イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プレイレポート 21/05/05 光砕のリヴァルチャー『天使は灰から蘇る』

昨日はどらこにあんの新作、超高速ロボットTRPG”光砕のリヴァルチャー”を遊んできました。

シナリオタイトル:天使は灰から蘇る システム:光砕のリヴァルチャー

シェンツさん:グレイ:28才男性:シュヴァリエ 繁栄を極めたフォートレスの守護者だったが、強敵との闘いで全てを失った男。辺境で流されるままに生きてきたが、運命に導かれ再び空に上る。愛機は謎めいた古代兵器”シュライク・プロトタイプ”
コバヤシ:ローザ:外見15才女性:フィアンセ グレイの失われた貴婦人が、古代遺跡で再生された姿。深窓の姫めいた先代に比べ、蓮っ葉で感情を素直に表に出す性格。燃え尽きていたグレイに力を差し出し、魂に火を入れる。

という二人組で、破壊され尽くした世界の希望となってきました。無茶苦茶面白かったです。

つうわけで、クロウリングケイオスに続きGW新作祭りでございますが。
『どういうゲームを遊ぶか』がお互いちょっと掴みきれてなくて、音声通話で顔つき合わせながら”今やりたいこと”を調整して、シナリオとキャラクターの方向性、期待の微調整などすまし(アニメの話とかに脱線して時間を使いつつ)ルールブックに定められたとおりシーンを作って戦闘して、ここまで二時間。
高速機動空中戦を最低限のフレームで見事に再現した戦闘ルールと合わせて、とにかく軽量最高速なシステムだと感じました。早いだけで楽しくないとTRPGとしては失敗だと思いますが、とにかく戦闘が面白くて充実のプレイフィール。『たっぷり食ったなー』と思いながら時計を見たら、全然時間立ってなくて凄くびっくりしました。これは体験するタイムマシンや!

システムとしては1ON1限定のピーキーな仕上がりで、ゲームの要素も極限まで削られています。戦う前の日常、敵襲来、戦闘、勝利。シーンの構成はこれだけなんですが、やってみると『あ、これで十分だったんだ』という嬉しい発見がある。
『ロボTRPGはウケない』というジンクスが(観測範囲5m以内の狭い距離感で)あるんですけど、その理由の一つとして処理する要素が多い、というのがあります。メカ要素はマニアックになりがちな部分で、色んな要素を数値化し、細かいところにこだわりたくなる。
しかしこの作品はゲームが成立するギリギリまで枝葉を削ぎ落とし、しかしヴァイタルパートは一切壊さずエンジン出力を無限に上げ続けた結果、成層圏までブチ上がるプレイフィールを実現しています。

1ON1に限定することで、立卓に必要な事前打ち合わせや調整の手間と効率を極限化し、短い時間でも濃厚なロールプレイを味合わせる。
フィアンセをGMが担当することで、本来ならロールを伴わないデータ的なサジェストに、物語的な味合いをしっかり載せて共有し、セッションの温度を上げることが出来る。
また常時フィアンセが喋り続けるので、TRPG七大罪悪の一つ(と、観測範囲5m以内の狭い距離感で)定められた『喋らないエネミー、無味乾燥すぎて場が持たない』問題がむしろ利点になっていたり。
ミドルフェイズが極限的に短いため、人間データを必要とする要素がなく、ロボのデータだけでゲームが成立する(キャラクター性がロボと人間に分割し、セッションの焦点がブレることがない)。
優秀な紙面構成により背景世界設定が分厚くあるため、濃厚なロールプレイを喚起する材料を活かし、短くても濃厚な掛け合いを楽しめる。(これは、俺とシェンツ先生の相性、付き合ってきた時間の長さもあるとは思う)etc、etc…。

とにかく『早くて軽いセッションをする』『ロボの物語として、やりたいことが全部やれる』『キャラクター同士、濃厚な絡み合いをする』というポイントに向かって全てがデザインされており、そうして盛り込まれた工夫の全てが、しっかり機能しています。
造ったルールの一個一個……それ以上に盛り込まなかった要素の見切りが非常に上手く行ってて、最低限の構成なのにやりたいこと、やるべきことが満たされている。だから早くて軽くて強い。

