※訂正
画像は”第5話”からの引用です。訂正させていただきます。
SSSS.DYNAZENONを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
風邪が治っても、蓬の心に宿った恋の微熱は消えない。
夢芽を追う瞳は時に触れ合い、時にすれ違いながら、青春を転がっていく。
楽しいプールに交じる怪獣優成思想と、蘇る死の気配。
怪獣のいる僕らの放課後は、どんな道を進んでいくのだろうか。
そんな感じの6月の水着回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
ヒロイックな怪獣アクションとしても、ロマンス満載の青春物語としても、何処かオフビートで独特の雰囲気を持つこの差く品。
プールに行くのも夏真っ盛りではなく、テンションも楽しいんだが楽しくないんだか、なんともあやふやである。
前作からずっと、そんな曖昧で特別な思春期を切り取るカメラが好きなので、このぼやっとした(あるいは、意識してそう見えるように仕上げてる)作りは好きである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
コメディとロマンス、夢芽ちゃんのお姉さんを巡る死の探求が、この話の軸なんかな、と思う回でもあった。
とにかく他人の顔をよく見るエピソードで、気になるあの子を見つめる瞳が、よくクローズアップにされていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
好きだから視線で探り、近づいて触れ合いたくなる。
でもだからこそ、適切な距離がどこにあるのか、臆病にもなる。
(画像は"SSSS.DYNAZENON"第5話より引用) pic.twitter.com/yPQ3cvfIz6
青春ど真ん中の甘酸っぱさがたまらない”よもゆめ”ロマンスと、変人たちが挙動不審に恋に触れ合う”こよちせ”の二枚看板で、話が回りだしているが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
前者は姉の死、後者は年の差が間に挟まって、なかなか素直な食感とはならないのが、なかなか面白い。
蓬が流し見る夢芽ちゃんの視線は、『結構よく笑う』生前のお姉ちゃんに向けられている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
それなりに屈折しつつも、絶対的な”死”の質感で過去をえぐられていない蓬くんにとって、好きな人が探り、見つめるものは(まだ)視界の外だ。
それは確かにそこにあるが、実感を伴わない。
戯けた仕草で提出されるちせの恋も、暦の片目隠れに阻まれて、なかなかマジになってくれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
先輩は再起動した初恋、人妻とのよろめきに夢中で、何かと懐いてくる従姉妹が何を秘めてるか、しっかりは見てくれない。
視線は相互に錯綜し、絡み合いつつもぶつからない。
見ることは相手を知る能動的な行為であると同時に、『貴方を見てますよ』というメッセージを送信し、受信してもらう相互的な行為でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
視線に込めたものを受け取ってもらえば、何かが組み合わさって…”合体”して状況が動き出す。
でも、今はその頃合いではないようだ。
いつか恋する者たちの視線が絡み合って、お互いの思いが通じる時が来るのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
そんな人間たちのロマンスに、怪獣使いのアクションはどんな影響を持つのか。
ここら辺の総体も、なかなか見えきらない。
そもそも作品世界の中で、怪獣とその被害…”死”はどう扱われているのか?
いかな奥多摩の山奥とは言え、あんなにガッシャンガッシャン放課後特訓してたら人目につきそうなものだが、そういう事は起きない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
五人の奇妙で小さいサークルは、より大きな社会から見られることなく、独自のルールで動いている。
玩具で戯れるような、無邪気で地に足がつかないファンタジー。
怪獣が暴れた結果生まれるだろう破壊もまた、夢芽ちゃんが意識して”見た”その残骸以外は、カメラから外され続けている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
それが『そういうもん』という甘えのこもった軋みなのか、意図して描かれた歪みなのか。
これも、まだ煮えかけの具材である。作中のリアリティレベル、どう使ってくるかなぁ?
