ケムリクサを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
旅路は続く。
不可思議なるケムリクサの可能性に、わかばは心を踊らせ、姉妹との距離は近くなっていく。
芽吹いた希望を踏みにじり、道を塞ぐ赤いヌシ。りんは郷愁と復讐を凍らせて、勝てぬ闘いに挑んでいく。
わかばの好奇が、微かに光る。逃げるばかりの運命を、勝利へ繋ぐように
そんな感じの空橋大決戦、ケムリクサ第四話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
すっかり一行に馴染んだわかばの、何もかもがめっさ気になる描写。ヌシとの決戦で、その好奇と絆が運命を変える鍵になる展開が、緩急付いていてとても良かった。
水の枯れたイチシマで、運命に飲み込まれ美しく死んでいくはずの未来。
わかばとの遭遇は運命を書き換え、新たな旅路へと姉妹を導いた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
今回も、『とにかく逃げるんダナ』なヌシを攻略する知恵を生み出し、おそらくりょうを殺しただろう過去のリフレインを跳ね返し、今までとは違う結末を呼び込んだ。
異物を取り込むことで、個人と共同体は変化していく。
直接は描かれない、しかしそこに宿った痛みと思いは伝わる過去描写と合わせて、わかばという存在が姉妹にとってどれだけ運命的で、変化の起点になっているかが見えるエピソードであった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
ゲーム的な画作りが生えるヌシとのバトルも、迫力満載でいい。キメる所バッチリキメれてるの、強いわな。
さて物語は、サンシマを穏やかに巡る前半と、新天地への道を巡る闘いの後半に分かれ…繋がっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
赤い血を流す”わたし達ではなく、敵でもないもの”として集団に取り入れられたわかばは、ケムリクサという技術に興味をそそられつつ、どんどん一行に馴染んでいる
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お姉さんぶりつつも、りなちゃんずはすっかりわかばと仲良くなり、見ているこっちとしても微笑ましい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
りんちゃんが視覚、りつ姉が聴覚に強みを持つように、りなちゃんは”食べる”こと、味覚を特色とするキャラクターなのだろう。
世界は食べられるものとそうでないものに分類され、評価される。
りなちゃんずもう一つの特徴は”分割”であり、モモのケムリクサを使うことで自分自身や端末を増幅/分割させることが可能だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
ケムリクサの多彩な能力に、みどりならずとも興味を惹かれるところだが。
分割されたりなちゃんずは、一つだったりなの記憶/認識を継承しない。
つまり分割と統合はセットではなく、不可逆の危うさを秘めていることになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
ここら辺、”はじめのひと”から分かたれて生まれた姉妹全体にも広がることなのかなー、と思ったりもする。
客観的に、自分たちがどう生まれたかを知ってはいても、そこに実感や真実への知見はない…のだろう。
この謎めいた世界がどう生まれ、姉妹とわかばがどこから来てどこに行くのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
作品全体を貫くミステリをどれだけ明かすかは判らない。そういう謎を扱いつつ、もっとコアで普遍的な物語…異物性とコミュニケーションと変化の物語を、メインで進めていく感触もある。
とまれ、沢山の謎は作品を掘り下げたくなる魅力的なシグナルで、わかば風に言えば『めっさ気になる』ポイントである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
しかし、分割によって生まれた姉妹は自分たちの根拠を知らない。そんなことを知らなくても、過酷な世界は必死の生存を要求してきて、乗りこなすのに必死だ。
同時に、分割され再生されたとしても過去と同じ存在にはなり得ない唯一性は、ある種の尊厳を与える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
りなちゃんずが四分割された”わたし達”を”わたし”と同質に捉えるのであれば、眠れるりなむに構うわかばに、”りなちゃん”は嫉妬しない。
つまり、分割された彼女たちには個性と自我…魂がある。
条理を超越し、赤い血を流さない彼女たちにとっても、生と死は唯一のものであり、分割はただのカット&ペーストではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
死んでいった姉妹の思い出は、それを忘れてしまった”たくさんの”りなには残っていなくて、新参のわかば(と視聴者)は知らない。りんとりつだけの記憶だ。
失われてしまったものへの痛みに溺れれば、この厳しい世界で行きていくことは出来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
自分の死がすなわち集団の死に直結するこの世界では、服喪は好奇と同じくらい、高い値段がつく。
それでも、りんちゃんは何かに付けて死せる姉を思い出し、震えを押し殺して戦士であろうとする。切ない。
僕はこの話を、ポストヒューマンを用いたヒューマニズムの再定義として見ているけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
死も再生もホモサピエンスとは違う形を取りつつ、一回こっきりの唯一性、断絶を超えて継承される時間認識と価値が静かに、しかし確かに描かれるところに、製作者の人間認識を感じ取っている。
姉妹とわかばの微笑ましい交流を、りつ姉は微笑んで見守る。りんちゃんはあくまで硬い表情を崩さず、しっかり前を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
それは大事なことだ。戦士が見張りをやってくれるからこそ、幼子は遊び、老人は笑うことが出来るのだ。
