ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
血なまぐさい風が、人に死を運ぶ時。犠牲者達は天を仰ぐ。
空が落ちてきそうなのは、冥府が近づくからか。それとも、空に近づいているからか。
さよなら、レオーネ・アバッキオ。
結果ではなく、そこにたどり着くための意志の物語は続く。
そんな感じの、アバッキオ退場エピソードである。原作でも屈指の名シーン(だらけだけどさこのお話)を、見事な演出と情感で”アニメーション”に仕上げてくれた。アニメ五部スタッフ、信頼しかねぇ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
リゾットの始末からボスの卑劣、呆気なさ過ぎる死、託されたもの。一話にたっぷり詰め込みつつ…
焦った感じはない。アバッキオが何を求め、どう足掻いてきたか。岩に何を刻もうとしたかがよく判るエピソードであり、非常に良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
”そして、わたしはこの岩の上にわたしの教会を建てよう。黄泉の力もそれに打ち勝つことはない。(マタイ 16:18)”
物語は敗北者であるリゾットの臨終から始まる。後のアバッキオのように、落ちてくる空を見上げる暗殺者。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
ボスは『尊厳ある死と引き換えに、血を戻せ』と迫る。ブチャをキレさせたときと同じく、誇りを理解できない振る舞い。
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蛙、あるいは少年の血を啜る”吸血鬼(≒ジョルノの父親、乗り越えるべき邪悪、光の下では生きていけない存在)”の振る舞いは、ボスにとっては当然の行為だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
大事なのは生存という結果であり、その過程でどんな無様が巻き起ころうが、知ったことではない。”過程をふっとばし結果を手に入れる”のだ。
リゾット最後の一撃は、”キング・クリムゾン”の無法で無効化される。時を吹き飛ばし、因果を無視する絶大な”王”の力。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
そのパワーと、尊大ぶっているが『あ、貧血すっごいんで直してくれます? 殺すけど』と持ちかける卑俗さは、なかなか釣り合わない。でもインチキにつえーんだこの男…。
しかし携帯電話にされたり、ジュージュー血を啜られたり、カエルくんはボス相手にひどい目会いっぱなしだな…服剥ぎ取られ、口を縫われ、血も獲られた少年も大変だけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
誇り高く降伏を呼びかけたブチャと対比することで、闇討ち上等なボスの低劣さは際立つ感じね。
命の取り合いしてんのに、公平に振る舞ってしまうブチャはホントマフィア向いてないけど、その高潔さが黄金の風を呼び、チームを結びつけもした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
分断行動を選んだ結果、アバッキオが死にもした。
死に際に岩にメッセージを刻むほどの”意志”を蘇らせたのも、ブチャの清い甘さ、その結果だ。
死という結末は一つの過程であり、アバッキオが残した手がかりを手に、チームは歩き続ける。ブチャラティの魂の色が焼き付けられた空が、色んな人の元広がっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
ブチャがあの時見た、曇天の先にある希望の光。アバッキオに降り注いでいた雨が、止む時が来たのだ。https://t.co/uSh7yz9bIw
今にも落ちてきそうな色合いの空に、引っかかったサッカーボール。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
アバッキオは暴力でガキを散らせることはせず、手を伸ばしてボールを取ってやる。その情が、ボスの不意打ちを呼び込む。
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ボールを取ってやる当たり前の優しさを顕にしなければ、獰猛なギャングスタのまま振る舞っていれば、アバッキオは死ななかったかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
でも、アバッキオの魂はそういう形をしていたから、運命に引き寄せられるようにボールを触る。『正しいことをしたい』という願いを、無視できない。
あまりにも手早く行われる、アバッキオの殺害。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
花京院のように『あっけなさ過ぎる…』と言いたくもなるが、誰かの死とは(少なくとも荒木先生の中で)そういうモノなのだろう。
それは唐突に訪れ、血まみれで生々しく、あるいは死体も残らない。否定し得ないほど生々しく、だからこそ否定したくなる。
ナランチャの慟哭、死を否定する幼い魂が痛々しく突き刺さる。命の取り合いを覚悟しても、仲間の死は身を切られるように痛い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
