シュタインズ・ゲート ゼロを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
そして物語は、零を超えて無限へと。
アマデウスを消し、世界戦を書き換えた岡部倫太郎。
未だ残る大戦の絶望と、あり得たかもしれない未来への小さな希望を抱いて。狂気のマッドサイエンティストが走る。彼に救われた少女が飛ぶ。
那由多の彼方に待つ、一つの夢へ
そんな感じの、無印ベストエンドへ繋がりつつ、ゼロ独自の終りを迎える最終回。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
既に結論が見えている長い補完、ベストエンドのための踏み台という構造的宿痾を乗り越え、ゼロの岡部倫太郎、椎名まゆりにしか果たせない決着を引き寄せた、見事な終わりだった。
お話としてはアマデウスを消した後の世界線で、岡部くんが、まゆりが、鈴羽が、ラボメンが、自分なりのベストエンドを掴み取るまでの物語である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
紅莉栖もまゆりも死なず、”ラボ”を育んだ平和な日常が維持される世界は、ゼロの戦士たちには遠い。第三次世界大戦は、起こるべくして起こる必然だ。
無印でオカリンが走り回り、またゼロで別の(つまり同じ)岡部くんが奔走した結果、”なかったこと”に出来た70億の悲劇。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
もう一つの結末を前提にしたゼロの世界では、それは回避できない。しかし悲劇の中でもヴァルキリー達は、誇り高く背筋を伸ばし、戦場というもう一つの日常で、人間らしく生きる。
シュタインズゲートの理念が、哀しさや痛みを”なかったことにしてはならない”と叫ぶなら、あからさまな悲劇である第三次世界大戦、そこで生きた戦士たちの物語もまた、”なかったことにしてはならない”
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
過去の荒野と未来の戦場、二つの”非日常”にたどり着いたこの物語は、負け犬達への挽歌である。
タイムマシン問題は、岡部くんがしっかり結果を観測し、爆炎の奥を見定めることで乗り越えられる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
それは戦場で生き続ける覚悟…あり得たかもしれない未来を諦め、守りたかった日常に別れを告げる意志だけが可能にする、決定的な分岐点だ。
ヴァルキリー司令として戦場で戦い続けるオカリンは、ルカ子と果たしたような辛い死別を、たくさん積み上げていくだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
のんきな大学生として生きれたなら、見なくても人生を全うできたような悲劇が、岡部司令の日常となる。そこから目をそらさず、自分のものとして生きていく決意。
幸福には終われない自分と世界の未来を受け入れたからこそ、岡部くんはまゆりの死ではなく生を、絶望ではなく希望を観測できたのではないか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
そしてその決意は、構造的にベストな終わりが出来ない”ゼロ”それ自体おも、一つの物語として肯定するのではないか。
そう思った。
ゼロが独自に積み上げたものを肯定する態度は、まゆりにも及ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
無印で無力なヒロイン、健気で可愛そうだからこそ岡部くん(と、彼を代理自我とするプレイヤー)が物語を進めるモチベーションとなっていたまゆりは、自分の失敗を取り戻すためにタイムマシンに乗り続け、死に続ける。
優しさが岡部くんと世界を腐らせ、より大きな悲劇に繋がってしまった”ゼロ”を書き直すために、まゆりは自分の意志を持った主人公として、必死に状況に抗う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
『お前は悲劇のヒロインでさえいればいい!』という、岡部くんの呪いを振り切って、椎名まゆり個人として恋を言葉にし、愛の為に飛ぶ。
数多の困難を超え、岡部くんがようやく生死の主体としてのまゆりを直視する決定的瞬間の果てに、まゆりは言葉を送る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
実際に決断するのは”そこ”にいる無印のまゆりであり、外伝の住人は矛盾がないよう、密やかなエールを贈るだけ。
これは執念オカリンのメールにも通じる、”ゼロ”的な態度と言える。
既に決着した物語に、蛇足ともいえる補足を付け加え、結末を補強する。黒子というか、残滓というか。小さく惨めな立場に見えるが、しかしそこに込められた物語には尊厳があり、決意があり、独自の哀しさと愛があった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
もう一人の自分に、万感を込め送られる二つのメッセージは、とにかく感慨深い。
紅莉栖があまりに強力な物語軸になった無印(に繋がる、数多の派生メディア)では、オカリンのヒロインになれないまゆり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
そんな彼女が秘めていた思いが、どれほどの熱量を持ち、それが岡部くんには変え得ない未来を、独自の意志とプライドを持って引き寄せていくか。
それもまた、”ゼロ”の大きな主題だったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
かつて椎名まゆりを救った”鳳凰院凶真”という、優しい嘘。まゆりはもう一人の自分から投げかけられたメッセージを受け取り、同じように岡部くんを助ける。
しかしそこで振るわれるのは嘘ではなく、パワーこもったビンタである。や、やった!!