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旅路は空橋へと差し掛かり、平穏な時間は終わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
りんちゃんはケムリクサもう一つの使い方…闘争を生き抜く武器としての側面を活用して、アカムシを瞬殺する。
この『楽な闘い』でりんちゃんのスペックを見せて、ヌシとの『厳しい闘い』の前フリに活用してるの、巧い話運びだなぁ、と思ったりする。
使い終わったケムリクサが、微かな蒸気を上げるのがなんだか哀しかった。それは泣くことを自分に許していないりんちゃんが、唯一流せる涙なのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
なぜ、ヌシの話はしないほうが良いのか。
それは怖いからだが、恐怖は現在の暴力ではなく、それによって奪われたものにこそある。
自分の白紙の記憶という意味でも、集団が共有する”歴史”を知らないという意味でも、わかばは過去から切り離された存在だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
だから、りつ姉のお願いに宿る優しさとメランコリーには気づかない。しかし、彼の感性の卓越は、目の前にあるものがどんな価値を持つか、しっかり感覚する。
話が暗い方向へ、取り返しのつかない過去へと沈み込みそうになった時、りなちゃんずは意図して明るく振舞い、おどけてみせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
記憶も存在も分割された”子供”が、誰かを思って出来る最善の振る舞いで、少し泣いてしまった…。
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わかばはそんなりなの優しさと賢さをしっかり見初めて、なんの構えもなく言葉にし、集団で共有していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
少し恥ずかしくて、毒のように染み渡る温もり。
今はここにいない者たちも、厳しい世界を共に生き抜いていく仲間も、皆お互いを思いながら、暖かな光の届く範囲にいる。
そういうことを、わかばの存在は再確認させてくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
わかばが姉妹に馴染み、りんちゃんを『ステータス:どく』にしているのは、集団が共有する歴史と価値を自分に取り込み、それが意味あることだと、自分の感情を込めてちゃんと表明し、共有するからだろう。
コミュニケーションが素直で強いのだ。
それを支えるのは、『疑問に思い考え話す』という、わかばの個性…もしかしたら、霊長たるものの特権である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
人の人たる資質は、心の行いにこそある。
わかばの描かれ方には、製作者のそういう哲理が滲んでいる気がする。血の色や生命としての在り方が、ヒューマニティを規定する檻ではないのだ。
物語が始まったときから、姉妹は強い絆で結ばれている。死は確かに集団の成員を砕いたが、それは思い出となって心に残り、また特殊な形で克服…はされないが生を屈服もさせない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
所与のものとしてある、世界最強の武器であり鎧。集団を集団として成り立たせる絆が、どう生まれどう育まれたか。
そのドラマを隠蔽し、しかしそこから生まれる光はたっぷり刻み込んでいく、作品独自の歩み。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
『なぜ、どこから?』と考えたくもなるけども、『どうして?』とは思わない。
その答えは、穏やかな日々の中で、激しい戦いの中で、手で掴めるほどに確かに描写されているからだ。
車両すらリフトする、りんちゃんのゴリラパワー。それでは対応しきれない、ヌシの赤い一撃。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
逃走を第一選択肢に入れるのが、『姉妹は耐えきれないから』なのが、マジりんちゃんって感じである。もう死んで欲しくないんだなぁ…。
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わかばという”頭脳”が集団に加わる前は、ヌシは理不尽な存在だった。姉妹の命を奪い、その仇を討つことすら出来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
逃走だけが集団の選択肢だったわけだが、”見る”わかばが加わったことで、闘争にもう一つの形態が生まれる。
敵の習性を見抜き、逆手に取って勝つ。
観察と分析…人間特有の武器を使いこなすことで、新たな可能性を掴む。直線的な力勝負だけでなく、欺瞞や牽制を活用し、均衡を崩す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
ヌシとの闘いは、わかばの…わかばを取り込んだことによって変化した、赤いキマイラ達の可能性を示すステージでもある。
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ぶっちゃけちょっとヘニャっともしているこの作品のCGだけども、ヌシとのバトルはちょっとゲーム的な表現も活用しつつ、迫力と緊張感のある見事な仕上がりだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
ここは命の価値を問う大事な場面なので、マジにヤバい感じがしないと機能しない。しっかり勝負できていたのは、とても良かった。
”分割”というりなちゃんずの特性が、一回こっきりの特攻ではなく、帰還と生存を前提としたデコイ作戦を成り立たせているのも良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
やっぱ集団の物語である以上、戦う仕事もりんちゃん一人に背負わせるのではなく、みんなで”分割”出来たほうが良いよな…生存率も上がるし。
個別の特徴と意思を持ちつつ、コミュニケーションと行いで繋がった”わたし達”でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
