イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

西洋中世学入門

高山博・池上俊一他、東京大学出版会。出版社を見て分かるとおり、西洋中世学の教科書。といっても西洋中世学の「何を」学ぶかの教科書ではなく、「どう」学ぶかの本である。具体的にはさまざまな一次資料を扱う学問領域と、それぞれの一次資料についての細密な説明が載っている。
出来合いの結論ではなくてこれから結論を出すサイドの教導書であり、そこにはいない僕が読んでもどうなることやら、と思いながらページをめくってみたが、全般的に論理は明晰であるし、文章も分かりやすかった。脇からつまみ食いする立場として読んでも、流石にアカデミックな教導書、とにかく骨が太く噛み応えがある。その上で可読性が高いのはよいと思った。
専門領域の学求入門書というのは僕みたいに半端な位置から文字を食う人間としては、なかなか面白いスタンスにある書物なのかもしれないと感じた。読めないほど専門的ではなく、入門書なので可読性も高い。西洋中世はいろいろと興味があり(だからこそこの本を借りてきたわけだが)、いままでもいろいろな本を読んできた。
だがそうやって流す立ち位置もあれば、その流れを捕まえて四つに汲む立場もある。そういう立場−つまりは西洋中世学者−の空気を感じ取れる、という意味でも面白い。加えて、さまざまな文書や印象、図象などをどう読み、どう読み解くべきなのか、わかりやすくそれでいてソリッドな言葉でまとめたるこの本は、門外漢である僕にとっても面白く読めた。中世世界への想像を躍らせるに十分な事実も多数乗っているし、アペンディスク・書物類紹介も豊富であった。良著。