イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

とらドラ5!

竹宮ゆゆこ電撃文庫。というわけでようやく発刊ペースに追いつき、かな? なんかのアワードもとったらしく、とても目出度いラブコメ金字塔の最新刊でござんます。学ー園ー祭ということで学園ラブコメとしては外すことの絶対出来ない重要イベントを行うわけですが、それよりなにより登場人物の関係性の変化と心情の動き、つう小説としての動きが一番でかいと思いました。
つうかまぁ、例によって例のごとく僕がこの小説を評価する言葉はまず「巧い」なのですが。楽しいや愉快よりも、巧く出来ていることを評価してしまう基準が、僕の中にはねっぷり根っこを張っているようです。それはまぁしょうがない。そういうものなので。しかしまぁ、初手で「ああそういう安い流れね」というのを徹底して予想させておきながら、(説明ではなく描写で)片っ端からその裏を打っていく構成の妙は、巧いとしかまず評価できないと思うわけですよ。
そこらへんの外し方と、「外しておきながら納得させ、共感させ、興奮させ、同調させる」という小説が楽しい理由を両立させるのもまた、巧いと僕は感じたわけで。今までうへほハッピーゴーラッキー、こんな生活してみてぇといういかにもラノベな共感を誘うムーブをちらりちらりと見せながら(その実内容は相当に骨太なジュブナイルなわけですが)進んでいたわけですよ。そこにストレスは薄めだったわけですが。今回はガッツリストレスがしかもどうにも解消されにくいであろう分厚さを持ったストレスが発生したわけです。
ストレスは解消されるカタルシスとしてこそ、フィクションの中で第一の意味を持つわけですが。解消されないストレスというリアリティもまた、別の種類の快楽の色を持っているわけです。そこらへん、ラノベでは食われにくいストレスですが。小説としてのつくりの巧さ、分厚さ、パワーでストレスを細かく分解しつつ、綺麗に繋いでいるあたり流石だなぁ、と。ある種の完成形、という評価はこれで磐石になったかなという感想ですね。
まぁ完成系なので個別に言うことはあんまりないです。パーツパーツのエッヂの立て方が巧いからこそ、くみ上げた時の流線型が完成しているわけで。登場人物の描写、エピソードのつくりと挿入のタイミング、どれもお見事。とても面白かったです。ナイスグッド。ストレスの色が混じってきた子の小説、今後どういう展開を見せるのかとっても楽しみですねね。