スーパーカブを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
北杜、秋。
学園祭の準備に湧く学校で、カブ乗り達は防寒に頭を悩ませていた。
孤高のアウトサイダーたちの耳に飛び込む、『原付きじゃ無理だって!』の声。
世界最良のバイクに、出来ねぇことはない。
それを証明するミッションが、今始まるッ! リアカーくっつけてッ!!
そんな感じのスーパーカブ第三章、新しい女がINNッ! なエピソードである。椎ちゃんかわいいねぇ…ちっちゃいねぇ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
修学旅行で規範を蹴り飛ばす不良っぷりを発揮した二人が、学校行事とどういう距離を取り、近づいていくかを描く話数となった。
この作品には、色んなジャンルの美味しさを自分で見つけて味わえる、豊かさがあると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
青春モノとしても旅モノとしても、北杜の季節を味わう自然詩としても、どの角度から見ても面白い。
今回特殊輸送任務に赴き、リアカーと出前機で武装する二期のカブには、ロボットものの頼もしさもあった。
メカニクスの扱い、手入れや改装を丁寧に追う物語だし、特別なギアが運命を切り開く手応えも画面に満ちている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
ミサイルを撃たなくても、物言わぬ機械が雄弁に何かを語り、主役の相棒となる物語はしっかり作れると、再確認できるエピソードとなった。
カブは頼もしいなぁ…。
カブ乗りのプライドをくすぐられてミッションに挑む小熊だが、見事任務をやり遂げて椎ちゃんと関係を作り、コーヒーの暖かさ、空色少女の頼もしさを腹に落としもする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
教室内秩序に我関せずな間合いが、ふとしたきっかけで変化し、世界や他人に向ける視線を変えていく。
ないない少女の内面(が照らす世界)の変化に注目していた物語が、同じカブキチである礼子、原付を知らない椎ちゃんとの出会いを通じて、心の外側へと広がっていく感覚。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
それが豊かに踊っていて、大変良かったと思う。
俺は小熊の世界が、一個ずつ新たになっていく描写がすごく好きなのだ。
というわけで冒頭三分半の映像詩、ゆったりと綴られる北杜の秋はとにかく美しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
カブと出会って変化していく小熊の世界が、移ろいゆく季節とともに切り取られる美麗。
団地に交差点。定点で観測することで、その変化も鮮明になる。
(画像は"スーパーカブ"第7話より引用) pic.twitter.com/8uevl3umT9
秋の落とし物たる銀杏の葉を活かして、礼子と小熊が今どんな間合いで触れ合っているか見えるのも、非常に良かった。完全に”マブ”。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
派手で劇的(とされる)な変化をあえて作品から遠ざけ、じっくりとないない少女の変容に視聴者を同調させ、染み込ませる。
焦らない筆致が春と夏を越えて、僕の中に凄くドッシリとした受け皿を作っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
作品世界の中を季節が過ぎて、小熊と礼子の間に時が流れること…そこをすごく静かで豊かなものが満たしている実感が、とにかく嬉しい。
この隣人感は、丁寧に物語を編むことでしか生まれない、ある種の奇跡だろう。
どっしりと時を追っていくカメラは今回の主役”文化祭”にも伸びていて、椎ちゃんが必死に頑張る様子、それを横目で眺める不良二人が、ジワジワ形になっていく行事に映える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
最初は輪郭しか描かれていなかった看板が、端切れを集め道具を借りて、本番で堂々客を受け入れるまで。
そんなありふれた青春の時間経過も、程よい手触りで切り取れるのがこの作品の強みであろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
時を切り取るのが巧いから、それが生み出す変化…その前景たる日常もスッと入ってくる。
変わることと変わらないことを、構えることなく、しかし鮮烈に描ききる筆力が今回元気だ。
クラスのスタンダードとかには興味ねぇ、つうか親とか身近にいねぇアウトサイダー達は、最初自分たちの世界に視線を固定している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
文化祭の出し物は視界の橋に捉えるものであり、自分が身を乗り出して関与するものではない。
それより手袋だッ!
