イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アニメ感想日記 15/06/12

アイカツ!:第137話『ワクワク☆ユニットカップ
約二ヶ月間積み上げてきたユニット編、その集大成としてやってきたユニットカップ
アイカツでは珍しい回跨ぎでじっくり回す展開であり、今回は情熱ハラペーニョとあまふわ☆なでしこの二組がメイン。
2期のユニットカップはメイン以外一枚絵で省略されてたステージも、新曲投入したりで気合入ってました。
……まぁ曲もらった情ハラは、中間発表の段階で負けたけどね……。
情ハラは99%珠璃要素で構築されてるし、やっぱひなき不遇すぎね?(溢れる不満)

とは言うものの、メインで積んでいたのはSkipsのお話であり、師匠譲りの鬼スケジュールで届けられた衣装が波乱の原因になっていく流れ。
アイカツは結構勢い重視でバンバン進むのが特徴なので、今回のようにオーソドックスに因果を積んでいく構成は珍しい印象があります。
今回ステージに立った二組ではなく、Skipsにロングトスを上げている辺り、誰に重点したいのかよく見える流れでした。

あまふわのシャックリもそうなんですが、アイカツは明確な悪意というのを描かない(描けない)世界なので、襲い来る課題に重さをもたせるのが毎回難しいシナリオだと思います。
そう言うの担当っぽかったMr,Sも、気づけば存在を抹消されてたしね……。
今回もひなきが悪運ピタゴラスイッチを弾く結果になってたけど、そこには善意しかなくて、結果としてあかりちゃんに波が被る形にはなれど狙ってはいない。
このラインを守ることで優しい世界を維持しているわけで、アイカツの特徴が見えた流れだと思います。


学園長のテコ入れでぶっ込まれた楽屋レポートですが、スミレちゃんの落ち着いた回しっぷりが見えたのは、彼女の成長を感じられて良かったです。
あまふわのシャックリ騒動に関しては、衣装の取り違いを発生させるため世話しない状況を作り、ファンブル率を上げる仕事をしてたと思います。
こういう部分からも、今回の二部作がSkipsメインで仕上がってる構造が見えると思います。

後はペットボトルを咥え込むアイドルだとか、くすぐり攻めに合うアイドルだとか、似合わない可愛い衣装を相棒のために赤面しながら着る堅物薙刀小町アイドルだとか、迸る欲望が透けて見えてグッドでした。
俺も見たかったよ、AS着用のみやびちゃん。
そして『みやビーム』て……ロコドル業界を切り抜けていくためには、インパクトの有る挨拶は大事ってことですか。
それとも、みやびちゃんに恥ずかしい挨拶をさせて赤面させたかったってことですか!!
ユニット編のみやびちゃんの扱いは、判りすぎててヤベェ。

普段の二倍の尺があるせいか、ゆったりとしたテンポで話しのボールを回すエピソードになりました。
アイカツは狙いのハッキリしたしまった構成が魅力だと思いますが、こういうゆるっとした空気も嫌いではない。
今回のお膳立てをSkipsがどう使い、いまいち煮え切らない距離感にどういう変化があるのか。
来週を待ちたい所です。

 

俺物語!!:第10話『俺の山』
道を歩いているとハリウッドアクションが始まる系男子がピュアピュアな恋に突っ走るアニメ、今回は1話完結のコメディ。
ずっしりと話数使うエピソードの仕上がりも良いんですが、テンポ良く笑わせてくれるお話も粒が立っていて、色々楽しめるのがこのアニメの良い所。
今回も猛男のタフガイネタ、凛子の発情ネタで小気味良く楽しめる、いいお話でした。

普通遭難すれば最悪『グリザイアの果実』みてーな事になるんじゃ……とか心配するものですが、このアニメ猛男が逞しすぎて全くそういう気持ちにはならない。
むしろ溢れるパワフルさで障害をポイポイ弾き飛ばしていく姿を、見ている側も心待ちにしており、崖を疾走しイノシシを巴投げする猛男の筋力に、安心して笑うことが出来ました。
『ルートを確認する・明るいうちに移動する・食料は計画的に食べる』などなど、筋力だけではないクレバーなところが見えたのも、個人的には好きポイント。

