NOMAD メガロボクス2 第12話を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
自分が偽りの英雄でしかなかった真実に打ちのめされ、マックは夜の街を彷徨う。
かつての同僚との再会が、いつか聞いた歌が、絶望に光を灯す。
白いキャンバスに魂を燃やすべく、人々は最後の準備を整えていた。
ハチドリ最後の飛翔が、近づいていた。
そんな感じの英雄遍歴、NOMAD最終話一個前である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
知っていたが、マックもまた絶望に身を捩り、どん底から光を掴んでリングに舞い戻る、一匹のハチドリであった。
今までジョーが歩んだ物語を一話に凝縮したように、彼を主役に描かれる迷妄と決意の夜と朝。
主人公が殴る相手は同じだけの哀しみと愛を背負っていて、全力で拳を交えることでしかたどり着けない場所へ、二人は昇っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
がむしゃらなサクセスストーリーを終えた後の、栄光ゆえの影、愛ゆえの痛みを追い続けた物語は、ジョーの全てをぶつけるもう一人のボクサーの、人生を丁寧に彫り込む。
酒に溺れ、どん底に沈み、車を止めて過去に出会い直すことで、自分が何を手に入れてきたかを思い出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
ジョーがカーサで四話かけて手にれたモノをマックにも手渡すことで、この作品のファイナルラウンドが鏡合わせの闘争であることを、再確認するエピソードだった。
コーナーの向こう側にいるのはもう一人の自分であり、敬すればこそ本気で殴らなければいけない相手。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
闘いきらなければ終われず、燃え尽きらなければ始めることも出来ない、人生の不思議。
そういうものが次回、グローブに乗っかって激しい音を立てるための、人間の顔のクローズアップ。
そういう感じの回でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
ジョーと番外地が十全に、試合に挑む姿とか。
主任さんが樹生とのバウトを経て、倫理のリングに堂々登る背中とか。
ポップコーン抱えてあくまで軽薄に、大事なものを踏み踊る佐久間。
そんな連中の肖像も、よく見えた。
あー…次回、最後のゴングが鳴るんだなぁ…。
魅入られて、諦めた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
チーフにとっては闘争を諦めない灯火となった、伝説のメガロボクス決勝。それが、マックがグローブを置く決定打になった。
あまりに本物の輝きが眩しすぎて、耐えきれず背中を向けた。そこから、這い上がった。
(画像は"NOMAD メガロボクス2"第12話より引用) pic.twitter.com/UdLBrS9BFp
警官時代も、メガロボクスへの復帰も、マックは自分を取り巻く物語を疑わなかったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
自分は意志を込めてグローブを置き、もう一度手にとった。
しかし妻の嗚咽と佐久間の言葉が、そのプライドを壊してしまった。
自分は、BESに踊らされるだけの空っぽの道化。
街を飾るポスターも、今は虚しいだけだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
引退を決意させたジョーの試合に、マックは生気ある視線を向けている。
心底納得して終わることで、新たに何かが始まる予感がそこにはあった。
絶望と酒に曇った瞳に、もうそれはない。
英雄なんて、何処にもいなかった。
この自暴自棄はジョーがNOMADと名を変え、贋作の亡霊を背負って”ギアレス”を否定していた旅と、何処か重なる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
現実と痛烈に衝突し、身の程を思い知らされて、英雄の虚像…そう自分が思うものを投げ捨てる。
しかし成し遂げた伝説は、一人歩きを初めて誰かを照らす。それが自分自身に返る。
マックもまた、そんな道を歩んでいく…が、そこに行き着くまでは、絶望まみれでドブの底である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
やっぱタフガイの心がへし折れて、ドラッグに溺れ泥に沈んでる姿は最高に良い。
そこから奮起し、くすぶった魂が燃える瞬間を心待ちに出来るからだ。沈みっぱはNGなッ!