死地から仲間を救ってきた”ゴールド・エクスペリエンス”も、既に失われた魂を救うことは出来ない。死という結果は、あっけなく冷たく、重たく空からのしかかる。
アバッキオが今際の際、身を置いた世界。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
グリザイユの空の下で、アバッキオは通りに踏み出せない。光と闇の境界線の中で、彼は真実へと向かう意志、過程と結果の関係について、警官と話し合う。
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バスに乗る。”みんな”と一緒に動いて、一緒に進む。
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アバッキオはその意思を見せることで、踏み出せなかった通り…光の下へと踏み込んでいく。
自分が死んだこと。かつて失ったもの(それを再生するために”ムーディー・ブルース”が発現したのだろう)と出会うこと。前進の意志を持ち続けること。
それがアバッキオの灰色の世界に、光を取り戻していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
後悔はある。過ちも、未練も。
しかし警官がいうように、そこは”終点”である。アバッキオの物語は、ここで終わる。そして、終わらない。
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友の死体を前に、チームはバラバラの方向を向く。アバッキオの死という現実…たどり着いてしまった”結果”を否定するナランチャを、チームは上手く受け止めきれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
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混乱し、曇った空のように見通せない状況。ナランチャの混迷がジョルノを押し、死体になってしまったアバッキオを揺り動かす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
アバッキオは死んだ。物言わぬ物体になってしまった。
その事実を確認することが、ナランチャとチームに光をもたらす。それは動かし得ぬ真実なのだ。
自分の動揺がアバッキオ最後の尊厳を汚してしまったことに、動揺するナランチャの表情が良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
命の取り合い、殺し合い。それを稼業にしつつも最後の優しさを残すからこそ、ここでナランチャは乱れ、現実を認め直す。
アバッキオは死んだ。死は尊ばれなければいけない。だから、置いてけぼりは嫌だ。
死を前にしたリゾットに取引を持ちかけたボスと、死に乱れ死を確認して乱れを直すチームの対比。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
ブチャラティは生き残るために、明日の方向へと足を進める。血が出るほど唇を噛んで、血まみれのアバッキオを置き去りにする。
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それはボスのように、生存という”結果”を求めてのことではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
悪徳にまみれた世界を変えるべく、正しい道のりで真実に歩いていく過程。それを共に歩んだ友の命を、無駄にしないためにも背中を向ける。あまりにも正しく、苛烈な決断を、チームは飲み込んでいく。ナランチャは起き上がれない。
正しさの方向に歩みを進めようとした時、ジョルノが手のひらの中の石に気づく。末期に刻まれた、反撃の狼煙。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
確かにレオーネ・アバッキオが生きて、隠れ潜もうとする悪を警察犬のように追い回した証拠が、そこには宿っている
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てんとう虫は光を求める虫だ。今にも落ちてきそうな空に向かって、けして届かないとしても高く飛び続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
その途中、力尽きて墜ちるものもいるだろう。イカルスの翼はしかし、想いを同じくする戦友に引き継がれ、彼らは走っていく。光の方角、思い出の方角へ。
さんざんツンツンしてたアバッキオだが、ダイイング・メッセージは”ゴールド・エクスペリエンス”の能力がなければ再生できない形で託された。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
誰かが、誰かの欠落を補う。チームとしての信頼感を、元警官は新入りにちゃんと預けていたのだ。
アバッキオ最大の欠落が、警官としての生き方を完遂できなかったこと、同僚を死に追いやってしまったことにあるのは間違いない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
