さらざんまい を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
ガラスの靴も、ネズミの御者も、僕にはやって来ない。
お姫様を抱きしめることも、王子様になることも出来ないまま、ロマンスを夢見るサッカー少年。そのクローゼットが暴かれる。
純真と下劣が舞い踊る青春のカルナヴァーレは、出口も知らぬまま駆る。恋よ、その脚に狂い咲け
そんな感じの燕太エピ、さらざんまい第三話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
純愛なのか暴走なのか、妄想なのか現実なのか。シームレスに入り交じる狂気と無垢の中で、いつかの約束を夢見裏切られ、報われない純情と踊る少年たち。
身勝手で薄汚くて、どこまでも真っ直ぐな思いの行き着く先は、輝きか地獄か。
そんな感じの、なんとも報われない少年愛のお話であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
ミサンガ、サッカー、車椅子の人魚姫。
”異常なフェティシズムと堅牢な理論の編み物を”脚”で作り上げていくエピソード。燕太の一方的な思いに、ドン引きすらしない一稀の冷静(あるいは冷淡)。その視線の先にある、春河の純情と無垢。
各々の想いがすれ違い、不自由に擦れ合いながら、あまりに不器用に不格好に愛と欲望が捩れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
道化めいた振る舞いを笑い飛ばしてもいいのに、どうにもそうする気にはなれない切実さがあって、俺はこの話で燕太と春河がとても好きになった。チャーミングで真摯で、みんな良い青年たちだ。
先週衝撃のキッスを引き継ぎ、燕太は秘密と内面を告白していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
川沿い、秘密の場所に作った二人だけのゴール。チョークで線を引いただけの、幼い約束の場所。そこは光と闇が交錯する、境界線の上の世界だ。
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物理と心理、現実と妄想、過去と現在、男と女、友情と性愛。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
白と黒の領域を分ける線は燕太が今回泳ぐ領域を様々に内包しているが、この作品において明暗に上下はない。
ホモセクシュアリティ、あるいは女装癖。日陰者の狂った性癖と指をさされるだろう政治的な身振りを、”常識”から借りては来ない。
何らかの理由があって、女の装いをする。何らかの理由がないまま、愛ゆえに男の唇を奪う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
それはただ陰りの中の行為だ、というだけで、日向で展開する”まとも”な恋に優劣しない。それは、ただそういうものとしてそこにあって、少年たちはそういうものを、陰りの中で身に浸している。
あらゆるものを犠牲にしても、弟と繋がっていたい。何を手放しても、愛する少年に抱きしめられたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
それは確かに陰りに属することだけど、兎にも角にも本物なのだ。だから冒頭の燕太の越境は、簡単に『心の闇に落ちた』と片付けてはいけないと思う。それは光の側、”まとも”の優越を前提にしている。
燕太がゴール(それは激しく強く一発キメられる場所であり、一稀にブチ込んで欲しい最終到達点…ホモセクシュアルな結合のメタファーでもあろう)を陰りに置くのは、そこに隠しておきたい愛と欲望があるからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
ただサッカーをして、無邪気に汗を流していれば満足できた時代は、遠い光の彼方にある。
キスをしたい。抱きしめたい。抱きしめられたい。一生一緒にいて、愛のあるセックスに精を出したい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
そんな欲望が、健常なユニフォームの奥でもぞりとうごめく年頃に、燕太はなってしまった。
一稀が同じく女の衣装に、そういう興奮をもっているのか、否か。実はそれはまだ、描写されていない。
一稀にとってアイドルの装いは、弟とチャットツールで繋がるための儀式であり、そこで希求されているのは『女であること』ではない感じもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
ここら辺は今回ラストに見せられた、春河の秘密…という類のものでもないか…特質と合わせて、今後掘られるだろう。脚を奪った罪悪感が根底にあるのか?
