レヴュースタァライトを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
舞台の中心で脚光を浴びる、世界で一つのエトワール。才に恵まれ、不断に練磨し、輝きを放つ憧れの色彩。
どれだけ望んでも、天に届かぬものがいる。たった一つ選ばれる残酷さを、受け入れられないものがいる。地の底、第九席。落ちこぼれ共の譲れぬレヴューが、今始まる
というわけでトンチキ演劇デュエルアニメも第二話、生真面目眼鏡・星見純那を軸に据えた物語である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
学園の日常と地下のレヴュー、物理的にも演出的にも話の尺的にも二層構造で見せられる、少女たちの想い。ジリジリとした日々の積み重ねが、観客のいない闘劇で発火し、敗者も勝者もまだ歩む。
星を見ることしか許されない、地上の非才。名前からして残酷な純那ちゃんの夢とプライド、惨めさと決意が丁寧に追いかけられて、正直少し泣いてしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
自分が天に輝けないことを嫌という程思い知りつつ、それでも世界の中心で主役を張りたいという夢。八歳の時に刻みつけられた呪い。
主役ならぬ純那ちゃんは、それを掴むことは許されない。噛ませ犬の眼鏡、チュートリアル戦闘の敵役。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
約束された敗北を前に、純那ちゃんはしかし土を掴んで立ち上がる。ブリキの星を自分星に定めて、まだ終わっていないと走り直す。そこで紡がれる友情と不屈を、誰にも嘲笑わせたくないと強く思った。
このアニメ非常に先鋭的な構造ながら、一見の印象は凡庸…とは言わないが、そこまでぶっ刺さるものを持っていない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
特に学園パートは『フツーの学園アイドルもの』に見えるよう、丁寧に角が丸くされている。その丸さの中に、いろいろ仕掛けがしてある。舞台装置を読む眼を要求される。
まず、エピソードの構成自体が二層構造だ。ロシア・アヴァンギャルドを借り受けた”アタシ再生産”を境目にして、現実と夢がエピソードの前後に配置されている。演出のリッチさも世界のムードも、あの赤い宣言で綺麗に切り替わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
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ここに一つのひねりがあって、前半展開している一般的な日常は画面が”演劇的”で、広範展開している戦闘演劇こそが”現実的”なのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
のっぺりと据え付けられたカメラ、起伏の薄い書き割り。非演劇的な日常空間は、劇場の文法で描かれている。
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やや引いたホリゾンタルな画面を、長尺で回す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
板と天井に切り取られた特殊で静的(だからこそ、無限の可能性を演じられる)空間は、地下劇場ではなく学園にこそ配置されている。
『少女たちは学生を演じているのであり、舞台に上がることで生き直す』とでも言っているかのような、不思議な転倒。
学園世界とレヴュー世界、どちらが偽りの舞台で、どちらがナチュラルな生の空間なのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
一見圧力の弱い学園パートにこそ、そういう問いかけと詐術が仕掛けられているように、二話まで見ていると感じる。レビューの謎はまだまださっぱり。この転倒の意味も、物語が進むに連れ見えてくるか。
劇場の筆致で書かれる日常だが、そこはけして偽りではない。少女たちは魂の血を汗に変えて、必死に戦っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
今回物語は、純那ちゃんが努力しているところから始まる。凡才が少しでも星に近づく、唯一の手段。しかも、それは彼女の特権ではない。
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純那ちゃんが憧れる天の星も、必死に努力している。燦然と輝く二星の間にすら、明確な差がある。みな、生まれついての”華”の差に悩みつつ、諦めずに走り続けている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
それは前提条件であり、共通事項でもある。だが、純那ちゃんは日光が作るステージの外側にいて、西條さんは光の中にある。
とにかく、今回純那ちゃんを切り取るカメラは残酷だ。努力して、努力して、努力しても追いつけない彼女の苦闘を、丁寧に切り取ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
彼女の机の上は、付箋まみれの本で埋まっている。整理し、研究するしかない凡人の顔が、そこに並んでいる。己の星を求める熱望も。
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しかしその誠実さは、勝利に届かない。勝つのは全てが乱雑に置かれ、演劇人として己を高める武器も持たない華恋なのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
オーディションは、才なきものが勝てるものではない。無自覚だろうと、物語に選ばれた主役が勝ち残るのだ。
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多分今後も、私室の描写、机の上の描写は重なっていくと思う。キャラクターの心理や価値観、信条は学習机の上で解体され、腑分けされ晒されていくのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
こういう毒を随所に仕込んで、レヴューへの道糸にしてあるところが、このアニメなかなか意地が悪い。面白くもある。
