イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

スプロール三部作

ウィリアム・ギブスン、ハヤカワ文庫SF。「ニューロマンサー(84)」「カウント・ゼロ(86)」「モナリザ・オーヴァードライブ(88)」の三作を、ひどい雨が降る中再読する。
もう二十年も前の作品なのだなぁ、などと思いながら読む。いまさらギブスン? という声も聞こえる。もちろん、いまさら、ギブスンだ。何度でも読む。なぜか。名作であり、名訳だからだ。黒丸訳はやはりひどく切断面が切れ立っていて、面白くてしょうがない。本当に、本当に、だ。
連作としてまとめて読むと、相当にしっかりした混乱がこのシリーズにはあることに驚かされる。ニューロマンサーの、出世作らしい圧倒的なスピード、ドライブ、ヴィジョン。そこからつながり形を変え形式を整えながら、だがスプロール三部作にしかなく、スプロール三部作でしかない空気、匂い、味わい。ひどく引く感覚的な混乱が、やはりこの作品にはある。
二十年でいろいろ変わったこともある。さようなら、エコノミック・アニマル。さようなら、サイバーパンク。さようなら、ウィリアム・ギブスン。だが、それでもなお。この小説は飛びぬけて面白く、飛びぬけてかっこ良く、飛びぬけてかっこ悪い。そういうふうに刷り込まれてしまった読者としての僕が、そう感じるのだろうか? それとも、一つの手で触れる事象として、そうなのだろうか。
小説は久しぶりに読んだ。それがこの三部作だったのは、それなり以上に幸福なことなのだと感じる。少なくとも、雨音にイライラする僕にとっては。そしてもしかしたら、客観的判断基準の名前においても。この小説は面白いのだ。