憂国のモリアーティを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月26日
名を捨て女を捨て、”ジェームズ・ボンド”としてモリアーティ一味に加わったアイリーン。
銀行強盗事件を華麗に解決し、その資質を示す。
帰り来て出会うのは、犯罪卿の元指南役。
”切り裂きジャック”が切り裂くのは、いかな英国の暗部か?
そんな感じの、久々純正モリアーティエピソードである。第5話以来かな、ホームズが絡まないのは…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月26日
その不徹底にブーブー文句言いつつ、なんだかんだこの作品で描かれる”モリアーティ”は結構好きなので、混じりっけなしな犯罪一味の空気を味わえたのは大変良かった。
アイリーン・アドラー改めジェームズ・ボンド(何度書いても、狂った文言で最高だと思う。まさに伝奇)が”モリアーティ”に相応しい優秀さを、仲間に示す前半と、”切り裂きジャック”がホワイトチャペル事件の解決を依頼に来る後半となる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月26日
真のジャックが、偽ジャックを狩りに来る展開は煮えてていい。
ウィリアムの憂国犯罪は難度の高いミッションであり、そこに一枚噛むにはただ指示を待つのではなく、高度な判断力と実行力が求められる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月26日
銀行強盗の制圧は、そんな資質をボンドがモランに…そして僕ら視聴者に見せる舞台といえるだろう。
まー”醜聞”では、右往左往のヒロイン立ち位置だったからなあ。
元々愚劣な貴族を手玉に取って、自分なりの社会変革を狙っていた切れ者なわけで、組織の歯車になるより自律して動いたほうが、本領を発揮出来るのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月26日
それにしたって、ダイレクトな暴力が強すぎて軽くウケる。なんてったって”ジェームズ・ボンド”だからねッ!
一つ気になったのは、ウィリアムが悪魔の脳髄を駆動させるには代償と限界がある、とぶっ倒れてた描写。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月26日
あれを見て『あー、”人間”になってくんだなー』と思った。
猛悪で精緻な犯罪芸術を生み出す機械ではなく、傷つき心を痛める、体温のある生物としてのリミットの描写。
『国を憂えばこそ、身命を賭して必要悪を為す』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月26日
”憂国”の真意が描かれた今、彼が行う犯罪は国を正すための”善”と定位され、それを駆動させる彼も怪物から人間へと移り変わる。
人間ならば限界があり(だからこそ、それを超えて機械に徹しようとする尊さがある)、破滅と死の運命もある。
憂国計画の完遂を己の死に置いた以上、ウィリアムが死ぬ存在であると見せていく…ここまで積み上げた偶像を壊していく必要はあって、その一端があの眠りの公開なのかなー、と思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月26日
悪魔も人の子、眠りもすれば泣きもする。
それでも、悪魔でなければ出来ないことがあるから。
そういう事を、自分からは言わずあくまで完璧な犯罪機械を演じているところは、ウィリアムの健気で可愛いところである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月26日
すげー間近にいても、モリアーティ一味がその脆さとか、弱さに接触できてない感じは面白いなー、と思う。
憂国犯罪という志を同じくすればこそ、ウィリアムの”人間”を見れない。
一人間としてのウィリアムを受け入れてしまえば、人が背負うには傲慢すぎる罪科も、人として軋む限界点も見えてしまって、計画にブレが生じるから、揺るがない風を装い続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月26日
一枚岩の無敵の兄弟に思えて、その実かなり亀裂入ってる雰囲気を、個人的には感じる。
これが『動かない一枚岩より、実はお互いそっぽ向いたままガッタガタの感情融合体のほうがおもしれーだろ!』つう僕の好みが生み出した幻像なのか、作中確かにそうであるという現実なのか、さっぱり判断付かないけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月26日
ウィリアムが”本当”は何を思い、どんな存在なのか。
”憂国”の内情が暴かれてもなお残るミステリとして、彼は綻びを見せつつも冷ややかな仮面を外さず、弱音も心情も吐露しない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月26日
その硬い強がりが、僕は結構好きだ。
このまま機械として死んでいくのも、誰か一人人だけ己を預けるのも、どっちも美味しいなぁ…。
軋んでいようが、歪んでいようが、一度駆動した装置は止めるわけには行かない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月26日
過去の縁も絡まって、犯罪卿に持ち込まれた”切り裂きジャック”事件解決の依頼。
