BANANA FISHを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
悪しき陰謀が、少年を檻に閉じ込める。監獄という特殊環境下で果たされる、思わぬ出会い。あらゆる場所でアッシュを苛む暴力が、彼を不信に誘う。
そんな彼が唯一、唇に希望を載せて託す相手。英二もまた、チャイナタウンの闇へと誘われ、あるいは己の意思で進んでいく。
というわけで、サックサック状況が進むBANANA FISHアニメである。シーンの取捨選択がいいのか、ナイーブな感情とスムーズな進行を両立させて、状況が様々に転がっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
アッシュと顔も見えない巨大な存在”バナナ・フィッシュ”の戦いだけでなく、頭が切れすぎるオーサー、罪に悩むマックスも動く。
話の中心軸はやはりアッシュにあり、彼の張り詰めた暴力性、強かさ、柔らかな感情が幾重にも積まれていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
平田ボイスが人の良さをにじませるマックスにも、アッシュは心を許さない。大人はみんな敵、自分を押さえつけ、強姦する獣だと警戒しているようだ。
実際、マックスも人の良い笑顔の奥に罪を隠している。アッシュの無垢なる誘惑に引きずり出されるように、押し倒し首を絞めるマックスは、過去と罪と向き合えない弱さを抱えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
アッシュを玩弄する企みを、毅然と拒絶した彼ですらそうなのだ。世界は罪にまみれている。
そんな世界に殺されず、自分なりの正義を貫くために、アッシュは頑なに心を隠し、あるいはセックスを使う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
強姦されてなおサラッとした表情なのは、生来のタフさというよりは獲得した鈍感さ、分厚くなった鎧を思わせる。そういう世界で生き延びるには、汚れに慣れるしかなかった少年の悲哀。
距離を起き、境界線を引き、自分を守る。出された餌を食わず、地面に投げ捨てる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
アッシュは”バナナ・フィッシュ”を内包した悪なる世界に染まらないよう、必死の抵抗を続けている。その一環として、性的な仕草を乗りこなすタフさがある。
© 吉田秋生・小学館/Project BANANA FISH pic.twitter.com/SprIgvwU05
食事を粗末にする。あるいは性的暴行を受けてなお、なんでもないように振る舞う。人間の最も原始的な要素を画面に乗せることで、アッシュの警戒と拒絶もまた、根源的であると示す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
そんな彼の姿が強調されるから、唯一願いを託す英二の特別性も目立つ。その時もまた、アッシュは性的な装いを外せない
そんな彼でも、”バナナ・フィッシュ”の因縁に導かれ、兄を撃った男と向き合うときは感情が溢れる。鉄面皮の装甲から気持ちが溢れ出す瞬間、画面はギリギリ限界の水を写す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
それは大人の前でけして流れることのない、アッシュの涙だ。
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殴られようが、犯されようが、泣いてなんてやるものか。本当の気持なんて見せてやるもんか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
それが売られ、踏みにじられ続けてきたアッシュが身にまとう、最後の一枚である。これはどれだけ汚れても外れないし、外してはいけない。そのプライドを投げ捨てれば、アッシュはリンクスではなくなる。
マックスに気持ちを叩きつける時、溢れる水が仮面を外し、アッシュの素顔が少し見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
兄が大事だからこそ、戦友も好きでいたかった。なのにドラッグでぶっ壊され、戦友に撃たれた。理不尽と汚濁が満ちた世界で、アッシュは孤児となり、それでも自分を認識できない兄への愛を諦めきれない。
その優しさが『ここを出たら、アンタを殺すよ』という言葉に変化せざるを得ないことが、アッシュの哀しみであり、アッシュを取り巻く世界の哀しみ、アッシュの悪魔的誘惑に抵抗できない世界の哀しみでもあろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
マックスに押し倒されたアッシュの、感情を殺した表情。それは繰り返された防衛行動だ。
『ああ、アンタもやっぱり”そう”か』と言わんばかりの、凍りついた視線。ゴルツィネ亭で、あるいはポルノの撮影場所で、世界のあらゆる場所で繰り返されてきた暴力と略奪から、善人ズラのマックスも例外ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