恋にしろ死にしろ、見ることは相手との距離を探り、透明な掌で触れることでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
敵でありクラスメートでもあるシズムくんを、ガラス越し見つめる二人の間にはサッシがそびえ、その複雑な間合いを浮き彫りにしていく。
(画像は"SSSS.DYNAZENON"第4話より引用) pic.twitter.com/s1DEsWPKsH
テンション高く飛び込んだプールへのお誘いを、喜んで受け止めるか、苦笑いで跳ね除けるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
命がけで戦ってるはずなのに、ダイナゼノンクルーの距離感はまだ、探り探りだ。
夢芽ちゃんに逃した視線は、スルッと入り込んできたシズムくんに盗まれ、すわ恋のライバル登場かと色めき立つ。
ずっと夢芽ちゃんを見ている割に、見ることしかせず踏み込まない、蓬の純情独り相撲。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
その空回りより夢芽ちゃんは現実的で、誘いは敵を捉える罠である。あるいはそんなリアリズムが、恋に恋する少年の浮かれた視線を跳ね除けているのかもしれない。
同じ視線に見えて、実は二人は相当にズレてる。
それはガウマくんが君臨する高い場所、熱血ヒーローの高血圧とは、また違うズレ方である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
怪獣使いが一人見つめる明るすぎる場所を、暗がり…というには中途半端な場所から人間たちは見つめて、一緒にプールに行くことになる。
噛み合わないのに近くにいて、心重ねるにはズレている場所。
それがおそらく、このアニメの現在位置である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
実はすげぇヘンテコな足場に乗っかってる話だと思うんだけど、放課後地球防衛部つうフレームが(怪獣とのアクション含め)心地よく書けてるので、異質性があんま浮かび上がらないの、面白い味付けだなぁ…。
かくして、時期外れのプールロマンスが動き出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
最初は警戒してたのに、一緒に遊ぶと楽しくて、シズムくんと仲良くなっていってしまう素直さが、やはり可愛い。
激しい波に揺れながら、一瞬交わる視線の熱さも。
(画像は"SSSS.DYNAZENON"第4話より引用) pic.twitter.com/VTuP0XPJv5
でもきっちり、水着着てるのに外さないアームカバー、視線を遮る奥に”何か”がある事は逃さんのよね…。ちせも相当に屈折してそうだなぁ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
こういう爆弾を随所に仕込みつつも、チュロスもぐもぐするシーンをBGMなしの長尺で流して、すっげぇ奇妙で嬉しい味わいに仕上げてくるの、やっぱヘンテコだね。
いい感じに恋が踊るかと思いきや、やっぱり夢芽ちゃんの視線は”死”を見つめていて、恋人同士の戯れ合いにトラウマが揺れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
見開かれた視線の先にあるものを、やっぱり蓬くんは見ることが出来ない。恋した人の中で、”死”がどれだけ重いか共有できてない。
(画像は"SSSS.DYNAZENON"第4話より引用) pic.twitter.com/TrpURJw0Hq
太陽にむき出しにさらされる場所から、水に満ちた暗い場所へ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
表面的な朗らかさを洞窟で覆って、もっと湿ったものを守り、もしかしたら共有できる場所へと話は映っていく。
ある意味、人造子宮に避難する描写なんだな、コレ。”死”に満ちた外界から、記憶領域に逃げる感じ。
意識してすらいない抑圧が生み出す、色の濃い情動。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
それに引き寄せられて怪獣は現れると、シズムくんはいう。
大声で叫ぶことも走ることも、監視員(プール内部の規範)に制止されることもなく日常に溶け込む”敵”に、かすかに滲む異物感。
それを彫り込むより早く、怪獣優性思想がやってくる。水着で
バトルも水着のフワッとした感じで、暦との合体を無事為し遂げて大勝利。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
いつものようにオニジャが死にかけて、今日も仲良しガウマ隊。
彼らの”庭”である渓流で、肩を並べてみんなで楽しく。
でもその奥に香る”死”が、夢芽ちゃんを遠ざける。
(画像は"SSSS.DYNAZENON"第4話より引用) pic.twitter.com/DrVuAluyks