そのかすかな変奏は、岡部くんに守られるばかりだった”ヒロイン”椎名まゆりへの決別であり、その一撃がベストエンドへとたどり着く決定的な分岐ともなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
それは傷ついた岡部くんを守り、蚊帳の外にされる辛さと戦い、決意を固めタイムマシンに乗ったまゆり、あっての選択肢である。
そんなまゆりはベストエンドを掴み取るため、時空の漂流者となって遙かなる過去へと飛ばされる。第三次世界大戦がどうだ、陰謀組織がどうだ、という次元を超え、人類種の気配すらない冷たい荒野。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
それもまた、主人公が覚悟した結末。ビターながら納得の行くエンディング…っておもーじゃん?
そこでラストシーン、エモいBGMとともに岡部くんがドーン! ですよ。素晴らしい。マジ文句ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
メールを送るまでは無印の結論を補強する、ある種の責務だったけども、それを終えた後まゆりと鈴羽の決意に報いるために、今まで書かれなかった物語に踏み込む。自分だけの結末を掴む。
岡部くんがまゆりを取り戻すために、時間と執念を積み重ねてホントに追いついたこと。彦星と織姫が再開するシーンを最後に持ってきたのが、おかまゆ派としてはホントこー、ありがたいものでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
少なくともゼロの終わりはあの再開であり、選び取ったのはまゆりなんだよなぁ…いや鈴羽もいるが。
そんなゼロ岡部くんに惚れ込みつつ、先約二名に押し出され心の大事な部分を占拠できなかった、未来まほたん。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
最後の抱擁に漂う未練と悲しみが、なかなか湿っていてよかった。そういうものを噛み締めて、現実を戦い続ける”大人”の寂しさも。
眉間のシワが濃くなったゼロ岡部くんと、相応に年をとったラボメン(フェイリス除く)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
過酷な戦場の中で、甘い夢は削り取られ、幼さは捨てられたのだろう。それでも、かつて見た綺麗な夢が諦めきれないから、人間らしさを護るために銃を取り、殺したり殺されたりする。
生き続けるための割り切りと、それを捨ててしまえば”敵”とおなじになってしまう温もりと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
アンバランスに生きるしかない、過酷な第三次世界大戦世界。そこで真帆が生き延びられたのは、やっぱり愛と執念を抱えて走る狂気のマッドサイエンティストに、惚れ込んでいたからじゃないか。
そんな気がする。冒頭サラリと、『真帆とは縁があったので、アマデウス抜きでも再開した』と説明されていたが、まぁそういうことなのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
ゼロでまゆりはヒロインをやめてヒロインになったけども、選ばれなかった真帆たんルート、ゲームにはあるんでしょうかね…。
無印への変奏としては、孤独に撮っていたように見えたメールが、実は仲間たちと作り上げたものだったと判るのが嬉しかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
ゼロは岡部くんが自分を、特別な主人公だと思いすぎて孤立するお話だったので、ラボメンが岡部くん最後の戦いまで一緒にいたとわかるのはありがたい。
圧倒的戦闘力を見せて状況を制圧した萌郁が、ヴァルキリーにいないのは寂しかったけども。第三次世界大戦始まると、CERN側に付くってことなのかなぁ…あるいは、戦死したか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
ほんと、『強敵が味方に回ると雑魚』ルールを回避した萌郁は、最強のバトルマシーンだった。強すぎる。
同じバトルマシーンでも、かがりは大層不安定で。母恋しさで因果に飲まれ、狂える戦士と化した彼女が、最後の問いかけ役を担当するのも、凄く良かったな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
地獄の戦場でも、そこでしか出会えなかったものがある。70億と天秤にかけても、ママとの思い出が大事。だから、過去は変えさせない。
死ぬほど身勝手で、だからこそ切実なかがりの問は、シュタゲが是としてきたベストエンドへの道のりを、もう一度問い直す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
結果として岡部くんとまゆりは、自分以外の自分にベストを託しつつ、自分たちはビターな結末を飲み込む。なかったことにされるものと、自分を結びつけ一緒に沈む。
そうやって、描かれなかった物語、あるいは切り捨てられた結末をすくい上げ、語り直すこと。物語とキャラに必要な尊厳を取り戻してあげるのは、外伝の大事な仕事だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
バッドエンドルートの申し子とも言えるかがりの血を吐く叫びに、オカリンもまゆりもちゃんと答えたのは、ほんと良かった。
安全地帯でヒロインやってたまゆりが、二つの銃口に身を晒すところも、彼女の変化を明瞭に見せて素晴らしかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
その前の戦闘シーンも、お互い躊躇いがある心境をアクションの中で見せていて、最終話に相応しく感情圧縮率の高い演出だったなぁ…凄く良かったです。
