波よ聞いてくれ を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
少し緩んだ、いつもの本番前の空気。深夜の弛緩した気配に包まれながら、人はそれぞれの人生を生きていた。
それを揺るがす、突然の災害。
電気が止まっても止まらない波に、声を載せて繋がるラジオの可能性。
鼓田ミナレの、一番長い夜が始まる。
いい加減、腹をくくれ。
サーセンくくれないっすッ! でもラジオもカレーも頑張るっすッ!! という、気合の入ったハンパな最終回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
大人でも子供でもなく、職能として何を選び取るかも確定せず、恋の道筋も顕ではなく、何も出来ないほど無能でも、無条件にどこかへ行けるほど有能でもない。
そんな女が奇縁をテコに、己の人生をゴロゴロ転がしていく過程を僕らは見てきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
札幌の夜から光を奪う地震という、切実なリアル。それを超えてもミナレは、ラジオ一本槍でやっていく道へは進めない。
しかしこの夜の体験は、確かにフニャフニャなミナレに一本、ぶっとい筋を通したはずだ。
どこに転がっていくにしろ、その経験が、その決断が意味を持ちうるような。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
そんな一夜を、最後にちょっと空気の変わるエピソードに焼き付けて、天災に見舞われても明るい朝を写して終わる。
非常にこのアニメらしい、洒脱で力が抜けて、パワーのある最終回でした。
熊と闘ったり、元カレぶっ殺したり、悪霊祓ったり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
ここまでお話は、虚構とも現実とも付きかねるネタを電波に乗せて、そのあわいを突っ切ってきた。
今回ミナレは天災という非日常なリアルを前に、『いつもどおり』というフィクションを演じることで、パーソナリティとして一皮むけていく。
それは笑えねぇ現実を笑える虚構に変えていく、オジサンたちの”遊び”の裏打ちで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
麻藤さんがシリアスな目で睨む、公器としてのラジオ。
本気で楽しみはするけど、全てが遊戯などではもちろんなく、一人間が稼業として選び取ったメディアが、果たすべきを真摯に果たす瞬間。
ミナレを玩具に”遊んで”いた麻藤さんや、それとツルミつつラジオから離れようとしている久連木さんが見せる、真剣な”仕事”っぷり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
放送局から離れた所で、カレー屋に出来ることをちゃんと考え、手際よく実行していくマキエの成長。
不意打ちなシリアスが、『いつもどおり』の背骨を支える補強になる。
ただバカやってたわけでもないし、ただ生真面目だったわけでもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
生煮えで中途半端な人生に苦笑しつつも、それでも突破口を求めて愚かにもがき、それが確かに結実もする。
そんなミナレと、彼女を取り巻く人達の確かな一歩がキラリと、綺麗すぎる星のように輝く一話でした。
さて前半戦は、どっか弛緩した感じの『いつもどおり』が積み重なる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
瑞穂は久連木さんとの出会いを思い返し、『いい人』でしかない自分に赤線を引く。
マキエは放送作家としての可能性を、新しい出会いに繋げていく。
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『いつもどおり』は、停滞を意味しない。環境も状況も常に変化し、なりたい自分は移り変わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
そんな荒波の中で何かを願うなら、何かを変えていくしかない。女達は皆、自分なりの足取りでそこに飛び込んでいく。
そういう変化の蓄積も、このアニメバカ話の間に、しっかり差し込んできた。
そういうヒリついた真剣味を、弛緩した空気でくるみつつ、本番前の時間はゆるりと過ぎていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
電波に乗ってない素の喋りが、仕事と同じくらいキレて面白いのはミナレの才能だよなぁ…地頭の回転がはええ。
あと甲本くん視線で、光に満ちた札幌見せてくのも良い
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各々それぞれ、それなりに真剣に、それなりに弛緩して過ごす『いつもどおり』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
この描写に結構時間を使うことで、後半の非日常が対比でしまって見えるし、緩急の付いた物語に充足感も出てくる。
そしてこういう対比の巧さは、今回だけの特権ではない。このアニメ、そういうところずっと巧いわな。
そして中原くんの日常は、ねーちゃんに発破かけられてマキエの面倒見ることである。やっぱ”新井里美”なんだよなぁ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
…おかしいぞ、マキエが可愛い!『目病み女に風邪引き男』とかじゃなくッ!
