イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アニメ感想日記 14/12/13

Fate/UBW:第10話『五人目の契約者』
男も女も皆アチャ男に夢中になりつつ、キャスターのマスターのティーチャーのファイターこと葛木先生が思う存分好き勝手絶頂(エレクト)する回。
タフいだけで決定力に欠けていた士郎くんが、アーチャーのことを考え続けるよつば式水泳メソッドの結果覚醒し、投影魔術を使えるようになる回でもあった。
巻き込まれ型主人公から最前線型主人公への変化という意味では、あの戦闘って大きな分水嶺なのね。

今回最大の見所はやっぱり葛木先生の邪拳炸裂ダイナマイトであり、『サーヴァント>>超えられない壁>>人間』という図式を気持ちよくひっくり返すこの展開、やっぱ凄く良い。
今まで強敵相手に善戦し続けたセイバーがマジでベッコベコにされる衝撃、UBW最大の強みである超人チャンバラの切れ味、それを跳ね返す衛宮覚醒と、上がるしかない展開でした。
異形の格闘体系でありながら真っ当に強い感じに仕上げてくれていて、『そう! それ!!』と吠えたくなるような素晴らしい出来。
実はセイバーのダメージ表現が上手く、回りこんでの鉄槌で後頭部を、打ち下ろしで肩を壊される辺りの描写が秀逸でした。
やっぱプロレスの凄みはバンプにあるなぁ……。

今まで策士ブッていたキャス子が、思いの外ポンコツで隙のある女だというのが見えるのもこの辺り。
初見は九割くらい『オメー、エナジードレインのこと話してなかったのかよ』とツッコむよね。
その理由が『だって嫌われたくなかったし……』という辺り、俺やっぱキャス子好きやね。


一方主役サイドは、相変わらず主人公以外の男の夢を見る凛ちゃんさんが太腿をこれでもかとチラチラさせ、士郎はアーチャーが好き過ぎて覚醒した。
メインアタッカー・セイバーがフルボッコにされ、凛ちゃんさんはまるでメインヒロインのようにあっけなく気絶。
自分も死にかけたその瞬間「このまま死ぬと遠坂も死ぬのでNG」と立ち上がる士郎くんを、ナイス主人公と褒めるべきか、自分の命も勘定に入れろと怒るべきか、悩むべきではあるがやっぱ良いPC1だ。
アチャ男との関係を『瞼を閉じるとアイツの顔がちらつく……嫌いなはずなのに』と書いてみると、まるで少女漫画のツンデレ主人公みたいなのでやっぱ士郎はアチャ男の事好き過ぎ。

そんな士郎がだーい好きなワカメは、サーベルタイガーをネコと誤解して尻尾を踏み続けていた。
雁屋おじさんといい、君らの血脈は見えている地雷原に全力で飛び込む家業でも背負っているのかい?
キンピカさんは怪しげな迫力のある登場の仕方で、いいBOSSっぽさだと思いました。

これで柳洞寺組の手札がオープンになり、金ピカさんも動き出して、第五次聖杯戦争は新しい局面に入る。
やっぱ忍法帳式バトルロイヤルは、ぐるっとテーブルが回る瞬間のダイナミズムが面白いすな。
あ、来週は凛ちゃんさんはデートでヒロインポイント不足にテコを入れに来るそうなので、どんだけあざとい動きをするか今から楽しみです。

 

・プリパラ:第24話『さよなら、プリパラ』
校長編起承転結の転つーことで、抱え込んでいた過去が明らかになり、らぁらの共感で心がほぐれ、二十年前に失った愛を取り戻す展開。
大体の想定通り、校長はサウザー香織姫理事長並に愛を拗らせた元プリパラアイドルでした。
マスカレードといい神崎そなた&社長といい、女児アニの熟年元アイドルは愛情拗らせないと行けない法律でもあるんだろうか。

前回も校長はプリパラ見ておるわけですが、今回ほどは刺さらなかった。
それはやっぱ、過剰に思いいれて涙まで流してしまうらぁらの童心が校長に刺さったということであり、中学生部隊の覚めたリアクションと対比すると、そこら辺はよく見える。
小学五年生という年齢、プリパラで親友と出会ったという境遇、色々重なる部分もあるんでしょうが、他人の事情に過剰にいれこんで積極的に行動する、らぁらの良いところがそふぃの時同様いい方向に働いた感じ。
こういう主人公は僕はやっぱ好きです。

校長の事情をどう見せるかというのは、今まで暴君として振る舞ってきた校長を許せるか否かの分水嶺になるポイントであり、インパクトと叙情性が必要な所。
RLから引き続きなTRFの名曲を使用し、「20年で人間ってこんなに変わるんだ。つーか校長31か……」と思わせる気合の入った幼少期デザイン、重すぎて周囲ドン引きな思い入れと、欲しい所に欲しい要素をしっかり詰めた構成でした。
今まで苦しめられていたバリアがぶっ壊れる所と、ADリスペクトの篭った『若い世代のパフォーマンスで、年長者を苦しめる執着が溶けていく』展開を台詞抜きでやったのは、リリカルで非常に良かったです。
それと同時にルトヴィコ療法めいた強制視聴シーンとか、何の脈絡もねぇ山羊とかもやるのがプリパラなわけですけど。

