ヴァニタスの手記を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
『俺のことを好きになるやつは嫌い』という、ヴァニタスの捻くれた気質を聞き及んだジャンヌは、己の策に飲まれ頬を赤らめていく。
一方ノエは、ルスヴン卿の来訪を受けていた。
初秋のパリに吹く風は、微かに血臭を宿して紅い。
そんな感じのドキドキ☆デート回、結局性と暴力の嵐だよッ! な、ヴァニタス第11話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
自分のチョロさも解ってないくせに、胡乱なラブラブ戦略に打って出て自滅していくジャンヌがチョロ可愛かったし、そんな彼女の魂胆をおそらく解って、乗ってあげてるヴァニタスはジェントルであった。
朗らかな青春の1ページが、パリを吹き抜ける秋風のごとく流れていくかと思っていたら、鬼の宿業とルスヴン卿の影が、物語をガタリと暗い方向に落とし込む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
この油断の出来なさが”ヴァニタス”だなぁと、急転直下にむしろ安心を覚えながら、次回を待つこととなった。
ヴァニタスとジャンヌ(と、保護者ドミ、巻き込まれたダンテ)が演じる可愛らしいデートと、鏡張りのカフェで展開される詰問の対比も良かったし、秋のパリを豪奢に堪能できる美術も大変ありがたかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
存在するはずのない、”太陽の塔”が見守るパリ万博…伝奇の醍醐味だね。
というわけで、可愛い可愛いジャンヌちゃんの浅はかな策略に寄り、始まった恋人たちの逍遥。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
今回は崩したギャグ顔多めで、百面相の面白さ、可愛らしさが随所に見られ、大変良い。
同性の友人に力添えしたいと、ドレスを贈るドミの人の良さね…。
(画像は"ヴァニタスの手記"第11話より引用) pic.twitter.com/jn16ef3mM4
ヴァニタスの嫌う『俺のことが好きな女』を演じるべく、ジャンヌは恋に恋する乙女としてデートを申し込む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
炎の魔女と畏れられ数多の命を奪った経験が、嫌いなはずの男に惹かれていく自身を、覆い隠している感じもある。
でもなぁ…アンタどう考えてもチョロいよ。あとエロいよジャンヌちゃん…。
自分で自分をリボンに包み、意地悪な狼の前にプレゼントしたような状況に、加担しちゃったドミを背後に引き連れて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
パリのデートは可愛らしく、体温を上げながら転がっていく。
おそらく裏を読み切ってるヴァニタスの、完璧なエスコートがまた小憎らしい。
こんなの…好きになっちゃうじゃん…。
ヴァニタスが”恋”と規定したものが、感情に溺れる熱量からは距離を取った冷たさ、観測者の怜悧に満ちているのは、ここまでも幾度か描かれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
彼のふるまいからは誰かを愛したり、自分を好きになってもらう可能性を、自分に禁じてる自虐が匂うんだよなぁ…。
モロー博士との因縁が描かれ、そう自己規定する理由も少し、目鼻がついた感じだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
しかし同時に、(ノエが感じ取っていたように)切実に救いと温もりを求めてる感覚もあって、この間でジャンヌのことをどう思っているか、見えきらない面白さがこのデートには宿る。
一方寝坊助ノエは突然の来訪を受けて、貸し切りのカフェで”デート”をすることになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
洒脱でありながら緊張感がある、鏡張りの情景が二人の間柄を上手く反射し、なかなかいいセッティングだ。
(画像は"ヴァニタスの手記"第11話より引用) pic.twitter.com/8I5fAtrb5S
今回はジャンヌとヴァニタス、ルスヴン卿とノエ二組の”デート”を並走・対比させながら進んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
前者が戯けたラブ・コメディ、そこに踊る確かな恋心の暖かさがパリを駆け抜けていくのに対し、後者は美しい牢獄のような場所に静止し、穏やかな詰問が続く。
ケーキを間に挟んだ世間話のようで、ルスヴン卿は”貌持たざる者”とノエの距離感、吸血鬼と人間に関わる価値観を穏やかに問いただす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
そこには(ヴァニタスとジャンヌにあるような)対等な風通しの良さ、悩みや傷を共有するエロティックな絆はない。
あるのは謀略と権力の、不可逆な勾配だ。
