輪るピングドラムを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
激ヤバストーカー娘と思われた苹果ちゃんの家庭事情と内面が見えてきて、簒奪よりも対話が進む…と思いきや、世知辛い財政事情やら、きな臭い冠葉の周辺やら、今後発火する火種がジリジリと燃えるエピソード。
ズタボロになりながら、愛する人のため体を張る冠葉はかっこいい
ウジウジと見てるだけな晶馬に比べ、その寡黙なヒロイズムには共感する所も多く、ぶっちゃけ10年前はカンちゃん贔屓でお話を見ていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
そんな姿勢が決定的になる回であるけども、後々の展開で預けた体重をぶっ飛ばされるしんどさ、顕になる運命の残酷を思うと、シンプルに『かっけー』では見れない。
過ぎ去らない嵐はないが、立ち竦んでいたら大事な人は守れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
剣山が冠葉に伝えた果断主義は、今も彼に息づいている。
なーんも知らない晶馬が不潔なガールハントと息巻く裏で、銭を稼ぎ車を追い、泥にまみれて命を取り返してくる。
たった一つ大事なもののために、何もかも投げ出す。
そんな自己犠牲のヒロイズムは、容易に『大して大事ではない人』を殺虫していく選別主義に接続される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
不在の両親が帰ってきて、過去が蘇るための目印として、家を守りたい。
冠葉の願いは、ターゲットと狙った苹果ちゃんと深い所で共鳴している。
父の携帯電話から、ペンギンが取れてストラップになっても。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
彼にとっての”娘”が、自分ではなく再婚相手の連れ子になっても。
もうカレーが、特別な日の特別な約束ではなくなっても。
苹果ちゃんは日記に書かれた運命を再演することで、来たるべき未来を、過去の約束を愚直に取り戻そうとあがく。
その傷と足取りはひどく高倉家に似てて、だからこそ彼女はレシピを教え、同じご飯を食べるわけだが、その現場に冠葉はいない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
軟弱な共感、対立よりも対話を選ぶ余計な優しさはあくまで、晶馬の領分である。
吹きすさぶ嵐の中で、それでも夢を守るために闘ってる間は、自分によく似た人の顔は見れない
見てしまえば、もう戦うことは出来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
相手の気持にならないこと、他人の真剣な事情をバカにした冗談だと投げ飛ばすことが、シビアな世界で自分の夢を守るために、闘う条件である。
苹果ちゃんも、そういう闘志がある。プリクリ様の押し付けるルールに逆行し、ビンタ入れて帽子を投げる。
しかしその結果、友達は死んでしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
ハイテンションなプリクリ・ギャグから、落ち窪んだ瞳が色濃く死を匂わせるリアルな筆致へ。
落差で風邪ひきそうだが、洒落が一秒後には洒落にならない世界に、子供たちは住んでいる。置いてけぼりにされている。
そこで、何を見て何を守るか。
晶馬はピングドラムの存在を間近に確認しながら、自分の事情を素直に語り、貸して欲しいと持ち出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
しかしそれは苹果ちゃんには狂った妄想でしかなく、彼女の必死さもまた、他人にはイカれた寝言でしか無い。
愚かしく人生を賭ける意味は、自分にしか分からないものだ。
晶馬はしかし、苹果ちゃんが抱え込んだものに共鳴し、衝突しながらそこにある痛みと温もりを、自分の側に引き受けていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
無論それは簡単には共有できず、ビンタしたり帽子投げたり妹が死にかけたり、色々大変な事を経て、互いが抱える理由が共有されていく。
それは狂った妄想などでは、けしてない。
それが解ってしまうのが晶馬であり、だから彼は自転車を盗めない。素足で駆け出して、なりふり構わず突っ込む兄貴に、妹の命を奪還する戦いを預けてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
そんな彼だからこそ、本当は鏡合わせな苹果ちゃんと自分を、ちゃんと見据えることも出来る。
晶馬は我が家を揺さぶる金銭事情も、それを克服するために冠葉が取引した悪魔も、なんも知らないままノンキに、カレー風味の肉じゃがを食う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
だがそんな必死の現実対応が、取りこぼすものは後々、凄まじいシビアさで僕らを殴ってくる。
ひたむきに体を張る、男の背中はかっこいい。
そう憧れたことが、過ちと罪の源泉であると、この段階では当然わからない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
軟弱に相手の顔を見て、ぶつかり合いながら手を差し伸べる晶馬の生き様に、靭やかな強さがあることも。
それを、冠葉が選べないことも。
”だから僕はそれをするのさ”
兄弟は、似ているようでその魂も、運命も大きく異る。
誰かを暴力的に蹴落とすことになっても、せざるを得ない”それ”。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
それが”僕”たる男の子だけの特権ではなく、少女たちもまた自分だけの理由に突き動かされて、ひた走る存在であることは、今回顔を見せた真砂子の生き様が教えてくれる。
赤いスリングを撃ち放って、彼女が突破したいもの。
それに追いすがる歩みが、噛み合わない一方通行であることも、この段階では判らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
瞳に見据えているものは、たった一つ。それ以外を、追う贅沢は許されていない。
強くあることと、優しくあること…孤独な奮闘と、優しい共鳴が同居できない氷の世界は、切なさを込めて加速していく。
時は流れる。親は帰ってこない。死人は蘇らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
そのルールを突きつけられながら、狂ったまま走れるのか。誰かを犠牲に、孤独なまま闘えるのか。
服がズタボロになる程度の闘争は、まだまだ序章だ。苛烈さを増しながら、闘いは続く。
優しい共鳴は、そこでは贅沢品だ。それでも…。
次回も楽しみ。