Fairy蘭丸~あなたの心お助けします~を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
なりたい自分と、なれる自分。
その狭間で蠢く者たちが、輝く舞台を飛び回る。
努力を売り、愛に媚びるアイドル稼業でてっぺん取るためには、毒蛾になるしかないのか。
光り輝く己でありたいと、願う少年夭精が描く一夜の夢。
悪夢、淫夢も夢の内。
そんな感じの、偶像稼業油地獄なF蘭第4話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
炎と水のねっとり対置で魅せた第2話、第3話からまた空気が変わって、ピュアな樹果くんの等身大な悩みと、アイドル業界の粘っこい闇が複雑な絡み合いを生むエピソードだった。
悪い心を浄化して、スッキリ解決の答えが出て終わる。
そういうお話ではないことは既に解っているが、なんともモヤッとしたものが残る良い展開だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
愛は執着となり、立場は魂を汚染する。
出たはずの答えが簡単に疑問に変わってしまう複雑な人生に、凄まじく斜めの角度から突入していくこの話のスタイルを、再確認するようなエピソードであった。
というわけでアイドル話…なんだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
『オ~ロラヴァイキング』の”オ~ロラ”の書体とグラデが、モロにプリリズADじゃねーか菱田監督ッ!
こういうところでクスグられると困るんだよなぁ…好きになっちゃうヤバイヤバイ。
(画像は"Fairy蘭丸~あなたの心お助けします~"第4話より引用) pic.twitter.com/ypdZHZPCEk
お話としては救われる女=人間と、救う男=夭精がそれぞれ対比になったエピソードである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
才能に恵まれず、センターから遠く離れた場所で一生懸命頑張るしかない…その姿が可愛さに通じる側と、生まれ持って真ん中で輝く…ように見える側。
樹果と圭、えると蘭丸がそれぞれ対応する形だ。
努力せず結果だけをすくい取るために、性を売り物にするえるの穢れを、蘭丸は持たない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
それが彼の白紙の記憶に由来するのか、彼自身の個性なのかはまだわからない。
今までに引き続き、蘭丸は悩める仲間の上に立ち、光に最も近い場所から無邪気に、答えを差し出す立ち回りを今回も続ける。
後に暗転して描かれ直す階段の構図が、非常にわかりやすく人間と夭精、夭精と夭精の距離感を示す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
暗い奈落に一番近いのが圭、純白の光に染まるのが蘭丸、その中間地点にいるのが樹果となる。
(画像は"Fairy蘭丸~あなたの心お助けします~"第4話より引用) pic.twitter.com/dphKGSnmQK
蘭丸は顔は圭に向けつつ、あくまで姿勢は形のない光…正しいと解っていても普通は向き合えない”正解”に対置している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
業に囚われた人間の立つ影を見るのは、あくまで今回の主役である樹果…生まれつきパッとしない立ち位置を定められた卉樹族の少年である。
それぞれの種族で職能が固定される、夭精界驚愕の身分構造に相当な闇を感じたりするが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
樹果はもって生まれた可愛さ(圭が望んでも手に入らないもの)を、『これは俺じゃない』と拒否する。
しかしどうやっても、天性というものはついてまわる。変身しても、樹果は可愛い。
圭も樹果の可愛さになりたい自分を重ね、だからこそレッスンを求めた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
出会って触れあえば記憶が失われてしまう、夭精の宿命を思えばそもそも儚い出会いなのだが、樹果のレッスンは結局、圭がセンターになることにも、なってからも彼女に焼き付かない。
時に頑なな頑張り(圭の天性)をアイドルとして活かすのではなく、えるが選んだ安楽な道に彼女も堕ちていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
救ったようで救われない結末は、第1話の蘭丸と同じだ。
第2話の焔は、誰かの怒りを闘いに引き出すことで。
第3話のうるうは、罪を軒並み罰することで。
愛が新しい罪になってしまう流れに棹をさし、少し違う結末を引き寄せていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
鍵穴に隔たれた救済の闘いに、当事者なり犠牲者なり、”被害者”が身を乗り出すこと。
それが少年たちの使命を、女王の思惑通りの愛著回収以上のものにしていく、大事な足場なのだろう。
与えるだけの救いでは、真実の救済はやってこない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
ここまでの四話が描いてるのは多分そういうルールなのだが、無邪気な夭精達はそこに気付いていない。
業の生み出すエネルギーを回収し、蓄え、なにかに備えている現実的な合理。上からの正しさ。
それに反発し、自分たちだけの救いを夭精達が求めるのであれば、無邪気なままではいられない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
