アドリブなのか仕込まれた地口か。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月2日
なかなか読みきれない部分もあるが、そこを読んでいくのが面白い話でもある。
クィアを茶化すようでいて、焦げ付いた情欲に思い切り踏み込みそうな気配もある。
モリアーティがワトスンを睨む視線が、一瞬見せる陰りが、どんな色彩をまとっているのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月2日
それは今後、物語が進展する中で判るだろう。今はその輪郭しか見えなくても、とにかく巨大な”何か”がそこにある。
そう明言するための、ちょっとした変化球であった。
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状況の異常さ、絵面の面白さでシリアスに受け止めきれない感じなんだけども、妙に重たく強いものがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月2日
このアニメ自体が纏う空気を、スッと捻ってストライク・ゾーンに入れてくるようなエピソードでした。
チラチラと見え隠れする、感情の熱量と重力。ホモ・セクシュアリティへの目配せ。
ワトスンくんがさっぱり無自覚な、男と男と男の三角関係。そこにチリつく、興味と嫉妬。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月2日
ただ憎いでなし、無条件に明け渡せるでなし。モリアーティ青年の複雑な心理が焼き付いて、更に作品の秘奥へと誘う。
仮面の奥に、男たちは何を隠すのか。それを剥がした素顔は、どんな表情か。来週も楽しみですね