ロード・エルメロイII世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note-を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月13日
過去から帰還したロードのもとに舞い込んだのは、殺人事件解決の依頼だった。
条理を覆した場所にある魔術師のルールも、永遠ではありえない。閉ざされた箱の中に配置された遺骸の星系は、一体何を物語るのか。
そんな感じの、ロード・エルメロイ二世最初の事件である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月13日
魔術ミステリのモデルケースとして、作中の魔術的常識を紹介し、そこから外れた現代魔術を見せ、真相究明とVS亡霊アクション、苦味の残る動機解明まで。
マーダー・モデルケースとして盛りだくさんで、よくまとまったエピソードだった。
べったり足を止めて喋りで回していくと思いきや、平時ではワトスン役だったグレイくんが大活躍、いい感じのアクションで盛り上がった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月13日
容疑者兼解説役のフェルナンドさんが、島田敏ボイスで解説入れまくるおかげで、妙な圧力が発生してたのは面白い。ベテランはやっぱ凄いなぁ…いるだけで引力出る。
七惑星と人体の照応、地動説の”発見”によるオカルトロジックの変化。それについて行けない伝統派と、革新ゆえに疎まれる現代魔術。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月13日
今後も謎を支える地盤になっていくだろうオカルト知識が、なかなか良いテンポと演出で開示されて、ミステリを転がすのに不足はなかった…はず。
自分にはそれなりに馴染みのあるジャンルなので、白紙の状態で今回の事件を読んだ人と同じ立場に、なかなか立てないんだよね。体内にオカルト分解酵素が、それなりに用意されている、というか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月13日
その色眼鏡を意識した上で、共同脚本オカルト担当の三輪さんはいい仕事したと思う。
今回のケースは魔術だけでなく、ミステリとしての方向性も色々例示をしていて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月13日
なんでもありの魔術ミステリ、”いかにして”を問うても意味はない。重要なのは”何故”であり、それは犯人だけでなくその周辺にも及ぶ。
女二人の共犯を暗示して終わるラストが、苦くて良い。
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エルメロイとグレイは”家”に帰ることで事件を追えるが、”家”に閉じ込められた二人は父を殺し、息苦しい”家”を壊すことで自由を得る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月13日
あるいはファーゴ家の継承者として、”家”を乗っ取ることでか。未必の故意で間接殺人を行った元教え子を、悲しく見つめるロードの目線が良い。
エルメロイはグレイに荒事を頼むたび、あるいはそのアルトリア顔を見るたびに辛そうな表情を見せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月13日
その背後にどんな事情があるかは、今回のモデルケースでは顕にならない伏せ札だ。この脆さと寂しさが嗜虐心をそそるってわけよ。
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無窮のはずの星の光も、かつて教え子として無邪気に触れ合った心も。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月13日
全ては時の流れの中で変化し、永遠は手のひらを滑り抜けていく。
そんな道理に反抗し、根源に至ろうとして悪霊と化したアーネスト。旧きを検めることすらあまりに難しい、魔術血統に刻まれた重い宿命。
疎まれつつ真実でもある現代魔術のロードとして、今後もエルメロイ二世は時間の重さ、それを跳ね除けようとする魔術師の妄念に向き合っていくことになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月13日
自身魔術師でありながら、第四次聖杯戦争で”そういう夢”には決別できたウェイバーくん。その先にあるエルメロイの道は、しかし別種の苦さがある
どっちにしても、時は逆しまに戻らない。世界の中心に地球(≒自己)がある世界観は、魔術とは別種の科学的叡智によって切り崩され、ウェイバー少年の思春期はとうに終わっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月13日
だがその残滓は色濃く残り、脆い少年の後悔を強面に浮かばせ、”家”を檻に変え永遠を求める。
今回の話がモデルケースとして良く出来ているのは、殺人事件(あるいは魔術ミステリというジャンル、作品の全体像)というマクロコスモスと、そこに閉じ込められたキャラクターの心…ミクロコスモスがしっかり照応しているからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月13日
皆星を見上げ、そこに永遠を見る。だが、星の光すら色褪せるのだ。
そこで悪霊、あるいは殺人者になってしまうのか。あるいは後悔に眉間を曇らせつつ、何か新しいものを追い求めるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月13日
今後物語は、謎と一緒にそういうモノを追うのだろう。それが多分、未だ終わりきっていない憧れと後悔に決着を付け、ウェイバーくんを大人にする運びと重なっていく。