そんな逞しすぎる猛男に凛子のハートはキュンキュンしっぱなしっていうか発情し過ぎであり、ピュアな猛男のすれ違いとも相まって、美味しい状況でした。
『天使なんだけど肉食系』という凛子のキャラは、動きと声が付きより強調されてる感じがして、いい切れ味出てると思います。
今回は凛子主観というか、顔も声もイケメンな猛男が多く出てきたので、自然凛子のキュンキュンハートとシンクロできる工夫がしてあるのも、細かい巧さかなと。
話しの始まりにモンシロチョウ、遭難編終わりに野鳥のつがいがそれぞれ出てくるのは、俺物語らしいイメージカットの使い方でした。

すれ違いで笑いを作るのは凛子友人チームの場面もそうで、耳年増な女子高生の暴走が、遭難という状況と捩れることで生まれる笑いは、良いスパイスになってました。
オサムと菜々子の交流が追加されていたのは、今後の展開への布石かな?
このように、シリーズ全体を見据えた追加がしっかり機能しているのも、いいアニメ化だなぁと毎回感心する所です。

ドタバタとテンション高く、しかし時々キュンキュンもして、楽しく笑うことのできるいいエピソードでした。
こういう粒の立ったお話が合間に挟まっているのは、とても贅沢だなぁと感じる。
今週の山に続いて来週は海ですが、二連続でデート回ということであり、凛子の心臓が持つか、いらん心配してしまいますな。

 

放課後のプレアデス:第10話『キラキラな夜』
放課後のプレアデス/ZERO! ッて感じの、みなと君の過去語りとすばるの真っ向勝負第一戦でした。
さすがに主人公、他のメンバーが1話でまとめていた所を分割し、一敗地に塗れるまでで一話使う構成。
みなと君のオリジンが丁寧に語られ、何者でもない自分を何者かとして観測しようとあがくすばるの姿も、丁寧に描かれていました。

今回話しの多くを使って語られたみなと君の真実は、観測と決断をメインテーマとしてきたこのアニメに相応しい、苦しいお話でした。
五人の魔女を引き合わせる希望になった多重世界が、死に直面したみなと君にとっては絶望の源泉になってしまっている皮肉は、彼が魔女たち以前にプレアデス星人と出会っていた、いわば魔女のプロトタイプであることを考えると、中々に面白い。
『墜落した宇宙船のパイロットと王子様』という取り合わせは、まんま『星の王子さま』ですね……あの話も、最終的に死別すんだよな……。

絶望により世界から消えようと願ったみなと君はしかし、考えれば考えるほど五人の魔女とよく似た存在です。
妖精のようなプレアデス星人と、素直な子供にだけ見える輝きを探す、秘密の冒険。
これまで魔女たちが行ってきたエンジン探しと、みなと君が失ってしまった冒険の日々は、その無邪気さからしても、その輝きからしても、とても良く似ている。

しかしみなと君はイカロスのように翼をもがれ、世界から消えようと願う角みなとくんと、静止した温室の中で死にながら生きる静止したみなと君に分割されてしまった。
五人の魔女はお互いの欠落を補ってくれる仲間(特にすばる)がいてくれましたが、病院という檻に閉じ込められ帰る場所もなかったみなと君は、落下した自分を支えてくれる仲間がいません。
異質知性であるプレアデス星人はあくまで不思議な妖精であり、人生の足元が崩れた時、自分の墜落を覚悟して手を伸ばしてはくれないというのは、残酷な真実だなと思います。
そこで手を伸ばしてくれなかったからこそ、みなと君はあれだけ仲良く過ごしていたエルナトを憎み、彼が欲するエンジンを奪うようになったのかもしれません。


思い返せば、シャフトの制御を失い墜落するシーンは、このアニメの中で幾度も繰り返されるモチーフです。
これまで見せられたのは魔女たちの墜落であり、それは仲間が支え再び上昇できることが前提の落下でした。
個別会で掘り下げられた四人の少女たちの内面も、自分への不信と失望に迷いつつも、仲間(特に主人公であるすばる)の助けによって再び浮き上がり、上昇する物語として語られています。
この上下運動は同時に時間軸的な運動でもあって、現在からいったん過去に下がり、思い出を肯定することで未来に浮上する力を手に入れる構造は、すべてのキャラクターに共通です。

