イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

響け! ユーフォニアム2:第1話『まなつのファンファーレ』感想

特別の証明を金管楽器と女の唇に求めるアニメ、一時間スペシャルで帰ってきました!!
描かれているものの図抜けた質量に気圧され、感想の足が止まったりもしましたが、美麗な描画と濃厚な感情、あまりにも美しく残忍な瞬間を切り取るカメラの良さは健在通り越していや増しております。
一期の物語を経て変わったもの、これから変わっていくもの、新しく出会うもの。
様々なものを描ききって、冒頭の冬に至るまでのドラマが乗っかる土台を作る第一話であります。

というわけで京アニ気合十分の本作、通常よりも二倍の時間を使った特別な形式となりました。
『24分を二回やる』のではなく、傘木先輩の訪問を契機にグッと色合いが変わる『48分のドラマ』としてしっかり仕上げてきていて、重たく、美しく、楽しい第一話でした。
長尺故にじっくりと、北宇治吹奏楽部の『今』と『これから』を切り取り、そこに込められれた少女たち(少年もいるけどさ)の青春の息吹を感じ取れる描写をたっぷり詰め込んで、このアニメが持っている画角の鋭さ、画素の細やかさを強く感じ取れる出だしだったと思います。

大掛かりな部活モノなので群像劇的な色合いが強いこの作品ですが、やはり主軸となるのは主人公・黄前久美子と、引力で惹かれ合う高坂麗奈の二名。
彼女たちがブラスバンドへの姿勢もお互いの印象もすれ違っているところから、音楽を通じて向かい合い、青臭く凶暴な『特別』への衝動を共有しながら『特別』な関係になっていく過程が、一期では重点的に描かれていました。
二期はそこを通り越した地点から描写が始まるわけですが、久美子と麗奈の閉じた関係の強さにすがるのではなく、かと言って作品最大の魅力と言える二人の引力を無視するでもなく、いいバランスで描写できていたと思います。

麗奈も久美子も性格的には結構クセのある子たちで、一筋では行かない苦味がいいアクセントになっているキャラクターです。
そんな彼女たちも、滝顧問に引っ張られる形でブラスバンドと向かい合い、部活という集団生活に身を投じる中で、否応なく人とふれあい変化してきている。
一期冒頭ではぼんやりとユーフォを構えていた久美子は、麗奈と惹かれ合う中で『上手くなりたい』と涙をながすほどに音楽に本気になり、麗奈も楽器と滝顧問以外興味がなかった世界を久美子tのふれあいや、先輩とのオーディションの中で変化させています。
今回かなりの時間を使って、一年組四人の関係や、ちょっと他人に無頓着な部分がある久美子より、人間関係に繊細な麗奈の描写を入れ込んできたのは、そこら辺の変化を見せる意味合いがあるのでしょう。

その上で。
どれだけ葉月や緑輝との関係が『いい友人』であっても、久美子と麗奈の間にある『引力』はどうしようもないほどに特別な間柄であり、性欲や友情やライバル心や同志愛ともいい難い、複雑な色合いを持っています。
『四人』で一緒にいる瞬間の後に必ず『二人』でいるシーンを入れて空気の変化を見せたり、人のいない朝の校舎や帰り道の電車など、引力に満ちた空間を多数入れ込んできたのは、一期の物語を経て激烈な繋がりを手に入れてしまった二人の『特別』が、物語を支える大きな土台なのだと確認する意味合いが、かなり強い気がします。
『二人』を描く時に目のアップが非常に多く、お互いの目にお互いしか入らないような、恋すらも生ぬるいような『特別』な間柄を、お互いの視界を切り取ることで巧く表現していたと感じました。


この『特別』さがピークに達するのは、やはり最終盤の見せ場である花火大会でして、一期第八話の圧倒的な湿度と重力を引き継ぐかのように、少女たちは誘いに戯れ、特別な衣装を着込み、あまりにも美しい場所に飛び込んでいく。
あの花日が美しいのは、もちろん京アニが磨きに磨いた光のアニメーション技術の成果なんですが、同時に秀一なんぞヘでもない程に強く結びついた『引力』が世界を『二人』に切断しているからだと思います。
花日のように消えてしまうと分かっていても、それでも永遠であることを望まざるをえない、あまりにも『特別』で美しい、『特別』な相手との時間。
花日を照り返す水の上というセッティングも非常に詩的で、彼女たちの夏がどれだけ綺麗なのかを、しっかり描けていたと思います。