脚。約束のミサンガが結ばれる場所であり、春河がもう失ってしまったもの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
今回は非常に脚のクローズアップが多い。それは脚でやる競技たるサッカーで繋がっていた”ゴールデンコンビ”を強調し、『一緒には走れない』春河の跛足も際立たせていく。
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(靴にも”ア”の字が刻まれてるのが、なかなか徹底してて面白いところだが)脚、あるいは靴。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
妄想の中で燕太は一稀にミサンガを巻き、一稀もそれを許す。ガラスの靴を履かせてもらうシンデレラ、あるいは履かせる王子。幸福なロマンスは、妄想の中にしかない。
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妄想に支配された燕太は、約束のミサンガを姉に巻く。その姉がゾンビ空間に囚われた時、燕太は『ミサンガを取り返さなきゃ』と口にする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
『姉を助けなきゃ』ではない。そんな綺麗事は、欲望(クソ)にまみれた少年たちには存在しないのだ。
欲しいのは約束。身勝手な妄想が現実になる、魔法のツール。
現実のミサンガは、”ゴールデンコンビ”の繋がりと一緒にゴミ箱に捨てられた。縁は切れたし、思いは届かなかった。王子様にもお姫様にも、燕太はなれなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
その事実を前に諦められるなら、最初からファンタジーになんぞ溺れない。
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燕太の妄想は『これが妄想です』という分かりやすい映像表現(薄ぼんやりするとか、キラキラ輝くとか、キャラデザが変わるとか)なしで、シームレスに展開する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
それほどまでに、彼のロマンス願望は強い。抱きしめられるお姫様であり、抱きしめる王子様でもあるような、境界線の入り交じる関係性。
そこにさえたどり着ければ、一緒に『さらっとポーズ』をキメれる理想郷を、燕太は何度も夢見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
かつてフィールドで、確かにあったはずの黄金の瞬間。しかしそれは、遠くに去ってしまった。もう、妄想の中でしか少年は同じ姿勢を取ってくれない。
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ギラつく性欲の匂いを漂わせながら、燕太の夢想は無邪気な過去に飛ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
陰りの中から引っ張り出してくれた王子様、フィールドを一緒に踊ったイノセント・デイズを、もう一度取り戻す。
リコーダーなめなめも昏睡暴行も、そんな無垢な願いが根っこにある。
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かつて一緒に書いた”ゴール”の上に、王冠があるのが残酷で的確だな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
世界の王様になったような万能感。満ち足りた黄金期が永遠に続くという夢。ペンキの冠は、その夢が破綻しつつまだ続いていることを如実に表す。
まだ、王子様とお姫様になれる。あの時のように。
キスの先にある行為…大人にしか許されない退廃を志向しつつ、それは時を巻き戻し永遠を手に入れ直すための魔法/呪いでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
未来と過去が綱引きを繰り返し、めちゃくちゃに擦り切れていく現在のなかに、燕太はいる。弟との幸福な日々を演じるために女を装うなら、一稀も同じか。
兄のために犯罪に手を汚し、金の皿を求める悠はどうなのだろうか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
あるいは、彼らのすれ違いと交接をも似た腰に見ている僕らは?
アレほどグロテスクで美麗でなくとも、身勝手に献身的に誰かを求め、静止した永遠を取り戻すために身を焦がした経験は、微かなシンパシーを引き寄せないだろうか?
少なくとも僕は、燕太の相矛盾する振動に強く心を惹かれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
男の姿のまま男に惹かれ、唯一絶対のキスを求めて手に入らず、妄想に現を抜かす。勝手に高ぶる身体が心を裏切り、諦めているくせに夢を高望みし、どす汚れたままあまりに綺麗で、死ぬほど身勝手なのに哀しいほどに献身的。
燕太は血の通った矛盾の中にいる。それは僕を取り囲むつまらねー現実とは全く違って、僕らの浅草はあんなに美麗でもクレイジーでもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
だけど、どこか似通っている。
どんなセクシュアリティを持とうと、どんな年齢であろうと。燕太のキモい純愛は、人間的な匂いを濃厚にまとって僕らに接近する。
そういうモノが色濃く見れると、僕はキャラクターと物語を好きになれるのだ。だから、今回のお話は良かったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
数より質とキスを略奪する、魚臭いドンファン。実の姉を的にかけられつつ、燕太はそんなところは見やしない。気にするのは、唯一絶対のキスに殉じない、その多情だ。
燕太自身も、一稀のキスを略奪した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
同じ穴のムジナを、自分を棚に上げて罵倒するのは第一話の一稀(『人に見せられない秘密を持ってるほうが悪い!』)と同じだ。
皆身勝手で、近視眼的で、そうならざるを得ないほど熱いマグマを、胸に隠している。
でもそのマグマは、愛おしいシンデレラを射抜きはしない。秘密が漏洩してなお、一稀は燕太にドン引きすらしないのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
そういう意味では、幼年期を閉じ込めたゴールを一緒に見てくれた悠の方が、まだ距離が近いと言えるだろう。サッカーボールは、そこにあるのだ。
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妄想の中で複雑に表情を変化させつつ、心情を吐露し生まれるロマンス。唯一絶対のキスが、クソカッパとのクソ接吻に塗り替えられた時、燕太は嘔吐する。その虹色の理由を、一稀は気にしない。多分、燕太は弟じゃないから。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