つーかサド侯爵、異名が”貌持たざる者”ってニャルめいててこえーな…まぁ声も石田彰だしなッ!(偏見ぶっぱ)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
ノエが把握していない闇が、”先生”とルスヴン卿、吸血鬼の古い歴史にはありそうで、そこに埋まった地雷は平和な現代をふっ飛ばしそうなんだよなぁ…。
ヴァニタス一行を暴力的に追放した後に、穏やかな人格者顔でノエに接触できるあたりが、ルスヴン卿の腹芸の上手さだなぁ、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
ヴァニタスがデートで忙しいタイミングを刺せたのは、偶然か意図的か。
どちらにしても、一筋縄では行かない相手だ。
ジャンヌがヴァニタスの掌の上で翻弄されるように、ノエは一方的に鏡で全てを暴かれる立場に立たされる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
ルスヴン卿は鏡張りで背中の裏まで見えるポジションを専有し、ノエが鏡の向こうを見るのは、喉笛に噛みつかれる瞬間である。
(画像は"ヴァニタスの手記"第11話より引用) pic.twitter.com/p5TXNLRn9y
もう一つのデートが、一滴の血で破綻するのに歩調を合わせて、カフェでの対話もひどくバロックな画角で、核心へ問いを投げかける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
『お前にとって、人と吸血鬼はどんなものか』
ノエはカテゴリーによって状況を判断する硬直を嫌い、目の前の人を見るヒューマニズムを信念として差し出す。
ルスヴン卿いわく、それは”不合格”である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
鬼か人かで態度を決めない柔軟さは、例えばローランが”狩人”に持ち込む新しい価値観と通じるけども、卿が代表する旧い吸血鬼の社会…あるいは彼個人の凶気は、そのリベラルに牙を突き立てる。
鬼は鬼、人は人。
それが教え子を皆殺しにされた経験に裏打ちされたものなのか、シャルラタンやモローと繋がって企む謀略に影響されたものか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
謎は残るが、鏡に暴かれた凶暴は鮮烈な事実である。
伝承の吸血鬼が”映らない”とされる鏡にこそ、その凶行を照らす。
皮肉で面白い、ショッキングの書き方ね…。
一方麗しのパリを恋人たちはたっぷり堪能し、思う存分食べて笑う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
ノエが口にした菓子が彼を麻痺させたのと、モグモグジャンヌの腹を満たしてご満悦なヴァニタスの対比は、なかなかに面白い。
いや、食べさせたくなるのよーく理解る…(ジジイ謎の共感)
(画像は"ヴァニタスの手記"第11話より引用) pic.twitter.com/x2zOCwur6i
蒸気仕掛けの鯨が、空を自在に駆けるパリ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
本来なら鋼鉄細工の赤きエッフェル塔が見守るはずのパリ万博には、実現不能とされた石造り三百メートルの”太陽の塔” が聳える。
材料工学・構造力学の無茶を、蒸気技術でどうにか押し込む作りなのかなぁ…。
我々が歩んだ歴史とはズレた方向に進んでいるパリに、聳える”太陽の塔”をヴァニタスはバベルの塔と忌み嫌う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
それは災厄によって崩れた、人の傲慢の証である。
吸血鬼をこの世に生み出し、蒸気と式が支配する世界へと書き換えてしまった事件もまた”バベル”と呼称されている。
繁栄と平和の裏にある、戦乱と破滅の微かな兆し。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
これが蒼月の吸血鬼、ヴァニタスの書、旧き絶滅戦争、改竄式といった、物語の根幹に関わるだろう設定郡とどう繋がり、どう転がるか。
なかなか面白いところだ。
ノエを啜ったルスヴン卿が、どんな毒流し込むか次第、かなぁ…。
それは先の話として、朗らかなデートは可愛い嘘の暴露ではなく、もっと紅くもっと旧いものによって揺るがされる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
初秋の健全青春絵巻かと思ってたら、やっぱりピンク色にライトアップされた淫靡空間じゃないですかー!(歓喜)
(画像は"ヴァニタスの手記"第11話より引用) pic.twitter.com/L8Ec0RiaMp
些細なアクシデントで流れた血が、ジャンヌの浅ましい本性を暴き立てる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
ヴァニタスは恋人として主治医として、その情欲を蔑まない。
人を装うための日傘と帽子…可愛らしいデートの小道具を日常に置き去りにして、誘い啜られる時間が動き出す。