二人のデートは一期で積み上げた感情だけが許す『特別』な変化の結果なわけですが、同時に麗奈の中に強く根を張った、一種の歪みも描写されます。
傘木先輩を『逃げた』『特別ではない』と切り捨てることが出来る麗奈は、ダメ金取って悔し涙を流した時から変わらず、『特別』であることに強いこだわりを持っています。
それは『特別』であることの恐怖に耐えきれなかったもの、吹奏楽部室に背中を向けた存在を指弾することでのみ強調される、非常に排他的で攻撃的な、麗奈の個性です。
それを受け入れ、己の特性として取り込んだからこそ、久美子は『休めない夏休み』を歓迎するほどにブラスバンドにのめり込めたし、『上手くなりたい』『特別になりたい』という欲望に正面から向かい合う気になれた。
あそこで語られる言葉は、『特別』であることを望み、実現するべく手を握った二人の共犯声明であり、その繋がりが消え去らないことを狡猾に確認していく、特別な儀式でもあるわけです。

かくして主人公たちはかなり『特別』な絆で結び付けられ、堅牢な意欲を込めて『特別』を目指しているわけですが、ではそれ以外の立場が全て切り捨てられているかと言えば、そうではない。
あの『特別』な花火は峻厳な覚悟を固めた『二人』だけではなく、彼女たちの友人である一年生にも、複雑な心模様を抱えた二年生にも、それぞれの道をゆく三年生にも、すべての人に対して開かれているわけです。
僕はこのアニメでいっとう斎藤葵ちゃんが好きなんですが、それは部活をやめる『敗者』である彼女が見ている世界にも尊厳と優しさを込めてしっかり描き、多様な選択肢が許されている場所として作品を仕上げるスタンスが、彼女から感じ取れたからです。
『引力』に結び付けられた『特別』な主役たちだけではなく、そこから外れた様々な人々のあまりにも美しい瞬間を、横幅広く切り取った花火大会の見せ方は、青春群像劇としても、多人数バンドを扱う作品としても、誠実で表現力豊かな描写だったと思います。

そういう意味では、チームモナカの"学園天国"は『特別』ではない彼女たちの至誠が強く伝わってきて、凄く好きだなぁ……。
一期番外編もそうなんだけども、『特別』であることを真実描くためには、『特別』にはなれなかった存在に侮蔑ではなく尊敬の目線を送り、切り取らないと始まらないと思う。
麗奈曰く『逃げた』傘木先輩と彼女の周辺をどう切り取ってくるかは、『特別』と向かい合うこのアニメにおいては大きな勝負どころになるんだろうなぁ。

花火大会は『二人』を切り取る縦深、多様性を映し出す横幅だけではなく、シリーズ全体を予見する時間的縦幅も、なかなかに広かった気がします。
二期の物語は前半24分で北宇治の現状を切り取りつつ、笠木先輩という『過去が蘇る』ことで幕を開けました。
これに重ね合わせるように、花火大会も『源氏物語が現在に蘇る』花火でスタートし、そして『二人』(が代表する、美しい青春を今まさに輝かせている全てのキャラクターたち)が『永遠』を望んだ瞬間、花火大会もまた『永遠』を語りながら終焉する。
絵的に圧倒的なパワーを持っている花火大会の場で、『過去が蘇る』物語をこれから展開すること、そしてどのような過程と結果を経るにしても、これから描かれる物語は『消えていく永遠』にまつわる物語として、とても綺麗なものになることを予告できたのは、凄く詩的な暗喩に満ちた良いスタートだったと思います。


久美子と麗奈、『二人』の物語は一期である意味既に終わっているので、その生々しい麗しさを存分に描きつつも、物語には別のエンジンが必要になります。
そこで選ばれたのが、一期で匂わせつつ触ることがなかった『一年前の事件』であり、二年生が織りなす複雑怪奇な四角形が、今後しばらく展開を引っ張るであろうことを、強く感じ取ることが出来ました。
傘木先輩の復帰がもたらす波紋、道半ばで離れていった友人を支えたい中川の目線、物静かな鎧塚先輩が隠した重力、中世古先輩に向けるのとはまた違う表情を見せたデカリボン古川。
『二人』にも負けない湿度と重さで南中の四角形は切り取られていて、非常に面白かったです。