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その春河と、燕太『兄ちゃん』がかなり濃い目に繋がっているのは、非常に面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
今までの伏線を回収する形で、カラフルな車椅子を公開する春河。彼が諦めず、ミサンガを繋げてくれたおかげで、燕太は愛と欲望を否定せずにすむ。
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物質世界では近寄りもしないのに、仮想世界では全てを投げ売って繋がりを維持しようとする、一稀の陰り。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
それが何故生まれているかは、まだ伏せ札のままだ。家族ではないからこそ、車椅子を押せる関係性。ネズミの御者に約束のリングを奪われてしまった、灰かぶり姫の献身。
燕太がシンデレラモチーフだとすれば、水辺と跛足が強調されている春河はさかしまの人魚姫か。春河は脚を犠牲に、一体何を手に入れたのか。何が壊れたのか。魔女は誰で、魔法の薬はなにか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
あまりにも天使な春河は、その実大事なものを隠している。サスペンスはまだまだ続くのだ。
同時にスマートに明らかになったものも沢山あった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
欲望ゾンビーになってしまったものは現実との繋がりを失い、忘れられるとか。ゾンビーを生み出してる警官コンビが、カワウソ帝国に欲望エナジーを捧げているとか。
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狂気だろうと妄想だろうとお伽噺だろうと、物語にはその作品世界独自のロジックがあり、”現実”がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
その転がり方を描写してくれると、謎が謎ではなくなり、色んなモノが腑に落ちる。第一話思いっきりぶっ飛ばしておいて、『あー、なんとなく分かった!』と収めるシーンを後にちゃんと用意する。
そういうとこ、存外怠けないところが食いやすい理由かな、と思った。歴代イクニ作品でも、かなり食いやすくないスカ、さらざんまい?(個人の感想です)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
警官コンビは、帝国に反逆してどんな欲望を叶えたいのだろうか。彼らの愛はどんな形をしているかも、とても気になる。
ともあれ、燕太はミサンガというガラスの靴を履かせる王子様になり、抱きしめられるシンデレラになる夢想を秘めている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
もう一回シュートを決めて、ペンキで描いた幼い王冠を一緒に被る日を夢見ている。あるいはケツに空いた”ゴール”に一発ブチ込まれる日を。
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でもあの時キメたサラッとポーズは、何もかもが変化してしまった今、気の狂ったカッパ空間で、カッパになったときしか共有されない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
それが共有できる瞬間が、狂いに狂った非現実的悪夢の中にでもあることが、果たして燕太の(そして一稀の)幸福か、不幸か。
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クレイジーでコミカルなカッパの姿でも、燕太の黄金の夢がちょっとかなっていることに、オッサンはうっかり涙してしまった。手放すな、欲望は君の命だ。そう呟いてしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
ゲラゲラ笑い飛ばして泣くところじゃない…はずなんだけどなぁ…三話にして、かなり脳を侵食されている感じが強い。
ホント”ユリ熊嵐”の時も、熊ショック熊ショック笑っているうちになんか真顔になってきて、相当グロテスクでヤバいネタをフルスロットルな笑いで覆い隠している構図に、三話あたりで気づいてきたからなぁ…遅効性の毒ですよ、イクニのエキセントリックは。気づいた時にはもう遅い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
そしてまだ安全圏で、欲望を隠している悠。オメーも相当なモン、心に秘めてんだろ? 知ってんだぞ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
これも暴かれた時相当切なくて、醜くて、綺麗で、もう心がグラグラにされて黙ってられねぇ気持ちになるんだろうなぁ…。春河の描写で分かる通り、周到だもんこのアニメhttps://t.co/vLBituJ9uC
ワケ解んないなりに脳髄にぶっ刺さったイマージュが、後々の描写で複雑に繋がって意味を作り、脳髄をぶっ飛ばす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
春河の車椅子もまた、その起源というミステリを周到に仕込まれて、キコキコとこちらに近づいている。それを推しているのは、春河を愛する兄ではない。赤の他人な”燕太兄ちゃん”なのだ。
一つわかったのは、この話は境界線を撹拌し転倒させるカーニヴァルであり、『こいつはこういうの! 子の話はこういうの!』と固定観念にしがみついていたら、すぐさまぶっ飛ばされる、ということだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
今見えているものの裏に、凄まじい爆発が秘められている。油断も安心も出来ないまま、次の嵐を待つ
それが幸福な物語体験であることを、僕(と僕ら)は知っている。イクニチルドレンだからね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
伏せ札は山ほどある。あるものは顕になり、あるものは裏向きのまま、視聴者の解釈に委ねられるだろう。その複雑な綾織に包まれ、溺れる快楽は、リアルタイムで物語を追うことでしか生まれない。
だから、どっぷり溺れようと思う。それは多分、水の底の都に飛び込むようなエロスとタナトスを、たっぷり含んだ旅になるだろうから。溺死寸前まで息を止めて、作品に潜る。楽しいぞー。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
次回はどんなスキャンダルが巻き起こり、我欲と純情が踊るのか。非常に楽しみです。俺このアニメ好きだわ。
追記 まー自分が見つけた(と思った)モティーフに拘泥しすぎると、素直に作品に焼き付けられているものを見落としまくるので、あんま気にしすぎてもしゃーないんだがな。
さらざんまい追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月27日
春河のモチーフ(の一つ)が人魚姫だと、オチは”泡になって消える”であり、美しいもののため、愛の為に消えていったイクニキャラが脳裏に激しくフラッシュバック。
ウテナ(TV版)…晶ちゃん…銀子…あの子も気高く哀しい道を歩いていくのかな…瞼の裏の残影だけが残るかな…。