どろろ を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
米詰め込んだ蔵の下には、地獄が眠ってる。
泥から咲き誇る蓮のように、生存を約束する毒蛾菩薩。土地に縛られ、縁に呪われた鯖目が、贄に捧げた童子の涙は村殺しの油となり、全てを紅蓮に包む。
己の生存が、誰かの屍の上にしか咲かないなら。
それでも、明日を夢見るのか。
というわけでマイマイオンバ後編! 鬼才・コバヤシオサム節全開でお送りする、まさに地獄変である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
醍醐の国から遠く離れてなお、鏡写しに展開される共同体の地獄。孤児、宗教者、縁弱き者を贄にして、嘘と死体を軒下に隠して展開される、繁栄…もしくはただの生存。
命はただ、生きているが故に生きることを望む。村人が尼と童子をすりつぶして冬を生き延びる願いは、百鬼丸とどろろの生き様と全く同じである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
全てを奪われた捨て童子は、己の願いが破滅を呼び込むと知って『関係ない』とうそぶく。
背中に黄金を背負う少女は、答えのない地獄に涙を流す。
重苦しく出口のない、何が正しいかなぞ誰にもわからない物語。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
2019年に展開する”どろろ”を、泥っぽくアニメっぽくない描画で色濃く焼き付ける、疲弊を誘うエピソードであった。
見終わって、正直ひどく疲れた。だがこの疲労は、心地よくはないが必然だと納得できる。そういう話を、僕らは見ているのだ
ルパン三世PART4、第12話。パンティ&ストッキング、第5話。グレンラガン、第4話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
コバヤシオサムのアニメーションはそのあまりの生々しさに、シリーズの中で浮かび上がることが多い。吐瀉物の匂いが立ち上ってきそうな、癖のある作画。綺麗なアニメ絵から距離を取った、独特の表現。
しかしそれこそが、共同体のすました幸福の奥にあるハラワタ…我欲と殺意で塗り固めた糞が火を放つ今回に、しっかりとマッチしていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
闘いは悍ましい。生きることは恐ろしい。そんな当たり前の生々しさを、アニメ表現は時にフィルタリングしてしまう。それを引っ剥がす時、コバヤシオサムの筆は強い
その兇猛は、当然人を選ぶ。ツルンとした質感を望むのだって、アニメの楽しみ方の一つだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
だが、あるいはだから。僕は今回の話が好きだ。無惨極まる話運びも、人間の醜さを際立たせる絵面も…そこに微かに光る、とても美しいものも。
ザラザラしていて、複雑な色合いで、とても良いアニメだった。
さてお話は、どろろと百鬼丸を分断/対比させながら進む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
視聴者(つうか俺)も『いい加減どうなの?』と思っていた百鬼丸のツンツン無関心に、どろろちゃんがついに実力行使に出るラストを考えると、彼らの断絶を強調して話が転がるのは、非常にしっくり来る。
どろろはバクバクと、他人が差し出した飯を食う。飯を食わねばどうにもならない他人の宿命に、首を突っ込む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
百鬼丸は食わない。他人の方を見ないし、声も聞かない。聞こえているが、心を動かされない。
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女官(マイマイオンバ)が闇の一番奥、鯖目とどろろが光と闇の境界、百鬼丸が光の側に身を置く食事風景は、村を襲う困窮との距離そのままである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
鬼神に生贄を捧げれば、飢えと破滅から逃れられる。醍醐が背負う為政者の責務を、鯖目も飲んだ。どろろもその矛盾に思い悩む。
だから、村の平和な風景に目を向ける。差し出されたまんじゅうも食う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
だがその幸福は、子供の死体の上に咲く徒花。鯖目には救済の白蓮に見えたマイマイオンバは、かつて子供を食い、今どろろを貪ろうと牙を研ぐ。
どろろは身を持って、人の世の矛盾を旅する。
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答えは出ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
自分が生きようとしただけで、村は滅んだ。可愛そうな子供たちの仇を討ったら、別の子供が飢えた。
どうすればいい、どうすればいい、どうすればいい。
どろろは思い悩む。神も仏もない乱世で、どうしたら人として生きられるかを。
諦めて、他人を踏みつけにして生存する以外の道を。
父母の清廉な意志を背負い、泥に塗れつつ人の美しさ、儚さを見据えているどろろは、『関係ない』とは言えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