そこに、あの時見た騎士王にあまりに似過ぎている従者がどう絡むかも、なかなか楽しみである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月13日
上田麗奈の訥々とした喋りが、魔術初心者のワトスン役と上手く噛み合い、状況説明をスムーズにしていた。そういう”仕事”だけでなく、静謐な美しさが魅力ともなっていた。
家を縛る魔術という規範からすれば、発言権がない従者。しかし、運命を預けるに足りる共犯者でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月13日
ロードとグレイの関係が、メアリとクレアの繋がりに対照しているのも、奥行きがあっていい。研究成果だけかすめ取られたフェルナンドは、共犯者たり得なかったシャドウでもあるか。
静かな喋りで進んでいくエピソードだが、よくコントロールされた美術が独自の存在感を持ち、しっかり場を保たせていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月13日
犯人にして被害者が永遠たれと望み、その妄念の被害者にして隠れた犯人でもある娘が壊そうとした檻。カーテンは鉄格子よりも重たく、光を閉ざす。
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そこから抜け出し、門の外の広い世界で物語は決着する。Whyを追う探偵として、ロードはかつての教え子の闇を暴き、透明な殺意を言語化するしかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月13日
その呪文が紡がれれば、自分が傷つくと判っていても。探偵は真相を前に引くわけには行かないのだ。
”家”からの開放が必ずしも幸福を意味せず、真相の究明が重苦しい変化を暴き立てる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月13日
天動説から地動説へ。進歩的科学史観なら”成長”と位置づけそうな術式の変化は、父を悪霊に変えてしまう。過去を否定することが、必ずしも正解とは言えないのが、メイガス達のルールだ。
エルメロイの名を継いだものとして、第四次聖杯で旧弊な魔術師の愚かさ、そこから抜け出した魔術使いの悲惨を見たウェイバーくん。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月13日
”大人”になった彼は相矛盾するやるせなさの中で、それでも事件に挑み、解決する。直接的な暴力を、少女の繊手に預けてしまう卑劣を自覚しつつ。
今後もロードと従者は、様々な矛盾を秘めたミステリに挑むだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月13日
全てがしっくり収まるようなシンプルな謎解きは、魔術には似つかわしくない。複雑に絡み合った術式と、何よりも恐ろしい人の心。流れ行く時の残酷さと、それでも見上げてしまう憧れの光。
そういうモノを、この話は追う。
それをしっかり示せた、とても良い第2話でした。ミステリー・パズルとしての指針だけでなく、物語全体のトーン、キャラクターとドラマの方向性を鮮明に届けるモデル・マーダーケースでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月13日
やっぱウェイバーくんがエルメロイに為り切っていないところが、甘やかで良い。フラフラ不安定な主役は可愛い
不安定であることを自覚し、己の至らなさとか卑怯加減とかを苦く噛みしめる表情が多いのが”人間”って感じするね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月13日
どーせこの後、人間やめきったクソ魔術師とクソの投合するんだから、主役が後悔も哀しさも背負える柔らかい人格だって分かったほうが、作品に体重を預けれるわけで。
彩度を落とした色彩の中で、静かに展開する物語のムードも良い。イギリスの調度や風景を頑張って書くことで、ロードと従者が歩く世界の”匂い”が身近に感じられる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月13日
ある意味旅行記みたいな楽しさがあるので、今後も大事にしてほしい所。色んなイギリスを見たいな。
星の光も、いつか色褪せる。しかしそれでも、人は星を見上げる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月13日
イスカンダルへの思いが”今”に繋がっていると見せた前回と、どっかで通底するエピソードでした。
今回の大アルカナは”星”。正位置なら希望と閃き、逆位置なら高望みと失望。探偵が征くべき道には、沢山の落とし穴が待っているのでしょう
その露払いをするのが、フードにかんばせを隠した美しき従者だということも、今回しっかり描かれました。抑圧の効いた前半と、大暴れなアクションの対比も良かったですね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月13日
アルトリア顔を恥じるグレイの過去には、何があるのか。そこにロードはどう関わっているのか。ミステリは続く。楽しみですね、
追記 ”何か”を押し殺し隠し、しかし共有しているミステリの空気が、関係性に敷衍した結果妙にエロくなってるのかな。素晴らしい。
しかし作品全体を覆う暗めのトーンを背負ってか、墓守然とした清廉な気配との噛みあわせか、年齢差が結構あるからか。エルメロイとグレイに漂う空気が妙にエロくて、凄く良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月13日
脂っこく押し込むリビドーではなく、静かで淫靡な、薄衣の奥のエロス。今後も静かにエロく描いてほしい。