白い砂のアクアトープを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
アイドルの夢破れ、流れ着いた沖縄の水族館。
風花の初仕事は大失敗に終わり、くくるは怒りを顕にする。
財政の逼迫、命の重さ。
くくるが背負うものを知るうちに、風花の心にも変化が訪れる。
自分の夢が壊れても、誰かの夢を支えるために。
この浜辺から、物語は始まる
そんな感じの、沖縄青春紀行第2話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
ファンタジックでフワフワと綺麗な部分が強めだった第1話から、仕事のシビアさ、初対面の硬い間合いをしっかり掘り下げ、そこから始まっていく物語を描く話数となった。
風花の浮ついた部分に、文字通り冷水ぶっかけてマニキュア剥がしてて、自分的には良い。
正直第1話は作品をどこに収めたものか、掴みかねてた部分が大きかったけども、今回描かれたもので幾つか、作品を自分の中に引っ掛ける釘を見つけた感じもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
獰猛な肉食獣としてガツガツ肉を食べるペンギンの描写とか、一生影の中にいる風花とかね。
よくよく考えてみると、オフィシャルに『PAお仕事アニメ第4段』とはこの作品、一言も言っていないわけで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
お仕事要素はあくまで要素の一つとして、軸はもうちょい別の場所にある…という心積もりで見たほうが、出てくるものと受け取る僕に齟齬が少ないかなー、と思う。
監督の過去作とか、制作会社が積み上げる歴史とか、否応なく見る側は”文脈”ってやつを勝手に作ってしまうわけだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
それに影響されすぎず、出てくるもんを素直に食べていくのが大事だよなぁと、今更ながら気持ちを作り直した。それはそれ、これはこれ、だ。
どうやっても予断ってのは生まれてしまうものだし、僕は特にそういうのを勝手に作って楽しんでしまうタイプだけども、それが壁になってお話を歪めて受け取ってしまうのももったいない話で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
結構色んなフィルターが自分の中にあったんだなと、思わされる第2話でもありました。
さてお話は、フワフワ自分探し女の唐突な申し出を、夏休み館長が鷹揚に受け入れる所からスタート。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
一生下向いてる風花が、ずーっと影の中にいるのが印象的な描写である。
この陰りは、くるる(及び、彼女にまつわる人)といる時だけ引っ剥がされる。
(画像は"白い砂のアクアトープ"第2話より引用) pic.twitter.com/1CUgkijr3P
自分の夢と優しさのバランスを取れず、都落ちして流れてきた沖縄。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
日差し明るく花咲き誇る南国において、風花は常時下を向いて日陰に居続ける。くくるの原付が進んでいく広い世界は、まだ彼女の前に扉を開いてはいないのだ。
優しいおじいとおばあに受け入れられ、仮宿りの枝は手に入れた。
暖かな食事を与えられて、逃げてきた電話をようやく取った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
しかし、それも影の中である。
自分が何が嫌で何をしたいのか、自分自身で気づいていないのだから、母の心配に堂々向き合うことは出来ない。
風花は沢山の間違いを抱えた、正されるべき存在として描かれている。
の、だが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
その糾弾が結構静かで、あんまり強くがなり立てる感じではないのが独特の味わいである。
正直今の風花は相当に困った人だと思うし、その結果として表舞台から追い出されて沖縄に流れ着いているのだが、作品全体の筆致はあくまで柔らかく、彼女を包む影すら美しい。
暗い影を抜け出せない闇として前に押し出さない…心の傷を癒やす一種のシェルターとも感じさせる筆致は、優しいとも曖昧とも取れるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
今後風花がくくるに引っ張られる形で、光の中に出ていった時、この影の中で見据えたもの、抱えたものがどう扱われるか。
そこら辺が気になる、明暗の描写である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
”アイドル”という、脚光を浴びる華のある仕事に必要ながっつきが足らない(と判断されて)少女が、人生の端役として影の中に自分を置き続けているのは、面白い配置だよな。
一度、主役になるのに失敗した存在なわけだ。
くくるはシビアな銭勘定を抱えて、今まさに人生の主役として大勝負に挑んでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
それは一歩間違えば動物が死ぬシリアスな仕事であり、自分の大事なものを奪われかねない真剣勝負である。
魚くせーとか言ってる場合じゃないのよッ!