美しい姿も醜い有様も、強さも弱さも。どろろの前を通り過ぎる全ての因果が、彼女の幼い魂に自分ごととして突き刺さる。
母が否定したミオの生き方も、見据えて噛み砕き肯定したように。
よそ者、子供、宗教者。土に縛り付けられた共同体のマイノリティを、繁栄のための肥やしに変えてしまう”村”のエゴすらも、どろろは真っ直ぐ見据える。見据えてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
そのあまりに人間的な聖性が、彼女の核にある。
悩み、問い、正す。主人公の資質。
百鬼丸は問わない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
村に行かず、地獄の食い物を口に入れず、光と闇が綾織りなす野生を抜け、鯖眼の後を追う。
門、河、林。アヤカシに縁深いものは、幾重の境界線を超え、人の領域を外れていく。
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人でなしの旅路を抜けた先は、高所から見下ろす村…人の領域だった。醍醐がそうであったように、為政者は高みから全体を見下ろす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
その景色を、当然百鬼丸は共有しない。
知ったことか。関係ない。
眼下に広がる繁栄、その肥やしとして踏みつけられたものの怨歌
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高みから見下ろした明るい景色と、蔵の底の暗黒は同じものだ。誰かの幸福の光は、誰かの屍の光でしか輝かない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
犠牲となった死体が輝くのなら、それは誰かの幸福が陰るサインだ。軒下の犠牲者達は、優しくしてくれたどろろの導きとして光る
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醜く見えたものの内側には哀しみと無垢が宿り、美しく見えた平穏は糞に塗れている。シンプルな色合いにはけして塗れない、誰かの不幸と誰かの幸福。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
妖怪小僧の頭が破裂し、羽化した幼い魂。賽の河原に閉じ込められた餓鬼たちに、救いの手を差し伸べたどろろに、魂の兄弟が報いる。
善因善果。そう言えたらなんと楽だったろう。だがその光は誘蛾灯となり、村すべてを燃やしていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
繁栄を運んだはずの毒蛾が、火に誘われて米を焼く。迫りくる破滅を前に、人間の本性がむき出しになる。
お前も、お前も、お前も。俺の為に死ね。
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繁栄のため鬼神と結んだ鯖目は、肥やしのように田畑に窒息する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
子供は涙ではなく貪欲な涎を垂らし、童子の死体の上に立った蔵は燃える。少しでも生存の可能性がある方向へ、タガを失った人々はさまよい、奪い、殺す。
乱世から逃れていたはずの楽園は、かくして紅蓮の鉢特摩地獄に沈む。
善意で村に、亡霊と妖怪小僧に首を突っ込んだどろろは、その善意で生存を掴む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
関係ないと耳を塞いだ百鬼丸は、鯖目の残酷な為政に家族の裏切りを感じ取る。
お前らも、皆同じだ。だからお前たちは皆平然と、人を踏みつけに出来るんだ。
奪われたものの産声が、苦く重い。
素直に殺されていればよかったのだろうか。生きることを諦め、大悟に至った覚者のように、粛々と死と理不尽を受け入れればよかったのだろうか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
出来ない。赤い血潮を流して生きようとする命は、ただ生きようとする。己の身内を守ろうとする。百鬼丸も、村人も、鯖目も、醍醐も。
我が子を羽化させんと贄を求めるマイマイオンバですら、生存と繁栄の地獄からけして抜けられない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
どうすればよかったのか。
答えはない。人が背負う迷妄を切り捨てて、百鬼丸は船に乗る。戦乱の炎は、導きの篝火だ。
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義肢をもぎ取られ、高いところから落ちる。自分が蹴り倒した鯖目のように、百鬼丸も落ちる、堕ちる、墜ちる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
贄に落とされた怨嗟の念、奪われたから奪い返す修羅道の掟。
そこを超越し、炎以外の解決を見つけられるのか。誰かの不幸以外に、誰かの幸福の火種はないのか。
この問いかけを、恐らくこの作品は最後まで追う。醍醐の国を舞台に、紅蓮はもっと激しく燃えるだろう。死ぬのは見ず知らずの他人ではなく、血を分けた家族だろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
