イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

福音書=四つの物語

加藤隆、講談社選書メチエ。マルコ・マタイ・ルカ・ヨハネの四大福音書の差異と合同について、聖書学的アプローチから書いた本。少々文体がもったりしていて可読性が低いが、聖書学らしい丁寧な歴史医学的アプローチと、徹底的な対比参照により四大福音書の「どこが」「どう」「なぜ」違うのかを浮き彫りにしている。
聖書文献学的アプローチによる読解は丁寧であり、その反面重たい。とにかく現テキストに対照し、当時の歴史状況が挿入され、その文章は走錯し洗練されているとは言いがたい。紙幅の限界と筆致・調査方法のすり合わせも巧くいっているとは言いにくく、正直読みにくい。
だが、とにかく丁寧な本で、そこが文字的可読性を超えた文脈的可読性を生み出している。筆者はとにかく真摯に(もしくは愚直に)四大福音書の成立した時期におけるキリスト教共同体の政治学、文献学、宗教学を追いかけ、聖書、というある意味孤立した書物を徹底的に解体していく。紙幅は足らないのだが。その姿勢と、その結果生み出された奇妙に重厚で混沌とした読み応えはなかなかのものだった。良著。