イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

戦うコンピュータ

井上孝司、毎日コミュニケーションズ。サブタイトル「軍事分野で進行中のIT革命とRMA」のとおり、(主に米軍の)軍事とコンピュータ革命のかかわりについて述べた本。筆者は軍事畑ではなく、コンピュータ畑の出身である。
一冊まるまる「軍の中のコンピュータ(とその周辺ジャンル)」であり、比較的平易な文の可読性と、ジャンルの専門性が良いシナジーを形成している。延々専門的な用語が並ぶわけでも、突っ込みの浅い記事が書かれているわけでもない。兵器レベルから旅団・師団運営、作戦運営レベルまで、それぞれの領域でいかにコンピュータが使われ、いかに戦争を変化させているか、について、徹底して「コンピュータ」という視点から書いている。
畑違いの宿命か、軍事関係の記載に少々あらが見えるのが問題といえば問題である。が、それを補って余りある視点の独自性が魅力で、RMAをシステムの方向から掘り下げる筆は、ミリ畑ではなかなか取れない文章だといえる。陸海空宇宙問わない良い意味での無節操さは、ジョイントプロジェクトが異常に増えつつある現在の米軍の実情と噛みあっているし、二次大戦期からの米軍戦史をそれなりに押さえた記述は(それなりに荒いものの)横幅が広い。
なかなか面白い角度から米軍を書いた本で、文章面の荒さで点が下がるが、全体的に良い本であった。良著。