イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ヨーロッパ精神の源流

D・シュヴァニツ、世界思想社。サブタイトルは「その栄光と挫折と教訓の探求」 独語原題は「ヨーロッパ史」 ギリシャイスラエルから始まり、ナチスドイツ以降の統一ドイツまでのヨーロッパ・ドイツ史に関する本。
ギリシャ都市国家から東西冷戦構造の崩壊まで、長い期間を取り扱った本である。全般的に章立てに難があり、個別の事象が浅薄な説明で終わっている。事象事象を関連付け、そこから議論を掘り下げようとする姿勢それ自体は悪くないと思うが、なにぶん事象の扱いが弱く、薄く、甘い、といわざるを得ない。
横幅を広く取るのならば、むしろその中で必要な記述と不必要な記述をしっかり選択視、的確な言葉で表現する努力と実力が必要だ。だが、あまりに平板に通時的記述が繰り返され、メリハリのない歴史記述になってしまっている。どこに焦点をおき、何を書きたいのか、そこをしっかりと見据えて記述するべきなのではないだろうか。
唯一重点が置かれているのはヒトラーナチスドイツ以前とその最中、そしてその後の東西ドイツの問題である。この問題には大量の記述と筆者の考ええが記述されている。が、先に述べた記述の薄さが弱点となり、論述を肯定しかねるものにしてしまっている。この問題だけを述べたいのであればヨーロッパ史をまるで大学受験参考書のような浅い記述で述べる必要はないだろうし、ヨーロッパ史の中でナチス問題を浮き彫りにしたいのであれば前代回の記述をより深く、より洗練した形で記述するべきなのではないだろうか。
日本語サブタイトルも大仰だと感じた。ヨーロッパ精神の源流をたどってはいるが、そこには深く切り込んでくる言説も、資料への四つの取り組みも、一本筋金の入ったテーマもない。どうにも焦点のぼやけた本である。