ヴァニタスの手記を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月28日
地下墳墓で遭遇した、聖騎士ローラン。
その圧倒的な実力と猛烈な性格に、ヴァニタス達は押される。
カタコンベに封じられたヴァニタスの過去と、それを見つめるノエの視線。
激戦の果てに、人と鬼は通じ合えるのか?
そんな感じの巴里地下迷宮闘争第二編、ヴァニタス第9話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月28日
狂信というには人が良すぎ、善良というには話を聞かなさ過ぎる、ローランの強烈なキャラが際立つバトル回である。
ジャンヌの”カルペ・ディエム”といい、蒸気仕掛けの異形武器が暴れるバトルは最高やね。
対話不能の宿敵と思われた”狩人”とは、ノエが捨て身でぶつかることで対話が成立して、更に話が通じなさそうなマッドサイエンティスト、モロー博士が出てくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月28日
HGウェルズの原典でも碌でもなかったが、吸血鬼が実在するこの世界、さらにぶっ壊れてそうだな…。
ヴァニタスが主役というには伏せ札の多い、慎重に読解されるべき”書”であるのは、既に描かれているが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月28日
実験体として彼を弄んだモロー博士と接触することで、あの不貞腐れて自己破滅的な…ノエならずともイライラする態度の裏側が、多少なりとも見えてくるのか。
想像してたよりローランさんが(色んな意味で)面白い人間だったので、今後の焦点はそこかなー、という感じ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月28日
モロー博士が何を研究してて、誰と繋がってるかも気になるけど。
人と獣を隔つポイントを探ってた原典を考えると、間違いなく呪い名関わってそうだな…。
さてヴァニタスを牢に”保護”したローランはまさに絶好調、二槍蛇腹剣”デュランダル”でもって、ノエを圧倒する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月28日
薬でブーストした身体能力。
フォルムを切り替えながらの、立体的な闘法。
鞭状武器の弱点である、掴まれてからの攻防を考慮した蒸気電撃。
(画像は"ヴァニタスの手記"第8話より引用) pic.twitter.com/bOocdXkubt
急に本気の涙流すエキセントリックな性格と、一切の油断を切り捨てた立ち回りの温度差が、なかなか印象的である。BGMも梶浦全開だし。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月28日
ヴァンパイア相手にも優位に立ち回っていたノエが、只人たるローランに押されることで、”狩人”の強さが際立つバトル構成は好き。
水入りになったのも、間に守るべき子羊たるヴァニタスが立ったからで、力勝負ならそのまま押し切っていただろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月28日
人間サイドにこんだけの暴力があったからこそ、かつての戦争で吸血鬼は押し込まれて、おとぎ話の住人に墜ちたのだという、問答無用の説得力が聖騎士にはある。
初対面時の朗らかな表情は”作り”かとも思ってたんだが、バトルの中で見えてくるのは結構複雑で、とびきり奇妙な人格で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月28日
”狩人”として赤い異端は狩り殺すが、相手が対話可能だと知ると規範も超える。
面白いことが大事、人間が大好き、でも闘争に躊躇いはない。変な男だ。かなり好き。
元”狩人”でありながら、モローの実験体になるのを神に守ってもらえなかったヴァニタスにとって、己を疑わないローランは苦手なタイプだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月28日
逃避行の中で、ノエは相変わらずヴァニタスの荒んだ顔をよく見ていて、手を差し伸べ踏み込もうとする。
(画像は"ヴァニタスの手記"第9話より引用) pic.twitter.com/xhiF0XqXB0
祈りの道具であるロザリオを叩き切り、荒廃した表情で立ち上がるヴァニタス。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月28日
彼にとって、ローランが信じる神は救いたり得ない。
しかしその口は救済を語り、蒼月の眷属と唾棄されながら、強くて弱い種族を勝手に救おうとする。
そしてその行いは、彼自身を救っているようには見えない。
対象の見えない憎悪に突き動かされ、焦げ付いた過去の残り香を漂わせながら、とにかく前に進もうとする男。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月28日
ルイと対峙した時、自分には掴めなかった救済を与えてくれるかも知れない。
ずっとヴァニタスを見上げてきたノエの視線が、ここに来て凄くフラットになってきた感じもある。
目の前の男は何かに怒っていて、何かに傷ついている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月28日
しかしそれが諦観の理由にはならず、救済にしがみつきながら、自分にも敵にも許しを与えない。
時に戯けた仕草で矛先を逸しながら、確実に何かを掴むべく、自分を蔑ろに目的へとひた走っている。
そして、神も自分も信じない。
そういうヴァニタスの顔を、ノエは暗闇で隣り合いながらしっかり見据えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月28日
彼の粘り強い視線を通じて、僕らはヴァニタスを知っていく…し、彼を判りきれない事自体が見えてくる。