レヴューと日常のシンクロは、例えばダンス練習でペアを組んだ純那と華恋が命がけのバトルを踊り、それを抜けて友情と不屈を手にする流れからも感じられる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
本気じゃないと華恋を詰った純那は、ぶつかりあうことで華恋の本気を感じ、だからこそ負けても諦めない。むしろ、真実友情が始めること。
目立たぬジャージの輪舞が、実はオーディションの激しい戦いの前兆であり、とても普遍的な衝突と和解を象徴していること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
この二層構造は、このアニメ全体の構図を巧く象徴しているように感じた。
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日常の中で、劇的に輝く瞬間。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
純那がばななちゃんに、自分の起源と譲れぬ願いを語る時の、カーテンレールの鮮明さ。
あるいはすれ違っていた華恋とひかりが、一瞬心を通わす時の閃光。
のっぺりと進むように見えて、劇的な瞬間は確かに日常に潜んでいる。
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今回レヴューがただ争い、決着がつく所で終わらなかったことに、僕はすごく大きな意味を感じている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
戦い、ぶつかり合って勝ち負けがつく。どっちが地べたをはいずり、天に登っていくかが残酷に決まってしまう。
しかし演劇も人生も、そこで幕が下りるわけではない。
敗北が決定づけられた後も、自分の星を掴んで立ち上がれるか。緞帳に隠れた傷ついた心に踏み入り、あるいは奮い立たせ、敗北の後のステージを演じきれるか。そこに寄り添って、友情を分かち合えるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
今回のお話は、そこまでちゃんと描いたのだ。凄くありふれた友情の芽生えを、最後に持ってきたのだ
かくして客観演劇的な日常空間から始まった物語は、主観を追跡する活発なカメラのレヴューを経て、ごくありふれた友情を切り取る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
その時、二層は一つに重なる。華恋が本気なのだと、自分が負けたのだと純那が納得できたのは、レヴューという特殊な空間をくぐり抜けたからこそだろう。
レヴューの中にも、純那ちゃんが負ける理由は山盛り積まれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
『埋もれている自分が、舞台に飛び出す』という決意を口にした瞬間、マネキンに身を隠す卑劣さを切り取ったり。
必殺の矢をつがえ、自分の星を射抜こうとした瞬間、それが遠い光だと見せたり。
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純那ちゃんがとにかく必死で、でも持っていなくて、負けるしかない存在であることを、今回のカメラは逃さない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
それは”演劇”をテーマに選んだこのアニメが、けして嘘をついてはいけない焦点だ。立ち位置ゼロに立てるのは、なんらか”持ってる”ヤツだけだ。純那ちゃんは、事実としてそうじゃない。
でも、それがなんだというのだろう。隅っこに配役されたものは、輝いていないのか。自分の星を掴めないのか。惨めなまま地べたに這いずっていなければいけないのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
そうではないだろう、という反証も、今回のカメラは切り取る。それは友情と開き直りが与えてくれる、おまけの一歩だ。
純那ちゃんは負けた後、星を見る代わりに、切飛ばされたブローチを拾う。黄金ですらない、真鍮でできた鈍い光の星。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
でもそれは、惨めさを受け入れてなおかつ彼女が掴んだ自分星だ。勝ち続けなくても、あらゆる演劇人に星はある。なければならない。
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今回純那ちゃんが掴んだ星を、掴ませるに至ったレヴューを、その助けとなった華恋のあがきを、僕はとても大事なモノだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
華恋は主役として、天才として、今後も勝ち続けるだろう。色んな人の星を落とすだろう。でも、そうなったとしても友情は成立し、舞台は続く。星を掴んで、人は歩き直す。
オーディションを繰り返し、勝者と敗者、才と非才を描き続けるだろうこのお話が、最初の敗者に純那ちゃんを選んだこと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
その惨めな凡俗っぷりから目をそらさず、しかしそれでも掴める星と”アタシ再生産”を輝かせたことは、凄く大きな意味があると思う。
このアニメを好きになる、大きな足場だと思う。
鈍く光る鉄の星を、誇り高く掲げて。純那ちゃんはスポットライトの外側で、まだまだ努力し続ける。自分なりの配役を、苦味と共に飲み下して、まだまだ歩き続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
その気高い不屈を最初の敗者に用意してくれたことは、凄く善いことだと思った。
純那ちゃんのプライドと非才にクローズアップしつつ、今後レヴューを飾るだろうキャストにも、いろいろ目配せがされていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
もう一つの舞台で付いた勝敗。地の底でうごめく鉄の星ではなく、衆目を集める二つ星の決着。
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西條さんと天童さんが、九十九組のエトワールである事実は、クラスメートを観客に落としてしまうダンス練習で見て取れた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
