憂国のモリアーティを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月21日
腐敗した特権階級を道連れに、地獄に踏み出すウィリアムの顔には焦燥が見えた。
終わりを願う犯罪鏡を止められるのは、宿敵たる名探偵だけ。
同志として家族として託された、ルイス達の依頼を受けて、ホームズがモリアーティと対峙する。
ここが、俺たちのライヘンバッハだ
そんな感じの憂モリファイナルエピソード前篇、決着に至るまでの道を整えるお話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月21日
『俺が死んでも、世の中良くなんだからいいだろ』という、犯罪卿にも通じるホームズの自暴自棄。
これをワトソンくんの本気の怒りが砕いて、一方”モリアーティ”最後の事件は順当に転がり…といった塩梅。
ミルヴァートンを殺すことでウィリアムと同じ立場になり、善を為すために悪を行う意味、正義執行のための意志なき装置として自分を使う危うさを、ホームズが体験し噛みしめる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月21日
ずっと”モリアーティ”の後塵を拝してきたホームズが、唯一一歩先んじられる最終局面。
このアドバンテージを作ったのは間違いなくワトソンくんであり、逆に言えば”モリアーティ”は誰ひとり、ウィリアムにとってのワトソン足り得なかった結果、一人で死んで全部終わらせようとしてる…とも言えるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月21日
崇拝は救済から、一番遠い感情なんだろうなぁ。だれが救世主を救うのか問題。
今回顕になったウィリアムの素顔を、最大のミステリとして機能させるために、アニモリの描写と演出は全部編まれてきたんじゃないか、という納得が今回はあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月21日
正義の機械として、特権的に悪を裁く。
常理を越えた能力を持つからこそ、それが唯一可能な青年はしかし、とても普通の倫理観を持っていた
ある意味、ウィリアムを殺すのは彼が憂いたイギリス、それ自体であろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月21日
自浄能力を失い、法や正義が機能しなくなった国に人道をもたらすためには、彼ほどの天才でも殺人という手段以外選べなかった。
自分の魂も汚す劇薬を選んででも、より善い世界を掴みたかった。
そんな願いを叶えることもなく、英国は腐敗した上層部をウィリアムの剣で切開してもらって、膿出しチャンスが棚ぼたで転がり込んできた形だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月21日
”マッチ擦る つかのま海に 霧ふかし 身捨つるほどの 祖国はありや”くらいは、ウィリアム言ってもいいと思うよ…。
超常的な犯罪機械、躊躇いなき悪の天使としての顔が強く強調されて描かれ続け、その真意が分かってから隙や脆さ…”人間”としての顔が見えてきた、アニメのウィリアム。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月21日
彼の真実が何だったのか、今回の疲れ果てた顔はよく告げてくる。
まぁ、そういう青年であったのだ。
いつ頃からか思うようになった『殺してやれ、死んでくれ』という意識は変わることなく、ルイス達の情がいかさま都合良くも感じるが、それにしたって苛烈で寂しい生き方よな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月21日
人としてあるべき正しさを、彼と共有してくれるものは”モリアーティ”にはいない。
そもそんなまともさを抱えるなら、人殺して国正す狂気の一員と為るのも難しかろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月21日
いつぞや壊滅させた、他人を踏んで恥じることのない共産革命主義者たちと、多分”モリアーティ”の本質は早々変わらない。
自分たちだけは、何かを成し遂げる特権を有し、人を殺しうる。
その心臓にいたウィリアムが、そんなの腐った寝言に過ぎず、しかしそれを演じ切らなければ国が変わらない事を知っていたように思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月21日
自分が死ぬなら人を殺してもいいという、狂った天秤の感覚で、最後の事件を始めたわけでもないだろう。
ただただ、終わりたい。そんな気持ちが透ける。
ホームズが女王に持ち出した条件は、そんなウィリアムの遺志を汲んだ取引を生むのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月21日
(この作品内部の)貴族主義英国は、根っこから全体的に爆破しないともうどうにもならないので、よく変わるとしたらそれは、犯罪卿と名探偵、最初で最後の共犯…という形になるか。
ここに”モリアーティ”の身内を乗せないの、ウィリアムの甘さ優しさであろうし、(実際そうであるように)理想を貫ききれない連中への諦観も滲む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月21日