構図として面白いのは、南中の面々が『失敗した主人公』として描かれていることで、久美子と麗奈が巧く乗りこなした『特別であることへの恐怖と痛み』に押し流され、あまり幸せな関係にたどり着けなかった存在として、あの四人がいることです。
敗北を噛み締め決意を新たに走るバスは、久美子と麗奈がすれ違った予選会場の別の顕れなのであり、主役たちがかつて立ち向かい、今も立ち向かっている『特別』との戦いを、二年生たちも共有している。

このことが一つのテーマを作中のキャラクターが深く、広く共有している視聴感覚に繋がるし、あまり人間に興味がない久美子が、見ず知らずの傘木先輩に切り込んでいく物語の主因にもなっています。
主人公がズカズカ踏み込んでいかなければ、話のエンジンはエンジンとして機能しないわけで、こういう形でスムーズに久美子に興味を抱かせるのは、巧いなぁと思います。
滝顧問と出会ったことで偶然に(もしくは運命的に)、己が『特別』であることを証明するチャンスを手に入れた久美子と、クソみたいな環境で『逃げ』る形になり、波紋を覚悟で部に帰ろうとする傘木先輩。
二人は歪んだ鏡に写った鏡像であり、一部似通った、しかし決定的に異なったシャドウ同士なわけですね。

構図の妙だけではなく、各キャラクターの繊細な心理描写もやはり冴えていて、『京アニ、自分たちの武器を忘れていないな』という気持ちになりました。
一期でほぼ描写のなかった鎧塚先輩を立たせるべく、狂犬っぷりが印象深いデカリボン古川の意外な側面を巧く使って、『あのマッドドッグが自然に『いい友人』してる! コイツ何者ッ!!』という気持ちにさせられたのは、凄いなぁと思う。
色んな個性を持った色んな人間がいて、それぞれがぶつかり触れ合うことで様々な表情が見えてくる面白さというのもこのアニメの大きな魅力なので、古川の意外な表情を引き出せることで、物静かな鎧塚先輩が結構『面白い』キャラだと思えるのは、なかなかグッドでした。

吐き気を催すほど傘木先輩のフルートにダメージ受けていた鎧塚先輩ですが、麗奈のように『逃げた』と感じての義憤なのか、はたまた『希美が好きすぎて生きているのが辛い……』という愛ゆえの反応なのか、どっちにしても重たい感情が横たわっているのは間違いなさそうです。
二人の間にある『特別』な関係を強調するべく、泰然自若として人間関係の波風に無頓着な様子を、「三人は仲悪いの?」という爆弾のようなセリフで事前に印象づけておいたのも、巧いキャラ表現ですよね。
人形めいた無感情が第一印象としてあるからこそ、古川の対応とか、百合性実存的嘔吐とかが刺さるんだと思います。


しかし傘木先輩についてるのはポニテ一号中川だし、ナシを通したいのは田中先輩だし、どーも傘木-鎧塚ラインに流れている感情は、アンバランスな感じを受けますね。
ここを久美子を窓にして掘り下げていくことも、二期の展開の太い背骨になっていくと思うので、今後の表現が楽しみです。
Wポニテが夏祭りに来ているのを見咎めて、ギュッと拳に力が入る古川の描写がね、爆弾のごとくヤバい。

傘木からラインが伸びているあすかは、一期で見せたブラスバンドロボっぷりを全開にして、なかなかつれない返事でした。
人情の機微をあえて切り離し、とにかく『自分がユーフォをやる』ことを最重要視しているあすかの砦は、二期でもなかなか崩れない感じです。
あの子、『人当たりのいい捌けた先輩』を演じつつ(妙に恋バナを強調したがる道化っぷりとか、そこら辺巧く見せてましたが)、その実『他人はどうでも良いユーフォ・エゴイスト』であり、しかしその裏には人一倍感受性と傷つきやすさを隠した『人情家』ってのが、非常に面倒だし複雑だし魅力的だなと思います。
感情の量がアンバランスという意味では、傘木-鎧塚ラインは田中-小笠原ラインともよく似てるんだな。

