イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

転移する時代

イマニュエル・ウォーラーステイン他、藤原書店。世界システム論の立場から見た大戦後世界と、これからの展望についての本。サブタイトルは「世界システムの軌道 1945―2025」 世界システム論の編者・筆者十人による共著。
十年前の本であり、三十年先まであいまいに見通す本でもある。未来論はそれが当たったかどうか、ではなくその切れ味によって見るべきだと思うわけであるが、この本にはいくつか胡乱な部分もある。一つは論を共有する集団が強固過ぎるため、最初に1967/73年という切断面を積極的に規定し、その結論を優先的に先取りして各論を進めているのではないか、という感覚をぬぐえなかったこと。もう一つはあまりにウォーラーステインのフォローアップにすぎるというか、視点が一極的なのでどうにも寄った見方ばかり感じる、ということ。
しかしながら、政治・経済・智の権力学などなどさまざまな領域について切り込みつつ、最終的にウォーラーステインがすべてを纏め上げる実力は確かなものだ。各論は(先にも述べたようにある種の方向性は感じるが)鋭い視座と短径な分析に満ちており、深さと鋭さで書かれている。もともとにおいて広範な世界システム論だけに、各領域ごとに筆者を厳選し、それを最終的な結論に纏め上げる幅の広さは巧くいっている様に感じた。良著。