イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

鏖殺の凶鳥(フッケバイン)

佐藤大輔富士見書房。久々に読んだ小説。はっはっは、じつはまだ読んでいなかったので、見かけてすぐ借りてしまいました。やれやれ。お話のほうは、1945年敗色濃厚なドイツ、武装親衛隊、一般親衛隊、国防軍の思惑が入り混じる謎の作戦"フッケバイン"の中で、降下猟兵大隊歴戦の"騎士団長"グロスマイヤー大尉が軍人する話です。
フッケバインといってもTa-183のほうではなく、もっとぶっ飛んだ魔球でありまして。ぶっちゃけこの魔球を取れるか取れないかでこの小説は評価が分かれるわけですが。僕は別に問題なかったので、非常に楽しく読みました。クッキリ筋の通った主人公が、巧く書かれたピンチをゴリゴリとタフガイの極みで乗り越えていく丁寧な作りは読んでいて安心、娯楽小説核あるべしという無駄のない展開に感心しきりです。
ズタボロのドイツ第三帝国描写とか、腐れ親衛隊と僕らの国防軍描写の違いとか、ここらへんはさすが佐藤大輔、という感じの筆力。こういう部分の圧力の高さが、小説の面白さに直結しているのがなんとも巧い。職人仕事というか、とにもかくにもそつがないというか。わりと悲惨にばたばたし布ですが、スカッとするわけでもなし、ふーんですむでもなし、娯楽小説に必要な不快感の分量を見切っているあたりも、さすがですな。
ともあれ面白かったです。ミリにホラーにトンデモにその他色々、たくさん混ぜてなお小説としての筋がスッキリしている、いいお話でした。