『いや、マキエはずっと可愛いよ』って誰かが脳内で言った。
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マキエは能登ボイスに相応しい陰険内気女なわけだが、兄貴の事故をきっかけにVOYAGERで働き始め、ラジオにもネタを投稿するようになった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
奇妙なアクシデントで人生がネジ曲がり、上向きにうかびはじめる…という流れは、ミナレと共通なのだな。
そんな上昇気流に浮かれて、思わず祝杯もあげちゃう。
コロッとお持ち帰りされそうな危うさであるが、そんな彼女の脇を支えるのが中原くんの善良さである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
あなたの変化はあなたが生み出したもので、もし道を間違えるのなら、僕の隣に来ると良いよ。
こういうのミナレに言えてりゃ、”秒”だったのにねぇ中原くん…
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マキエの欲しい所にズバッと入る一言を、中原くんは別に意識してはいない。恋愛対象として見れないからこそ、こういう真正なこと言えるのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
考えてみると結構残酷だけども、中原くんと出会えたことが、マキエにとって凄く大きな変化を生み、彼女を変えているのは事実であろう。
この二人のもどかしい距離感が、どこに流れ着いていくか。それは停電下の札幌が日常を取り戻した”後”の話になろうけど、それを掴むには荒波を乗りこなす必要がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
面白いかは、お前次第。
ミナレに突き刺さった久連木の言葉を追うように、夜が震える。
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いつものおちゃらけが嘘のように、シリアスでタイトに非常時を乗りこなしていくスタッフ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
動揺するミナレにマニュアルを渡し、公器としてのラジオに持つプライドを分け与える。非常時スイッチ入れた、麻藤の立ち回りが気持ちいい。
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明かりを奪い、不安を広げる停電。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
ミナレは街の混乱から切り離された自家発電の放送局で、自分のなすべきことに戸惑う。
こういう非常事態は、”ちゃんとした”パーソナリティがやるべきじゃないのか。私みたいなハンパモノが、対応しちゃいけないんじゃないか。
そういう動揺に、麻藤さんはメモ帳で切り込んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
ここで麻藤さんが発話をしないことが、パーソナリティ”ではない”彼のプライドが垣間見えて好きだ。
番組で何を流し、何を語らせるか。
表に出る部分は”芸人”がやる。でも芸人を板に乗せるのは、自分の仕事だ。揺れるなら、支えなければいけない。
ほろ酔いといいムードの恋バナから醒めて、マキエはVOYAGER店員である自分に出来ること…被災者への炊き出しへと走っていく。もう、ただの巻き込まれ役ではない。
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同じようにミナレも、麻藤さんの言葉を受け取って腹をくくる。
ハンパでも、足らなくても。
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今”そこ”にいるのならば、”そこ”で求められることを果たす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
そういう状況変化に乗っかる足腰の強さ、センスの良さはミナレの強さだ。トンチキ企画を乗りこなし、アドリブで暴れ狂ったトークを聞いてた僕らは、それを知っている。
それはシャレにならない災害時でも…だからこそ冴える牙だ。
ラジオマンとしての矜持を至近距離で浴びて、ミナレは”アドリブ”に挑んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
実生活をラジオドラマに加工した今までの放送とは、真逆のVS大地震。しかしいつもどおりの口調で、汗かき焦りまくりながらまくしたてる声が、聞く人の心を落ち着かせていく。
クソ親父が可愛いラジオネーム装って、娘と知らず繋がっているところとか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
今まで縁があった様々な人が、波に乗って暗夜を疾走るミナレの声を、聞いているところとか。
すごーく”最終回”で良い。
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震度6弱は結構な被害だが、群衆はタフに夜を生き延び、社会もそれを支えようとする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
非常事態の動揺を切り取りつつも、そこでこそ顕になるポジティブな光に注目した話運び、それを支える明暗の演出が、非常に元気な回である。
店長も兄貴のケツ触ってるばっかじゃねーんだよなぁ…いや触ってたけどさ
みんながそれぞれの持場で、『いつもどおり』を取り戻すように、不意に襲いかかってきた非常事態に飲まれないように闘っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
新米パーソナリティの災害対応は少し硬く、でもその必死さが体温を宿して、暗闇に震える人を励ましただろう。
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プロとして全く動揺なく、完璧なタイミングで完璧な曲を乗せるまどかの流麗が、その汗と対比される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
破綻のない完成度だけが使える、声の魔法。するりと顔を上げて、この瞬間しか見れない星の輝きを、被災者が見上げられるように声を使っていく。大原さやかが、流石に巧い。
逆にいうと、悩める素人ゆえの熱気と現場感…パーソナリティとしてのミナレの強みを、見事に”演じて”いる杉山里帆の技量も垣間見えるわけだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