(画像は"白い砂のアクアトープ"第2話より引用) pic.twitter.com/LqDFqWVDMy
自分が選んだ仕事に腰を入れきれず、何もかもに及び腰な風花の手付きも、今回よくクローズアップされていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
マリンブルーの色彩が強烈だったマニキュアに、しっかりツッコんでくれたのは良かった。
栄養剤を一個一個補強する、ペンギンの餌を扱うくくるの指先とは違う、お客さん気分の手付き。
同じ部屋で寝泊まりしてるのに、自分の故郷も事情も言い出さない、傷ついて臆病で…卑怯ですらあるスタンス。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
これがぶっ壊れない限り、風花は影から出れない。魚臭い作業着とマニキュアNGは、そんな破壊と再生の第一歩目である。
くくるが見せる当たりのキツさは作中でもフォローされてるけど、銭と命つう二重に重たいもんを背負ってる立場からすると、むしろ当然という印象を受ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
『魚臭い…』と風花に言わせたことで、仕事の生臭さに堂々手を突っ込んでるくくるの真剣が、より際立っていた。
夢を追う行為はそのくらい必死なもので、後輩にセンターを譲ってしまった風花が持ち得ない泥臭さを、くくるは持っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
教えられているし、大事に思っている。
そこにふらりと寄り添った、風来坊の初仕事。
控えめに言って大惨事である。
(画像は"白い砂のアクアトープ"第2話より引用) pic.twitter.com/zJMIHZpndz
ここでもくくるは客の前、光の当たる場所に立って、風花は影の中に居続ける。がっちり餌を掴んで与えるのではなく、つまむようにして他人事の姿勢をくちばしで突かれ、ショーは台無しになってしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
バケツをこぼした時の、赤い赤い血の色が良い。
それに刺激されて、ペンギンは可愛いマスコットではなく、生きて飢えている当たり前の動物としての顔を、より強く晒していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
それは当然のことだ。
そういう剥き出しのものを上手く制御し、ショーとしてラッピングするくくるの努力を、風花の浮ついた態度がぶち壊す。
この時風花は、突かれる事を当然と餌を差し出す水族館員の仕事だけでなく、剥き出しの野生を”ペンギン餌やりショー”に整える舞台人としての仕事にも失敗している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
未来に掴むべきものだけでなく、過去に置き去りしたものともちゃんと向き合えてない結果、風花は水に沈むのだ。
動物は一個の生命として、人間の都合良く生きてくれるわけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
それぞれの習性や必死さがあって、時に生臭い都合の悪さを押し付けながら、それでも隣り合っていく存在だ。
怖くすらあるペンギン大暴走を、餌から流れる血の赤と一緒にちゃんと描いたこのシーンは、自分的にとても良かった。
こういう剥き出しの生き物を、人間が見たい形に近づけ、整えるのも水族館の仕事なわけで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
その上で人間サイドの都合よりも、まず動物最優先というスタンスをくくるが持っているのは、大変良かった。
それを大前提にした上で、どう客が見たい水族館を作るか。仕事をやっていくか。
このバランス取りが難しく、また面白いのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
くくるもまた、生臭い銭と客入りに悩みつつ、客前ではその苦しさを見せないよう、手作りの看板を作っている。
生きる上でのタフな事情と、それを取り繕い整えるが故の尊さ。
その両方を、風花は上手く掴めていない。
ベッコベコに凹まされ、傷だらけの手を撫でる風花。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
この段階では、シャワーは夏凛との距離を隔てる水の障壁としてしか機能していない。
しかし貝殻の看板に込められた思いは、既に受け取っている。
大失敗を通じて、思い知らされる自分の現状。
(画像は"白い砂のアクアトープ"第2話より引用) pic.twitter.com/wozsLA0SuN
そして外を照らす強い輝きから、少し奥まった場所にある影の中で聞く、くくるの夢と水族館の事情。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
次第に光の届かない闇が照らされてきて、今自分がいる場所、誰かと隣り合っている自分が、風花にも見えてくる。
まー、事情言わないのはお互い様でもあるか…。
水族館の財政事情を語る時、『裏にあるたくさんの機械』に言及するのは面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
それは客には見えない場所で、しかしそれがなければ生き物は死ぬし、沢山お金もかかる。
華やかな輝きの裏で、駆動している生臭い事情。それを切り離せば、何もかも終わってしまうような縁の下。
そういうモノが世の中には沢山あって、風花は手が傷を作りながら、そこに接近していく話なのかな、という感じはする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
足を止めて”仕事”をする中で、銭と命の生臭さがクローズアップされてきて、作品のハラワタがだんだん、解ってきた感じだ。
それは現実の一つ、夢の一部分として、確かに描かれている
しかしそれこそが真実だと、ある意味露悪的に、夢と対比されて描かれる筆致ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