しかし、星にも格差がある。未来の敗北を予見するように、西條さんの視線は天童さんに集まり、余裕が一切ない。
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この目線一つで女女の巨大感情が、渦を巻いてブラックホールと化しているのがよく判る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
様々な情動を吸い込みつつオーディションは進み、傷つくことで宝石は磨かれていく。今後、二人のレヴューが華恋と接触した時、どういう火花が散るか。非常に楽しみだ。天童さんの強キャラオーラが凄いな…。
他にも、純那ちゃんのルームメイトとして、のんびりほんわかしたムードを出してるばななちゃん。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
一見なまくらにも見えるが、地下に続くエレベーター前でひかりを問い詰めた時の緊迫感、迫り来る闇の圧力は、只者ではないと教えてくれる。
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そして徹底的に運命からはじき出されている、まひるちゃんの淀み。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
負け犬をドブに突き落として棒で沈めるかのような、情け容赦のない孤立が積み重なっているが、この地獄がどんなレヴューを生むのか。キャラ紹介で見えているメイスが、如何な旋風を起こすか。
ほーんと、華恋はひかり、ひかりは華恋をお互い見て、まひるちゃんがはじき出されている現状は丁寧に積み重なっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
利己を装いつつ、幼馴染が傷つかぬようオーディションの厳しさから脱出させようとするひかりの純情は、胸にビビッと刺さった。ツンデレ道ブラックベルトッ!!(刃牙っぽい驚愕)
純那ちゃんの敗北を、冷厳に、そして敬意を持ってしっかり描いてくれた今回の筆。それがまひるちゃんに寄った時、どのような残酷と優しさが描かれるかは、今から期待大である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
とんでもない地獄が、間違いなく見れちまうぜ…やべぇなオイ。
このように、いろいろ仕込みがなされている今回。授業風景ももちろん暗喩に満ちていて、座学で学んでいる演出論は、今後生きてくる…気がする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
演者-演出-舞台と拡大していくサークル。自分たちが踊るレビューに留まるのではなく、広い視座を持つ重要性。
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わけのわからないまま巻き込まれ、わけのわからないまま進んでいるレヴューが、一体どんな存在であるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
演者の小さなサークルしか持っていない華恋(と他の参加者)は、謎を改名してより大きな、演出家のサークルへと物語を広げていくのだろうか?
まぁ詳細あえて不明、イミワカンナイ超常現象のまんまでも、訳わかんなくて面白いとは思うけど。キリン喋ってるし、テレコ使いこなすし。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
真実を掘り下げて見えてくるのは、具象の関連性ではなく、レヴューが自分にとってどういう意味を持つか、主観と価値と成長な気もする。
そう思うのは、実質最初の決闘となった今回のレヴューが、勝敗よりも大事なモノを最後に置いたからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
ケレン溢れるレヴューだが、そこにはとても普遍的で、ありふれているからこそ大事なモノが据えられている。地下の闘技は、それを探し出すための試練なのだろう。
大仰な演出、よくうねる作画が空回りせず、しっかりと意味をもって視聴者に届くためには、そういう泥まみれの価値が必要だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
純那ちゃんの敗北、それにおずおずと差し伸べられた華恋の手は、このアニメがしっかりと、そういうものにアプローチする気概を示した。安心と期待が生まれる話でした。
次なるレヴューが誰を相手にし、何を描くかはまだ見えない。だが、それが面白く、心に届く感触に満ちたものになる期待感を、今回のエピソードは高めてくれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
当たり前に負けていく凡人の気高さを、勝ち負けの先にある星を、ちゃんと描くアニメなのだと。その信頼感は、僕にはとても大事だ。
だから、来週がとても楽しみだ。一体何が見れるのか。一体何を見せるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
様々な場所に意味が埋め込まれ、二相構造は切り離されつつ連動する。
女たちの感情が炉に焚べられ、星が輝く。加速する物語が見せる景色を、僕はとても楽しみにしている。レヴュースタァライト、いいアニメだ。
あ、何かとウテナっぽい言われるこのアニメですが、ウテナが猛烈な衒学趣味をエンジンに、引用と変奏で組み上げていたフレームを、あえてさっぱりとこなしている所は明瞭な差異であり、魅力的な独自性だと思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
プレーンな友情の日常を、プレーンな表現でやる。そこにケレンあるレヴューを繋げる
その断層が、何を意図して生まれているか。どういう機能を果たし、いかな表現足りうるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月20日
ウテナが過剰な引用と象徴の織物で編み上げたものとは、糸の組成からして当然別。レヴュースタァライトという織物がどういう仕上がりになるか、先が楽しみなのです。