これまで1話の中で行われたこの上下動が、今回は分割されて表現されています。
つまりみなと君が憎みつつも愛する過去が描写された所までで、今回のお話は終わってしまうわけです。
この世界から消えてしまいたいというみなと君の願いは、命をかけたすばるの説得によっても覆ることはなく、すばるは帰還してしまいます。
しかしそれは、これまでのこのアニメーションの構成を鑑みるのであれば、やはり上昇のための下降だと考えるべきでしょう。

そもそも、病院で機械に繋がれ、意識もないまま生きながらえている自分に絶望してしまうことも、逃れ得ない死の運命を別の可能性への飛躍という形で変化させようとするのも、一分の理もない悪というわけではありません。
みなと君の絶望は、無理からぬことかなと僕は受け取りました。
すばるの反応を見るだに、どう見ても自死を暗示しているみなと君の跳躍ですが、そこには無理からぬ絶望と、世界に規定されている形とは異なる生を、それこそ死んでも謳歌しようとする意思を感じるわけです。
それは、全否定されるべき意思ではないでしょう。


しかしながら、すばるが口にしていたように(そして僕もそう思うように)、みなと君が消えてしまう事実は、耐え難いほどに痛い。
その愛の悲しみと、みなと君が犯している事実誤認が、すばるがみなと君を引き止める足場になります。
魔法使いだけが保持できる、世界の外側での逢瀬の記憶。
すばるが魔女であることを知らないみなと君は、自分が孤独ではなく、誰かに愛されているのだという証が消滅してしまうことに絶望し、自死を望む自分自身と同一化します。

しかしかつてみなと君がそうしたように、夢と想像の翼を広げ、星の世界から来た妖精と冒険を繰り広げたすばるは、みなと君と同じ時間に生きることができる。
思い出を共有することができる。
それを証明するためには、魔女としての自分を捨て、二人の時間を共有してきたすばるを見せなければなりません。
それ故、あの場ですばるは魔女であることをやめたのです。

それは同時に、魔法を捨て妖精の見える時間が過ぎても、これまで過ごした時間とそこで観測された決意は消えはしないという、おそらくこれからすばるが行うであろう決意の先取りでもあります。
みなと君が指摘したように、そして第7話ですばる自身が口にしたように、すばるは魔法の時間が溶けないことを望んでいます。
星のエンジンが未来にしか進まないことが今回再度確認された以上、このお話はおそらく、魔法を捨てることで終わる。
その勇気を既に示したすばるは、ある意味勝利することが約束されているとも言えます。


しかし今回、すばるはみなと君に追い付くことなく、エンジンだけを抱えて地上に落ちてくる。
それはやはり、今回の物語があくまですばるとみなと君の物語であり、魔女たちとみなと君との物語ではなかったことが、大きな理由だと思います。
これまでの物語の中で、絶望の淵から仲間を引き上げてきた幼いすばるは、『自分は何も変わっていない』と呟いて今回終わる。
その時、かつて自分がそうしたように、世界を肯定する手助けをしてくれる友はまだ、隣にいてくれないのです。

みなと君がそうであったように、このお話において、絶望の淵は一人では這い上がれません。
ではすばるは一人で、このお話は絶望の淵に沈んだまま終わるのかといえば、当然勿論そんなわけはない。
これまでの彼女の物語を見守ってきた視聴者ならば、可能性を超えて集った仲間が彼女の回りにいるということは判っているはずです。
かつてすばるの幼い純真さと強い意志に助けられて、自身の過去を肯定できた少女たちが、今度はすばるを助けるということも。

そんな仲間の中でも、付き合いの長いあおいの特別さが、今回はこまめに強調されていました。
親友の純情がもてあそばれることに憤ったり、エンジン回収に湧く仲間の中で一人すばるの異変に気付いたり、あおいがすばるに向ける強い感情が、丁寧に描かれていたと思います。
無論他の三人もかけがいのない仲間なのですが、そこであえて関係性の濃淡を出してきた描写は、僕にとって心地よいものでした。


これまでの物語で使われた構成のリフレインと、これからの物語を予感させる要素を丁寧に組み込み、みなと君の孤独と絶望と希望と愛を描写したお話でした。
みなと君の内面に触れるということは、そこに踏み込んだ特別な少女であるすばるの描写とも切り離せないので、結果的に二人のお話になった感じでしょうか。

