輪るピングドラム 第6話を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月19日
熱に浮かされるままに、苹果は運命を手繰り寄せる。
亡き姉のために、壊れた家のために、”M”に狂って床の下。
狂気と純城、もう笑えば良いのか泣けば良いのか…というエピソード。
熟した果実のような、幼いグロテスクが印象的だ。
プリクリ様に言われるまま、ピングドラムを盗んで陽鞠莉を助ければ良いものを、昌馬はすっかり絆され振り回されて、荷物持ちなどしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月19日
幼さと病、壊れた家庭。
大事な妹…あるいは自分と共通する部分が目の前の女の子にあると、突きつけられて逃げられない。
そもそもそういう体温のあるものから、逃げたいと思わない子供だからこそ、彼はこの物語の主人公であるのだけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月19日
”M”が何を意味するのか、その多相性も知らないまま昌馬は苹果の常軌を逸した行動に付き合い、その異様な熱量を知る。
狂ってはいるが、それは愛の営みだと、
”M”がMarriage通り越してMaternityであり、MomokaでありMasakoでもあるところが、謎めいたプロジェクトMの面白いところだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月19日
ぬいぐるみに話しかけ、水底のお姫様として微睡む苹果ちゃんは、恋もキスも性交も一足飛びに、妊娠を求めている。
それは死んでしまった桃果を、大人になった苹果が桃香の代わりに/桃香として生み直すという、歪みきった転生のループでもあろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月19日
しかしこの段階で、桃香はペンギン帽に宿り陽鞠に憑依して、現世に既に戻っている。それが始動する前から、Mは破綻している。
ありふれた幼子の死に思えた桃香の不在が、世界のあり方を歪ませ、社会を震撼させたテロルと繋がり、多蕗や百合を強く軋ませる巨大な質量を持っていることを、物語はまだ描かない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月19日
しかし”高倉”に引っかかる母の描写など、後の震源は静かにスケッチされてもいる。
苹果は多蕗ほど、桃香それ自体を求めない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月19日
あくまで、ぬいぐるみに擬せられることでよりグロテスクに破綻した家族の幸福、取り戻せない過去を、運命日記を自分の体で演じ直すことで取り戻そうとしている。
しかし、多蕗は知っている。自分を救ってくれた少女が、世界に唯一の特別だと。
世界から透明にされるかのような痛ましさから、すくい上げてくれた特別な経験が、誰もが飲み込んでいく理不尽を諦めきれず、何もかもを犠牲にしてでも取り戻す狂気を引き寄せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月19日
ウテナなら御影草時が、ユリ熊嵐ならユリーカが、さらざんまいならマブとレオが。
特に囚われ、しかし通奏低音のようにあらゆる作品、あらゆるキャラクターで顔を出す、呪いとしての出逢い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月19日
そういう風に見つけられなければ、死んでしまうほどに追い込まれて見つけられ、死に別れて。
ノンキな色男の仮面をかぶって半死人の道を歩いている、多蕗という青年の狂気。
それは熱に浮かされてねじれ倒す、苹果ちゃんの異様に隠されてまだ見えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月19日
しかしそんな彼女の妄執が決定的になった公園の語らいで、その片鱗は覗いている。
全てが運命であり、約束され記されていて、理不尽が介入する余地のない満たされた世界。
桃香が多蕗に差し出し、苹果ちゃんにとっての家族がそうであったような黄金期は、人の世が無常である限り必ず破綻する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月19日
世の殆どの人が諦めて飲み込むその苦さを、生原邦明の紡ぐ物語の登場人物は、大概飲み下せない。
何か、あるべき運命を掴む手段があるはずだ。
その思いがグロテスクな歪みとなり、祈りが呪いになっていく最初が、苹果ちゃんのキモいストーカーっぷりである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月19日
発情と発熱、思い込みと恋の区別もつかない、歪なグロテスク。
そこに姉と家族を慕う幼気、止まってしまった時間の歪が匂うことを、昌馬と僕らは知っていく。
奇跡に伴う代償を、それを求める狂気を、どう受け止めるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月19日
妹の蘇生を願う兄弟二人は、理不尽に吸い込まれていく世界のルールと、それに抗う人たちを通じて自分の顔を見ていく。
助けたいのは誰なのか。救って欲しいのは誰なのか。物語は、そこへ旅立ち帰結する。
