イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

NORN9 ノルン+ノネット:第8話『世界』感想

ラブとかコメとかやってる場合じゃねぇー!! 爆発と暴力が炸裂する世界に飛び込むノルノネ第8話、急展開の風雲急でございます。
これまでチラチラと中身を見せつつ伏せていた秘密のカードを、ノルンの外側に全員出る展開に合わせて一気にひっくり返す回でした。
これがいきなり来ると当惑するわけですが、『このアニメ色々あるよ! 対ショック姿勢宜しくね!!』というサインはこれまでも巧く織り交ぜてきたので、結構すんなり入る感じでしたね。

今回のお話が転換点足りえてるのは、勿論伏せ札を沢山オープンにする謎解きのカタルシスもあるんですが、美琴を夏彦さんと接触させ、それを追いかけて全員ノルンから飛び出したことによる開放感も、大きく関係している気がします。
これまでのお話は、超技術によって地上から浮かび上がり、特別な少年少女を隔離した機械の子宮で展開していたわけですが、『リセット』という人類皆殺し計画が公開され、少年たちが選択者としての重責を背負う以上、そこに閉じこもってばかりもいられない。
ここら辺の開放感はノルン内部を綺麗に、心地よく、しかしどこかフワフワと危うい世界として完成度高く演出してきた、これまでの抑圧が巧く効いているポイントでしょう。

開放のショックを一番に受けるのは美琴でして、ノルンの外側でタフに生きてきた夏彦さんのナイスアシストもあって、戸惑いつつも真実を受け入れていました。
ここでノルン時代に逃げ込むのではなく、真実を高速で咀嚼して自分に出来ることを考え始める辺り、さすが黒髪ロングストレートって感じだ。
自衛のためとはいえ、結界能力を攻撃に使ってバッチリ人殺ししてるしな……あの震電の親戚みたいな飛行機、まさか自動操縦の無人機ってこたぁないだろう。
選ばれた子どもとして『リセット』に同意すれば、それを遥かに超える大量殺戮者になるわけだけど……まぁノルンに乗る前は結構薄暗い人生送ってた子が多いから、殺人自体にはそこまで悩まないのかなぁ。

美琴のアクティブな主人公力に比べ、今までどおりフワーッと行動し、悪いおじさんに誑かされて戦車を中の人ごと丸焼きにしたこはるの芯のなさは、見ていて気持ちいいくらいだった。
お前駆くんとの幸せライフで、ただでさえない脳みそのシワ蕩け過ぎだろ……人が死んでんねんで……(多分)。
オレンジ謹製のイカすエフェクトが大活躍して、『ああ、間違いなく最強だわ。全てを焼きつくす災厄の枝だわ』と無条件に納得できる能力暴走シーンになっていたのは、このアニメのそういうところが好きな自分としては嬉しい限りです。
こはるのポワッとした雰囲気と、人間の丸焼きしか作れない能力のギャップが気になっていた身とすると、今回の暴走は掘り下げて欲しい所ではあるんだが。
囚われの洗脳ヒロインを正気に戻すであろう、駆くんのアツいロールプレイに期待がかかるね。

青ノルンことニンジャはすさまじいワザマエを披露し、男たちに『アイエエエ!』というNRS叫びを発生させていた。
男衆がウロウロ狼狽える中で、論理的に結界の確認手段を思いついて、凄まじい投擲技術で実際に確認して今後の方針を打ち立てる辺り、頼りになる主人公だ。
ヒロイン二人がノルン組にいないという異常状況なので、残された唯一のナオンとして七海ちゃんには頑張っていただきたい……しかし、スゲースリケン・ジツだったな。
こういうスパルタンな女の子を主人公として配置するのは、凄く攻めてるしイカすと思います。


美琴のドッグファイトもそうなんだけど、ヒロインたちの殺人描写は全て戦車/戦闘機という機械しか写さず、殺される側の声も一切拾わないという、徹底したプロテクトがかけられています。
ここまでキッチリしてると狙ってやってるところだと思うのだけど、それが殺傷の倫理は話の本筋には関係ないからマスクを掛けた結果なのか、はたまたノルンに乗らない凡人たちには価値が無いから描写しないのか、どっちの意識でやってるのかは気になる所です。
『あの戦争機械には人は乗っていません! 不思議パワーで超強化された、オーバーテクノロジー無人機です! ヒロインは汚れない!!』という展開も、捨てきれはしないけどさ。

ノルンという鋼鉄の子宮に若人を集めている以上、このお話が『選ばれる』特権と快楽を軸に据えているのはわかるし、『リセット』の鍵がたった12人の少年少女に委ねられるという不均衡もその一環でしょう。
しかし、たとえ『恋愛ゲーム』『能力モノ』『閉鎖空間モノ』というジャンルが殺人まで含めた特権を許可しても、こうしてノルンの外側に話を広げた以上、そこで暮らす攻略対象でも何でもない、どーでもいい人たちにある程度以上の敬意を見たくなる。
最初からそういう人たちを舞台装置として切り捨てるなら、『リセット』の設定もいらないし、ノルン内部で物語が完結するクローズドサークル・ミステリとしてやるべきだと思います。
世界を広げ、カメラにどーでもいい人たちを写した以上、その人達は少年少女の恋愛の添え物であると同時に、作品世界の中で生き延びようとする、ある程度の『人間』になる。
今回の綺麗な殺人をどう処理するかってのは、個人的にこの作品への信頼に直結する、大事な描写だと思います。
別に殺すなと言ってるわけでも、それを主題にしろって言うわけでもなく、大事な問題だと思うので目配せをしてほしいなという部分なのだ。