マックが迷いの泥沼に沈む裏で、人々はそれぞれの戦場に挑んでいた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
かつてのヒーローを取り戻すため、自分自身を罰するように立っていたリングの経験が、サチオに閃きを与える。
チーフの魂が籠もるギアを、ジョーに最適化するエンジニアの顔。
(画像は"NOMAD メガロボクス2"第12話より引用) pic.twitter.com/ArdjPDmRHR
そこにはもう、呪いも険もない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
血が出るほどに殴り合い、魂の全てを出し合ったからこそ、壊れたはずのものが再生した番外地。
一方佐久間の虚栄は、未だ不安定に震えている。
若き絶望を救わんと鳴り響くサイレンも、この男にはノイズでしかない。
未来、可能性、不屈。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
”メガロボクス”と”ジョー”が肯定的に捉えてきたものの、凶暴な牙を見据え続けてきたNOMAD。
自分の不正に加担し、理想に目を潰れと囁く佐久間は、そのドス黒さを”あした”の輝きで飾る。
そのグロテスクは、ボクサーの決死に何処か似てるから、どうにも許せねぇ。
ジョー達が自分の無力に打ちのめされ、何も覆うものがない”ギアレス”で人生に向き合っているのに対し、佐久間は常に鎧を着ている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
富の鎧、軽薄さの鎧、理想の鎧。
それを引っ剥がして、我欲むき出し敵意満載で、素直に誰かを踏みにじりはしない。
あくまで、人類の輝かしい未来のため。
その取り澄ましたギアを引っ剥がして、クリティカルな一撃を入れられるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
飾りのない一撃を入れてきたかつての恩師に対し、今のボスはダーティーで回りくどい言葉のパンチで、撫で回してくる。
それじゃあ、この人の魂は震えない。
やっぱもう一人のボクサーとして、”女性科学者”選んだの好きだな…
身動き一つ取れない自分を、献身的に支えてくれた思い出が、車中のマックを突き刺す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
暴走しうるヴィークルをあえて立ち止まらせることで、人生を変えうる出会いに行き合う。
これも、バイクを盗まれカーサに宿ったジョーの歩みと重なる。
(画像は"NOMAD メガロボクス2"第12話より引用) pic.twitter.com/tvTSDy2Ztf
かつての同僚との再会は、暗闇に差し込む光だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
それを起点に、止まっていたものが動き出す。ガードの上を光とともに列車が走り、後悔と絶望にとどまっていたものが、静かに動き出す。
虚像であっても、血を流しリングに立ったことで生まれた伝説が、沢山の憧れと救いを生んでいること。
故郷の懐かしい歌とともに、マックの瞳に光が戻ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
自分が何に挑んできたのか。人生のどんな苦しみに、諦めず拳を突き上げてきたのか。
この街に流れ着いたときはモノクロだった世界は、恋に出会い、炎に灼かれ、愛を抱いて色付いていく。
(画像は"NOMAD メガロボクス2"第12話より引用) pic.twitter.com/l0H6Zj9SRl
その歩みのすべてが、何一つ無駄ではなかったと、ハチドリの歌が教えてくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
ここでED最高の使い方してきて、あまりのキレに震えた。やっぱいい曲だよなぁホント…。
ジョーが番外地から離れた場所で、自分の歩いてきた道を見つめ直し、癒やしと再生を手に入れたように。
マックもまた、家から街に彷徨い、家族とは違う人に出会うことで闘志を取り戻していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
この複雑で不思議な屈折、人生の大事な場所にたどり着くための最短の回り道が、NOMADの描きたいものなのかもしれない。
答えは、いつでも見えない場所、魂の影にこそあるのだ。
ハチドリの物語で、旅人は自分の中の可能性に気づく。栄光も富も、安らかな死も拒絶できる境地には、一度絶望しなければたどり着けないのかも知れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
旅人は全てを持っていて、しかし拳だけを持たない。その喪失が、自分のすべての消失なのだと思い込んでしまう、ボクサーの宿痾。
全身全霊を拳に捧げ、殴ることで答えを見つけてきたからこそ、立ちはだかる大きな壁。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
それに打ちのめされて、自力で…そしてかけがえのない誰かに手を引かれて、もう一度立ち上がった時、拳がなくてもまだまだ進める自分を、”あした”に進まなければいけない宿命と進みたい意思を、もう一度抱きしめる
”ジョー”を継ぐ物語であり、あの伝説のクライマックスの先を描く二期として、それは非常に自己破壊的な視線だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
ボクシングをしなくても、生きていくことが出来る。生きていかなければならない。
拳闘を主題とする物語がたどり着くには、あまりに後ろ向きに思える結論だ。
しかし物語は幾重にも、マックとジョーの闘いがそこになければならない必然、闘って初めてたどり着ける場所の重たさを、積み上げてきている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
逃げ道でも、自暴自棄でもない、一度闘うことを諦めたからこそ燃え上がる、最後の戦いへの渇望。
俺が、アイツと、殴り合わなければならない必然。
