petを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
ヒロキが会社の道具として振り回す、無垢なる暴虐。
その重たさに耐えかね運ばれた病院で、少年は風を感じる。
導かれた先、霊安室。眠る男の赤い夢が、残酷な真実を子供に教える。
一方司は”社長”に呼ばれた上海で、悪徳を飲み込めぬまま嘔吐する。
罪が罪を呼び、罰が罰を誘うのなら。
そんな感じの、業の大渦(カルマ・メイルシュトローム)地獄絵図、加速を続けるpet第9話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
自分の能力が生み出す悲惨を直視してしまったヒロキは、風に誘われ真実を知る。
ヤマ親を殺した歪みが仮面を壊しつつある司は、悪徳の食卓、人倫の荒野に嘔吐する。
全くもってのっぴきならない、人が人であるが故の苦しみ。その渦中にある異能者達の、迷走と祈り。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
非常にこのアニメらしい残酷が加速して、面白くも切なく、苦しくも眼が離せない。
ヤマ親の支配から飛び出し、嘘と悲惨に満ちた世界の真実、そこに微かに差し込む光を追うヒロキが、救いとなりうるか。
油断を一切許さない状況だが、見ている側の祈りも細く、鋭く研ぎ澄まされていくような展開である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
ブッチギリに面白いんだが、これを”面白い”と言ってしまえば人間として大事な何かを損ないそうな、しかし同時に、とても大事なものから目をそらさず、そらさせず渾身の物語を続けているような。
まぁ”petらしい”話だよ。最高ってことよ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
お話は東京のヒロキと、上海の司を行ったり来たりしながら進む。
ワーワー文句言いつつ、色々面倒見てくれる桂木さんの人間味が血の池地獄の中、一息の清涼をくれるね…萌えキャラだね…。
©三宅乱丈・KADOKAWA/ツインエンジン pic.twitter.com/NdlnesWhxO
林さんをぶっ潰したトラウマで、心身ともに衰弱・崩壊しかかってる司に対し、ヒロキは髪は靴済みで染め、栄養失調も点滴で回復しつつある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
『戻ってこられる能力』が、司とヒロキを分けてるのかなぁ、と思ったりもする。ヒロキは茶髪の自分、食べれて考えられる自分を、結構スルッと取り戻す。
司にそういうホメオスタシスはもう無くて、会社に従順なエリートの仮面と、下衆で狂気に満ちた素顔のバランスもどんどん崩壊していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
内面語りはどんどん支離滅裂になって、愛と憎悪はグチャグチャに混ざり、ヒロキがペットなのか、世界で唯一信じられる存在なのか、自分でもわからない。
”親”たる司が進むべき道を見失うのと正反対に、”親”から離れたヒロキは自分しか感じない風に導かれ、どんどん真実を知っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
それはとても辛く、自分の力と価値観で色んな事を考えなければ、対処できない現実だ。そして、それがヒロキを鍛え、育てていく。
彼は変わっていく。
社長とロンは司を迎える前に、自分に都合の言いようペットたちを固定してしまう鎖について話し合う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
復讐を果たしたとしても、哀れな子どもたちを開放する気など無い。絆という、一般社会なら”善”とされるものが、ペットを縛り付ける最悪の鎖になるのだ。
©三宅乱丈・KADOKAWA/ツインエンジン pic.twitter.com/ocfJqCXmbE
桂木さんが悪辣を装うために、吸ったり吸わなかったりしている”煙草”。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
よりストロングな”葉巻”をスパスパやりつつ、社長は凶悪なペット管理法をぶちまける。
林さんの優れた異能も、子供にイメージを分け与える優しさも、俺の悪徳を前に何も出来なかった。
復讐という物語を終えてなお、会社の飛躍と拡大する暴力を夢見る社長は、ペットたちが考えないようにしている人のあるべき姿を、噛み砕く凶悪さに満ちている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
紫煙が満ちる部屋に腰を落ち着けた”親子”は、もう悩まないし変わらない。
優しさという弱さ、絆という鎖を投げ捨てた獣の巣が、ここにはある
鏡に映せば醜悪が跳ね返るだろう己の姿を、社長たちはキにもしない。俺たちはそんなもんで、人間はそんなもんだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
そういう思考停止から、ヒロキは風に呼ばれはみ出していく。窓ガラスの鏡に自分を写し、現実とイメージの差異を確認する。
