3月のライオンを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月21日
先週は盤面から離れた零くんを描いたので、今回はみっしりと将棋を通じた人間関係を。二海堂とのイチャコラ、盤で打ち合う純粋さ、そこから離れた大混沌。
零くんに見えているもの、見えないものを色々盛り込んだ、感情の万華鏡回。色々あって、キラキラしてた。
先週モニター越しだった宗谷-熊倉戦は少し近くなり、科学室とは別種の感情が零くんに近づいてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月21日
二海堂の騒がしい親しさから始まって、野次馬の煽り、後藤の尖った情熱へ。極限で打ってる者同士理解できることもあれば、サッパリわからないこともある。分かってる人もいるし、分からない子もいる
『零くんの人間模様』とは書いたが、今回の話は対局観戦室にカメラを据えて色んな人の出入りを捕えつつ、そこに根を張った(張ってしまった)零くんから離れ、彼が知り得ないものを描写して終わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月21日
彼の視界に映っている、盤面の熱い混沌と、人間模様の冷たい混沌とは別種の世界が、部屋の外に広がる
一番純粋なのは勝負の領域だ。熊倉も宗谷も、声を荒げる事なく自分のすべてを指に乗せて、駒を進めていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月21日
子供のようにやかましく、零くんにウザ絡みする二海堂も同じだろう。ピュアで危なっかしくて、やかましくて元気なレイヤ。先週零くんが暗くなるまで遊んだ、科学室に似ている景色。
そこを離れると、やっかみ渦を巻く対局室がある。髪は関係ェねぇだろ! って感じだが、皆がみんなピュアになれるわけでもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月21日
当たり前の愚痴に飲み込まれてしまった小人を、この作品は軽蔑しつつ描くけども、そういう要素は人間全員にある。壁蹴っ飛ばした熊倉さんの劇場も、至らぬ人の未熟である
零くんは可愛い香子をいじめる後藤をずーっと睨みつけているが、後藤さんは歯牙にもかけない。気になっているのは盤面と妻、後ちょっとだけ香子。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月21日
後藤さんの視界からは、零くんは島田さんを煽っていた小人たちと同じ存在に見えるのかもしれない。くだらねーエゴに支配された、くだらねー人間。
将棋はそんな塵芥のしがらみを全部飲み込み、厳密な勝ち負けのルールで洗い流す。『17手』という柳原の言葉を受けて、即座に検討できる零くんも二海堂も、ただの子供ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月21日
盤面が持っている純化力、人間の全てを試されてしまうキツさに向かい合う資格と強さを持った、人間以上でもある。
無論盤面に向かってた当人も、感情メラメラの凡俗だ。熊倉キックは求道者めいた顔を一気に剥がす、良い演出だと思う。スミスとかもそっちばっか見てる中、大破壊行為を聞いて大笑いした柳原さんは、ちょっとホッとしたのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月21日
熊倉が将棋マシーンにならず、人間のまま盤に向かってる、と。
そんな風に、熱量のある感情の泥と、凍りついた冷厳を両立させて、棋士(というか人間)は盤に向かっている。それは渦を巻いてうねり、混ざり合い、あるいは溶け合わないで個別に存在する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月21日
その混沌の様々な顔が、おそらく退出した凡愚すらも、人間の一真実なのだろう。
混沌には、目鼻をつければ死んでしまう。知ってしまえば憎めない事情を、零くんは知らないまま後藤さんを睨みつけている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月21日
視聴者は特権的に零くん個人の視座を離れ、香子と後藤さんの関係に分け入っていく。一期では一方的な暴力と不倫関係に見えたそれは、存外プラトニックで混沌としている。
零くんが言った『家族を大事にしないやつはクズだ』は後藤さんには核地雷で、意識不明の奥さんを心を削りながら介護し、将棋も指してる彼には看過できないガキの寝言だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月21日
だから殴った。熊倉さんと同じく、クールな仮面を引っぺがすだけの激情を、家族と愛情絡みの話題は後藤さんに持ってくるわけだ。
一人で闘うには辛すぎる妻の病。女として香子を抱かないまま、縛り付けてすがる後藤さんはズルい。しかしそのズルさを香子は利用してもいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月21日
死にかけの妻を間に挟んだ、男と少女の共犯関係。目鼻を付けるには痛すぎる混沌が、病室と私室の間に横たわっている。