群れる動物としての人間の特性も、ヌシとの闘いは強調していく。
集団最強の戦士として、りんの一撃はヌシを討ち果たす。残心の描写があるのが、凄く良い。
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己の出来る限りのすべてを捧げて、りんちゃんは油断なくな戦っている。しかし世界は非常に強大で、たった一人ではどうしても覆いきれない部分がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
なら、それを預ければいい。
新たな可能性に目覚めた、知りたがりの少年が生み出す盾に、とても大事なものを委ねてみればいい。
わかばがケムリクサでバリアを張ったこと…”考える人”だけでなく”戦う人””守る人”としての資質にも目覚めたことは、非常に重要で、かつ善いことだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
この世界は、考えているだけのインテリゲンチャの存在を許してくれない。正確には、思いだけでは大事なものが奪われてしまう、残酷さがある。
それに流されず、己の命と思いをつないで、新たな可能性に進んでいくためには。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
戦う力は必要であり、わかばはそれを証明した。自分が守りたいと思い、自分の大事な人も喪いたくないと感じていたものを、今度は失わなかった。
非常に意味と価値のあることだ。
わかばに力を与えたのが、死せる姉の形見としてりつ姉が預けたオレンジのケムリクサなのが、非常に心に響いた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
わかばはそこに刻まれた物語を知らない。共に歩き、共に戦ったわけではない。
しかし、新たに加わった可能性に、”遺品”は力を与えてくれた。
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それは物言わぬ骸が、己が守りたいと願いつつ道半ばに倒れた妹たちを、わかばに託してくれたように僕には思えたのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
ポストヒューマンにホモサピエンスの生死定義は通用しないかもしれないが、そのように、人は死をも超越できるのかもし得ない。
わかばが守ったりなの命、集団が共有する価値は、りんちゃにも当然届いている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
しかしそれに身を委ねれば、戦士の顔ができなくなってしまうから。りょう姉が戦って…死んでも守りたかったものが傷ついてしまうから。
りんちゃんは硬い顔を崩さず、傷を押さえてわかばから距離を取る。
ここらへんの強がりが見ていて尊く、また痛ましく、『はようズブズブになってくれやーッ!!』って感じ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
本当は死ぬほどに優しい人が、もう大事なものを奪われたくないから強張った表情を維持し続けているのは、ホント見てて辛い。わかば…毒を流し込めッ!!!
ヌシとの闘いが”仇討ち”であることを、りんちゃんは意図して考えないようにしていたと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
そこに思考が及べば、戦って死ぬ道が選択肢に入る。そうしてしまえば、免疫系を失った集団は死ぬしかない。
だから逃げる。命をつなぐことを最優先に、無念と理不尽を噛み殺して背中を向ける。
わかばの加入は、そういう状況を変化させた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
大事なものを奪われた痛みを、理不尽な世界に反抗する手立てを、秩序を再獲得し道理を通す力を、珍妙な異物は持ってきてくれたのだ。
そのことに、りんちゃんは感謝しない。感慨は、ケムリと一緒に空に消していく。
でも、良かったな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
仇討とはつまり、混乱させられた秩序を回復するための営為だ。あってはならないはずのことが平気で起こる残酷な世界に、筋の通った物語を取り戻すための闘いだ。
カオスからコスモスを見出す、人間特有の能力。
それが緑の光と、分裂する策略を伴い吠える。
『どうだ! わたし達はここにいる、生きている、生き続ける! お前らの思い通りにはならない!!』と。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
そういうとてもシンプルで力強い話なのだなぁ、と。
今回のヌシバトルは再度、教えてくれた気がする。
他の人間的営為と同じく、闘争もまた人間性の発露としてあるのだ。
かくしてたどり着いたヨンジマには、どんな危険と希望が待っているのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
ケムリクサを興味だけでなく、実力の発動体としても覚醒させたわかばは、集団をどうか得ていくのか。
戦士が鎧に秘めた優しさが、顔を出せる瞬間は来るのか。
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そんなことが気にかかりつつ、管理端末の覚醒でヒキである。何だこれはッ?!(幾度目かの疑問符)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
ワケの分からねぇ不可解と、魅力的な謎で魅せつつ、骨の太いヒューマンドラマでシッカリ支える。
強いアニメだなぁ、と思いつつ、楽しみに次回を待つ。このアニメおもしれーな。(周回遅れ人間の実感)
しかしラブコメディ要素をコミカルに盛り込んで、『りんちゃんにも集団に奉仕する鋼鉄の戦士だけでなく、頬を赤らめる一人間としての幸福が待ってるからね!』ってサイン出してくれるの、巧いしありがてぇわ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月11日
強くて優しいと理解ってしまった人には、報われてほしいんスよ…その”兆し”出てるのは良い