単独で伝説となった真のジャックが、複数で醜悪な虐殺に手を染める偽のジャックを追う。その殺意に、”モリアーティ”が寄り添う。
赤黒いピカロな魅力のある構図で、なかなか煮えてていい。やっぱこのヒリついた感じが好きなんだなーと、久々の超悪巧みシーンを摂取して思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月26日
ホワイトチャペル事件も様々に考察され色んな説のある伝奇ネタだが、この作品がそれをどう料理し、味付けしてくるかは楽しみだ。
このお話僕は、ヴィクトリアン伝奇あるいはホームズ再話として、メタ視点から楽しんでる部分大きいなー、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月26日
貧民窟たるホワイトチャペルに吹き溜まる、階級の歪み。暴動として炸裂する怒りと、それを抑圧する悪しきヤードの首魁。
ここら辺、どう書くか楽しみでもある。
ウィリアムが俯瞰で眺め、悪事を差配する”上”からの目線でも、人間味あるホームズが取っ組み合う”真ん中”の視線でもなく、世界の最下層から睨めつける”下”からの視線が、ホワイトチャペルの貧民を使って描けると、作品世界も立体視出来るかなー、と思ったり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月26日
モリアーティの”憂国”で救済されるべき最下層民が、どんな手触りで生きてるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月26日
いまいち伝わりきんない感じも、正直受けるのよね…これは、ウィリアムを不朽の機械として描き続け、救うべき下層民にも共感を寄せきらない冷たさを強調してきた、アニメの演出方針も影響しとるかもしれんが。
弱き眠りから目覚めたウィリアムは、久々に悪徳の朱を世界にまとわせてロンドンを睨む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月26日
やっぱこの色彩が綺麗で、凄く好きだ。
奸智、残虐、傲慢、鮮烈。
”人間”やってる時は、この一色に塗りつぶされるからこそ綺麗な景色は、なかなか見えんからな…。
(画像は"憂国のモリアーティ"第15話より引用) pic.twitter.com/LpZjqpKF2i
迷いも濁りもなく、世界を一色に塗り分けて断罪するシンプルな美しさ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月26日
これに魅入られたからこそ、アルバートも”モリアーティ”になって、弟を心なき犯罪機械に追い込む…ことで、その共犯として自分も神の如き揺るがなさを甘受してんのかな、と思ったりもする。
あの人、”モリアーティ”であることで色々複雑に割り切れない世界への嫌悪感を斬り伏せて、自分が見たいシンプルでキレイな世界に身を浸してる感じあるんよね…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月26日
その生得的なエゴに、出会ってしまった少年を巻き込んで犯罪を加速させた罪。
それにあの人、自覚的なのか無自覚なのか。
犯罪卿最初のクライアントは、自身も身分と才覚をフル動員して国家に食い込み、悪徳に蚕食している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月26日
貴族にしか出来ない悪事をアルバートが背負うことで、”モリアーティ”は集団として機能もしている。
十分以上に運命共同体、あるいは共犯者だ。しかしどこか…冷たく離れているものがある気がする。
これも”あって欲しい”なのか”ある”なのか、僕には判別付かないところだけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月26日
ホワイトチャペルへの切込みと解決の仕方が、そういう断絶をより細かく掘り下げてくれると面白い。どうなるかなー。
悪を悪と断じ、容赦も斟酌もなく切り捨てる気持ちよさ。世界を一色に塗る快楽。
それを稀代の天才に委ねる限り、ウィリアムは”人間”にはなれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月26日
憂国の理想、独立した才覚で繋がっているように見えて、その実蜘蛛の巣の主を蕩尽もしてる”モリアーティ”の構造的歪みが、微かに見えた気もするエピソードでした。
この歪み、”モリアーティ”である限り対応出来ないんだろうな…。
”切り裂きジャック”を騙る悪漢達を、ウィリアムはどう見抜き、どう切り裂くか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月26日
次回、快刀乱麻の解決が楽しみです。
…こういう”痛快”を求める気持ちが、犯罪卿を時代の代弁者に祭り上げ、クソ殺人者を救済者の位置に押し上げていくんだろうなぁ…怖いわ、プロパガンダ・テロル。
未だ真相定かならぬホワイトチャペル事件を、ウィリアムが闇から解体する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月26日
今回の事件、ある意味犯罪探偵が伝奇ミステリに挑む構造でもあるんだな。
スッキリしない真相を、スパッと切り捨てる快楽は、実はホームズと共通だったりする。
秩序の伝達者として、憂国犯罪者と探偵は同じ場所に立つわけだ