ラジオを主題とするだけに、声と音に関しても凄く適切な使い方を、毎回しているアニメだった。キャスティング、全員ドンピシャだったなぁ。
坂本九の、透明感があるんだけどパワフルな歌声に誘われて、人々は闇ではなく星を見る。そうなるように、それぞれの日常を必死に生きてる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
散々ドタバタコメディをやりつつ、このお話の根っこにあるのはそういう、上向きの視線なのだと思う。
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嵐の一夜を乗りこなして、ミナレはヨロヨロと未来へ進んでいく。瑞穂と久連木さんの恋愛ネトネトも、まだまだ続くぞ! そこ、覗き根性見せてんじゃないよ!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
登る朝日に決意を込めて、ラジオに本気で向き合う。
震災の闇に声を届けた体験は、ミナレの通過儀礼…
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じゃあ、当然終わんないんだな! 週イチド深夜ノースポンサーじゃ、メシは食えないし!!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
眠たい体を引きずって、いつもの仲間と炊き出し稼業。それだって立派な、ミナレにしか出来ない仕事、彼女の居場所だ。
未だもう少し、薄明に戸惑っていても良い。
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境界線の上で何も決められず、ハンパでいることはそんなに悪くない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
モラトリアムをただ肯定するのではなく、そこを超えてもなお自分を定められない女を主役に、”ハンパ”であることの真剣な痛みとダメダメな内情を描いた作品は、こうして幕を閉じる。
何も、終わってはいない。
色んな所でグズグズ煮立ってる恋も、職業として何を選び取るかも、人としてどう生きるかも。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
何も結論は出ず、一歩進んだと思えばそれはノリと勢いで、しかし何も得ていないわけではない。
笑いと涙の入り交じる喜劇を必死に踊りながら、ミナレと彼女の世界は確かに、ちょっとずつ面白くなっていく。
そういう自作の歩みに正直で、とてもキレイな最終話だと思いました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
災害時の情報ライフラインという、ラジオのシリアスな側面。それを最後に持ってきて、麻藤さんが何を考えて”遊んで”いるのか補強をする展開も見事でした。
人生斜に構えて見えるオジサンが、ちろっと見せる”本気”に弱い。
というわけで、”波よ聞いてくれ”無事最終回を終えました!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
う~む…面白かったね!
溢れるエスプリをドブに不法投棄しながら、凄まじい速度と密度のベシャリで展開するラジオと芸能のお話。そこに一本気ではなく、普通の生活にも片足乗ってるバランス感覚。
題材を的確洒脱に描く筆先が、極めてハンパな主人公の震えを不快感ではなく、共鳴を持って受け止めさせる武器になっていました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
悩み、決断し、すぐさま思い直す。ミナレの歩みは行ったり来たりだけど、それに苛立つよりも大笑いして、思わず応援してしまう。
話とキャラをこのバランスで揺れさせるのって凄く難しいと思うのですが、ネタの切れ味、シャープな見せ方、見事な緩急でもってそれを成立させたのは、やっぱ凄いなぁ、と思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
大バカだけど真剣で、笑っちゃうけど下には見れない。凄い造形だよねミナレ。
生臭くて生っぽく、しかし現実というには面白すぎる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
そういう作品世界を美麗な表現力で下支えし、鋭い演出で魅せてもくれました。
喋りまくりで画面の動きが少ない展開を、凝ったアングルで持たせる技芸とかもマジ凄かった。ここら辺の演出方針は、同期の”かぐや様”とも通じる所かな。
ラジオという絵のないメディア、深夜帯という放送の僻地だから出来ることを、ミナレの人生取っ組み合いにしっかり絡めて、作品の屋台骨にしてたのも良かったですね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
最終話の災害放送が一番クリアだけど、トンチキドラマだってド深夜ラジオだからこそ、流せるネタだと思うし。
視聴者が作品内部で問題とされることを、解体し飲み込んでいくためのリテラシーを上げる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
そういうさりげない補助線を、会話の合間にしっかり挟んで迷わないよう道を作っていたのも、非常に良かったと思う。
マイナーで専門的な分野のフィクションは、ここの仕上がりが生死分けるかんね。
パワフルなミナレの大迷走をエンジンに、色んな人と袖摺り会い生まれる縁、影響されながら変わっていく群像が楽しく見れたのも、リッチで良かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
ダメなのばっかだけど、色んな奴らがいて面白い世界。そういうのをただの説教ではなく、愉快な”芸”として見せたのは立派。
シセル光明の影を追いつつ、理想の”芸”のキャンバスへとミナレを仕上げていく麻藤さんの業。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
彼の悪巧みを通じて、芸事論としてもディープ&クリアな視界が広がっていたのも、とても強かったと思います。メインテーマをしっかり思弁しているのは、やっぱすごく大事よ。
そんなわけで、強い所がたくさんあるアニメでした。いやー…すっごく面白かった!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月21日
ド下らねぇ事扱いつつもどこか清廉で、底抜けバカだけど知的。作品が描いた軌跡自体が、魅力的なハンパさに満ちて輝いていました。
”次”を期待したくもありますが、まずはお疲れ様を。
いや、マジで面白かったです!