イメ
スーパーカブを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月5日
小熊お手製のお好み焼きを片手に語られる、礼子の夏。
自分を取り囲む透明な壁をぶち壊すために、カブで富士山を超える。
誰もがバカだと笑うだろう、無謀な挑戦。
転び、傷つき、それでも挑むことで、見えてくる景色に、礼子はたどり着けたのか?
そんな感じのロックンロールは鳴り止まない! 擦り傷だらけの礼子の夏である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月5日
音楽もモノローグも控えめ、むっつりと静かに進む小熊の物語から、バリバリにエレキが鳴り響き、ド派手に転倒し、内心もガンガン言いまくる礼子の物語へ。
大きく転調しつつも、少女を取り巻く鮮烈さは共通だ。
何かを為し遂げたいと強く望み、挑み、弾き返される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月5日
屈辱に土を掴み、高山病に悩まされ、差し出された優しさと教えを噛み砕いて、少しずつ先に。
それが頂きにたどり着かないとしても、外から見れば”失敗”だったとしても。
礼子の夏は、熱と実りある豊かな夏だったと、よく判るエピソードでした。
人が変われば見ている世界は変わるわけで、ここまで小熊主観で描かれてきたストイックな静謐さは、あくまで小熊の世界。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月5日
表現の温度をガラッと変えつつ、それが礼子の人格にしっかり寄り添った結果だとちゃんと判るのは、誠実な作りだな、と思います。
五話素晴らしいアニメに付き合って、作品世界とキャラクターに愛着も出来たところで、良い味変にもなったし。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月5日
これまでもその片鱗を見せていた、礼子の強さと熱さが一人称視点で描かれて、彼女のことがよく解って嬉しかったです。
静かなるパンクス・小熊と呼応するのも当然、熱血ロック娘であるね。
というわけで、初手から内心モノローグを詩的な情景にぶっこみ、礼子エピソードの開始である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月5日
小熊が”ないない”な背景と同じく、一人暮らしに至った歴史は説明されないが、決断に込めた意志、ぶち壊したいものはよく伝わる。
(画像は"スーパーカブ"第5話より引用) pic.twitter.com/uyF32fEchb
自分を包囲する透明な壁を超える、魔法のほうき。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月5日
小熊にとってそうであったように、礼子のハンターカブはただのバイクを超えた存在である。
それは突破を求める意思の具現であり、可能性を引き寄せるための武器でもある。
より広く、より新しい場所へ連れて行ってくれる、特別な道具。
それを必要とする心情と合わせて、小熊がひっそり秘めていたものを礼子は、かなり早い段階から表に出してくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月5日
この表現のタイミングの違いが、二人の性格の違いであり、見ている世界の違いなのだと思う。
そしてそこにあるのは差異だけでなく、”わたしのカブ”への祈りに似た感情も共通している。
だから二人は、一緒にお好み焼きを食べるのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月5日
他人の敷居をまたぎ、水を飲み、食事を共にする小熊を見てると、やっぱりむっちゃ『オゴッ』ってなる。
無味乾燥なルーチンを繰り返す、なんにもない存在ではもう、なくなってきとるのよ…。
(画像は"スーパーカブ"第5話より引用) pic.twitter.com/W9di2ix1i5
他人の領域に招かれて入り、喉を潤すものを受け取り、腹と心を満たす温かいものを差し出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月5日
そういう人間と人間の間合いを、生活の匂いを漂わせながら生きることが出来る存在に、小熊は生き直しとるのよ…。
その一歩ずつの足取りが、ちゃんと画面に焼き付けられているのが僕は嬉しい。
お好み焼きを食べる二人が、取り澄ました類型的な表情ではなく、崩れて活き活きした顔でメシを食ってるのもいい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月5日
何故か柱に抱きつく謎仕草といい、あんま型に収まんないものが生活には満ちていて、個別の手触りを見落とさない作品である。
小熊の『あぐー』って感じの食い方がいい。沢山お食べ…。
小熊が黒箱(礼子がかつて差し出してくれたもの)に詰めた心尽くしを食しつつ、礼子の夏が語られていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月5日
風に吹かれ、見上げる近くて遠い場所。
カブによる富士山制覇を目指し、礼子の夏は山屋の夏であった。
(画像は"スーパーカブ"第5話より引用) pic.twitter.com/70Rj7Pbzdf
鳥瞰で切り取る挑戦前夜が既にキマリまくってるところに、アガるロックンロールが追加で入る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月5日
礼子の夏は、強く弾んで熱い夏だ。
静かな充足感をカレンダーに詰め込んでいった、小熊のそれとは少し味が違う。
でも、そこにはお互いの挑戦と挫折、だからこその充足がある。
すっ転んで礼子が見上げる空はゴーグル越しで、まだ透明な壁に隔たれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月5日
富士登山を成し遂げれば、この覆いは解けるのか。何者でもない自分を、世界にさらけ出すことが出来るのか。
そんなことは解らない。
解らないからこそ、挑むのだ。
青く、真っ直ぐで、熱い。若人の体温がある出だしだ。
礼子は店長に見守られつつ、相棒を修理しながら仕事に励み、山に挑み続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月5日
幾度も転んで、殺し屋のような眼で悔しさを滲ませ、差し出された水に癒やしを貰う。
バイク屋のオジジや先生たちが小熊に向けていたような、静かな優しさ。