過去の病院で、閉ざされた温室で、成層圏を超えた宇宙で。
みなと君の閉ざされた運命を幾度もノックし、大きく開くすばるの強さと優しさ。
そんなすばるを愛しく思うみなと君の希望と、それが消えかかっている絶望。
全てが丁寧に確かに描かれていて、見ている側に強く刺さるエピソードでした。

さて、今回は二人の話でしたが、次回は六人の話になって、仲間の助けを得て二人は幸せになることでしょう。
僕はそう革新しています(何しろ昴は六連星ですから)し、そうするに足りる材料も、今回の映像の中にしっかり配置されています。
未来に走って行く自分たちを観測した時、魔女と妖精の物語がどういう変化を迎え、どう終わるのか。
期待を込めて待ちたいと思います。

 

・響けユーフォニアム:第10話『まっすぐトランペット』
『オーディションが終わったから府大会に向けて全力疾走!! だとでも思った? 残念、ゴミクズどもはそうそう簡単には変わらないんだなぁ……』というわけで、大方の予想通りリボンが思う存分ぶっこむ回。
高坂さんと久美子の変化した関係だとか、久美子のトラウマを救ったグッドルーザー中川だとか、吹奏楽マシーンではない人間味を見せた滝顧問であるとか、色々盛りだくさんではあるのだけれども、やはりリボン吉川の大暴走がメインですね。
死ぬと分かっていてソロオーディションを希望した香織の背中は、バーサーカーの足止めに向かうアーチャーくらい大きく見えました。

今回リボンの暴走が大きな波紋を広げたのは、一つには滝顧問の投入程度では中々変わらない凡俗なゴシップ集団・北宇治吹奏楽部の本質が関係しています。
『オーディションに不満がある』挙手には手を上げても、実力差が余りにも残酷な形で明らかになる『実際に再オーディションを受ける』挙手には手を上げない。
それはズルくて、卑怯で、他人ごとにわざわざ首を突っ込んで話を大きくする、僕達と同じ俗人の群れです。
そして、不快で見ていてイライラする彼らの姿をあえて切り捨てず、しっかり切り取ったのは、地面に足をつけて人間の性質と四ツ相撲を取ろうという、このアニメがずっと見せてきた創作への姿勢を再度見せています。
僕は、このアニメのそういうところもまた好きです。

そういうところがあるからこそ、独居して死地に向かう香織の尊さが際立つわけで。
無論、一番周りが見えている三年生として、事態がここまで進んでしまったのならこの形でしか収まらないという献身的な意識もあるでしょう。
しかし仮面で覆ったエゴイズムの塊たるあすかが指摘していたように、彼女は納得していない。
腐った北宇治で三年間吹奏楽を続け磨かれた才能故に、己の敗北を、再オーディションの結果をおそらく知りつつも、立ち上がる理由がある。
それは多分、高坂さんが『特別でありたい』意識と通底する、譲れないエゴイズムです。

どんなに人間関係の視野が広く、細かなケアを怠らない献身的な少女でも、彼女は演奏家であり、そこに強く賭ける思いがある。
高坂さんと同じように、『特別になりたい』という願いがあればこそ、彼女も高坂さんと同じように、ソロの練習を積み重ねているわけです。
それはエゴイスティックな行動であると同時に、そのエゴに一つの決着を付け、前に進むための決断でもあると思います。
敗北を予感しつつも負けるために挑まない覚悟も含めて、彼女の行動は凄く強くて、優しい。

そんな彼女だからこそ、吉川の幼いエゴを刺激し、とんでもない大暴投を決意させるほどの心酔を受けているのかもしれません。
結果だけ見れば、自分の首を斬るギロチンの紐を香織に握らせるような、とんでもなく残酷な行動ですが、納得できていないという意味では、彼女もまた香織と一緒です。
感情を先走らせた大馬鹿としか言えない彼女の行動はしかし、その思いの強さ、嘘のなさにおいて極めて純粋です。
それがどういうところに落ち着くかは、ギロチンが落ちてみなければ判別のつかないところですので、来週の再オーディションを待たなければいけないでしょう。
……香織は出来た人なので、深い傷を受けてなお吉川を受け止めてしまうんだろうなぁ……。