あすかの血の通わないロボっぷりは、二年の問題が落ち着いた後に引っ張り上げる大ネタなのかなぁって予感が、結構してます。
ただの『クセのある先輩』として描くにしては、久美子にとって近い距離にいすぎるし、存在感もありすぎるんですよね……まぁこの見方は、自分好みの歪み方と鎧い方をしているあすかが、話の中で目立って欲しいという個人的希望でもあるんですが。
そういう目配せとしては、姉であり『特別』であることから『逃げた』存在である麻美子と、今まさに『特別』であろうとする久美子との距離感も今回強調されていて、二期は姉妹の問題にも踏み込むのかなぁって電波を受けた。
これも、家の中の久美子の演技が不躾で好きなので、部室や麗奈との『聖域』で見れるドラマ以外にも切り込んで欲しいという、個人的希望の反映やね。
このアニメの演技ディレクションは本当に良くて、アニメ的あざとさを要所に残しつつ、抑制と生々しさをしっかり付けたいい演技だなぁと思います……特に久美子。


既存のエンジンが使えなくなったという意味では、滝顧問との青春バトルも『府大会突破』という大きな成果が出た結果、軸としては機能しなくなっています。
『イヤなやつ』に思える滝顧問が実は、自分たちを『特別』に導いてくれる優秀なメンターであると気づき、その指導で飛翔していく変化が一期のドラマを大きく羽ばたかせていたと思いますが、それを体験してしまった二期では、単純に同じ立ち位置は望めません。
なので中村悠一声の橋本さんを投入し、滝顧問の意外な表情を引き出したり、滝顧問からは言えないツッコミを入れることで話をかき回しに来たのは、良い差配だと思います。

穏やかで鋭い滝顧問と、開けっぴろげで明るい橋本はいい対比をなしていて、かつ指導者として必要な明晰さ、必要な指摘を見つける目の良さは共通しています。
『もっと開けっぴろげになれ!』という指摘は音楽だけではなく、一年生を『一年前の事件』から遠ざける先輩たちの態度、物語全体を包んでいる閉塞感に対しても圧倒的に正しいわけで、こういうことを言える存在が大人サイドにしっかりいるのは、今後の展開への安心感を強めてくれます。
彼が言っていることが正解なことを、低音パートに即座に拾わせ、セリフとして補強するシーケンスの作り方も含めて、橋本は良い新キャラだなぁと感じました。
一期の物語を通じて『仲間』『信頼できる大人』に変化した滝先生から、明るい表情や反応を引き出す意味でも、橋本の陽性のキャラクターは時流にマッチしてますよね。

これまで滝顧問は北宇治吹奏楽部をより高みへ導き、子どもたちを『より自分らしい、特別な自分』へと目覚めさせる物語の大枠を担当はしていましたが、個人的な物語はあまり語られませんでした。
今回『一年前の事件』をひっくり返し、メインエンジンに据えたように、滝顧問個人の物語に切り込んでいく展開があるか、ないか……。
個人的に滝顧問のことを空いている視聴者としては、彼がどんな人物なのかもっと知りたいという気持ちもありますし、ちょっと期待したいところです。
しかしまぁ、子どもたちのフレッシュな感情(ところどころ毒入り)を切り取る精度を維持するだけでも、相当な負荷だろうしなぁ……今後どこをどう掘っていくかも楽しみだ。

映像表現としては山田シリーズ演出のフェティシズムが迸り、レンズ効果が多用されていたのが面白かったです。
『特別』なものを追いかける彼女たちの世界が、映像としても異質で『特別』で美しいのは、テーマと表現が噛み合っていて凄く良いなと思います。
傘木の訪問から逃げて水飲み場に下がった所とか、『二人』が話し合っているシーンの自然光の輝きとか、明暗が明瞭でシーンの意図をしっかり反映していたのも、ユーフォっぽい画作りだと感じました。
やっぱ良いなぁ……この情景の精度と、セリフの外側に込められる情報量の多さ。


というわけで、高まった期待に違わない、丁寧さと重たさ、体温と感情の篭った第一話でした。
青春ど真ん中を突っ走る少年少女の輝きを大事にしつつも、これまでの物語が何をしてきて、これから何が起こるのかというストーリーラインを明瞭に示せている所が、流石の二文字です。
『二人』の関係を切り取った縦幅の物語としても、部活という『場』を巡る横幅広い群像劇としても、やはり別格の仕上がりで、良いもん見たなぁという気分です。

こっからしばらくは、傘木先輩の復帰願いがもたらす波紋と、鎧塚先輩が仮面の奥に隠し持っている重力、そこに切り込んでいく久美子の姿がメインになりそうです。
『特別』であることから『逃げた』女、置き去りにされた女が絡み合う瞬間のスパークは、『引力』に縛り付けられた『二人』を描くのと同等に重たく、強く、濃い感情とドラマを見せてくれると思います。
二期目のユーフォニアム、非常に面白く、今後が楽しみですね。