(画像は"スーパーカブ"第7話より引用) pic.twitter.com/NjIsoiX7En
そんな二人の視界にも個人差があって、礼子は色んなものに目移りし、小熊は目的のために一本気である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
ここら辺、経済状況が人格形成に影響した部分かなー、とか少し思うけど。
二人の凸凹は上手く噛み合っていて、お互い足りないものを補い合う。
礼子の家に完全に馴染んだ、二つのカブ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
小熊はPC操作を自分のものにして、電子の窓越しにも世界を広げている。
ここに変化の実感があるのも、夏の終りに礼子がどう、免許講習取る手伝いしてやったかの描写があればこそである。
あの時は助けを借りていたものが、今は一人で出来る。
オイルを換えたりガソリン入れたり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
小さな変化と成長を確かに積み上げて、非常に特別な感慨を編み上げるこの作品は、こういう小さな変化…それが映える変化前の光景を幾つも積み重ねていく。
この丁寧さが、仮想のキャラクターが生き生き、作中世界を駆け回る土台なのだろう。
我が道を行くカブライダー連隊であったが、クラスの危機…つうか愛機へのDisに黙っていられず、身を乗り出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
”スーパーくいしん坊”もびっくりな『できらぁ! 』だったが、やっぱ小熊は生粋のパンクスだな…東京でバンドやんない? ラッパーでもいいよ?
(画像は"スーパーカブ"第7話より引用) pic.twitter.com/C8k2lC5JDj
重輸送モードにカブを切り替えていく手際と気持ちよさに、椎ちゃんとの交流が上手く潤いを足していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
カブ乗りとして自分で走り、自分で決めてきた体験は小熊たちを一歩、同級生より前に進めている。
何かをするなら、それがダメになった時も考えておく。
それは『やってもらう』のではなく『やる』側になっていく、子供たちに必要な学びだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
これを手渡すために、学校も修学旅行や文化祭を用意するわけだ。
レディメイドの行事からは特に学ばないが、カブ乗り達は自発的に、己の足で進むためのエンジンを学び取っていく。
それはふとしたきっかけで外側に広がり、触れ合い、大事なものを運んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
プライドをくすぐられて挑んだ輸送任務だが、それはクラスという共同体にアウトサイダー達が参入し、有用性を果たす機会にもなる。
自分の譲れないものを守る行動が、”みんな”のためになる瞬間。
その幸福な触れ合いを、椎ちゃんも小熊も見落としはしない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
つっけんどんで剥き出しの言葉しか使わない小熊の印象を、社交力が高い礼子が上手く軟着陸させて、椎ちゃんに感慨を残す描写が良い。
小熊もまた、バックミラーに少女を移し、自分の視界に…世界に入れていく。
礼子はカブという、自分と似通っている部分で強く繋がった仲間だが、椎ちゃんは鏡に写った真逆の存在だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
バイクには乗らないし、学校内部の社会秩序にも協力的だ。
だがだからといって、お互い切り離されているわけではない。同じ世界にいて、ときには助け合える。
自分の意志で何処に行くかを決め、それが失敗した場合も考えておく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
小熊のぶっきらぼうな逞しさは、多分椎ちゃんにはなかったものだ。
違うからこそ触れ合えて、欲しいと手を伸ばす。異質さを遠ざけるのではなく、自分に引き寄せていく。
そんな反応が、学祭準備を満たしていく。
第4話で行き来した”あの学校”の縁が、小熊の挑戦をふわっと手助けしてくれるのも、不思議な共鳴を感じさせて良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
『この子なら大丈夫だな』という信頼が、文芸部顧問との間に漂う。
小熊に歴史あり。もう、ないないじゃないよなぁ…。
(画像は"スーパーカブ"第7話より引用) pic.twitter.com/0N7jYDtUYT
『振り回されたい』という教師の言葉に、礼子はしみじみうなずき、小熊は怪訝な評定をする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
学園の運び屋として、阿吽の呼吸で動く今回、むしろ礼子と小熊の人格の差、成熟の差、それを生み出しただろう環境の差が、じわりと滲むエピソードになっている。
諦め閉じていた小熊の世界が、カブを通じて広がっていくこのお話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
小熊が乗るカブの頼もしさ、面白さが他人に伝わり、カブ乗りが増えていくのもまた、見ていて面白い描写だと言える。カブは伝染するッ!!
