白い砂のアクアトープを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月23日
お互いの素性を伝え、動き出したくくると風花の共同生活。
水族館の仕事にも為れてきたタイミングで、襲いかかるアクシデント。
命を預かる重責が焦りを生むなかで、館長代理として、人間として何を為すべきか。
少女たちの”仕事”は続く。
という感じの、生死明滅する水族館のお仕事物語、第3話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月23日
第1話、第2話では風花の現状と弱さ、そこから生まれる希望にクローズアップしていたが、今回はそんな彼女を導くかに見えたくくるの、年相応の脆さと頑張り、影と決意が描かれた。
別に、無敵の天使ってわけじゃない。
未熟で、暗い過去も思うところもあり、それでも歯を食いしばって守りたいもののため、必死に頑張っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月23日
張り詰めすぎてアタリが強い所も、緊張の糸が切れてしまいそうな危うさも、欠点というよりは人格の一部として、海咲野くくるという少女を受け入れられる話運びだった。
先生の出産とチョコの老い、母子手帳と去りし父母を重ねることで、生命が明滅する場所としての水族館、その仕事の重さときらめきも、良く見える作りだったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月23日
明るく見えるくくるは、色んなものを檻の向こうに置き去りにしている。
(画像は"白い砂のアクアトープ"第3話より引用) pic.twitter.com/s5CcSE9BQJ
家族の思い出、無邪気な学生生活、館長として表に出せない甘さ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月23日
カメラがなにか一つ、フィルターを挟んでくくるから遠いものを切り取っていく演出を重ねておいて、水差しが命の宿った母体をクローズアップする場面へと、見事に繋いでいく。
焦りと奮戦、思い出と未来を重ねながら、くくるが掴むもの。
それを水と光と命にギュッと凝縮し、絵で語ってくる話運びは大変良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月23日
チョコの命を守りたいから焦って、先生に無理をさせて、でも解ったことがあった。
水差しのレンズ効果で、それが拡大されて見えてくる場面は勝負手として、しっかり機能していたと思う。
冒頭、チョコとの出会いを幸福な家族の出会いと夢の中描くことで、くくるが喪失したものはより強調される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月23日
父母はもうおらず、甘える子供であることをくくるは、自分に許していない。
館長として、大事な場所を守る。命を預かる仕事をする。その決意が、やりすぎなくらい体に溢れている。
風花が芯のない緩さに震えていたのに対し、くくるは過剰なやる気と責任感に縛られている…というと、言い過ぎだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月23日
色んな重荷を背負いつつ、彼女はとても良く頑張っている。その思いを、学校の先生もわかってやってはいる。
さじ加減を間違えれば、過剰に悪し様になってしまいそうな力みの描写。
そこにワンクッション、献身と周囲の理解をちゃんと挟んで、『悪いもんじゃないな』と思わせる描画がなかなか良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月23日
全体的にフワッと感漂うアニメなのだが、そのソフトな触感が、人間の生々しさを上手く遠ざけて、なんかいい感じの間合いを生み出しているのは、ちと面白い感じ。
空也さんから感じる熱のなさ、間合いの遠さも、『おじいの水族館』に思い入れが強いからだなと、ちゃんと分かるしね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月23日
車も自力じゃ運転できない、まだまだ子供の自分たちがそれでも、大事にしたい場所。
彼も自分の心を、何処に置いていいか決めかねる
(画像は"白い砂のアクアトープ"第3話より引用) pic.twitter.com/oyQTDqBL9K
それは水族館の”仕事”に満たされるものがあればこそで、くくると同じ…はずだ。しかし、完全には同調できない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月23日
この微かな不協和音が、看板破壊を巡る感情大爆発で”仕事”へのシンクロ率を上げ、覚悟を決めた風花の様子と、面白く対比していく。
餌をやり、体重を測る。
ただ仲良く触れ合うだけで終わらず、不調をしっかり観察して、命の面倒をみる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月23日
今回は水族館での仕事ぶりが地道に、着実に描写を重ねていて、作品の解像度が上がっていく感覚があった。
前回コミュニケーションの難しい個別の命として描かれたペンギンが、長い付き合いの中で懐く様子。
世話する側も、それぞれの個性を把握し、一つの命として尊重できるようになっていく可能性。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月23日
そこに、避け得ない老いと死の匂いが確かに漂っていること。
色んな匂いが入り混じった、”職場”としてのがまがま水族館の輪郭が、鮮明になっていく。
櫂くんとガシガシ水槽洗う場面もとっても良くて、彼が幼馴染を深く気にかけている様子が、静かな対話から伝わってきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月23日
二羽の鳥は喧嘩しているようでもあり、睦み合っているようでもあり、青い水と空が重なる景色の只中、自然に生きている。
(画像は"白い砂のアクアトープ"第3話より引用) pic.twitter.com/fsCPkJe2Cx
そこに、おそらくくくるに恋をしているのだろう櫂くんの実直な優しさが重なっていくのは、しみじみといいシーンだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月23日