プリパラ:第118話『姉と妹と姫と野獣』感想

神様だってアイドルがしたい! 欲望と情熱が世界を揺るがす歌姫喜劇、今週は超設定回収回。
女神ジュリーがなぜ赤ん坊ジュルルとなりらぁらと出会ったのか、その背景には誰がいるのか、一気に説明するエピソードとなりました。
欲望に忠実過ぎる姉に振り回される秩序派女神ジャニスも本格参戦し、ノンシュガー結成も軌道に乗り、話が一気に加速してきた感じはあります。
解決事態は『SAKIOKURI』だけども、あと半年走りきるだけの材料はちゃんと揃っていると感じられる、いい感じの後半戦スタートだったと思います。

というわけで、前半を引っ張った子育て奮戦記の舞台裏が明らかになる今回。
アイドルが好き過ぎる女神様が、自分自身にオールリセットをかけ、システムにアイドルとしての自分を登録させるための策が『赤ん坊になる』でしたね。
嫌がってる妹はノーモーションで巻き込んでるし、運良く善人に拾われたからいいものの、ネグったり虐待するような子に拾われたらどうするつもりだったんだろうか……。
後先考えないというか、『やりたい!』という気持ちに素直な神なのだろう……ジュリー、邪神じゃん。

『世界がどうなってもいいから、とにかくアイドルが好き! アイドルしたい!!』という熱い情熱は、プリパラが『み~んなアイドル』の物語である以上、結構大事なものだと思います。
そういう強い気持ちがあればこそ、主役たちは神アイドル目前のところまで自力で這い上がって、憧れの視線を受ける立場になれた。
ジュリーは『神』という圧倒的存在なんだけども、アイドルとしては『新人』で、らぁらに対しては『娘』で、上でありながら下でもあるという不思議な立場にいるなぁ。
あの成熟した肢体で小学生を『ママ』呼びしていると、なんか凄い……凄い荒れ狂うものがある。
素晴らしい。

我欲でシステム管理権限を振り回し、世界のルールも自分のあり方も自在に変えてしまったジュリーの行動は、行き当たりばったりで危うい感じがします。
らぁらが『何があっても、ママはジュルルの味方だよ……』と言ってることも含めて、そのうち高いツケを払うことになりそうだ……丁寧にサパンナ崩壊の伏線も拾ってたしな。
世界を危機に晒してでも叶えたかったジュリーの願いを、今回らぁらは掘り下げることができなかったわけで、ここらへんに踏み込むのはクライマックスが始まってからなんでしょうね。
将来ヒドイことになる予兆も込めて、『先送り』というネガティブな結論を笑いのオブラートで包んで出してきたんかね、今回は。


そんな姉に振り回されるジャニスは、女神の責務に無自覚な姉にキレて下克上を狙う。
『予定通り』を強調しまくっていることから、楽しいサプライズ重点のジュリー(と、その保護者であるらぁら)に対比されるキャラだとは思うんですが、そこまで悪人に見えないのは良いのか悪いのか。
王権の象徴であるタクトを奪おうと画策してたりするけど、行動の自由はないし、システムを的確に運営しなければ不幸が訪れるのは事実だし、ジャニスの秩序路線はそこまで間違っていない気がします。
プリパラが『み~んなトモダチ』を世界是とする以上、ジャニスも否定されるだけの悪役にはしないだろうから、今見えている『一部の理』は今後芽を出させるための前フリなんだろうな。

『ダメダメな姉に振り回される妹』という共通点で、ジャニスとのんを繋ぎ、ノンシュガー結成物語の端緒にキャラを配置する流れは、非常に上手かったです。
やっぱ新キャラが何処かに既存キャラとの共通点を持っていると、そこを足場にして共感を作りやすく、話がスムーズに流れていきますね。
『人間に憧れる機械』という意味では、ジュリーとファルルも重ね合わされてんだな……ということは、ジュリーを『機械』に押し込めようとするジャニスは、一期におけるユニコンか。

今回は各キャラが自分らしさを存分に発揮し、発揮しすぎて話が破綻する寸前まで加速していたんですが、巧いこと収める仕掛けもたっぷり用意されていました。
プリパラは毒のあるキャラが自分を抑えず暴れまわるのが楽しいので、キャラを活かして細かくクスグる今回のトーンは、作品の魅力が生きた良い運び方だと思います……ドロシーの冴え渡る毒舌とか、最高だったね。。
しかしそれだけでは話が大迷走するだけなので、強引でもシメるところをシメて、今後お話がどういう形に積み上がっていくかの青写真を見せるシーンに移行させてもいて、折り返しの回に相応しい展開でした。