そんな宿命を色濃く背負うのが、記憶のない蘭丸と、天聖体と通常時の変化が少ない樹果なのだと思う。
無邪気であることの対価、無垢であることの罪。
風呂場でのやり取りを見ていると、うるうは焔にそれを知ってほしくて当てこすっているのかな、とも思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
夭精界の社会構造、それが生み出す歪みをまだ知らない子供を、羨みつつ妬む視線が、清廉潔白なはずのうるうに濁りを生んでいる。
それをわざわざ口にしなければいけないほど、焔が眩しい。
偏見に追い込まれた被差別者に見える火焔族を、なぜうるうは『恵まれている』と見据えるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
ここら辺終盤炸裂する爆弾として、結構巧妙に仕組まれてる感じもある。
女王様をトップとする社会が、相当にヤバい気配は毎回描写しとるからね…まぁロクでもねぇよ多分。
今回のエピソードは闇の”F”としてのシリウスが目立つ回でもあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
昼間は無邪気な夢の舞台であった階段は、曇天に染まってなんとも暗い。蘭丸-樹果-圭という光の構図は反転し、シリウス-える-圭という順序で、暗い業が継承される。
(画像は"Fairy蘭丸~あなたの心お助けします~"第4話より引用) pic.twitter.com/P3ZTpN06Y9
鍵穴の向こうに真実を見つめる、天聖空間の基本構図。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
それが今回は現実に溢れ出してきて、圭はアイドルの闇、”てっぺん”であることの対価を隙間から覗き見ることになる。
己を売って玉座に足をかけるか、純朴な敗北者として逃げ帰るか。
圭は後者を選ぶが、ここで垣間見た闇は結局彼女を捉える。
断罪される犠牲者たちにも、なんらかの業と悲哀があるのだと、この作品は時折匂わす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
えるも必死に懸命に努力を重ね、それを客が見ない現実に押し潰されて、春を鬻いで票を稼ぐ路線に転落していったのかもしれない。
玉座に座らなければ解らないプレッシャーが、それを後押ししたかもしれない。
しかし無邪気な圭はそれを見ないし、樹果も(この段階では)夭精のセンターたる光輝族を羨むばかりである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
自分たちが愛著回収業者として、地上に送り出された意味。そこで自分が占める立ち位置。
世を動かす巨大な構造に、目が行かないのはアイドルもフェアリーも同じである。
シリウスに後押しされなくても多分えるは歪んでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
それは彼女個人の選択であり、それを超えた運営の圧力、社会構造の歪み、人間の業が生み出す結果でもある。
夭精達(の、少なくとも三人)が無邪気に、救いだと感じているものが実は、問題を先送りにする対処療法でしかない現実。
その一片が、あの闇の階段、扉越しの悪徳には溢れてる感じがした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
そこからかすかな希望を取り出し得た焔が、どんな特別を為し遂げていたかってのは、結構大事な気がすんだよね。
やっぱ業の当事者として、救われる側を引っ張り出す、人間のやるせなさを背負うのが重要…なのかなぁ。
樹果は圭の涙を受け取り、呪われたひまわり畑に毒蛾を見出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
大輪のひまわりには特別な花言葉があって、「偽りの愛」「にせ金持ち」である。
だがひまわりはひまわり、こちらの花言葉は「憧れ」「あなただけ見つめる」だ。
(画像は"Fairy蘭丸~あなたの心お助けします~"第4話より引用) pic.twitter.com/5luCENOtuQ
樹果は蘭丸の乱入を借りなければ、闇との闘いにアヘ顔窒息で敗北していた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
弱くて、頑張る以外何も出来ない存在だ。
アイドルに憧れアイドルになった圭は鍵穴の向こうから、その無垢なる努力を見つめて応援する。
それが樹果の力となり、彼はえるの真実を見つめ、射抜くことになる。
一見自分の起源を取り戻したように思える構図なのだが、えるはこの夢から覚めた後、無垢なるひまわりである(でしかない)自分を投げうって、第二の毒蛾になってしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
レッスンの記憶もキスの思い出も消えて、可愛いポーズは媚びを売るための道具に変わってしまう。
焔が向き合っていた己の影も、うるうが囚われた敵からの共感も、樹果の前には顔を出さない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
彼はあくまで無邪気に、業に満ちた空間の表面をなぞって闘い、苦しみ、勝利する。
そこに闘士の強さはない。人間体と似通った可愛さ…揺るがない樹果の天性が継続されている。
己も世界も疑わない(疑えない)永遠の子供が、だからこそ生み出す癒やし。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
