バンドリを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月24日
最終話ということで非常にドラマチックな展開が!…起こることはなく、ポピパの終業式と初ライブハウス、スペースのラストライブを横幅広く、情感たっぷりに、腰を落として丁寧に描くお話だった。
ガールズバンドの三ヶ月。自分たちの描いたものを信じた、バンドリらしい最終回だ。
しかし派手な起伏を作らないからといって、この最終回が心を揺すぶらないわけではない。バンドリがバンドリらしく終わってくれたことに、感謝と満足の気持ちは強く、しみじみと『いい最終回、良いアニメだった』と、胸を張って言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月24日
そういう最終話に辿り着けたのは、幸運で幸福なのではないか。
メインで切り取っているのはもちろんポピパで、初ライブへの期待と不安を胸に、いつもの様に笑って、トンチキな間合いで会話する姿がたっぷり詰め込まれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月24日
本番前に何故か歯磨きをするシーンが挟まるところが、凄くバンドリでポピパだなぁと思った。
アニメ的素描ともいうべき抑圧の利いた筆致でライブ前の時間を切り取っていく中で、仕草の一つ一つが過去と響いていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月24日
見知らぬバンドのエールを受け取れるようになった有咲。「バンド、ずっとやりたかった」と口火を切る沙綾。泣き笑い色々あった彼女たちの日々が、素朴な描画の中に込もっている。
ポピパに注力しつつ横幅の広い描写もバンドリらしくて、グリッターグリーンにもチスパにも(ライブシーンの描画はないけども)新曲があって、ないがしろにはされない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月24日
運命の交錯点ですれ違ったとしても、ポピパだけがバンドじゃない。それぞれの少女たちに、それぞれの物語と歌がある。
そういう尊重の意思が行き届いているので、客席はよく映るし、いつも元気な香澄の変調に気づき、エールをあげる役はあっちゃんがやる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月24日
身近だからウザったくて、でも愛していて。親しい距離感だからこそ見つけられる変化、かけられる言葉をちゃんと仕上げてくれたことが、凄く嬉しかった。
色んな人と触れ合いながら、第1話で出会ったステージに三ヶ月でたどり着いた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月24日
バンドリの1クールが追いかけたのは、そういう小さな話だ。でも、そこで出会った人たち、バンドという表現、ライブハウスという居場所は、見せかけよりも豊かで大きかった。沢山のものがあった。
だから今回、色んな人が集って、『バンド』で一つの時間と場所を共有できる最終回になったのは、嘘がないと思う。バンドリはそういう物を、自分たちらしい語り口で、ちゃんと語ってきたからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月24日
過去のキャラクター、見知らぬキャラクター。色々出るのは、最終話の『形』を整えるためではない。
バンドリが嘘をつかない証拠としては、ポピパがスペース閉店にそこまでナイーブにならない描写がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月24日
彼女たちの目にあるのは、太陽に向かって背伸びするひまわりのように、初めてのライブとこれからのライブに瞳を輝かせ、心臓を弾ませる思いだ。出会いの喜びから始まって、変化への期待で終わる。
それは香澄が連れてきた景色であり、香澄が四人に引っ張られてたどり着いた夢でもある。バンドがバンドであることの、一つの喜びの形。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月24日
だからポピパは『またライブします!』で終わる。ここはゴールではなく、スタートであり途中経過だ。緑色の夢の先には、まだまだ別の景色が続いている。
これに対し、香澄をバンドの魔法にかけたグリッターグリーンは終わりを嘆く。物語の始まりからバンドであり、今後ポピパが誰かにかけるだろう夢の魔法を香澄にかけた彼女たちにとって、スペースは魔法のお城であり、思い出の全てだからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月24日
過去と未来、二つのバンドが交錯することで立体感が生まれる
それでも、グリグリも舞台に立ち、立派に演奏し、ポピパの演奏を我がことのように喜ぶ。彼女たちもまた、立ち止まりはしない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月24日
当たり前の青春を描いてきた物語は、当たり前の一日、当たり前の終わりを明日に続く形で描いて、終わっていく。そういうのは、僕はとても良いと思うし、好きだ。
では、これで店を閉めるオーナーにとって、これは終わりなのだろうか?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月24日