このゲームの(色んな意味で)本体は戦闘なんですが、常時位置関係が動き続けるバトルデザインが、セッション体験の大部分を占める戦闘を面白く仕上げていて、イメージ喚起力も大変高いです。
これまでヘックスやスクエアで(莫大な追加ルールを盛り込み、脳の処理能力に異様な過負荷をかけながら)再現されてきた機動戦闘が、今までよりも遥かに軽便に、そして遥かにイメージ豊かに演出・処理できる、やってても見てても面白い戦闘になっています。
武器の射程、相手のリアクション、相手の攻撃範囲が見事に噛み合って、常時最適な位置を確保し続ける(したくなる)ゲームデザインとなっており、リヴァルチャーがビュンビュン動き回ります。それがゲーム的に有利な正解でもあるので、積極的、かつシステムに押し付けられた感じなく間合いを調整し続ける。
D&D以来、TRPGは基本的にHPの奪い合いを中心においてバトルデザインをしてきたと思うのですが、ここに”位置の取り合い”という要素をスマートに、スムーズに導入してきて、新しい体験で殴られる面白さがありました。

エネミーの処理を位置関係と連動したドクトリンに固定することで、GMが行動を逐次選択する必要を削って処理負荷を下げている。
その上で、状況を認識・判断する必要性、行動のバリエーションは多彩にあるので、『自分がゲームの中で、自発的に何かを選び取っている』という充実感はしっかりある。
常時戦況が動き続ける関係上、必勝パターンを繰り返す事が出来ず、状況を判断しながら自アドエネルギーを有効に使っていく必要性とモチベーションが強い。(そのことで、ヤバい状況を乗りこなしていくエースパイロット感が強く出て、ゲームへの没入度が高まる)
移動が重要なので、そのコストに当てる低い出目のダイスの有用性が高く、沢山のダイスを振る行為に奥行きのある意味合いが付いている。
敵味方双方ゲージ型のHPを採用したことで、お互いに強烈な一撃を撃ち合いながらギリギリまで削り合うヒリヒリ感が、最後まで持続する。
マスクされるデータ、公開されるデータの選択が適切で、相手の手の内、行動パターンを探っていく楽しさがしっかりある。(情報の読み合いが滞って事故りそうな時は、フィアンセを通じてヒントを出すことも出来る)etc、etc…。

『これは真ん中に据えるのも納得だわ……』という、非常によく考えられ、処理負荷が低いのにいろんな状況が発生し、適切な判断と意思決定……『俺今頭使って、難しい状況に立ち向かってるわ』感がどんどん湧き上がる戦闘システムになってます。
とにかく移動し攻撃し反撃され大勢を立て直し……と流動していく戦闘が面白いので、自然と体温上がったロールが引き出され、なおかつそれが戦闘処理のノイズにならない適切な軽さ、速さ、面白さでした。
可変していく戦闘状況が過剰な情報負荷にならないようルールが編まれているため、高速空戦を実感できるイメージ喚起力を保ったまま、12マスの戦闘マップに無限の空を感じることが出来ました。
『空想の力を借りて、テーブルの上を無限のキャンバスに出来る』つうのはTRPGの醍醐味だと思うのですが、戦闘ルールが(想像力喚起の意味でも、データ処理の意味でも)よく出来ているので、そのプリミティブな喜びがガンッガンに湧き上がるんですよね。
これが最高に気持ちよかったです。『今、TRPGしてるな』って感覚が無茶苦茶強かった。

優れた戦闘ルールに後押しされ、体温高い状態でセッションしたので、世界観を生かしたロールもたっぷりやれました。データを処理する戦闘と、そこから紡がれる物語が理想の補完関係にあって、お互いを盛り上げるのは凄く良いと思います。
たっぷり食って満足して、システム的な工夫と挑戦にも感動しつつ遊びきれた、大変良いゲーム体験でした。無茶苦茶面白かった。このゲームは”龍”だぜ……。
世界観もエネミーデータもどんどん拡張してもらって、バリバリ遊んでいきたい気持ちですが、まずは基本ルールをしゃぶり尽くす勢いで遊びたいですね。立卓のハードル、実プレイの負荷ともに極限まで低いので、気軽に楽しく濃厚に食えると思います。
仕事終わった後二時間あれば、楽しいゲームが出来る。スキマ時間の活用(侵食)は近年の時代潮流、ビジネストレンドでもありますが、そういう流れをよく見たシステムでもあるな、と思います。
ライティングや編集、紙面の構成も初めて入る人、TRPGを知らない人に向けてよく開かれており、それが経験者にとっても手に取りやすく、読みやすいルールに通じているのも、たいへん強いと感じました。フユ先生は”風”を受け取るセンサーが、非常に鋭敏な人なんだろうなぁ……。
大変素晴らしいセッションとなりました。同卓してくれたシェンツ先生、革命的なシステムとの出会いに、心からありがとう。