それは夭精社会においては『大したことない』と侮られ、端っこに追いやられて搾取される属性だ。
夭精界のセンター様の手助けを借りなければ、マトモに戦えない弱い存在。
そこから抜け出す手段は、闇に落ちて毒蛾となることだけなのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
えるの本性、圭の末路は、そんな疑問も強くする。
えるは暴かれるまで、あくまで『大輪のひまわり』を装っていた。
それが客向きのポーズなのか、”なりたい自分”だったのか。夭精が踏み込まない以上、それは見えない。
ただそこにかなり複雑なものがあったとは判るし、ここまでのエピソードもそれを切り取ってきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
『ベテルギウス…ッ!』と蘭丸を睨むシリウスが、そういう人間のカルマにどれだけ寄り添っているのか。
次回寶エピを終えたあたりで、そこらへんも踏み込む感じかなぁ。
シリウスがベテルギウスを睨むのなら、これにプロキオンを足して冬の大三角である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
ベテルギウスは赤色超巨星であり、星の生命の終りが近いからこそ、眩く輝いてる。
キラキラ純粋無垢なセンター様に、付ける異名ではまぁない。やっぱ色々あるんだろうな…。
かくして闘いは終わり、世は事もなし。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
アイドル稼業は堕ちた毒蛾を見限り、新しい輝きを見出す。
圭がえると同じ道に進んだのは、階段の上にある酸素の薄さを思い知ったからか。
そうなるように、夢の道が舗装されているからか。
(画像は"Fairy蘭丸~あなたの心お助けします~"第4話より引用) pic.twitter.com/reFgQGZo6B
爛漫と咲き誇る花を背中に、解決の複雑さを噛みしめる樹果に蘭丸は、微笑んで真実を告げる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
君は可愛い。
その言葉が如何程の価値を持つか、少年たちは悩むのか、考えないのか。
物語は続く。
ほのぼの終わったようで、相当に闇は深く感じる。
無邪気でいること、何も知らないこと、汚れから遠ざけられていること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
子供であり、主役である属性が軒並み、確かにそこにある複雑さを見て見ぬ振りする愚かさと結び付けられ、無言で責められている感じがある。
樹果の純粋は、圭を変え得なかった。
頑張ってて可愛いと、思った気持ちに嘘はない。
だがそれに突き動かされて戦った結果は、業の再生産、純粋さと思い出の蒸発である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
ただ理由もなく、生まれたまま純粋であることは、人と交わり業から何かを生み出すには無力。
そういう事を描く回だった。
樹果が可愛いだけで終わらず、カッコよくなりたいのならば、多分汚れる必要がある。
否応なく生み出されてしまう業の泥に身を浸し、十訓を唱和するだけの正しい存在で終わらず、己の内から湧き上がる罪を力に変えること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
救うべき存在を鍵穴の向こうから引っ張り出し、闇から光を生み出す当事者に変えていくこと。
それが多分、この作品が睨むヒーローの条件なのだろう。
天から舞い降りた救うべき存在も、救われない業に囚われた”人間”でしかなく、払うべき闇にこそ最も強い光が眠っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
被害者を当事者に引っ張り出す動きと同じくらい、救い闘う夭精が実は傷ついた被害者、傷つける加害者なのだと認識することが、今後大事になりそうだと感じる。
己が特権的な天使などではなく、歪みを抱えた世界に取り込まれた弱い存在だと知れば、(今まで救った女達と同じく)誰かにすがるしかなくなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
その時、仲間に手を差し伸べられるかどうかが問われそう…つうか、そういう展開になると俺は面白いね。連帯のヒロイズムを見たいのよ。
何処か他人事に、上から言われるまま愛著エネルギーを回収してる現在から果たして、”F”の面々がはみ出していくのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
次回は既にルール違反バリバリの寶さんを主役に据えて、そこが描かれそうな気配であります。
絶対、腹に一物抱えてんだよなぁあの人…楽しみだ。
追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
蘭丸の記憶がないのも、『白紙だからこそ全てを描ける』ていうパラドクスを駆動させるための属性なんだと思う。
うるう-焔、樹果-寶で対比して物語を編むなら、蘭丸-シリウスで対比して闇の夭精だろうし、社会と業の全てを知って、愛著回収のシステムの敵対者になったのかも。
何も憶えていない、ただ天然に作品の真ん中にいる彼の無邪気が汚される時こそ、話が大きく動くときだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月29日
光の一番側にいることは、何も見ない無垢なる盲目を対価とするのか。
幼いこと、可愛いことの邪悪さを主役に背負わせそうでもあって、怖くも楽しみである。