イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アイカツフレンズ ベストエピソード七選

アイカツフレンズが終わった。新番組たるオンパレードがどのくらいその気風を残すかわからないが、そのタイトルを看板に貼る放送は終わった。
僕はアイカツフレンズのことが好きだし、スターズと上手く繋がれなかった僕を(大げさだとは思うが)救ってくれたアニメだとも思う。それが(あえて言うけども)志半ばに終わるのはとても悲しいが、同時に今まで積み上げられた物語が嘘になるわけでもないし、消えてなくなるわけでもない。
全76話の物語は全てがあってアイカツフレンズだが、特に心に突き刺さったものを7つ選んで、僕なりの感想を添えていきたいと思う。

 

・第1話『ハローフレンズ!』

今後も『友達』はあいねにとって特別なパワーワードであり続け、つまり彼女を主役に据えるアイカツフレンズにとっても、大事な言葉になるだろう。 その一手目となるあいねとみおの出会いが、明るく楽しくちょっと真剣で、いろんな可能性に満ちたモノとして描かれていたのは、非常に良かった。

アイカツフレンズ!:第1話『ハローフレンズ!』感想ツイートまとめ - イマワノキワ

 第一話。ここでしっかり作品が挨拶をしてくれたことが、物語とキャラクターに信頼を寄せ、しっかり付き合おうと思える可愛げに繋がったと思う。
今後フレンズを貫くことになるロマンス文法は最初からフルスロットルで、恋に似た感情で繋がりつつ、”フレンズ”としか言いようがない特異な関係性を、しっかり初手で突き刺してきた。
『これぞフレンズ』というスタンダードを初手に出せたのは本当に凄くて、適度な笑いと緩まない生真面目さが共存し、明るく楽しい話である。あいねの『トモダチ』とみおの『フレンズ』、それぞれの強さと特異性が最初からしっかり見えて、のちの物語を強く暗示しているのも素晴らしい。
第一話に必要なものがみっしりと詰まった、完成度がとにかく高いエピソード。

 

・第23話『叫ぶ、瞬間』

演出、構成、作画に芝居。いろんなモノがフレンズの規範から離れているのだが、一発一発のパンチが圧倒的に強く、グッと見るものを引き寄せる

アイカツフレンズ!:第23話『叫ぶ、瞬間』感想ツイートまとめ - イマワノキワ

 アイカツフレンズとしてというより、京極監督の映像作品としての仕上がりがとにかく鋭く、印象的なエピソード。映像作品としての攻めた仕上がり、コースアウト寸前に温度を上げまくる尖った演出を受けて、舞華のキャラクター性が生き生きと吠えてくるお話だ。
ロマンス文法を一旦下げて、エマちゃんよりも家族に強く接合した物語も、変化球ながらしっかりストライクを取る力強さに満ちている。フレンズは特別な誰かと繋がるからこそ、そこを窓に色んなものと出会い、風通し良く進んでいく世界を大字に描いてきた。”家族”もそんな、フレンズの外側にある大切であろう。
いつもよりヴィヴィッドに暴れまわる舞華の悩みを、ずーっと後ろで見守って最後に最高のアシスト入れるエマちゃんの頼もしさ、愛おしさも凄い。アクセルを踏んだ展開の強さが目立つけど、女の子がとにかく可愛く見えるのがこのエピソード、一番の強さだと思う。

 

・第31話『伝説の101番勝負!』

押さえられる文脈、冴える作画、唸る演出。素晴らしい回でした

アイカツフレンズ!:第31話『伝説の101番勝負!』感想ツイートまとめ - イマワノキワ

 第11話、第28話と、ピュアパレットの運命が錯綜する瞬間はいつでも力強い。唸りを上げるロマンティック、余りに過剰なエモーション。作品を転がすエネルギーが全ての瞬間に溢れ出し、問答無用に心を動かされる。
フレンズとは何なのか。恋のように熱く強い繋がりを持ち、同時に恋とはまた違う関係性。アイドルだからこそ、友達だからこそお互いを認め、高めあえる不可思議な距離感を、ピュアパレットは一歩ずつ歩いてきた。
その一つのピークがこの第31話となる。出会い、別れ、再び出会う。その力強い感情が何処に行き着くかを、時にコミカルに、時にエモーショナルに描ききる筆と演出は、巧妙にして情熱的で、フレンズの精髄と言えるだろう。
ここでもやっぱり女の子たちはとにかく可愛らしい。それは彼女たちが今を精一杯生きて、走り抜いているからこその輝きだ。悩んだりぶつかったりも時折するけど、楽しいと嬉しいが世界に満ちていて、立ち止まる暇などない輝き。
そんなアイカツが点火したのは、お互い出会うことが出来たから。それを確認し、世間の評価でもデジタルな点数でもなく、お互いの気持だけに向き合って再結成を決める子のエピソードのエネルギーは、やっぱり凄い。
恋の文法を窃盗していたフレンズが、ヘテロ恋愛のギズモではなく”アイカツ”だからこその才能の呼応、高め合うパフォーマンスあってのものだとしっかり説得できる回なのも、評価が高い理由だ。それは恋に似て、恋とは違う感情なのだ。