(画像は"スーパーカブ"第5話より引用) pic.twitter.com/MekQfloZNU
ナイフのように尖った礼子の衝動を、寡黙な店長が差し出す手が上手く包んでいるのが、なかなかにありがたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月5日
経験無しでハードな肉体労働に飛び込んで、『カブで富士山登りきりたいです』って言ってくる高校二年生。
店長が『おもしれー女…』ってなるのも、無理はない。
小熊はヌボーっとした顔で、屈辱や怒りをやり過ごすスタイルだけども、礼子は地面に拳を叩きつけ、思いを炸裂させる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月5日
そういうアクティブな強さが、小熊を引っ張り新しい景色を見せた。抑えられない思い故に、一人暮らしを始め、富士山に挑んだ。
礼子は、烈火のような生き方をしている少女である。
でもその炎はあくまで自分に向かって燃えていて、他人に対しては程よい温もりに収まっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月5日
このバランス感覚が、彼女の(沢山ある)優れた部分なのだろう。
同時に他人の目がないと、無茶苦茶気持ちを出してくる。そういう人格が、よく判るエピソードだ。
幾度も転び、山小屋に飾られた世界最高峰踏破の偉業に歯噛みする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月5日
至らないからこそたどり着きたい、青春のガムシャラな焦燥が、礼子の夏に積み重なっていく。
一個一個、散々転ばされてきた悪路を乗り越え、操縦の腕を上げていく。
(画像は"スーパーカブ"第5話より引用) pic.twitter.com/ukWWkYZihE
仙人めいたアドバイスの奥にある意味を感じ取り、小熊に差し出した言葉に心が発火していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月5日
小熊にとって礼子がとても大きな存在であることは既に描かれたが、礼子にとってもそうなのだと、今回分かってとても良かった。
かっこよく振る舞った自分を、あの子の前で裏切れない。
そんな思いを燃やして挑んだ登山は、道半ばで終わる。差し出されたりんごのように、青くて甘酸っぱい、高校二年のリタイア。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月5日
でもそうやってたどり着いた場所は、透明な壁に隔たれることなく、眩しく広かった。
自分の足で、自分の意志で、この景色を礼子は掴んだのだ。
そこにヌボーッと、店長が隣り合っているのがいい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月5日
挑戦の意味を上から総括するでもなく、前のめりに指導するわけでもない。
だが激しく挑む若人を見捨てることなく、カブを回収しりんごを差し出してくれる。自分の経験から生まれたヒントを、静かに差し出しもする。
そういう人に見守られて、礼子の挑戦と挫折は夏を走り切る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月5日
途中までしか行けなかったけど、いい景色だ。
礼子がたどり着いた場所には嘘がない。
そこまでしか行けない自分も、そこに行けた自分も、連れてきてくれたカブも、全部本当のことだ。
そういう実感で総身を満たすために、礼子は自分で無謀な挑戦を決意し、準備し、挑戦し、挫折し、納得した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月5日
DIYな納得の手触りというものが、このお話ではとても大事なのだと思う。
燃料を入れる、オイルを交換する、山に挑む。
己を知る、世界を広げる。
全部、自分でやるから”ないない”ではなくなる
その過程で、当然傷は生まれる。でもそれは、優しく手をかけ見守ることで勲章に変わりもする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月5日
そして世界は、思いの外そういう手間をかけてくれる人で満ちている。
『泊まりなよ』と言ってくれる友達。
バカだけど無理じゃない挑戦と、私達のカブ。
(画像は"スーパーカブ"第5話より引用) pic.twitter.com/9Xy1VDl1jE
そういうモノたちに支えられながら、小熊は”いつか”を夢見る。夢見られるようになっているのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月5日
自分で稼いだお金で、もっと遠くに行ける切符を買う。
手続きと準備を手伝ってくれる、面倒見のいい友達がいる。
一緒にカブに乗る。
小熊の”いつか”は、充実した今の先にある。
それが礼子にとっても同じで、感情の熱量も表現も違うからこそ、お互いを大事に思えるとよく判るエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月5日
話の手触りは今までと全然違うんですが、黙っていられない思いの強さ、それを押し止める抑圧への反発は小熊も礼子も同じだ。
わたしのカブは、透明な壁を壊してくれる。
あるいは、その手助けを。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月5日
『わたしのカブなら富士山超えてた』と、寝袋に包まれ(可愛い)ながらつぶやく小熊が、なんとも頼もしかった。
やっぱあの子、相当強い個性をないない生活に閉じ込め続けてきた、生粋のパンクスだよなぁ…コバヤシはパンクス主役の話が大好きです。
マニア特有の早語りに晒されながら、小熊は生まれ変わっていく”わたしのカブ”を…カブに乗るわたしに微笑む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月5日
その笑顔の先に、何があるか。
ただ喜びと充足だけが待ってはいないだろうけど、転んでも傷だらけになっても、カブも小熊も大丈夫だ。
(画像は"スーパーカブ"第5話より引用) pic.twitter.com/ahjckwRnqd
そういう未来への期待と信頼を、挑んでは立ち上がる礼子の姿が、リタイアしてなお眩しい景色が教えてくれるエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月5日
第五話目の変拍子として、凄く良い演出、画角だったと思います。こういう構成で組み立てられるの、ホント強いなぁ…。
カブと進む青春紀行、次回も楽しみですね。