©三宅乱丈・KADOKAWA/ツインエンジン pic.twitter.com/ZCwY0IO6Q7
まーたイメージ持ちに良いように転がされてる桂木さんに、奇妙な愛おしさを覚えつつ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
自分と他人、幻想と現実の境界線が薄い少年は、経験を重ねて境目をハッキリさせつつある。
それは多分、常人が皆持つとされるヤマとタニのつなぎ目、自分だけの世界を守り保つ鎧なのだろう。
イメージを分け与えられることで自分を確立した子どもたちは、どこかで自分が”人間”ではないという違和感に苦しんでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
しかしあらゆる子供が、肉親やそれ以外の他者と触れ合い、喜びと痛みを知って自分を形作っていく。
その前段階で、明瞭な自分というものを抱えて生まれてくるものはいない。
血の繋がりはないヤマ親と子だが、その繋がりは理想の家族よりも濃く、人のカルマにより強く繋がっているように思える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
ヒロキは司の元を離れることで、親と癒着した幼年期を(痛み込みで)乗り越え、借り物ではない自分を作っていくのだ。状況は残酷極まるが、ジュブナイルだなぁ…。
ヒロキが封じられた扉の前に立つ一方、司は上海で食卓を囲んでいた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
養子縁組を通し、会社に都合のいい”息子”になるための、社交的儀式。同じテーブルの飯を食うことは、社長がロンと共有する悪徳を司が飲み込めるか、そのチェックでもある。
©三宅乱丈・KADOKAWA/ツインエンジン pic.twitter.com/cBBuBdnOmD
やせ衰えた司は、社長が笑顔で押し付けてくる脅迫も、テーブルの上に乗っかった食事も飲み込めない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
ヒロキを側に置き、悟への憎悪を炸裂させる目論見は、幹部の地位と引き換えに手放すことになる。それを掴むために、ヤマ親を潰した。
でも、なんで会社で偉くなりたかったんだっけ?
そこに考えが至ると、内面とは関係なく動く司の虚像は止まってしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
ヤマ親に捨てられたかもしれないという恐怖から逃げるため、悟が採用した『考えない』という脚本。
それは同じく、林をヤマ親とする司にも及ぶ。よりにもよって、待ち望んだ野望の結節点で。
イメージを持たない社長が、養子縁組という形で”親”になろうとするのが、ヤマ親と子のグロテスクな戯画である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
親は最高の瞬間を与え、自分を確立するための愛を教えてくれるだけの存在ではない。
凶暴な支配を笑顔で押し付け、愛を盾に生き方を歪めてくる存在でもある。林と社長は鏡合わせなのね…。
そんな”親”と、ヒロキは霊安室で対面することになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
皮肉なことに、それは社長が『絶対にありえない、あってはいけない』と恐れる事態でもある。
司を間に挟み、出会ったヒロキと林。その邂逅が”会社”に、ペットたちに何をもたらすかは、来週以降の物語となる。
ヒロキは林の風を呼ばれ、赤い死地に飛び込む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
それは潰された林の後悔と記憶が、断片となって荒れ狂う場所だ。
出会ったこと、愛してしまったことが不幸を呼ぶなら、俺の全てが過ちだった。
林さん…そいつぁ寂しすぎる…。
©三宅乱丈・KADOKAWA/ツインエンジン pic.twitter.com/hw2YR2FpXk
出口のない繰り返し。ペットがペットを作り、不幸が不幸を呼ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
過酷な嵐の中成長しつつあるヒロキが、その輪廻の突破口になってほしいところだが、どうなるかなぁ…。
そして桂木さんにとっての煙草は、人間として正しい行動を諦める麻酔薬であり、自分の意見を封殺する口枷でもあるんだろうな…。
上海と東京、内面と現実。様々な岸辺を行き来しながら、司とヒロキの運命は交わること無く、混沌の色合いを深めていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
社長が”親”として押し付ける支配は、司が仮面の奥封じ込めた苛立ちと痛みを加速させ、破綻を引き寄せる。
©三宅乱丈・KADOKAWA/ツインエンジン pic.twitter.com/epc1GPeInO
谷山紀章の怪演が、外面と内面が完全に乖離…しきれない苦しみのさなかに、司がいることを教えてくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