それはブチャラティとの出会いである程度満たされ、しかし埋まりきりはしない。失われたものは、二度と同じ形で再生はしないのだ。
しかし心の何処かで失われた法と正義を求めていたからこそ、アバッキオはヴェネツィアで船に乗った。ボスの黒い闇ではなくブチャラティの黄金の風が、自分を満たしてくれると夢見た。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
それは正義の犠牲者だった同僚から、引き継いだ意志の発露だったのではないか。
ならば岩に刻まれた意志を引き継ぎ、光の方向へ進んでいくチームもまた、真実を求めて一歩ずつ進んでいく。意志を誰かが引き継ぐのなら、死は終わりではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
そう思えたから、アバッキオは穏やかな終わりにたどり着けたのか
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男たちは血を飲み込んで未来へ進み、一旦足を止めて過去を振り返る。死を前にアバッキオが残してくれた意志を確認し、今度は力強く、同じ方向へと進んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
てんとう虫のように、あるいは巡礼者のように。揺るがないものを目指し、真実への道程を歩いていく。
四部を見ても判るように、ジョジョ世界には霊界が実在する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
だからアバッキオがたどり着いた美しい場所、同僚との再開は死を前にした幻影ではなく、一つの事実なのだろう。
だがもしそれが夢だとしても、綺麗な、力強い夢だと思う。
あの雨の通りで、ブチャラティの手を取ったからこそ。まだ自分の中にくすぶる光への意志を、捨てなかったからこそ。甘ちゃんな野望を持つ新入りを、激闘の中で信頼したからこそ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
アバッキオは蓮っ葉な態度に奥に、微かな夢を観た。
自分がよくやったと、真実に向かう途中なのだと思えるような。
それがあれば…そして現世に取り残される戦士たちが思いを引き継ぎ、真実へと一歩ずつ進んでくれるなら。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
今にも落ちそうな空を杞憂するのではなく、地上の重さに縛り付けられるのではなく、歩みを終えて旅立つことも出来る。
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さよなら、レオーネ・アバッキオ。その死に顔は妙に綺麗で、後悔や苦悶の色合いはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
超現実的に過去を巻き戻し、死人に会えたからだろうか?
『全部ダメにしちまう』と自重した生き様が、実は誰かの未来に繋がっていて、終わりは終わりではないと思えたからだろうか?
そのどちらでもあるのだろう。ギャングスタの生き様は闘いを呼び、死と犠牲を飲み込んでいく。この後も激闘の中で、数多死ぬだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
それでも、あの美しい空の下にたどり着けるのなら、哀しくとも惨めではない。
さようなら、レオーネ・アバッキオ。
かくして、物語は続く。来週も楽しみです。
追記 星座と同じで、花言葉も観測者の願いを投影できる。作者の願い、読者の願い。過剰に願望が溢れると、作品の事実ではなく見たいものを見るようになる。結構扱いが難しいフェティッシュだと思う。
アバッキオが死んだ場所に咲いてる花の同定、まさに百花繚乱で色々説でてる現状が個人的には面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
どんな花言葉をあの黄色い花に背負わせるかで、その人がアバッキオ(の死)に見たいものが反射しているようで、認識は多種多様だな、と思う。
個人的には”黄色”という色自体がアバッキオ的で面白いなぁ、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月27日
東洋に置いては土用、中央、皇帝色であり、非常にポジティブな色合い。西洋に置いてはユダの色彩、裏切りの色。後に活力の色として再評価される色。
彼が人生を送ったイタリアに於いて、どんなパブリックイメージがあるのだろうか?
アバッキオが死んだ場所に咲いてる花の同定、まさに百花繚乱で色々説でてる現状が個人的には面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月26日
どんな花言葉をあの黄色い花に背負わせるかで、その人がアバッキオ(の死)に見たいものが反射しているようで、認識は多種多様だな、と思う。
個人的には”黄色”という色自体がアバッキオ的で面白いなぁ、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月27日
東洋に置いては土用、中央、皇帝色であり、非常にポジティブな色合い。西洋に置いてはユダの色彩、裏切りの色。後に活力の色として再評価される色。
彼が人生を送ったイタリアに於いて、どんなパブリックイメージがあるのだろうか?