関係に正しい目鼻を付けないことで、後藤さんと香子の距離は保たれている。抱かず、殴らず、適度に傷つけながら、お互いの必要なものを利己的に奪い、そこを飛び越えて魂が擦れ合う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月21日
なんとも名状しがたい在り方だけど、それが無ければ香子も後藤さんも立ってはいられない。綺麗なだけでは生きれない
零くんはそういうものから遠いし、自発的に遠ざかってるガラスの十代でもある。二海堂と純粋にキャフフし、野口先輩の広い懐で遊ばせてもらっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月21日
そんな子供には見えない、色合いの深い夜が対局室の外には広がっている。後藤さんはそういう場所と繋がって、零くんと同じように一人で将棋を打つ。
ドロドロした混沌を抱えつつも、後藤さんの将棋への姿勢はストイックだ。そこは零くんと通じる部分で、二人は打ってしまえばややこしい事情を飛び越え、理解し合えるのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月21日
それだと話が終わっちゃうので、なかなかその瞬間は来ないのだが。ああ、待ち遠しい。
香子の岡惚れを前に、後藤さんは大人しく/大人らしくため息を付いて距離を取る。オヤジへの当て付けで付きまとってくるクソガキだが、役には立つし柔らかくもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月21日
離れても近づいても破綻してしまう関係を、後藤さんは持ち前の優しさで維持してしまう。それは奥さんを活かしているのと同じ心持ちだ
超やかましい二海堂から入って空気が冷え、対局の冷厳さを描いてからカメラを引いて、後藤さんのズルさとプラトニック、香子のロマンチック浮かれモードを暴露する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月21日
はしゃいでる子供という意味で、二海堂と香子は等価な存在で、でも病や情を体内に抱え込んで、ただ無邪気というわけじゃない。
それぞれの年齢や立場、人生経験や視野の広さから、見えるものは自ずと限られる。ルールが明瞭な将棋盤では、正着を打てば結果はついてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月21日
そこを離れた人生では、そも盤面がどこにあるかもわからないまま、目隠しで愚かな一手を打つのみ。それは案外綺麗で愛おしいもんだと、今回言われた気がする
そして将棋盤と人生の激情は、密接に繋がってもいる。理と情は相反せず、お互いを引きずりながら渦を巻く。色んな感情、色んな関係があるし、あって良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月21日
とりあえず、今盤面に絡む人々はこういう世界にいて、これが見えててこれが見せませんよと、キャラクターと状況をスケッチする回であった。
香子が盤面から完全に引き剥がされていて、零くんが全人生を描けて働く場所に入る資格が無いことも、ひっそり示されていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月21日
アニメの香子まじ可愛いのに、こっから後藤さんと一緒にフェードオフ気味だもなぁ…最新刊で物分りよく自分のクエスト一人で終わらせてたけども、なんともかんとも。
当初の設計図から大きく離れ、物語を別の局面に持っていく爆弾が、そろそろ破裂する。今回は傍観者でしかなかった人生劇場の別の側面、混沌の残酷な刃と、零くんは自分なりに闘う瞬間が来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月21日
その時零くんは、奥さんの手を清める後藤さんのように、タフにやれるのか。その前景ともなるエピソードか。
無論、零くんは後藤さんのタフさなんて見てもいないし、その裏の事情もずっと知らないし、姉を取ってったクソ大人なんて見本にしたくないと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月21日
だけど、同じ混沌(それが盤上にせよ、盤外にせよ)に立ち向かう戦士として、二人の姿は妙にシンクロしてくる。後藤さんは零くんの、不在の父なのだろう
『混沌』のサブタイトルにふさわしく、演出のトーン、技法的にも様々なものが駆使され、温度と色調の上がり下がり激しい回だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月21日
こういうゴチャゴチャした話を1エピソードに仕上げる技法は、やっぱシャフトのアバンギャルドさに支えられてる気がする。作風と戯作の、相性いいんだろうな。
目鼻の付かない混沌は、まだまだ続く。色んな人、色んな思い、色んな視界で埋め尽くされて、わかり合うこともできれば、すれ違うこともある万色の檻の中で、零くんとその他の人々は生きていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月21日
綺麗なものも、汚く思えるものも取り込んで進む物語は、また別の角度から万華鏡を写すだろう。楽しみだ。