冬川基×鎌池和馬、アスキー・メディアワークス。極東のゴッサムシティで、少年少女が酷いことになる漫画の9巻目。とりあえず、食蜂さんスイマセンでしたッ!!(開幕土下座)アナタ面倒くさいツンデレといいますか、この街に壊された真心の持ち主と言いますか、極端なやり方ではあったけどビリビリを思いやっての行動ではあったんスね……。見事にミスリードされてしまいました。いやー、ビリビリがあんまり可哀想でさぁ(以下、三時間言い訳)
さておき、ミサカ妹をビリビリと敵が取り合う構図がひっくり返り、ビリビリ-食蜂-木原の三軸だったことが判明。食蜂さんがめんどくさくデレたので、ビリビリ+食蜂-木原という二軸に変化しました。このひっくり返しは、ドリーちゃんのエピソードが鮮烈なのもあって、なかなかうまく行ったと思います。ドリーちゃんが美琴クローン・タイプ0だとすると、食蜂さんがミサカ妹に拘る理由もがっちりある。あれだけ強烈な能力を持っていると、学園の暗い部分に対抗する説得力もある。食蜂操祈というキャラクタの扱いは、非常に効果的にコントロールされていると思います。怒涛のように挿入された、あざといエピソードの数々も含めて。
「超電磁ガールズの記憶を奪う」という強烈なストレスも、じわじわひっくり返ってる現状を鑑みると巧いパンチだったなぁ、と。この漫画の気持ちいい部分である「ガールズの青春と絆」を断ち切ることで食蜂に反感を抱かせて8巻を終わらせ、9巻で食蜂の株を回復させつつガールズとの関係再構築を匂わせる。わりかし、作者の掌の上で感情を弄ばれ、非常に良い気持ちです。記憶を奪われようと美琴にすぐ惚れちゃう黒子に、運命的な何かを感じますね。
そんなこんなで、「お、なんとかなるんじゃねーの」と思ったところであのラストですよ。いやー、食蜂さんに向いていたヘイトが全て木原に向かうゲスっぷりもナイスですが、「なぜ敵はミサカネットワークを狙ったのか」「なぜ食蜂が出てきたのか」という読者の疑問を、上手く作劇的なケレン味に変換するオチで、これにも感心。なるほどなー、という感じです。渋滞をモーゼのごとく割れる、食蜂さんの強烈な能力が印象的だからこそ、それをハッキングする木原のラスボス感も高まりますね。超電磁砲は、ホント絵と展開での印象操作が巧いなぁ。
そんな感じで、絶望が希望へと転化しつつ、新たな窮地が襲いかかる九巻でありました。あ、KMJ先生がチョロチョロ登場判定に成功していましたね。彼は禁書世界のデウス・エキス・マキナであり、話をまとめる上で便利かつ重要な存在だとは思います。が、あんま出張りすぎても「これじゃ禁書じゃん、超電磁砲じゃないじゃん」と俺がなるので、うまーくスパイス的な立場で使ってほしい気持ち。嫌いじゃあないんだが。……ビリビリが喋れない状況だと食蜂さんが主役になるから、記憶喪失前のKMJと繋がりがあった設定が、本編でついたのかなぁ。