イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

先住民の「近代史」

上村英明、平凡社。現代も残る植民地主義とネイティヴスへの圧制に関する論考。サブタイトルは「植民地主義を超えるために」であり、現在も続く帝国主義の残滓(というか形を変えてより洗練された帝国主義としての資本主義)を振り返るために、アイヌ琉球を中心としたネイティヴスに関する研究を纏めている。
個別の事象はさまざまで、江戸期・明治期におけるアイヌの扱い、琉球王朝明治政府国際法、原爆開発に見るネイティブスへの無道などなど、幅広く視座を取っている。しかし資料の読み込みが丁寧で、しっかりと深く掘りこんでおり、得られるものは大きいと思う。
さまざまな場面で、さまざまな時代で、帝国主義(とその正当継承者である資本主義)はそれを手にしていない存在をあるときは先住民と、あるときは現地民と呼びながら食いつぶしてきた。それは今でも続いているし、これからも続く。そんな状況に少しでも意識が向くのであれば、この横にも縦にも広い書物を読むのは、けして悪くないはずだ。良著。