”距離感”は今回の…あるいは今作の重要なキーワードだと思うけども、ちせが明るく戯けて作る垣根のない日常を、夢芽ちゃんは崖上から見つめる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
その高度と水しぶきが想起させるものが、どれだけ重たいのかを彼女は詳らかに出来ていないし、周囲も見れていない。距離は、見た目より遠い。
流れでロボ乗ることになったけど、知り合いでも何でもなく、しかしちょっとずつ知り合いになっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
でも、全てを預け合うほどでもない。
この微細な距離感を、二組の恋と青春に交えながら追いかけていくお話なのかな、と思う。
この微細な筆が幼年期のごっこ遊びめいた怪獣要素と、どう噛み合うか
それを探りつつ、物語はシリアスな”死”の感触でスパッと断ち切られる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
ここまで執拗に目のクローズアップ、誰かを探り通じ合う距離感を描いてきた画面が、ここでは徹底的に瞳を書かない。
暴かれていく姉の過去は重たく、馴染まず、優しくない。
(画像は"SSSS.DYNAZENON"第4話より引用) pic.twitter.com/3NifQMNXB9
というか、ここで視線を描かない衝撃、生と死が残酷に切断されている事実を強調するために、今回他人を探り、距離を測る視線を多数重ねてきた、ともいえるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
蓬が甘酸っぱく、生暖かく用いた”見る”というコミュニケーション・メディア。何かが解り、近づけるという期待感。
しかし夢芽ちゃんの過去にはそういうヌルい期待感を切断するものが確かにあって、そのシリアスな重さを共有しなければ、真実間合いを詰めて隣に立つことなど出来やしない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
その事実を、衝撃的な真実の暴露とともにスパッと突きつけてくる良いヒキだった。
その手触りは怪獣(を通じて、よく知らない人達)と戯れているときとは全く異なっていて、硬質で大人びた容赦の無さを宿している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
この感触こそが、”死”を知り”死”に包まれてもう子供ではありえない夢芽ちゃんの本当…というわけでも、多分無いのだろう。
幼くて都合が良いから嘘で、シビアで重たいから本当で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
そういう二分法では、このお話作られていないと思う。
そうでなければ、子供の玩具感むき出しのロボット達が、街を守る特別な力になったり、ヘンテコだけど嘘のない関係を繋ぐ助けになったりはしないと思う。
蓬の視線はまだ、夢芽ちゃんの表面をジロジロとなぞっているだけだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
深く踏み込んで、真実に突き刺さるほど強力なものではない、子供の視線だ。
しかしそこには恋の熱量があり、向かう先には硬くて重い”死”がある。エロスとタナトスが隣接する、不可思議な領域が女の子の形を取っている。
探っても表にはならないもの。踏み込まなければ掴めないもの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
ぼんやりと未来を待つ子供ではなく、意思を込めて明日を切り開く大人へと、蓬が夢芽ちゃんとの”距離感”を視線で探りながら変化していく物語…なのか。
それを、今僕も見ながら探っている最中だ。
まー話が転がり出すまで長く、なかなか総体が掴みきれない…けど、面白い手触りを伝えてくる感触は前作もそうだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
『このアニメはコレ!』と結論を急がず、じっくり付き合っていきたい。
幸い、カメラが切り取る人々はチャーミングで、追いかけたくなる魅力は随所にあるからね。
夢芽ちゃんのお姉さんの”死”は直視できないほどに重く描き、しかし怪獣にまつわるリアリティはどうにもふんわりしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
このギャップの裏に何か仕掛けがあるのか、はたまた”そういうもの”なのか。
ここも、個人的には気になるところだ。ジリジリ謎の入り口は見せてるので、ここもじっくり、かな。
瞳を向けて探りたいもの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月4日
瞳をそらしたくても、出来ないもの。
貴方をもっと知りたいと、同行を申し出た過去への旅路はなかなかに、重たい牙をむき出しにしてきた。
それを少年と少女が、どう糧に変えていくか。怪獣ジュブナイルは、まだまだ続きます。
次回も楽しみ。