実際、誰かが心から楽しそうにやってると、それを自分に引き寄せたくなるよね。
カブに乗る前の小熊って、そうやって誰かに差し出せる面白さ…それを求める結構欲張りな心を、殺して生きてきたのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
だが今はカブがあって、割れ物も運べる。
寒さ対策に振り回されつつ、そうやって悩むことが楽しい。
同じ思いを共有してくれる親友がいて、新しい出会いも発見もある。
カブに乗り、カブが連れてくるものがないない少女を満たすうちに、彼女から放たれるものも知らず増えていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
それが彼女の世界に少しずつ、新しいものを引き寄せる。
小さな少女の笑顔とか、コーヒーの甘さとか、淡い青さの新しい意味とか。
(画像は"スーパーカブ"第7話より引用) pic.twitter.com/M2wBgEBHdY
文化祭があんまピカピカしてねぇ、高校生精一杯の背伸びな実在感で完成するのが、俺はすごい好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
手書きの文字で、端切れや紙切れやビニールテープを工夫して、黒板に描く夢。
それが椎ちゃんが作りたかったものであり、小熊達が手助けできたものだ。
その描き方に、一切の嘘や誇張がない。
みすぼらしく思えるかもしれないけど、それが私達が今いる景色であり、そこは小さく確かな喜びに満ちている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
念願のイタリアンバルで働く椎ちゃんの笑顔、届いたコーヒーに喜ぶ笑顔。
夢を届けてくれたカブに、触れる指先。
どれも、みっしりとした手触りがある。
コンパクトで確かなものを、みすぼらしく面白くない当たり前ではなく、かけがえのない個別の人生として切り取れる巧みさに、朗らかな情感が常に宿っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
小熊達が笑顔で、良かったな。
そう思って話を見追われる共感と感慨が、毎話しっかり生まれている。
それはまぁ、凄いことだ。
礼子に作ったお好み焼き、バイト祝いの鳥めし弁当、鎌倉グルメに引き続き、椎ちゃんの甘く温かいコーヒーを飲んで、小熊の食歴もまた一つ、豊かになった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
俺はマジで、小熊に色々美味しいものが人生にあって、そういうもんで心を満たしていい存在なんだと、常に自分を思っていて欲しいからよ…。
夢を守ってくれた友達に、忙しい中しっかりお礼を言って、温もりを届ける椎ちゃんもまた、偉かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
そんな子の青い印象が、ただ儚いだけではないのだと思い直す小熊もまた、出会えたものを自分の内側に入れて、どんどん強く豊かになる。
(画像は"スーパーカブ"第7話より引用) pic.twitter.com/DR5jbyLmlK
他人に興味ねぇ顔してた小熊が、バックミラー越しに、そして真正面から椎ちゃんの顔を自分の視界に入れて、その強さを知る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
それは椎ちゃんという『カブに乗らない誰か』を尊重できる自分に、小熊が近づいた、ということだ。
カブだけが、小熊の世界を豊かにするわけじゃない。
それを教えてくれるのも、またカブである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
怯えを反射して乗り手を振り落とすカブの生態を、持ち前のぶっきらぼうで椎ちゃんに伝える小熊が、無骨で逞しかった。
それはカブと一緒に、一個ずつ”ないない”を埋めていった実体験。
その確かな手触りを差し出すことで、小熊の世界は広がっていく。
己の興味の外側にあるものこそ、己を豊かにしていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
そんな不思議な交流を描くエピソードで、大変良かったです。
自分の世界の外側で、それでも頑張ってる女の子の顔を真っ直ぐ見れる小熊にまた一歩近づいていて、僕は凄く嬉しかった。
僕は小熊が”善く”なると、本当に嬉しい気持ちになる。
その”善さ”は内心と関係と道具と体験のアマルガムで、凄く複雑でシンプルなものが人間を作り、変えていくのだと、この話を見ていると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
すごく静かで当たり前の青春を描きながら、そういう奥行きのあるヴィジョンを提示できるのは、やっぱ靭やかで豊かな作品だからだ。
こうして出来た縁が、また小熊の世界を広げていくのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月19日
椎ちゃんも、カブに乗っていくのだろうか?
礼子とはまた違う触れ合い方で、小熊の友だちになっていくのだろうか?
小熊の世界は、どんどん善くなっていく。そこには飾りも嘘もなく、一歩一歩が地道で確かだ。
いいアニメで、次回も楽しみ。