ひどく荒々しいものを秘めつつも、しかし誰かに愛され支えられなければ、真実たどり着くことは出来ない場所。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
そのリングには、死んだ贋作も来るだろう。
”ギアレス”ジョーの栄光も、マックの英名も、何もかもが嘘にならない瞬間が、かならず来る。
それは、”ボクシング”でなければいけないのだ。
対戦相手を、自分自身を壊してでも”ボクシング”にしがみつく執着と、それが生み出す赤い血をしっかり描いたからこそ、拳を諦めて進む靭やかさ、そのために拳を後悔なく振り抜く強さが、最後の決戦に輝く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
グローブを置きかければこそ、拳に宿る輝きが誰かと自分を、照らしていることに気付く。
そういう道をマックも歩いて、愛する人のもとに帰る。長い夜は開け、もはや迷いはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
置き去りにした理想を取り戻しに、部下が自分のリングに上がる裏では、佐久間がマックと対峙していた。
その別れも、また軽い。
(画像は"NOMAD メガロボクス2"第12話より引用) pic.twitter.com/Iu45XOrOl8
”Adios,Amigo”という言葉の軽薄さが、佐久間が撒き散らす敬意のなさを際立たせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
ジョーがカーサで学んだ、異国の文化を凄く大事に、慎重に番外地に蘇らせたのに対して、佐久間は鏡越しの冷たさを維持したまま、マックの故郷の言葉を踏みつけにする。
そこには、明確な悪意すらない。
真実体重を預けているような素振りで、相手が身動ぎしたらヒラリ、と身を躱す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
多分、絆を口にしている間は本気でそれを信じているし、理想を語っている時は疑ってない。
明滅するストロボのように、佐久間の中で”真実”はその都度、重さを変える。取り返しが付く、いくらでも変更可能な軽いものだ。
そういう軽薄なステップが踏めないから、ボクサーたちは拳の置所、魂の貫き方を悩み、酒や薬に逃げる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
企業の鎖に縛られた女達も、正しい科学のあり方を探し求めて、彼女たちのリングで戦う。
そういう場所に、佐久間だけが足を運んでいない。そういう奴は、多分たくさんいるのだろう。
ロスコのジムではなく、古馴染みのリングで追い込みをかけるマック。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
かつて全てが満たされていた時代、ともに語らった川辺に戻ってきた、勇利とジョー。
口をついて出るのは、もう思い出話でも断罪でもない。
(画像は"NOMAD メガロボクス2"第12話より引用) pic.twitter.com/KGMJiBC2dO
勝つためではなく、ここに戻ってくるための技術。拳を振り抜き、素手で”あした”を掴むためのテクニック。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
そういうモノを、勇利もジョーもなんとか掴んだ。間に合った。
だから、ツギハギの番外地が、彼らが帰るべき家が画面に写っている。
真っ白に燃え尽きた、その先にある景色。
そこには勝利など約束されておらず、不屈こそが仇となり、泥を這いずってなお死ねない、苦しみに満ちた世界だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
栄光は弱さと裏切りに塗れ、全てが虚しく崩れ落ちる。取り戻せない後悔と、痛みを紛らわす嘘だけが道連れの、厳しくもありふれた人の世界。
そこから始まったNOMADは、その荒廃が取り戻しうるもので、しかし厳しい試練を課すのだと書き続けた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
偽りなく己を問いただし、死別の悲しみに苛まれ、弱さの代償を厳しく突き立てられながら、かつて己が成し遂げた輝き、掴んでいた光と出会い直す。
それはジョーだけの物語ではなく、ボクサーだけの闘いではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
様々な人が、それぞれの出会いと苦しみ、喜びと涙を積み重ねながら、人生の道を交差させて進んできた。
正しく負けられる強さ。
過って初めて判る正しさ。
喪われなお消えない光。
闘いきって、初めて始まる物語。
そんなふうに進んできた物語が、次回終わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
数多の祈りと愛を、苦しみと嘘をグローブに詰め込んで、男たちが殴り合う。
全てが決着する人生の晴れ舞台に、皆が間に合った。…佐久間は解かんねぇ。
それは終わりであり、始まりでもあろう。
(画像は"NOMAD メガロボクス2"第12話より引用) pic.twitter.com/uXhspfhKoX
目の前にいる憎いあんちくしょうは、救うべき自分の半身であり、取り戻すべき魂の欠片であり、だからこそ全霊で殴りつけなければいけない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
激しく肉をえぐることで抱擁し、傷つくことで癒やされていく。
ボクサーのパラドックスが、あらゆる人の物語に食い込みながら、次回激しく燃えるだろう。
大変に楽しみである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月25日
血湧き肉躍るだろうバウトだけでなく、その先に…闘いの只中にこそ待つ景色が。
それは傷付き、迷える人々の新たな旅立ちを、それを寿ぐ閃光の舞踏を、見事に描ききるだろう。
このお話は、ハチドリと旅人の物語だ。
その二つは、同じものなのだ。
それが判る。終わる。楽しみだ