 

・第47話『アイドルのココろえ★』

ココちゃんは優しい嘘でアイドルたちを守り、死んだ。最後に膝カックンなオチを(表向き)つけていたが、そこで描かれているのは”死”であり、アイカツでは慎重に排除されてきたものだ。

アイカツフレンズ!:第47話『アイドルのココろえ★』感想ツイートまとめ - イマワノキワ

 一期は勝敗のピークを第43話に起き、残りの二ヶ月は”てっぺん”に立ったあとの地盤整理と、勝負論の中では描けなかった脇役の描写に当てていた。変則的だが、フレンズの狭く暑い距離感と同時に、そこから広がっていく世界の広さを大事にした運びを体現した終盤で、僕は好きだ。
そこにねじ込まれた、ナビゲーターAIのアイドル修行。夢を必死に追いかける”子供”の立ち位置を超えていくピュアパレットが、優しく見守るべきビギナーの物語……を大きく超えて、電子生命の生と死を描いた、SF超大作である。
このエピソードはあくまで単話、一話限りの番外編である。そういう立ち位置だからこそ出来た超変化球だといえるし、実際この後ココちゃんを掘り下げる物語はなかった。(二期が一年やれればあったかも知れないが、そうはならなかった以上その可能性を悔やむことは空しい。実際に目の前にあるものしか、我々は掴めないのだ)
しかしそれでも、ココちゃんとアイドルの物語としてこれ以上の番外編はなかっただろうし、ややブラックな味わいが作品に陰影をつけた意味でも、大事な話だと思う。フレンズを組まない(組めない)存在が真ん中に入る話として、一番速度が出た魔球。

 

・第70話『新たなるステージへ』

こっからのシーケンスは流石の一言で、フレンズのロマンス文法、心理主義が最大限生きた演出となった。

アイカツフレンズ!:第70話『新たなるステージへ』感想ツイートまとめ - イマワノキワ

 二期はアイビリーブの話だった。それを疑う人はいないだろう。実力は宇宙規模なひびきがフレンズとしては一年生であり、強すぎる情熱でアリシアを焦がしてしまっていた事実。それを跳ね除けるアリシアも、重たい責務に凍りつかせていた情熱を隠しいる秘密。
それらをどっしり時間をかけて描き、学生とは少し違う、実力も責任も重たくなった社会人がどう復縁し、自分の中に燃える愛おしさを飼いならしていくかをしっかり追うのが、二期のメインシャフトだ。
それに共鳴できない人には結構厳しいシリーズだったかも知れないが、一期で手に入れたものをリセットして勝負論に走ったり、過度に強く書きすぎて弱さ(の中にある強さ)を背負わせられないよりも、遥かに良かったと思う。僕にとって、アイビリーブはチャーミングな、応援したくなるフレンズだった。
そんな二人の物語がピークを迎え、一つの答えにたどり着くのがこのエピソードだ。とにかく橋の下のアジールに滑り込んでからのカラーリング操作、カメラと照明のコントロールが抜群で、フレンズの強みであるロマンティックな心理主義が最大限荒ぶるお話だといえる。
お互いのプロフェッショナリズムが邪魔をして、なかなか伝えられない純粋な思い。年や成功に邪魔をされない、あまりにも真っ直ぐで熱い愛。それがお互いの胸に届き、フレンズが不死鳥のように蘇る。
一期で描かれた他のフレンズとは、また別の繋がり方、別の力。二期がアイビリーブを描くことで、何を作品に取り入れたかったかがよく判る、非常に鮮烈なエピソードである。

 

・第72話『LOVE ME TEAR』

ラブミーティアの特質だった”濃さ”を最大限活かすラストエピソードで、とても良かったです。このネットリ過大な”質感”がフレンズなんだッ!!!!!