姉たるジュリーだけではなく、ノンシュガー関係のエピソードにもジャニスがきっちり絡んで存在感を出していたのは、初登場エピソードに相応しい目立ち方でしたね。
ペッパーが食肉ネタで大暴れしそれに反応してちりが暴走する中、うさちゃのヴィジョンと献身を認め上げ、ちりにトス上げしてノンシュガー結成の方向に話を持っていくあたり、ジャニスは場をよく見たキャラだ。
まぁあそこで大人っぽいこと言えるの、秩序属性のジャニスだけだからな……外見は赤ん坊だけども。

ペッパーはとにかく人の話を聞かないキャラなんだけども、『校長の遺髪』という『とりあえず黙るアイテム』を巧く設定できたお陰で、話が破綻しそうになったら初期位置に戻す動きが取れて、あじみより制御しやすそうだった。
ココらへん、濃い味付けのキャラを大暴走させて盛り上げつつ、制御装置をしっかり付けて本筋も進める欲張りさを感じて、なかなか巧妙だなと思う。
話がまとまりそうになったら『食う』というキャラ記号を引っ込めて、『チームが結成するまでのお楽しみにとっておくぞ!』と身を引かせている所とか、場をよく見た運び方でした。
濃いキャラが記号を全面に押し出して本気で暴れると、一切収集がつかなくなるってのはあじみで証明済みだからな……ここら辺の押し引きがしっかりしているのは、見ていて安心だ。

ノンシュガーは本当にまとまる気配がないんですが、個別のキャラクターはみんな魅力的だし、バラバラだからこそ個性が一つにまとまったときの魅力を期待できるユニットでもあります。
『なぜノンシュガーを結成しなければいけないのか』『どうすればまとまるのか』というヴィジョンを、マネージャーという三人を導く立場にあるうさちゃの口を借りて語らせているのは、ネタの温度を殺すことなく話の方向を示唆できていて、上手い見せ方ですね。
結成までの方向づけは今回巧く出来たと思うので、今後具体的なエピソードを積み上げて、ユニット結成に説得力と体温を宿すことが出来るとなお良し、って感じですね。
ユニット内部の整理だけではなく、プリパラ内外のちりを和解させ、アイデンティティを再統合する試練も待っているのは、なかなか面白いところだ。


というわけで、賑やかなカオスを思いっきり加速させつつ、今後展開する物語の青写真をしっかり感じさせ、お話の形を整える回でした。
女神ジュリーの危うい情熱、その妹であるジャニスの登場と下克上の予感、個性派ユニット・ノンシュガー結成前夜。
色んな要素をぶち込みつつ、キャラの魅力とネタの勢いを存分に引き出す、プリパラらしいエピソードでした。
『SAKIOKURI』の爽やかなダメダメ感で終わっても、『まぁ、プリパラだし……』と納得できてしまうのは、強いシリーズだなぁと思う。

色んな物語の種子がバラまかれた話でしたが、それに続く次回は一年ぶりのハロウィン。
年一回のらんたんの出番を今年受け取るのは、ゴシックユニット・ガァルマゲドンですが、どういう化学反応を見せるのか。
ガァルマゲはいまん所主役話全部が名エピソードなので、賑やかで楽しくてほっこり出来るいい話を期待します。

 

 

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ:第28話『夜明け前の戦い』感想

まとわりつく泥を跳ね除け綺麗に生きるためには、血泥に塗れるしかない火星の剣闘士たちの物語、今週は戦場という名前の日常。
事前準備もひっくるめて、一話まるまる戦闘という回でして、『夜明けの地平線団』との宇宙戦闘をガッツリ楽しませてもらいました。
ルプスの抜手やフルシティの大型ハサミなど、相変わらずの血腥い戦術も見せつつ、知恵と連携で劣勢を覆していく鉄火団の姿に、成長を感じたり。
後退のネジを外した鉄火団の前には、第三勢力であるアリアンロッドが立ちふさがり、敵のボスも前面に出てきてさぁどうなる、という展開でした。

二期になってからは、じっくりと過去からの変化と継承を描いてきたオルフェンズ。
初の宇宙船となった今回も、実は結構な時間を事前準備や戦闘外の描写に割いて、キャラの変化を色濃く強調していました。
農場で汗を流すのんびりとした生活だけではなく、戦場で血を流すこともひっくるめて鉄火団の『日常』なのだ、といったところでしょうか。