視線と興味を探査針に、男と男が出会い、すれ違い、少し分かる。そんな試みの苦味と甘味。
術式ハッカーの本領、かつて地下に封じられていた子供の記憶を活用して、”狩人”を翻弄するヴァニタス。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月28日
壁のひび割れは混じり合わない心を反映して、男たちを大胆に切り分ける。
自分含めて、人間の善意を一切信じない青年の根本。逃げ出した実験体。
(画像は"ヴァニタスの手記"第9話より引用) pic.twitter.com/W5Fb3Dlxp7
ノエは自分がルイ相手に成し遂げえなかった救済を、ヴァニタスに求めている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月28日
欠落と渇望の構図はしかし一方通行ではなく、ノエの無邪気な善良さ、世界への信頼、より良い解決法を模索する粘り強さは、ヴァニタスに欠ければこそ必要なものだと思う。
正反対だからこそ、補い合う。
ヴァニタスは”狩人”をよく知ればこそ、どうせ話は通じないと悲観し、闘争か逃走以外の道を思いつかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月28日
しかし常識はずれの田舎者であるノエは、人をよく知らないからこそ対話を諦めず、体当たりで第三の道を開こうとする。
荒みきった同行者の現実主義が、やけっぱちに見えて仕方がない。
ギャーギャー喚き散らしながら、ノエはヴァニタスを相当買っていて、救済の可能性を見出している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月28日
その信頼はノエ自身の後悔にも伸びているし、ヴァニタスの未来にも及んでいるのだろう。
この男は、もっと自分と世界を信じていいし、何も諦めなくていい。
かつての意趣返しのように、仲間を人質に取る破天荒で対話の扉を開く行いには、そんな思いが滲むと感じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月28日
ヴァニタスが投げ捨ててしまってる対話と信頼は、力強く押し通して何かを変えれるものなのだと、ローランに一発入れることで証明していく。
(画像は"ヴァニタスの手記"第9話より引用) pic.twitter.com/Lmkc4nc7R5
ヴァニタスが見ている荒廃だけが、世界の全部ではないのだというある種の抗議が、ノエの暴走と勝利には込められている気がする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月28日
あれだけの惨劇を経て、ノエは諦めたくない男であり、ヴァニタスは既に諦めてなお、救済を捨てれない男なんだな。
欠乏の形が、お互いにハマるように出来てるバディだ。
実際力づくでノックしてみれば、奇人との対話は不可能などではなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月28日
分厚い信仰を持ちつつ、その範疇からはみ出るイレギュラーと出逢ったら、否定せずに自分の認識を変えていけるあたり、ローランはなかかな分厚い人格しているのだと思う。
極めてトンチキで、困った人ではあるけども。
もっとこー…『ヴァンパイア IS 悪! 抹殺すべき異端!』って凝り固まったイメージに、縛られてる人かとも思ってたんだけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月28日
結構自在に、目の前の相手をちゃんと見て立ち回れる人物だと解ったのはありがたい。
彼の人柄自体が、ヴァニタスの人間観にヒビ入れてる形よね。
聖騎士の地位にある人なんで、ローランが対話可能なヴァンパイアを”発見”したことが、”狩人”って組織でどう活きるか…あるいは仇になるかは楽しみである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月28日
人は守り、鬼は殺す。
では人と変わりない鬼を、教会はどうするのか。
個人的には、地下墳墓から出た後の描写が気になるところよね…。
かくして呉越同舟、足下の悪魔を捕えるべくラボに向かった面々を、向かい入れるマッドサイエンティスト。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月28日
話の通じる人間、話をしようとする吸血鬼。
そして人を人と認識できない、学術の怪物。
番号でしか人を覚えないの、強制収容所仕草過ぎてヤバいな…
(画像は"ヴァニタスの手記"第9話より引用) pic.twitter.com/gpX8JETGby
ハラワタグツグツ煮え返ってるだろうに、妙に爽やかなヴァニタスの応対で、さて、次回に続く…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月28日
自分の人生ズタズタに引き裂いた仇を前に、こういう芝居が出来るあたり、本当に己を大事にできない青年だ。
そこが、ノエのイラつきポイントなんだろうなぁ…。
救済を詠うわりに世界も自分も信じてない、ヴァニタスの内面。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月28日
モロー博士との対峙は、そこを探る手がかりをくれそうであり、次回も楽しみである。
エキセントリックな部分が目立つ男が、どんな過去を持ち何に傷つき、何に絶望してどんな救いを求めているのか。
繊細な描写と様々な交流を通じて、”ヴァニタスの書”を読ませる物語の構造が、ノエが彼に惹かれていく歩みと上手くシンクロしているのが、お話としての強さだと感じた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月28日
モロー博士の実験室に封じられたのは、人の醜悪の極みか、少年の過去か。次回も楽しみ。