彼のイメージは強く傷つき、混乱している。
ヒロキはただのペットのはずなのに、自分が言われて一番嫌だった『会社のために生きろ』という命令で縛られてほしくはない存在でもある。
己の水を共有し、世界で唯一信じられる存在として手を伸ばす相手。でもそんな存在を贄に捧げなければ、社長とロンが身を置く悪徳の部屋には踏み込めない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
そのために、親を殺した。今口に運んでいるのは、その死体だ。
溢れかえるイメージが現実を凌駕し、司は耐えきれず嘔吐する。
ヒロキが窓ガラスを使って、現実の前髪とイメージの風を客観的に分離できたのに対し、司はイメージに飲まれ、実存的嘔吐に苦しむ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
きーやん一世一代のゲロ声に感動しつつドン引きだが、司の混乱は遂に、ヒロキに悟を潰させる結論へと至ってしまう。
©三宅乱丈・KADOKAWA/ツインエンジン pic.twitter.com/op40qzauKf
『もう無茶苦茶だコイツ…』という呆れと、全てがズタズタに分裂してしまう衝撃が、ヤマ親殺しにはあるんだという納得が同居する、グロテスクで哀しいシーンだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
林さん最後の言葉通り、会社に忠実なペットを演じ続けた司。
その奥で、自由になれる力を求め、エゴを肥大させた司。
自分の自由になるペットを求め、イメージを分け与え救いを求めた司。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
矛盾するイメージ全てが彼なのだが、今の彼はそれを制御も統合も出来ない。ヒビの入っていた自我が、林さんを潰したことでバラバラになってしまっている。
哀しいほどに醜くて、手が付けられないほどに破綻した、人間の肖像だ。
その真実を、ヒロキは林の心に分け入ることで理解していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
林が司のヤマ親であること。お互い潰しあったこと。司が自分を便利に扱い、都合良く何かを隠していたこと。
でもそれは、唐突な真実ではない。もう子供じゃないヒロキは、色んな事に気づいていた。
©三宅乱丈・KADOKAWA/ツインエンジン pic.twitter.com/pPKDkCxZzr
考えちゃいけない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
そうやって親とのキレイな記憶を守ろうとする悟の世知を、ヒロキの純粋な感性は受け入れ切れない。
考えを止めようとしても、風が教えてくれる。勝手に判ってしまう。
自分がどんな存在で、愛するヤマ親が何をしたかを。
そして判らない。
なんで、親を殺せるんだ?
人間として当然で、でも貫くのがあまりにも難しい問いかけを、ヒロキは涙とともに投げかける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
そう、親を殺したり、子供をモノのように扱うことなんて、あっちゃいけない。
でもこの残酷な世界で、そんな悲劇ありふれている。
当たり前の地獄を商売に、社長はのし上がり、家族の復讐を成し遂げた。
矛盾も悲惨も、売るほどに有り余る世界。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
そこに順応し、風を感じる心を殺した”社員”に、ペットたちもなっていくのか。
それとも確かに見えている人道へと踏み込み、あまりにも厳しい戦いへと進んでいくのか。
はたまた、現実と理想の狭間で打ち砕かれ、分裂した自我を危険に振り回すのか。
答えはまだ無明の先であるが、林の風がもたらした出会いはヒロキの世界を確かに広げた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
ヤマ親がヤマ親を殺し、子である自分を利用している厳しい真実へと、目を向けるしか無い状況へと連れて行った。
親子二人きり、ただ満たされる。そういう黄金の幼年期へ、ヒロキはもう帰れない。
会食でのぶっ壊れ加減を見ていると、『別の意味でもう戻れねぇな…』という諦観と悲哀が、司には滲む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
自分が潰した親の愛を、奪っていった憎い仇。悟との対峙がどうなるか、あんま想像したくない。ぜってぇヒデェ事になるよ…。
まぁこのアニメ、どこ切っても大惨事の金太郎飴だけどさ…。
ヒロキと司、二人の運命が離れつつ絡まり、お互い戻れない場所へと踏み込んでいくエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月5日
全員が幸せになるお伽噺は絶対無理としても、あまりに人間らしく生き抜こうとしたペットたちが、その切なる想いを少しでも貫ける未来が見れることを、今は祈っています。
ヤベーなpet…次回も楽しみ