その時、百鬼丸は『関係ない』とは言えない。
己の肉体で繁栄する、腐った国。己を無用と投げ捨てた、業に満ちた家族。関係は深い。
仮に少しでも救いがあるとすれば、どろろが慈悲を施し、その見返りにどろろの生存(と村の破滅)を呼び込んだ童子の霊が、恨みに満ちていなかったことだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
何故彼らが、その菩提に至れたのか。どろろの菩薩心故か、死は何もかも洗い流すからか。
答えはない。だが…。
お前ら皆同じだ。憎悪を込めて呟く百鬼丸を、どろろは涙で見つめる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
このままじゃ、おなじになっちまう。
鬼神に、あるいは醍醐に。世界の理不尽に犠牲と暴力を選び、ただ貪り踏みつける存在に、百鬼丸も変わってしまう。
その予感に、どろろは震え、背中を向けた。
鯖目の訴え、村人の破滅に耳を塞いだ百鬼丸は、己の不完全を補佐してくれていたどろろがいなくなったことにも気づかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
憎悪に赤く染まった視界を、母の祈りが籠もった観音の緑が打ち破って始めて、少年は己が孤独であることに気づく。
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木漏れ日が複雑な明暗を描く世界は、彼が蹴り捨てた鯖目が身を置く淡いと、全く同じ色合いだ。関係なくはないのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
その混沌に、超人的な出自と非人間的な人生を刻んできた少年もまた、深く囚われてしまっている。虫は、百鬼丸の中にもいるのだ。
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尺取り虫めいた動きで”羽化”する、傀儡仕立ての背骨。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
鬼を殺した報酬に、人間の証を取り戻した百鬼丸の体内からは、悍ましい虫が顔を出す。
それはそこにいる。誰が人食いの虫を飼っていて、それが軒下に赤子を放り捨て、村に火を放ったのだ。
関係なくはないのだ。
孤独が百鬼丸に、その事実を教えるのか。誰かの声を聞き、誰かの苦しさに手を差し伸べる慈悲を、もう一度手に出来るのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
炎の地獄をくぐり抜けた百鬼丸の、今までとは違う物語が始まりそうだ。
苦しい。期待してはいない。だが、もう目はそむけられない。見るしかないのだ。
兄貴と別れたどろろは、かつて一緒に歩いた薄野原を一人で進む。キラキラした青空はなく、戦乱の気配が馬に乗って駆け抜ける道。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
背負った因果が欲を呼び込み、イタチが舌なめずりで迫る。どこまでいっても逃げ場なし。乱世…どろろちゃんにもうちょっと優しく…
©手塚プロダクション/ツインエンジン pic.twitter.com/9JeAhZe8qA
独特(過ぎる)な質感で好きに暴れているようで、過去のモチーフやフェティッシュを上手く使って、連続性のある物語を紡いでいるのが、2つの薄野原で判る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
あの時二人で歩いた道を、今は一人。守り、守ってくれる兄貴はいない。少し、話を聞いてくれればそれでよかったのにhttps://t.co/LCekponMoX
地獄を抜けたらまた別の地獄が迫ってきて、なんとも息苦しい。しかしまぁ、そういう話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
生き死にの際を軒下から抜け出して、自分が出会った怪異を語るどろろの夢っぽさ…百鬼丸と視聴者へと伝わりにくさが、僕は凄く好きだ。
自分だけが感じた本当のことは、なかなか伝わらないのだ。
泥の中、目隠しをして泳ぐような掴みどころのなさ、手応えのなさ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
それはどろろが、どうにか人間として生きたい願いを、兄貴に伝えられない哀しみに繋がっている。
百鬼丸が奪われたもの当然の権利として、生きるが故に生き続けようとするあがきが、社会の崩壊を招いてしまう理不尽に似ている。
泥の河の底を、血の湖の中を、戦の篝火だけを頼りに彷徨う乱世。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
片目を失った多宝丸は、武家に相応しい殺人技術を取り戻すべく、義兄弟と鍛錬に励む。
憎悪の盲目を、菩薩の緑に切り裂かれて、百鬼丸はようやく周囲を見渡す。その先には、ただただ無明。
兄弟運命の交錯点は、まだまだ先か。
村を第後の国、百鬼丸の宿業の鏡として、鬼神への復讐心(と裏腹な、家族への愛憎)に取り憑かれ、盲目なままの百鬼丸を照らすお話でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月23日
関係ないとうそぶく兄、全てを己に引き受けてしまう妹。分かたれた道が再び出会う時、何が失われ、取り戻されるのか。
来週も楽しみですね。死にそう。(俺が)