イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

麻薬取締官

鈴木陽子、集英社新書。日本の麻薬に関する包括的な入門書。筆者は薬科大学から厚生省麻薬取締官になり、七年勤めた後結婚退職、後32歳で医大に入学し、46歳で襟裳岬で辺境医になったという面白い経歴の持ち主である。現在も現役の麻取とつながりが在り、ターミナル・ケアにおいてモルヒネを投与している筆者の記述は、良くある外部視点のジャーナリズムではなく、とにかく大量の事例・資料・統計が飛び出す強力なものだ。
それらのデータを判りやすくまとめつつ、麻取の組織構成、麻薬の簡単な解説、実際の事件、医療現場における麻薬の扱いなどなど、さまざまに幅広く話は進む。書き味が軽く、適切でなのですらすらと読める。その上で、興味本位の栄養のないジャーナリズムではなく、実際に自分の手で麻薬と四つに組んだものの重さがある本である。簡潔にして適切なので、麻薬関係に興味がある人は入門書として最適だと思う。良著。