家族は自分を愛しているから、殺してはくれない。その領域まで這い上がれるのは、ホームズだけだと踏んでいるのか。
ホームズが馬車の中で差し出した”救う”という言葉が、どんな決着を意味するか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月21日
理としては綺麗に殺し、夢だけを叶える形だとは思うのだが、ワトソンくんの熱血体当たりで情の意味を、名探偵も知ってしまった。
自分を本気で思ってくれる人のために、自分を大切にする。
そういうコンパクトな救済は、犯罪劇場を演じきって死ぬウィリアムのヴィジョンに、ノイズとなるか救いと成るか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月21日
なかなか難しい局面である。
”犯罪卿”を殺してウィリアムを活かす方向性は、血まみれに広げた話の風呂敷たたむにはヌルいと感じるし、救いでもねぇ感じがある。
ワトソンくんは”犯人は二人”から弾き出された時点で、今のルイスたちと同じ場所におっぽり出されたわけだが、諦めず食い下がり、真っ当な倫理と血の通った情を叩きつけて、ホームズを自分の側に引き寄せた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月21日
同じことをホームズがするのか。”モリアーティ”は名探偵に決着を預けて、それで良いのか。
”良い”と思ったから依頼したんだろうし、ワトソンくんがホームズに成し遂げた接近を許さないのが”モリアーティ”だった、とも言えるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月21日
…情で揺らぐ未来も予見して、あえて最後の一線を踏み込ませない関係性を、ウィリアムが編み上げた感じもあるかなぁ。
ウィリアムとホームズの決着がどうなるにせよ、”モリアーティ”の残党は国家が裁くのだろうが…まぁ、その資格も資質もねぇよな、この世界の英国。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月21日
人が人を裁く権利がないとしても、社会が社会足りうる機構として正義は必要だ。
国が用意しないなら、俺がやる。心底やりたくないけど。
それで動いた結果があの、疲れ切った顔で最後の人殺しを続けるウィリアムである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月21日
その残滓を美味しく頂いて、国家の形を保ったまま自力では果たせなかった刷新を成し遂げるんだから、勲章送っても死刑台なり牢獄なりに送り込む正当性、全然無いよなぁ…。
ならその決着を、全てを預けれると思えた男一人に委ねるのは正当だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月21日
そう思える相手がいた事は、ウィリアムにとっての希望たり得たのか。
ホームズが差し出す真実が、それに答えるだろう。
そこに、今回受け取ったワトソンくんの思い、ごくごく当たり前で非常に難しい真っ当さが、どう刺さるか
決着を見届けるのが楽しみである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月21日
ウィリアムに感じていた”遠さ”も、意図的に演出されてたんだろうなー、と思う回でもあった。
家族を守る意味合いもあろうけど、どこかこう…自分を焼く罪悪の火を根っこで共有してくれない寂しさが、彼にあった気はする。
袋小路に追い込まれた善を救うために、悪なる正義を演じ続ける。血みどろに成し遂げやりきって、ようやく終われる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月21日
俺は、今ウィリアムが願ってる決着で良いと思ってる。
不正義に満ちた場所で、心底嫌う”犯罪”を
選ぶしかなかった救済者を、もう休ませてもいいだろう。
しかしホームズが次週差し出すものは、それとは別になると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月21日
死という結末は変わらなくても、その色が義務と疲弊の果てではなく、なにか輝きを宿すような解答を、名探偵は手向けられるのか。
いい具合に物語をまとめられる舞台が整いました。次回も楽しみ。
…ライヘンバッハの滝にホームズしか乗せないのは、原典再現つう意味合いも、リアムとシャーロックの関係性に物語を収束させる意味合いもあろうが、家族であり共犯でありながらウィリアムの視界を誰一人共有できなかった”モリアーティ”の欠落に、嘘のない運びでもあると感じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月21日
アニメ見てる範囲だと、善を為すために悪を殺す矛盾、殺人の根源的な重さをウィリアムと共有してるキャラ、ほぼいない感じがすんのよね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月21日
それじゃ、魂の全てが問われるクライマックスに足踏み入れられないのは、ある意味当然と僕は感じちゃう。”モリアーティ”に冷淡なんだろうな、多分。