悪は当たり前の存在であり、アッシュは常に孤独に戦わなければいけないのだ。
力づくでもぎ取りたいと思わせる魅惑を、アッシュが発していることが罪なのか。その魅力に抵抗できず、暴力で傷つけることしか出来ない世界が悪なのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
誘惑と暴力を巡るダンスは、アッシュを中心に回り続ける。そのことが、個人の善性を問うことにもなる。
他の大人と同じように、アッシュを押し倒してしまったマックス。しかし彼は、同房の仲間であり、”バナナ・フィッシュ”を知り憎む特別な存在でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
悪に流されていくか、立ち止まり戦うか。境界線はアッシュの前だけにあるわけではない。マックスの”次”が楽しみだ。
一方、檻の外側、青い空の下で生き続けている英二は、アッシュから例外的な信頼を得ている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
高く高く壁を超え、自由と正義の領域に飛び出していった英二の姿は、アッシュ唯一の希望なのだろう。世界のどこかに、誘惑に負けない清いものがある。その証明に、自分はなれない。
だが英二なら。そう期待をかけて、アッシュは深いキスにメッセージを込め、英二の背中を押す。邪悪に飛び込み、善を成せ。生き延びろ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
英二もその願いを受取、自分の足であるき出す。
『文章を書くのが好きだった』兄の特質を、アッシュも継承しているのは面白い。因縁は引き継がれていくのだ。
強姦されてなお、力強く”バナナ”を突き刺す。あるいは、メッセージの秘匿にセクシュアルな戯れを使う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
アッシュが自分の武器として使う誘惑を、えーちゃんは巧く着こなせない。その肩出し…狙ってやってんのえーちゃん!!!
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ゴルツィネの邸宅も、怪しげなチャイナタウンも。退廃と悪徳は積極的に”紫”で塗られている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
暴力の赤と無力の青をないまぜにした、現実の色。アッシュと”バナナ・フィッシュ”の誘惑に、抵抗できな世界の色。えーちゃんはその色合いを、巧く着こなせない。
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染まりきらな無い純朴さ、それでも意志を継いで進んでいく強さを、英二はチャイナタウンの冒険で示す。傷ついた子供の願いを背負って、自分から危険に接近していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
そういう無償の善意をこそ、アッシュは信頼し、愛しているのだろう。アッシュの中にもあり、しかし巧く機能しないもの。
英二の中の善は、アッシュの中の(そして世界中の)それと同じように、毒蛇の奸智に付け狙われている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
オーサーがあっという間に英二に目をつけ、罠を張って先回りするところは、立ち向かうべき悪もまた、切れるアタマを持っていると教えてくれる。敵が強いと、展開に油断がなくていい。
アッシュは悪徳に揉まれる中で、暴力と誘惑をどう使うか学んできた。その結果汚れもしたが、強がりの鎧が柔らかいものを守ってもいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
そんな高貴な山猫を生み出した、ハードな通過儀礼。英二もまた、悪の手のひらに捕まってしまった。
青い空の東京で育ったボンボンは、NYの赤い暴力に耐えられるか。
はたまた、その特権性を守るかのように守護天使が訪れ、英二は綺麗なままでいられるか。なかなか気になるヒキであった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
刑務所で過去の因縁と向き合うアッシュ、その意志を継いで新たな冒険に飛び出す英二。二人の主人公の舞台は別れつつも、強く共鳴している。
スピーディに物語を進めつつ、誘惑と悪、善と弱さを鮮烈な”絵”で塗り重ねていく。アニメ版特有の筆は、三話にして更に脂が乗ってきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
ここまで三話連続、内海監督がコンテ切ってるからこその”圧”かもしれない。スタッフワークが切り替わった時、どういう味になるかも楽しみだ。
運命に巻き込まれ、”バナナ・フィッシュ”が少しずつ正体を見せる。真実に近づくほどに、悪の誘惑と強要は強くなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
慣れ親しみつつ染まりきらないアッシュと、青く透明なまま接近していく英二。二人の運命は加速し、加熱し、更に突き進む。いやー、次回も楽しみですね…面白ぇな内海版マジ…。