アイカツフレンズ!:第72話『LOVE ME TEAR』感想ツイートまとめ - イマワノキワ

 ラブミーティアが好きだ。あんたもそうだろ?
主役が乗り越えるべき壁として、デカいスケールのアイドル像をしっかり背負い、それだけで終わらない人格と愛を請け負う。あまりに強すぎ偉大すぎた”神崎美月”という偶像以来、アイカツのラスボスはいつでも描き方が難しいけども、ラブミーティアは風格と人間味のバランスが、非常に良かったと思う。
ピュアパレットに”負けた”ラブミの格を落とさず、次に繋げるにはどうしたら良いか。『アイカツVS貧困、アイカツVS業』というところまでステージを上げて、カレンさんをアイカツ慈善活動家にしてしまったスタッフは確実にやりすぎだが、同時に死ぬほど信頼もできる。
僕らが見てきた神城カレン、僕らが見てきたアイカツならば、そこまで行かなければ納得はできないのだ。だからその過剰さは、いつだって正しい。己の中に修羅を秘めればこそ、世界を嘘ごと愛そうとしたカレンさん。その業を全て背負い、彼女が見たい景色まで一緒に駆け上がったミライさん。
お互いの魂の闇まで全部ひっくるめて抱きしめる関係性は、淫靡で官能的ですらある。フレンズのロマンティックな……あけすけにいえば『あ、この後絶対にヤってる……あるいはセックス以上のコミニケーションで繋がっている……同じ呼吸、同じリズム……』感じというのは、キャラクター描写に甘やかな艶と生命の躍動を、作品に特別な感情の湿度と熱量をそれぞれ与える、とても大事なものだと思う。
そのエロティックな色彩が一番色濃く刻まれているのは、このエピソードかな、と思う。お互い世界クラスのビジネスパーソンだからこそ、特別な”あなた”と語り合うために銭を大量につぎ込んで時間を作り、特別な場所を二人きり選び取る。
そこに流れる時間的質量の濃さ、関係性の熱量こそが、フレンズの卓越性そのものである。ラブミーティアが好きなのは、彼女たちが作中一番アイドルであり、一番フレンズでい続けてくれたからだ。

 

・第76話『みんなみんな フレンズ!』

ピュアパレットのアイカツは続く。幕が下りた先で、人生という物語は続く

アイカツフレンズ!:第76話『みんなみんな フレンズ!』感想ツイートまとめ - イマワノキワ

 もちろん、フルマーク百億点のラストエピソードではない。アイカツのクライマックスは最終話一個前に置かれるものだし、フレンズはオフピークの時間を長く取った構成でもある。
見たかったもの、描かれるべきだと思うものは沢山ある。わかばちゃんがフレンズを見つける話、キャットがスペカツに挑み勝利する話、NYでしっかり学んだかぐやちゃんがお姉さまのもとに戻ってくる話。みんな見たい。
オンパレードがどういう計画で放送され、フレンズ二期が半年で終わる裏にどんな事情があるのか。僕は知り得ない。ただ、フレンズにはその時間しか用意されておらず、すべてを描ききるにはやはり足らないものだった(と、少なくとも僕が感じた)のは事実だろう。
しかしその上で、フレンズ全員が進むべき道にしっかり踏み出せたこの終わりが、僕は好きだ。なんとか必死に道を整え、全員の物語に道筋を付けて、ちゃんと続いていく明日に踏み出すために必要な準備を仕上げて、この余韻にたどり着けた。それはとても大変なことだ。

そう思えるのはこのエピソードの前、第75話でアリシアとピュアパレットが二期で背負ってきたものをしっかり果たせたと(なんとか)描けたおかげであるし、この最終話が新しいものを描いたおかげだとも思う。
フレンズ文法で描かれる、ヘテロカップルの結婚。大人が人生を決める一大事に、コミカルながらちゃんとコミットできるようになった少女たち。婚礼という”ゴール”を迎えても続いていく日常。
”♪きょうの自分にもさよなら あすはもっとその先へ”
かつてそう歌われた理想にしっかり乗っかるように、少女たちの未来は漕ぎ出していく。語り足りない、バランスが悪い、瑕疵がある。全て事実だろう。そうなるしかない制限の中で物語は紡がれ、理想に追いつけない弱さだって、当然物語は背負う。

でも、それでも。アイカツフレンズに出会えたこと、そこで紡がれた物語は嘘ではなかったし、意味をすべて失ってしまうものでもない。
特別な誰かを選んで手を繋ぎ、だからこそ新しい世界に飛び出していけること。何かを乗り越えてもなお物語は続き、終わりの先にも光がまだまだ待ち続けていること。”みんな”と向き合うために必要な力強い自分を、かけがえのない”あなた”と、その先にいる”誰か”と一緒に探していくこと。
そういう事を、ちゃんと語ってくれるアニメだった。ちゃんと語りうるアニメだった。だから、この終わりに(なんとか)辿り着いて、良いアニメだったと終われる奇跡を、僕は喜びたい。

他のエピソードにも、というか全ての物語を僕は寿ぎたい。どの話の何処が素晴らしかったか、心を動かされたかは、一年半積み上げた感想の中に、多分刻まれている。だから、これだけいえば十分な気もする。

ありがとう、アイカツフレンズ
僕はこのお話が好きだったし、ずっと好きです。