今回は殺人悪魔・三日月=オーガスの複雑な人間味がうまく演出されている回で、『カボチャの育成』という新しい可能性に挑んでみたり、オルガとの地獄みたいな共生関係を確認したり、阿頼耶識に接続されているときだけは体が自由に動いたり、アトラちゃんとの微妙な距離感が見れたり、描写が太かったですね。
無表情な殺人機械の側面が強調されがちな三日月ですが、分かりにくいだけで彼も行き方を変えようとあがいてはいて、『カボチャ』はその象徴の一つなのでしょう。
しかしその『カボチャ』は健全に育ってるとは言い難く、葉の色も悪いし虫食いもひどい。
『真っ当な暮らし』に繋がる農場を運営していても、シノギを維持していくためにはマクギリスとの怪しい共闘を飲まなければいけない鉄火団と同じように、戦場から離れた三日月はその可能性を巧く発揮できない『産廃』なわけです。

そんな彼も、ルプスに乗り込めば一人だけ別格の高機動を発揮し、『数の劣勢を跳ね返して、正面から敵艦隊を切り裂いて突破、反転して側面に噛み付く』という鉄火団の無理筋を支えられる。
動かない左手も殺し合いをしているときはゴキゲンに稼働して、命の糧であるスイカジュースも自由に掴める。
まさに鬼神の如き奮戦に興奮しつつも、そこ以外に己の可能性を見つけられない三日月の姿は、ひどく危うくも見えます。


危なっかしいのは三日月だけではなく鉄火団……というかオルガもおんなじで、露骨に怪しい石動の急襲提案も、大物の首を取って鉄火団をデカくするためには受けざるを得ない。
ビスケットが生きていれば一か八かの功名路線にも少しはブレーキがかかったんでしょうが、今オルガの隣りにいるステープルさんは鉄火団全体の方針を変えることには、あまり熱心ではないように見えます。
一期最後の戦いで『家族』にはなりきれない自分を認識し、鉄火団の血縁主義に正論をぶつけるのではなく、古女房のように懐に潜り込むことで、自分の居場所を手に入れた感じなんですかねぇ。
『正しさ』に固執していても現実が変わらないなら、生き急ぐ団長を支えつつ抑える古女房路線に舵を切りなおすのは、納得は行く変化です。

ビスケットが抜けた穴にスルリと滑り込んだ形のステープルトンさんに対し、アトラはオルガと三日月の共犯関係に入り込む余地を見つけられず、それでも自分のやるべき事として『飯炊き』を頑張っていました。
アトラが『人間らしい食事』を供給することで鉄火団と接続され、それがある程度以上子どもたちの魂を潤していること、同時に暴力の乾いたリアルに際して圧倒的に無力でもあることは、一期から引き続き描かれている彼女らしさです。
色々あがきつつも結局『殺し』でしか命をつなげない鉄火団において、アトラが出来ることはどうにも小さなことなんですが、「今度は、暖かいものが食べたいな」という三日月の言葉を引き出したところを見ても、やっぱ彼女の無様な戦いは他の誰も出来ない大事なことをやっているな、と思います。

食事の暖かさがそのまま人生の温もりであると見るのは、ちと直線的過ぎる読みな気もしますが、この描写もまた、三日月がただ『殺し』続けるだけではない『人間らしい』生き方を探している証明として、受け取っては良いかなとは感じますね。
二期になってからも、『人間らしさ』を追い求めつつ、非人間的な『殺しの装置』であり続けなければいけない鉄火団の矛盾は強調されているので、今回アトラが見せた小さな潤いがどこに落ち着くかは、油断ができないところですが。
巧く行っているんだけども足元が危うくて、根本的な変化は起こせないけど少しずつ実績を積み重ねている。
不安定で先が読めない感じを維持・強調する演出は、二期が始まってから色んな領域で徹底されていて、これがセカンドシーズンのテイストなんだろうなぁと思います。