作業着でガッシュガッシュ、水仕事力仕事を黙々こなすストイシズムは、キャラの好感度上げる良い描写よね。腰が浮いてない。
チョコを診なきゃいけないし、おじいの代わりもしなきゃいけない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月23日
焦りが予期せぬ事態へと繋がり、くくるは一瞬、年相応にパニクる。
しかし水の音が彼女の表情を整えさせ、”仕事”に立ち戻らせる。
(画像は"白い砂のアクアトープ"第3話より引用) pic.twitter.com/MHu4mX6MDD
指示を出し、臨時休業を決め、下げるべき頭を下げる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月23日
この状況の発端が、老いたるペンギンの命を守ろうという強い思いであること含め、くくるは大変良くやっている。
第2話の風花といい、こういう微細な機微に見てる側が心を重ねられるのは、強い描画だ。
かつて風花に対峙した時は強さだけが目立っていた彼女が、たしかに見せる震え。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月23日
弱いし、悩むし、それでも譲れないから強がっているだけなのだ。
『ちゃんとしている』と思えるのは、そうあろうと務め、厳しい現状に必死に抗っている結果だ。
そういう体温が見えるのは、凄く良い。
くくるは破水した先生に、かつて見たペンギンの出産を思い出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月23日
かつて教えてもらった命の重さと、今目の前で生まれつつあるもの。それとしっかり手を繋いで、思いを誰かに託す。信頼できる仲間を頼る。
(画像は"白い砂のアクアトープ"第3話より引用) pic.twitter.com/oA67Fq9MNE
夏凛が『頼れるお姉さん』を超えた、シャープな視線でハンドルを握っているのが頼もしい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月23日
そういうソリッドで力強い演出の合間に、すっげぇ濃厚なファンタジーが押し寄せてくるのが、独特のグルーヴである。シームレスに来るからびっくりするな、海と命の幻想…。
道が渋滞している理由が『不発弾が見つかったから』なあたり、ファンタジックな理想郷にはありえない歴史の傷、未だ癒やされざるものが静かに刻まれていて、そこも良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月23日
沖縄という土地に刻まれたものと、くくるの個人史に刻まれたもの。取り戻し得ぬ死の香り。
それが命を生み出し、傷を癒やす行いと重なりながら描写されて、作品に奥行きが出てくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月23日
母なるものの温かみに風花が直で触れて、超絶不義理してた母親にようやくメール送る所とか、大変良い。やっとけやっとけ、マジで。
(画像は"白い砂のアクアトープ"第3話より引用) pic.twitter.com/NmC0wVqVWi
やっぱ生きることと死ぬこと、未だ続いているものと取り返しようもなく断ち切られたものの同居は、このエピソード…もしかするとこの作品の、結構大きな要素なのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月23日
失われるものだからこそ、それを避けるために全力を尽くす。水族館は、そういう仕事。
それが、鳥の老いと人間の生誕が交錯するエピソードの中でジワリ、見えてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月23日
くくるが見つめる3つの母子手帳には、どんな過去が重なっているのか。スゲー重い予感がプンプンするゾ…。
(画像は"白い砂のアクアトープ"第3話より引用) pic.twitter.com/BB8Paeb2sB
前回まで見えていたくくるより、もっと影が濃くて辛そうな彼女は、”仕事”を覚え始めた風花に引っ張られる形でその陰りから出る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月23日
でも風花に前に進む道を教えたのは、くくるが心を込めて作った看板であり、ファーストペンギンのマスコットである。
(画像は"白い砂のアクアトープ"第3話より引用) pic.twitter.com/gLShY4rYOV
何者も恐れず、最初に進む人。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月23日
まさにその体現に見えていたくくるは、しかし『そうなりたい=そうではない』からこそ、水族館を救うノベルティにペンギンを選んだ。
その視線は、重い過去と現在に引っ張られて下を向き、囚われてなるものかと上を向き直す。
その気合と強がりが、なんだか眩しい。
勇気とは、ただ無謀なこととは違う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月23日
今回くくるが彼女なり、必死に”仕事”をして学んだことが、これから待つ困難に…気丈な態度の奥の影に、どう響いてくるのか。
それは未だ見えないが、しかし同じマスコットを心に下げて、少女たちは同じ道を進んでいく。
”仕事場”に帰るのだ。
水族館に満ちている命と死が、くくるの陰りと強がりに震えて縁取られるような、かなりナイーブな物語でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月23日
獣医さんの出産を通して、確かに未来に繋がっていく輝きと、そこから思い出される過去も交差していて、奥行きのあるエピソードだったと思います。
前回風花のゆらゆら人生に芯を入れる、強い存在として描かれたくくるがどれだけ揺れてるか、ちゃんと書いたのもバランス良くて、大変良かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年7月23日
彼女の脆さも強がりも、凄く愛おしいものとして受け入れる素地を、こうして作ってくれると、先が気になるもんね。次回も楽しみ。