一方前回『才能の凶器性』に思い悩んだ久美子のお話は、三年前のトラウマ開示もひっくるめて、非常にスピーディかつ素直な形で、一つの終局にたどり着きました。
これは『才能の凶器性』で貫かれた中川先輩の、あまりにも爽やかな敗者ぶりが巧くまとめた所です。
自分の現状、負けに至った経緯、勝った相手の実力。
ひがむことも歪むこともなく全てを素直に受け入れ、戸惑う久美子に道を示す中川先輩の姿は、香織と同じように輝いている。
久美子が背負ったトラウマを、ブレが激しく不協和音が強いアバンでしっかり見せたのも、そこから久美子が開放させるカタルシスを強めていて良かったですね。

負かした相手とより良い関係を結び、未来に向かって歩き出した久美子に比べ、高坂さんの対決はまだ終わっていません。
『才能の凶器性』に怯える久美子に対して、高坂さんはむしろそれを当然と捉え、『実力で叩き潰す!』と戦意に燃えています。
特別な少女たち二人の態度の違いは無論、優劣ではなく差異を表しているのであって、中川先輩に受け止めてもらうことでポジティブな答えを見つけた久美子も、真正面からぶつかって厳しさの中で己を研ぎ澄まそうとする高坂さんも、どちらも『正解』なのでしょう。
これは素直に敗北を受け入れた中川先輩と、納得出来ない気持ちを抱えて立ち上がった香織との対比にも言えます。
そういう視点から見ると、『才能の凶器性』が生み出す波紋を『どーでもいい』と切り捨てたあすかは、他者の痛みに一切共感しない、3つ目の道を示しているのかもしれませんね。

他人の顔を見ない道を選んだあすかと違い、高坂さんは真正面から『特別であること』に向かい合おうとしています。
それは久美子が怯えるように恐ろしい道だし、高坂さんもまた不安はある。
だからこそ、あの特別な夜を経て特別な存在になった久美子に話しかけ、不安を共有しようとするわけです。
急に抱きつくのは間合い近すぎだと思いますが、まぁ友達いなかったし久美子も満更じゃねぇしな。

そして、それを切り捨ててしまっているあすかは、少なからず近い位置にいる香織にもはるかにも、心を見せようとはしない。
そこを曲がりなりともすくい取ってるのが、主人公たる久美子だというのはなかなか面白いところですが、久美子本人も言うように『どーでもいいという言葉が、本音なのか建前なのかは判別がつかない』というのが、今の二人の距離です。
高坂さんとの距離を詰めたように、あすかの孤独に踏み入っていく展開も予感はされますが、それをやるには時間がないなこりゃ……。


今回部内に起こった波紋は、無論リボンの暴走が主因ではあるのですが、同時に滝顧問の問題でもあります。
過剰な正しさで北宇治をここまで引っ張ってきた滝顧問ですが、葵ちゃんをはじめとする正しくなれない存在は切り捨てられるし、普通の人は彼がもっている過剰な正しさを、全面的に支持できない。
結果、今回の不和となったのだと思います。

正しくない北宇治、部長が真剣に話している時にどうでもいい繰り言をほざく北宇治、勝手に毛布剥がして体操ごっこする北宇治。
今回描写されていたのは、滝顧問という劇薬の投入によって変化してもなお残る北宇治吹奏楽部(というより大多数の人間)のカルマであり、それを許容しきれない不器用な滝顧問の性根でもあります。
そこには、30代で大集団を率い、様々な問題に苦心する等身大の人間の姿がある。
そしてそれは、『なんです、これ?』と怜悧に問いただしていた序盤の滝顧問よりも、好きになれる描写です。
序盤機械のように描かれていた滝顧問が、高坂さんのLOVEを受けるような人間であるとここに来て描写され、サバけた態度で一年生を導いてきたあすかの地金が、冷たく寂しいものであると分かってきた逆転現象は、とても面白いと思いますね。


久美子と中川先輩、高坂さんと香織。
二組の勝者と敗者を軸に、『特別な存在として選ばれること』に対しどういう姿勢で望むのか、様々な人の対応が見える回となりました。
一つの波乱を様々な人物を通して描写していくことで、彼らのもっている価値観、その多様性も見えてくるというのは、群像劇としてとても立派な造りだと思います。

そして、その価値観は時にぶつかり合い、時に認め合う。
前半で融和を描いた今回、部内に、そして高坂さんと香織の間に起こった対立は未だ解決していません。
公開オーディションがどのような結末を迎えるのか、とても楽しみです。