イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

遊戯する神仏たち

辻惟雄角川書店。サブタイトルは「近世の宗教美術とアミニズム」。仏教美術とアミニズムを一つの軸にした、筆者の論文・エッセイ集。特に強いつながりがあるというわけでもなく、比較的短めな文章がまとまっている。
第一章はアミニズムと日本美術に関する考察、第二章は江戸期の仏教美術円空、木喰、風外、白隠−の個別論、第三章が浮世絵、第四章が幕末〜明治期の僧源道に関しての論文、という考察になっている。文章量が少ないので深奥な論考や複雑な推論とは少々遠いが、深い見識と鮮やかな知識が感じられる文章で、短いがゆえの鮮やかさがある。
個人的には二章の作家論が、各作品の図版も豊かであり、筆者の豊かな感性が感じ取られて印象に残った。円空仏をたずねて東北を・北海道を巡るエッセイはよく磨かれた文章と鋭い審美眼があいまり、短いながらも優秀な円空論になっている。木喰、風外、白隠においても同様であり、語り口は違えど、よく書かれている。
論集としては少々まとまりがないが、個別の文章の彫が深く、仕上がりよい本であった。良著。