少人数の閉じた関係性が拡大し、無関係な外界の命運それ自体を左右してしまうという『リセット』の設定は、いわゆる『セカイ系』の展開だとも言えますし、そういうジャンルは往々にして『選ばれなかった』存在の尊厳を歯牙にもかけない事で、作品としてのシャープさをある意味で確保していたりもします。
しかし『セカイ系ってこういうもんだから』『乙女ゲーってそういうもんだから』というジャンルの定形に甘えず、綺麗なお船にも乗らないし、素敵な恋愛もしないどーでもいい人の尊厳を、巧くすくい取ってくれると、より自分の好みには合います。
まぁ軸が恋愛とミステリと能力である以上、真ん中に据えて描写されることはないんでしょうが、都合よく無視はしてほしくないポイントですね。
ここすっ飛ばすと、話の大きなキモである『リセット』の決断自身も薄っぺらくなって、作品全体が空中浮遊しだす気がすんだよなぁ……。

ノルンの外側にいる夏彦さんは『選ばれなかった』存在の代弁者でもあるわけで、せっかく生まれた美琴とじっくり喋れれるセッティングを活かし、どーでもいい人の尊厳を練り込めて欲しいところです。
美琴のリアクションが真摯で真っ直ぐなので、ここら辺は結構上手くできている気もするけどね。
夏彦さんとの交流で変わった部分を、ノルンに戻った後どう他のキャラクターに伝えるかが大事かなぁ……。


大量に公開された謎の方は大体予想通りというか、これまでのヒント出しが的確だったというか。
時間関係のトリックがリセット&ループではなく、人類皆殺しからの歴史の積み重ねをやり直す方向だったのは、気持ちよく外された部分かな。
あのショタ国会議事堂からいきなり転移してきたけど、時間は連続しているわけで、どういうトリックで拉致ってきたのかは気になるな。

『リセット』の実態、ノルンに子供たちが集められた理由は公開されたんだけど、実は『リセット』が行われる理由それ自体はしっかり説明されていない。
神様気取りで『人間のカルマは救いがたい……再び破壊を行わなければならんのか……』とかいう寝言そのまんまなのかもしれんが、そこら辺は青いネーチャン改めアイネあらためアイオーンが、さらなる情報を公開してくるタイミングを待とう。
グノーシスの超ろくでもない神的概念である『アイオーン』をわざと読み間違え、ドイツ語の女性格不定冠詞である『アイネ』として愛音を認識している辺り、空汰は『世界』管理ロボットとしてではなく、一ヒロインとしてアイオーンを攻略する立場なのだろうなぁ……。
お前攻略対象外なんじゃなくて、ルート固定のソロ恋愛戦士だったのか……しかも相手人外で自分ショタ。
やりおるわマジ。

世界情勢の方もだいたい以前推測していたとおりだったけど、夏彦さんの史狼絶対殺すマンっぷりは意外だった。
ここら辺の裏事情は『史狼がなぜ戦争を望むのか』というミステリが表にならないと読み切れないけど、まぁ超ろくでもないオーラムンムンだよね……。
こはるのことを思って行動してるなら、スーパーフレアで戦車ボーボー炙らせる必要、一切ないもんな。
コイツも『人間の本質は闘争にあり! 押さえつけるやり口では可能性が死ぬだけだ!! 戦争やっても人たくさん死ぬけどね!!!』という、『てめーとっとと"アカツキ電光戦記"に帰れよ! 現人神気取りか!!』という行動理念だったらどうしよう……それならそれで、主人公達が寝言をぶっ飛ばし、ちゃんと生き様を表現すればいいだけか。

夏彦さんと駆くんというメイン攻略対象二人が、史狼への因縁で繋がっている上に、駆くんの恋人は史狼に握られてる状態。
これを足場に夏彦班とノルン班の合流は結構上手く行きそうだし、そもそもいきなり『お前ら恋愛キャンプ楽しんだみたいだけど、この後人類皆殺しにするか田舎の決断してもらうから、マジでマジで』とか言い出したアイオーンに、ノルン班はドン引き。
この動揺に夏彦さんは良い薬になると思うんだけど、なにぶんテロリストだからな……先行してコミュニケーションを取った美琴ちゃんの、高い黒髪ロングストレート力で話がまとまることを期待。


そんなこんなで、場所的にも心情的にもメンツ的にも、ぐるっと話が展開するエピソードでした。
世界がひっくり返る話ではあるんだけど、同時にここ二たどり着くためにヒントを出し、謎を公開し、丁寧に道筋を整えてきたので、置いてけぼりにされた感じはないです。
むしろ閉鎖空間でのDOKIDOKI☆恋愛絵巻からすけて見えていた、相当にろくでもない世界の真実が主人公達と噛み合い始めて、話が本来のスピードを手に入れた感覚すら覚えます。

のんきにヌルいラブコメとかやってた時代が懐かしい、『リセット』という重たい選択を、キャラクターはどう受け止め行動するのか。
健気に行動してるのにあんま実を結ばない朔也を尻目に、夏彦さんと順調に絆を育む美琴は一体どこに落ち着くのか。
悪い親父に拐かされた天然爆弾ヒロインを、駆くんはどう助けだすのか。
ニンジャは最高にクールな忍者アクションを、もう一度見せてくれるのか。
ノルン+ノネット、いやはやますます楽しくなってきてぞぉ。