自分で仕掛けた恋の罠に腰までハマって、小娘のように狼狽える日傘のジャンヌが”嘘”で、エロティシズムを啜り蕩尽する夜のジャヌが”本当”だと、思ってしまいがちな構図なんだけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
彼女の欲望を唯一受け止め、制御し支配できる立場にあるヴァニタスは、ひどく醒めた眼で恋人を見ている。
それは浅はかな策略を掌の上で転がし、自分のことが好きかもしれないジャンヌを、そんなジャンヌを好ましく思えるかもしれない自分に、微笑んでいた青年と同じ顔だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
多分どちらも同じジャンヌ/ヴァニタスで、だからややこしく苦しいのだ。
エロティックな獣欲で寝室を満たしつつ、ヴァニタスは”問診”を忘れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
自身を語ることを封じられ、怪物に落ちてルカを貪る可能性に苦しむジャンヌに、主治医として共犯者として供物として、己を捧げる。
(画像は"ヴァニタスの手記"第11話より引用) pic.twitter.com/YfWwVG2h7b
制御不能、応答不可能な呪いの暴走に寄り添いながら、ヴァニタスは医師としての冷静な顔、ジャンヌの情欲を弄ぶ悪戯と、コロコロ表情を変える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
褥をともにする女にちらつく、かつての主、今の主。
『寝てる途中に、別の男の名を呼ぶなッ!』とはならんのが、ジェントルなビッチで大変良い。
おそらくジャンヌに沈黙の呪詛を埋め込んだのはルスヴン卿なんだろうが、彼女の思いは過去にはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
今の主たるルカとの生活が、この衝動で壊れてしまうかに本気で怯え、涙を流す。
それが胸に滴った時、ヴァニタスは医師でも恋人でもない、ひどく真摯な表情を暴かれていく。
そこに強制的な救済を高らかに謳い、憎悪を込めて吸血鬼を睨んでいた表情は無い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
医師としての治療ではなく、恋人としての包容でもなく、共反射としての殺戮を成約するときの、極めて緊密な距離感。
(画像は"ヴァニタスの手記"第11話より引用) pic.twitter.com/Qgpjqp4y9y
そこには啜る欲望、吸われる快楽に浮かされた寝室の空気が、すっと冷えて程よい暖かさに変わるような、人間同士の体温がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
泣きじゃくる幼子をなだめるような、ヴァニタスの宣告。
『必ず、殺してやる』という歪んだ救済が、嫌いになるはずだった男をより深く、ジャンヌに刻んでいく。
ただラブ・コメディを共に演じたから、あるいはエロティックな吸血共犯を褥で共にしたから、二人は繋がるわけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
患者としての…鬼としての根源的な恐怖を、医師として人として、もしかしたら恋人として受け止めてあげれる誠実を、ここでヴァニタスが差し出したからこそ。
二人の縁は深まっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
嫌われるために始まった嘘の逢引が、ジャンヌの柔らかな乙女心を刺激し、しかし鬼の本性を剥き出しにする血の一滴でそれがぶち壊され、顕になったものを全て、ヴァニタスが受け止める。
奇妙に捻れた世界の、奇妙に捻れたカップルに相応しいデート回でした。
己を一切顧みず、救済としての殺戮を約束できてしまうヴァニタスの心象がどう生成されているか、気にもなるけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
ジャンヌの震える眼をまっすぐ見て立てた誓いは、軽いもんではないのだろう。
やっぱここら辺の心証は”医者”だなぁ、と感じる。生真面目で、切実で、どっか突き放しつつ寂しがり。
それはチョロくて凶暴なジャンヌの在り方と、思いの外相性がいいんじゃないか、と思わされる回だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
お似合いの二人…って言葉で片付けるには、エロスとヴァイオレンスが濃い間柄なんだが、まぁ、そこがいいよね…もっとメチャクチャに為れッ!(外野のヤバ意見全力投擲)
ルスヴン卿がノエに突き刺した詰問と襲撃が、どう波紋を広げるかも気になりますが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月11日
ただただ華やか、軽やか、可愛らしくでは終わるはずもない、業に満ちた鬼と人の物語。
それはこの夜を、この飲血を越えて続いていく。
さてどう転がるか、次回も楽しみですね。