苹果ちゃんが愚かにグロテスクに見えるのなら、外道上等で彼女に隣り合う昌馬も、実は同じだ。『実は同じだ』と思い知るために、彼は青春の特急列車に乗って運命の行き着く先まで、走り切ることになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月19日
エロティシズムとセックス。背徳と耽溺と、清らかな思い。生まれうる命。
恋も愛も性も日記に描かれるまま、全てすっ飛ばして結果だけを得ようとしてる苹果ちゃんの中身を、昌馬はギャーギャー文句をたれながら、傷だらけで走りながら埋めていくことになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月19日
今回はそんな、満たされることを待つ空疎を描く回である。
もう一つの空疎は冠葉に近づいていて、謎めいた真砂子がホラー&サスペンスの主役のように、スリングショットを構え打放つ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月19日
その手にたった一つ掴みたいと思えるものを、手繰り寄せるために全てを薙ぎ払う。
その覚悟が、冠葉を取り巻くオンナ達から、記憶と縁を奪う。
あそこで断たれているのは冠葉の社会性…プレイボーイを演じることで真の欲望を、秘めたる過去を遠ざけておこうという、結構バランスの取れた決断でもあろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月19日
マトモでいようと思ったのに、それじゃ本当の僕じゃないから、一枚一枚嘘が剥がされていく。
可哀想でもあるがしかし、真砂子は彼女自身の炎に焼かれてそうせざるを得なかったのだし、冠葉も似たりよったりである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月19日
兄を焼く灼熱から運命を遠ざけようとしたことが、逆に兄の退路を断つ。
結末を知っていると、なかなかに皮肉なサスペンスでもあるか。
熱に浮かされる身体も、普通に自分を思ってくれる母も、全て振りちぎって苹果ちゃんは床下へ進む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月19日
生々しいストーカーっぷりが、幸福で乙女チックで現実味のない乙女妄想と良い対比を成して、大変グロテスクである。
実情にクローズアップすると、大概の物事はグロテスクだ。
だからおぞましいものの中にはとても必死な、譲れず切実なものが宿っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月19日
そういうものをそれぞれの立場から、クローズアップしていく物語だともいえる。
一番最初に妄執を描かれた少女は、後に最も引力から自由な、解き放たれた存在ともなっていく。
対して多蕗が語る死にかけの猫は、彼を悪霊に変えかけ、また事件の裏に閉じ込められてけして出れない、過去に呪われた亡霊に結像していくことになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月19日
死を認められないもの。理不尽を飲み込めないもの。
あらゆる子供たちにある、キラキラとした不屈の成れ果て。
多蕗も昌馬と同じ制服を着て、青春を走る子供であったこと…その時代が終わらず、狂ったまま永遠を求めていることが今回、荻野目母のセリフに静かに宿ってもいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月19日
時は自然に流れ、人を開放してくれるわけではけしてない。思いと出会いは檻となり、悪霊を育む。
その片鱗がぬらりと、ピンクに光るエピソードであった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月19日
熱に浮かされ見る記憶の中で、影が桃色しているのが印象的だ。彼女の影は、ずっと長く伸びている。強すぎる光は、陰った亡霊を生むのだ。
苹果ちゃんも、姉の輝きに呪われている。
だから己の身体を、運命再生の苗床に使い潰そうとする。
思いつめて熱に浮かされたその有様は、ひどくグロテスクで痛ましい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月19日
『別の意味でもヤベーなこの女…』と思った所で、主人公の片割れがそこに踏み込み、手を差し出して背負う準備は、コメディに交えて丁寧に整っている。
そういうものも確認できて、なかなか良い再視聴だった。次回も楽しみ。
恋と寿がれるべきキラキラが、どんだけショッキングピンクでどぎつくヤベーか、交尾志願の激ヤバストーカー少女を通じて印象づける筆が、やっぱ好きである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月19日
誰かを好きになって、結ばれる。
キラキラのおとぎ話を腑分けしてみれば、そこには欲と呪いが詰まっている。
その臓物にまみれかき分けた先にしか、描くべき何かは見えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月19日
幾原邦彦がずっと描き続ける、ドギツい…でもどこか幻想を孕んだセックスとの距離感は、ピングドラムでも健在である。
その呼吸がよく見えるのは、やっぱ苹果ちゃん描く時だな、などと思う。ヨゴレなのが良いのよ、あの子は…。