戦闘自体はアリアンロッドの横槍を恐れた石動の思惑と、前回描写された『嫉心』をはねのけるためにも実績が欲しいオルガの狙いが噛み合い、『行く先が見えている危ない橋』に団員の命を張る戦いに頭から飛び込むことで始まりました。
しかしそれは『夜明けの地平線団』団長、サンドバル・ロイターの知略にまんまと引っかかる形であり、10対2の圧倒的劣勢から戦闘は開始。
ルプスと三日月というエースを早めに切り、敵中央を突破しつつ目眩ましを蒔いて反転、左翼に切りつけて数的不利を挽回した鉄火団は、持久戦の構えを取ります。
おそらくオルガが待っていただろう増援はしかし、マクギリスと敵対するアリアンロッドのものであり、混沌とした三つ巴の戦場に各勢力のエースが揃ったところで次回に続く、と。
戦場の潮目が激しく変わる艦隊戦で、色々フレッシュなアクションも詰め込まれていて、見ごたえがありました。

一期では不倶戴天の敵だったギャラルホルンとの共闘といい、すっかり一端の戦術家となったユージンといい、年少者が多いオペレーターといい、補給を重視しながら戦線を維持していく戦い方といい、今回の戦いは鉄火団の変化を強く印象づけてくれました。
ショタっ子達がブリッジに詰めているのは、比較的損耗率が低いだろう後方にガキを下げて守ろうという、地獄の中の善意が感じられ、喜ばしいやら哀しいやらの描写だった。
身内にはそういう情けをかけるのに、敵さんのヒューマンデブリは三日月がバッタバッタとぶっ殺すし、帰る場所がないゆえのガムシャラ戦法を捨て駒として評価されてるし、本当にスッキリと『正義の味方』はさせてくれないアニメだね。
あと、一期より遠距離砲撃が有効な局面が増えてる気がする……MSの設定面でなんか変化があったのかな?

敵である『夜明けの地平線団』は露悪的にゲスってわけでもなく、かと言って慈善団体でもなく、あの世界で一般的な悪党たちって印象を受けました。
不確定要素であるアリアンロッドの奇襲を受けて、最強の駒である自分自身を迷わず盤面にはれるあたり、サンドバルは優秀ではあるんだな。
ここで首を取れるか、逃げを許すかで鉄火団の対外的評価も今後の展開も結構変わりそうですが、どーなるのかなぁ……逃した上で別のに掻っ攫われそうな気はする、話のタネを蒔くために。

華麗な横殴りをキメてきたアリアンロッドの皆さんですが、鉄火団とはうって変わって自分たちの勝利と正義を疑わない清潔さで、ここまで話を追いかけてきた視聴者としてはヒドイことになる前フリにしか見えん。
家訓とか温まったいこと吠えてるクジャンくんも、オルガの道を暴力で切り開くジャガーノートの前に立ったジュリエッタも、仮面の男を抱え込んで余裕っ面のラスタルさんも、なんかヤバそうだなぁと思います。
初顔合わせで即死ってのは流石にないと思うので、この接触自体は痛み分けで水が入るとは思うけども……マクギリスがどういう悪辣な罠を張っているか次第だな、アリアンロッドの未来は。(罠を張っている事自体は既定路線)
仮面さんは声が松風さんなんで、まぁガエリオだとは思うんですが、あの仮面の奥に昔のボンボン顔があるとはどうにも思えなくて。
アインと同じようにヴィダールに体を移して生き残ってんじゃないかなぁ、とか推測しています……役名自体もヴィダールだし。

阿頼耶識に接続されることで、なんとか人間としての機能を取り戻す』ってのは三日月とも通じる描写だしね……このアニメの性格の悪さだと、仮面ボディは遠隔操作の人形ってのは、十分ありえる気がします。


というわけで、危ない橋の綱渡りをなんとかこなしつつ、かと言って全てがうまくいくわけではない鉄火団の現状を詰め込んだ宇宙戦でした。
オルガの生き急ぎっぷりも印象的だったけども、殺戮の能面の奥にどうにか人間であろうともがいて、全然上手く行かない三日月の無様さ、それを支えようと願いつつ距離を詰めれないアトラの切なさが、特に刺さったなぁ。
この危うい三角形はお話が終わるまで引きずる、大事な物語的エンジンだと思うので、印象的に描けたのはなかなか良かったんじゃないでしょうか。

アリアンロッドの横殴りにより、戦場はさらなる混沌に飛び込みましたが、この状況をどう収めるのか。
そしてその結末を次の物語につなげるために、どう使ってくるのか。
二期物語が一期からの変化を確認するフェイズから、変化の先にある地獄に飛び込むためには、次回の取り回し方は大事な気がします。
さてはて、命を載せての一天地六、鬼が出るか蛇が出るかという感じですな。

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