話をまとめてくれそうなママに校長をトスして次回に引きましたが、クリスマスと合わせて綺麗に終われそうで安心であります。
あれだけ重い感情をプリパラと人妻に抱いていると、綺麗になった後すんごいプリパラプッシュを始めそうで今から怖いです。(まんこわ的感想)
2クール目ラストになる次回に、強い期待を抱ける良い話でした。

 

・四月は君の嘘:第10話『君といた景色』
『有馬公生、本来無一物』という回。
母の長い腕から助けてくれたのは徹頭徹尾かをりちゃんと出会い、過ごし、新しい何かを見つけてきた日々でしたという、椿ちゃんも絵見ちゃんも一切勝ち目ぇねなマジ! というお話でもあった。
有馬公生の演奏を鏡として、登場人物たちの人格・価値観・才能なんかも引っ張りだす、群像劇として優れたシーケンスだったと思います。

機械のような演奏、子供の悲鳴のような演奏、ただ素直に感情を載せかをりちゃんに届けた演奏。
三度変化した演奏というのはつまり、有馬公生のピアノ人生の歴編そのものであり、過去-現在-未来へと流れていく彼の人格そのものを、ピアノに乗せて弾いた、ということだと思います。
途中弛緩するのも、演奏を止めてしまうのも、そこから再び弾き直すのも、演奏それ自体がこれまで視聴者が見てきた公生くんの人生劇場そのもの、今まで見てきた映像そのものが覆い焼きになっている。
(映像だけではなく、今回で言うなら弛緩した音をしっかり出していた音の演技もとても良いと思います)

そういう演奏への評価はつまり、聞く人の心のなかの、人生の中の有馬公生の価値と同じなわけで、一般観客の戸惑いは非常に誠実な描写だと思う。
殆どの人にとって、有馬公生は人生にいない存在だからだ。
いない人の音楽は、どうでもいい音楽だ。


では、人生の中に有馬公生を埋め込まれてしまっている人たちはどうなのかといえば、これもこれまで示された彼との距離感に沿ったリアクションを、丁寧に返している。
『精密機械としての有馬公生』に価値を認める武士くんは焦燥と失望と、それでも消えない羨望を。
『かつて出会ってしまった、人生を捻じ曲げるほどの重力を持った有馬公生』を取り戻した絵見ちゃんは、恋心にも似た弾む心を。
鋭い感性を持つ人達は三度目の演奏とともにゴロンと飛び出した有馬公生を心臓に刻みつけ、椿ちゃんは哀しげに横を向いて、その演奏の中に自分がいないこと、有馬公生にとっての太陽が誰であるかを再確認する。
ホントこのアニメの椿ちゃんイジメは毎回完璧で、いい仕事しているなぁと思います。

そして、有馬公生をピアノの前にもう一度引っ張り出し、"今""此処"で弾いている彼を作ってしまったかをりちゃんにとっては、とても幸せで、もしかすると少し残酷な体験だったのかもな、と思った。
音楽で他者に自分を刻むことを求める彼女にとって、今回の有馬公生それ自体たる演奏は、音楽かかるべしという理想型であり、それと出会うことは死の超越に近い救いなんだろうと思う。
これに出会えないままあの若さで死んでしまうのと、死すら超越してしまうような演奏と衝突してしまうことのどちらが不幸なのかというのは凡人たる僕には悩みどころだけど、かをりちゃんは自身も演奏家であり天才であるので、迷いなく後者を選ぶのだろう。
とても大きなもの、優れているもの、人生を変えてしまうほど綺麗なものとの出会いはこのアニメの中で何度も描かれていて、天才に関する物語である以上それは絶対に幾度も語らなければいけないことだと思うわけだけど、巨大な出会いに飲み込まれず、己のより善き生に反映させていく強さを、このアニメの子供たちは持っている。
公生くんやかをりちゃん、武士くんや絵見ちゃんの姿がキラキラして爽やかなのは、それが理由の一つだと思う。


三度目の演奏で、公生くんはかをりちゃんの言葉を思い出し、それだけを縁に演奏の中に潜っていく。
それは恋人に縋るというよりもやはり、母に頼る姿に似ていた。
最後の最後で母の笑顔を幻視した公生くんにとって、やはりかをりちゃんとの関係の中に『失敗してしまった母親との人生』が重ねられているのは、間違いないと思う。
それは危ういように見えるけど、同時に公生くんは体と心の芯に近い部分でかをりちゃんを体感していて、『この人は母とは違う人だ』という当たり前だけど忘れがちな事実を、しっかり認識しているように思える。
ラストで絵見ちゃんの先生が言っていたように、有馬公生の人間化は始まったばかりなので、彼の恋がどういう形になるかもさっぱりわからないけどさ。

迷い、苦しみ、諦め、無様な姿をたっぷり晒して、そういう自分自身もそこに在るという、地平線のような有馬公生のステージが終わりました。
今までの蓄積を丁寧に、叙情的に使いきり、前半戦が終わるこのタイミングで理想的な回だったなと思えるエピソードでした。
太陽たる女の子と向かい合うことで、素裸の自分を肯定できた少年は一体何処に向かうのか。
今後の展開が、とても楽しみです。