当然、そうではない。スペースが閉じられても、居場所は誰かが作る。
長い道のりに傷んだ足を引きずっても、オーナーは前に進む。魔法のお城最後の輝きの中で演奏する少女たちを見守り、拍手する。
それは今まさに輝き、可能性に向けて漕ぎ出していく少女たちへのエールであると同時に、ここまで歩いてきた自分への賛歌なのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月24日
数多のバンド達に問うてきただろう『やりきったかい?』という問いに、ステージに上る資格に、彼女自身も胸を張ってイエスと応えられるのだろう。
白髪のオーナーは、当然少女ではない。自分でステージに立たないし、未来に歩いていく足も弱っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月24日
だが、輝くための資格はそこにはないのだ。オーナーが厳しさと優しさを持ってスペースを運営し、バンドと音楽を愛し、少女たちを舞台へ送り続けたこと。最終回で丁寧に締めくくられた歩み。
それは舞台の上で実際に演奏する主役たちと並ぶくらいに、勝ちと意味と尊厳のある輝きなのだ。スペースとオーナーの描写に使った尺が、そのことをしっかり証明している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月24日
ゆっくり歩きながら小さなことを描くこのアニメは、ロックの魔法をかけてくれる魔女もまた、脇役などではないと語りきったのだ。
このアニメはへんてこなアニメだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月24日
主役はエンジンかけすぎのパンクスだし、会話の間合いは妙ちきりんだし、他のメンバーもトンチキばっかだし、派手な勝負は起きないし、魔法みたいにバンドが上手くなるわけじゃないし、閉店も撤回できない。
独自の言語で流行りのジャンルに飛び込む作品だった
その独自性が時折棘となって、お話を飲み込む邪魔をしたこともあった。香澄が身勝手すぎるなとか、有咲が踏みにじられてるなとか、感じることもあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月24日
しかし終わってみると、全ては選び取られた語り口であり、その結果掴み取れたものが沢山有るのだなと、強く思えるようになった。
それは無論、このお話、この世界自体が好きになってしまっている、一種の『あばたもえくぼ』ではあると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月24日
もはや僕にとって『バンドリらしい』とは良いこととイコールで、このアニメの独自性は全面的に皇帝したくなるものだからだ。ファンの意見は、大概参考にはならない。
しかしそれを踏まえた上で、バンドリのゆったりとした歩み、小さなスケールだけが切り取れたものが、確かに沢山有ると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月24日
強さも弱さもある女の子が、出会って、弾いて、ぶつかって、何かを手に入れて更に進む。そこに体温を宿すことは、この語り口でなければできなかったと思う。
香澄の無遠慮な突進力が四人を引っ張ったことも、その視野の狭さが彼女自身を傷つけることも、ちゃんとお話の中で切り取られた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月24日
有咲が蔵から出て、友達の友達と気まずい関係になって、だんだん字が出てきてみんなに愛されるようになる過程も、丁寧に積み重ねられた。
バンドという場所、ロックンロールという音楽に何が出来るのかを切り取りつつ、そこにある喜びを様々な形で輝かせることにも成功していた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月24日
みんなで笑って、弾いて、食べて、当たり前の10代でいることの尊さと光が、色んな場所で瞬いていた。小さいからこそ、その輝きには質量があった。
手の触れられる距離にあるような幻想すら抱く、ポピパと、ポピパに関わった人々の物語は、一旦これで幕を閉じる。それは小さな、小さな物語だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月24日
小さな物語であることを己に任じ、それに相応しいペースと語り口で13話を走りきったこのアニメのことが、僕は好きだ。とても良いアニメだと思う。
まだまだ途中の、当たり前の小さな物語が開けた穴からは、なんだか広くて大きなものが見える気がする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月24日
それは己の身の丈をストイックに認識し続け、それに相応しい語法を探し続けてきたからこそ突破可能な、バンドリらしい風景だ。そういうものを見せてくれたことを、僕はありがたく思った。
周回遅れで始まったトンチキな女の子ばっかりのバンドアニメは、立派に自分たちの物語を語って、終わると同時に広がって幕を下ろした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年4月24日
何度もいうが、それはバンドリだけが獲得した、バンドリだけの詩の余韻だ。そういうものを感じられるアニメは、善良なアニメだと思う。
ありがとうございました。