仕事の失敗も銭の重さも、ヒリつく厳しさを残しつつ、やっぱり美麗に描かれていく。
この半端とも取れる手触りが、一体何を切り取ってくるのか。不確かで…だからこそワクワクもする。
風花は夏凛から事情を聞き及び、ぶち壊された真心を手にとって、ようやく”仕事”に本腰を入れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
おずおずとではなく、ガッチリと自分の心を、砕かれた優しさを、立ち向かうべき敵を、シャワーという武器を掴みだす。
(画像は"白い砂のアクアトープ"第2話より引用) pic.twitter.com/xYJftCcn6i
魚臭い仕事着を引き寄せた時、ペンギンの野生に噛みつかれた時の手付きとは、全く違うアクティブな仕草。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
手のひらがよく芝居をしていて、風花の変化を語っている。
なんとなく流れ着いた、どれでも良い逃げ場所から、自分だけの居場所へと、がまがま水族館を引き寄せる。
その手付きが、人生の主役としての自分を引き寄せ、光の中…ガラスの向こうに押し出していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
アイドルに憧れて飛び出した東京も、後輩の事情を聞く時も、風花にとっては壁一枚向こう側、堂々光を浴びて向き合う場所ではなかった。
(画像は"白い砂のアクアトープ"第2話より引用) pic.twitter.com/g1GfzCafaf
くくるの思いを引き受け、正しく怒り闘うことで、風花はようやく影から出て、自分だけの物語をスタートさせていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
それが、誰かの夢を支える裏方の仕事だとしても。
むしろそれこそが、風花が踊るべき新しいステージとして選ばれていく。
”アイドル”という風花の前歴が、やはり面白く効いている気はする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
それは輝く舞台で歌い踊る人生の主役でありながら、別の誰かを応援すればこそ存在意義がある仕事だ。
華やかなメインアクターでありながら、別の主役を支えるサポーターとしての顔も、必ずつきまとう。
現状風花が語る過去には彼女自身しか写っておらず、彼女をアイドルとして見つめ、勇気をもらっていたファンは描かれていない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
それが視野に入っていないからこそ、立つべき戦場から退いて、夢から追い出される結末に、流れ着いたのかもしれない。
しかし敗残の流刑地たる沖縄で、出逢ったくくるの夢を支えることで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
けして人間が主役になってはいけない、”水族館”という舞台に向き合う中で、彼女は一度諦めた夢ともう一度、真正面から向き合うことになるだろう。
果たして”主役”であるということは、どんな形をしているのか。
打ちひしがれた端役として、自分自身を常に陰に置き続ける風花。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
星空の下くくると過去を交換することで、彼女は新しいスタートに踏み出す。
今はまだ、未来を指し示す星に眼が向かなくとも。
下を向いて、後悔ばかりが世界に満ちていても。
(画像は"白い砂のアクアトープ"第2話より引用) pic.twitter.com/WSSoyNFZxx
くくるはかなりシビアな状況でも顔を上げて、星を見上げ続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
原作に沖縄方言で”天の川”を意味する”ティンガーラ”を冠していることから、海と同じくらい星も大事なモチーフなんだろうなー、と思う。
空の上の海、海の中の星が交わる場所としての沖縄…っていう感じかな。
ようやく自分の弱さを語った風花に、くくるは現在進行系で夢を追える高いポジションから膝を曲げて、視線を合わせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
お互い薄暗い影の中にいて、しかし確かに、瞳に星はある。
果たしてそれが、未来を示すのか。
誰かの夢を支えることが、自分の夢を前に押し出していくのか。
女と女の視線が交わり、エモい浜辺の熱い夜が描かれる回ともなりました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
まー櫂クンとかもいっから、特定の性別だけがパスポートになる聖域の物語というよりは、色んな連中がそれぞれの人生を踊らせるお話になるとは思うけどね。
どっちにしても、濃い感情を摂取できそうで有り難い。
第1話で印象的だったファンタジックな描写を抑えめに、現実の生臭さ、命と銭の重さをくるると風花がどう引き受けるか、その片鱗を描く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
第2話と合わせて序章終了、という作りなのかなー、と思わされました。
2クール作品だし、こういうテンポなんだろうな。自分的には納得。
影に身を潜めること、堂々表に出ていくこと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
風花が光に近づいていく時、常にくくるが側に居続ける描写が、二人の関係性を上手く際立たせていたと思います。
くくるは今後も、夢の主人公として、敗北を知らず前に進み続ける子供として描かれていくと思います。
そこに物語の最初から敗北を知っているからこそ、風花が差し出せるものもあるんじゃないかな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
今回鮮烈に描かれた関係性が、物語が進むうちどう変わってくるか…それが風花の見ている世界、彼女の立ち位置をどう変えていくかにも、注目できそうですね。
次回も楽しみ!