イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

新興宗教オモイデ教

大槻ケンヂ、角川文庫。いつものように歯医者の慰みに。何度目の再読になるか判らないが、ともあれやはりこの小説の中にみっしりと詰まった感傷と苛立ちと柔らかい敵意は、僕にとってかけがいないものである。
大槻ケンヂははっきり言って、僕の身体を切ればたぶん一割ぐらいはそれで出来ているような存在なのだけれども、彼の文字に出会ったのはこれが最初である。リーフの「雫」が僕は大好きで、その元ネタ、って言うか丸パクされたこの作品は、でも「雫」より深く深く胸に突き刺さって戻りが付いて抜けない。
青臭い、情けない、下らない。そう、そういう風に捨て去られる、どうにもならないものが、どうにもならない形そのままに、文庫になっている。それは面白い作品だし、同時にひどく物悲しくて、キラキラと輝いていて、どうしようもなく終わっている。それは大槻ケンヂという作家の輝きそのままに複雑でいて単純で、つまりは僕らの物語なのだ。
だから、この小説を読み返すたび、僕は思わず、息を吐いて天井など見上げてしまうのだ。