輪るピングドラム 第2話を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月14日
凄まじい速度で突っ走った第1話が終わり、もう一人の運命の少女、荻野目苹果が持つピングドラムを追っていくエピソードである。
可愛らしくファンシーな感じで始まって、ゲキヤバストーカー運命女の顔が妖しく輝いて終わるという、パッケージの仕方が見事。
しかし見直してみると、開始一分のアバンで苹果ちゃんのヤバさ(と哀しさ)は既に描かれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月14日
どぎついピンクの便器から、ファンシーな星の薫りで立ち上る排泄の残り香。彼女は食って出す当たり前の人間生活から、少し離れた…しかし完全に達観していない場所に住んでいる。
これはみすぼらしい家の中、天蓋付きのベッドでお姫様めいて保護されている陽毬と対照的な…そして強く共鳴した書き方だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月14日
鏡に対する問いかけ、そこに浮かぶ海のイメージ。ローファーを拾って後を追う流れと合わせて、苹果ちゃんもまたお姫様類型に重ねて描かれている。
それが彼女自身の望みというより、あまりに強烈に失われてしまった姉を再獲得するための儀式であり、子供じみたおまじないであることは後々分かってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月14日
たとえ狂っているとしても、間違っているとしても、それをしなければどうにもならない。
そんな熱情に突き動かされた、喪失回復の儀式。
『陽毬のためならなんでもする』とこの段階で断言している冠葉もまた、そんな儀式に身を投じてストーキングに勤しむ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月14日
モラルにこだわり、エロティックな領域に顔を赤らめる晶馬に対して、兄は女扱いに慣れ、下着程度では動じない。そんなものは、大して大事ではないのだ。
晶ちゃんのニブチンを鏡にして、冠ちゃんのプレイボーイっぷりが強調される回でもあるが、しかし彼の思いが何処にあるかは第1話ラストで既に描かれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月14日
艶笑含みの追跡劇の中で、彼が抱え込んだ狂暴な純愛の輪郭は切り取られている。
陽毬のためなら、なんでもする。全くそのとおりだ。
晶馬達が行き交ってしまった、プリクリ由来の奇跡と呪い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月14日
ペンギンは他人には見えず、しかし観察と鑑賞が可能な、ポップでコミカルな異能だ。
モラルと正気に問題を抱えつつも、陽毬を殺さないためには謎めいたピングドラムを追い、学校をサボり、少女をストーキングもする。
そうして高倉兄弟は日常を逸脱していくわけだが、そもそも彼らを取り囲む”日常”なるものが、見た目通りに正常ではない…し、なかったことは後々分かってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月14日
同時に、異常な愛情を向けているように見える苹果ちゃんが非常にピュアな思いを抱える、普通の少女であることも。
タブーの境界線に隣接しながら、異常として遠ざけられるものにこそかけがえない真実があり、正常さを振り回す側に暴力性が宿るというテーマを、イクニ作品は幾度も描く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月14日
透明な嵐、水の底の河童の国、遠い場所にあるお城。
排除されるべき異物が、それでも抱えてしまう人間の本当。
下着売り場のエロティックを、イカニモなBGMとクルクル回る商品で笑いに包みながら、お話の真ん中に入れてくる視線。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月14日
思わず笑ってしまうコメディの中心に、異物を辺境に追いやるタブーへの視線、その魅惑と感覚喪失がしっかり焼き付いている。
星バチバチに散らした苹果ちゃんのお姫様空間と、他人に見えないペンギンをお供に連れた兄弟の世界は、ファンシーな狂気で強く隣接している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月14日
陽毬が身を置く、永遠のお姫様(或いは赤ん坊)を保護する天蓋付きのベッドも、似たように特別で、美しく、グロテスクな空間だ。
ここに、非常に地面に足がついて、飲み屋街の生っぽい匂いが漂ってくる荻窪の風景がしっかり隣り合っているのが、この作品…あるいは幾原邦彦の特徴とも言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月14日
それはペンギンの見えない、当たり前の空間として常に存在していて、しかし主役たちはそこに接続できていない。
当たり前に過去を忘れ、当たり前に現在を生きていく当たり前の生き方を、置き去りにして夢結している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月14日
しかしそれは、彼らを特権的に守るものではない。むしろ世界の異物として排除する危うさが、凄く力を傾けて”普通”に描かれている荻窪の風景には、強く宿っている。
そこを通り抜けて、苹果ちゃんは再び異様な空間…床下の夢空間へと身を置いていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月14日
ペンギンが携えていた通信機を彼女も取り出すことで、兄弟と同じ穴の狢…夢を追うストーカーであり、日常から逸脱してしまった存在であることが鮮烈に判る演出が、大変に良い。
ここで彼女が聞くのが『賢治のふるさと、花巻の野鳥』の番組なのが、モチーフを徹底してて素晴らしいところであるけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月14日
醜さ故に理想を置い、青く青く燃えて星になったよだかの星。
銀河鉄道以外にも、この作品は賢治の詩的宇宙を強く取り入れている。妹LOVEとかね…。
話が終わってみると、プリクリ様が超唐突に突きつけてきた”ピングドラム”の正体は、サッパリわからない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月14日
解ったのは荻野目苹果という少女の真相…に見える、皮層の一枚奥のヤバさと、それを追いかける兄弟のキャラクターである。
謎はまだまだ続来、追う事自体が謎を深める。
アーバンミステリーとしての顔も持つこの作品の、怖く冷えた、グロテスクで魅力的な顔が挨拶をしてくる第2話だと言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
いやまぁ、初見だとそんな感想抱く余裕もなくぶん回されるとは思うが。
絵面がいちいち面白すぎて、トンチキが常時暴れ倒すからな…それが良いんだが。
サービス精神が旺盛で、常時なんらか画面がクスグってくる面白さって、あんま言われること少ないけど幾原邦彦のとても良いところだと思ってて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
あんまり常時面白いから、何が大事なのかひょっこり見落としがちなのも、分かりにくいとされる理由の一つかなー、と思ったりもするが。
さておき、死に隣接し幼さに閉じ込められている(学校にも通えていない)陽毬に対し、苹果ちゃんは成熟の証たる懐妊を狙う、時が流れ汚れもする現実を生きる少女として描かれていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
死の穢れと生の汚れ、二人のヒロインに分割して背負わせ対比する…ように見せて、根っこは同じ。
運命に反逆することでしか妹を生かせない兄弟と、約束された運命を追いかけることでしか姉を取り戻せない少女。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
彼らがとても似た者同士であり、これから物語に飛び込む者たちも同じであると、作品はジワジワ描いていく。
そして、決定的に異なっていることも。
似ているけど違っていて、真逆だけど同じ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月15日
様々なキャラクターとドラマ、描写と表象が重なり合いながら、幾度も炸裂するこの発見を下準備し、既に答えを出しているこの話数から、物語は更に続いていく。
次回も大変楽しみだ。やっぱおもしれえな…あと苹果ちゃん可愛い。