かくして、物語は終わった。打ち捨てられる者たちの必死の努力により、誰も犠牲にならない世界への扉が開かれ、ベストエンドが紡がれる。世はすべてこともなし。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
しかし、打ち捨てられる物語の中にも、独自の尊厳と結末があり、血の通ったキャラクターのドラマがある。
そのことをしっかり追いかけ、大事に描き、背筋を伸ばして走りきった最終話でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
ほんとラストに”ゼロ”独自の終末をしっかり乗せたのが、最高に強いと思う。あの終わりは、無印でベストエンドを掴んだオカリン、本編では書けない、もう一つのベストエンドだから。
既に決着した物語の、その後、あるいはその決定的開始点を描く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
蛇足にしかならない初期設定から、よくもまぁ独自の物語を紡ぎきったと思う。紅莉栖を殺してしまった岡部くんの壊れた心を、鮮烈な演出と情け容赦のない曇らせで、重たく描く演出がパワフルだった。
凹み加減をしっかり描いたからこそ、そこから皆の助けで立ち上がり、また打ちのめされ、それでも地獄を己の物語と定めて前に進む”ゼロ”の岡部くんの物語は、重たさと熱量を持てた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
正直付き合うのがしんどかったけども、ただ苛むのではなく、キャラの悲しさに愛おしく寄り添う姿勢がありがたかった。
世界に一つきりの能力を持った主役・岡部倫太郎だけでなく、彼が作り出した”ラボ”という場、そこに集ったラボメン一人ひとりの尊厳を大事に、群像劇として描いてくれたのも嬉しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
ダルの本気殴り、マジ痛快だったからな…言うべきタイミングで、言うべきセリフをキャラがスムーズにやれるのは偉い。
特にまゆりは守られるだけのトロフィーヒロインから、自分の無力さに嘆き、秘めた恋心を叫び、自分の意志で死地に飛び込む主人公として、力強く描かれていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
自分のために道化を演じてくれた”鳳凰院凶真”を取り戻すべく、まゆりが決意固める流れはマジ最高…プライドがあるわけですよ人間には!
ところどころ『拾いきれなかったんだろうなぁ…』という部分もあった(何度も説明無しで死ぬレイエス教授とか)が、キャラクターの感情、うねる運命を見事に紡ぎ合わせ、それぞれの物語をしっかり走ってくれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
剣客ルカ子の雄姿、今度は仲間な萌郁、”親父”なダルと、無印では見えない顔も沢山あった
ゼロからの新キャラクターも、良い存在感だったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
クソ悪魔のおもちゃとして心をイジられ、それでも母恋しの思い一つで傷だらけ走り続けるかがりの痛ましさは、まゆりを主役として立てる見事なヒロイン力だった。
ほんとなんも知らねぇガキをよぉ…レスキネンマジ許さねぇからな(思い出し怒り)
岡部くんの”牧瀬紅莉栖の不在”を、世界で唯一分け合える傷追い人として。可愛いちびっこ凡才サリエリとして。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
真帆の存在感、好感度も凄かった。ドン曇りの世界の中で、Wヒロインが死んだり電子化したり戦士に生まれ変わったりする中、萌え萌えムーブを一身に背負っていたと思う。ありがとう。
”可憐な天才科学者”として牧瀬紅莉栖を知る真帆がいることで、ラボでは描けなかった紅莉栖の表情がグッと迫ってきて、新しい魅力も見えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
アマデウスも最後の最後で電子生命の悲しみを全面に出して、”牧瀬紅莉栖のコピー”ではない、独自の物語を完走してたなぁ…いいキャラだった。
名作たる無印をしっかり踏まえた上で、その外伝に位置する自分たちに何が描けるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
ベストエンドにはたどり着けない宿命と、どう向き合うのか。
けして十全とは言えない荒野に繋がる物語で、どう人間の、キャラクター個別の尊厳と輝きを刻みつけていくか。
自作のポジションをよく見た作品でした。
そういう冷静さだけではなく、明暗をバロックに使いこなし歪さを刻み込む演出の巧さ、バキッと大胆に割ったレイアウトが、映像に熱量を与えていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
そういう素材の強さを最大限活かし、個別のドラマをエモく燃やしてくれたのも、非常に良かった。面白かった。
複雑怪奇な時間と因果をまとめ上げ、矛盾なく無印に続ける…だけでなく、不完全に終わるしかない”ゼロ”だけが語りうる物語を、しっかり描きに行ったのも素晴らしい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
ベストエンドに繋がらないからこそ、描けるものがある。難解な証明を見事に果たす、素晴らしい外伝でした。
こうして終わってみると、『やる意味あるの?』と疑っていた半年前の自分を見事にぶっ飛ばす、”ゼロ”だけの、”ゼロ”だからこその物語となりました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月26日
ありがとう、本当に面白かったです。岡部くんは地獄の曇り旅、お疲れ様でした。
”シュタインズ・ゲート ゼロ”、いいアニメでした。面白かった!