かげきしょうじょ!! を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
オーディションは続く。
不安に揺れる彩子の脳裏に蘇るのは、雨上がりの記憶。
誰かに愛された記憶をたどり、喉から滑り出る歌声が、紗和の冥きティボルトと響き合う。
一方さらさは出番を前に、思い出の深い海に潜っていた。
そんな感じの色に出る恋出ない恋、オーディション回中編のかげきしょうじょ第12話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
第8話に引き続き、コンテは阿保孝雄。
彩子の甘酸っぱい思い出、颯爽と実力が同居する紗和の描き方、さらさと暁也の一筋縄では行かない恋。
象徴の弾丸で、ズドンと真ん中を撃ち抜く精度が光る。
期待以上の夢を描けないと自分を閉じ込めていた彩子が、紗和のエール、名前をつけられなかった恋の思い出を翼に見せる、力強い羽ばたき
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
闇を抱えたティボルトの”役作り”のために、暁也と彼氏彼女になった瞬間を思い出すさらさの、深い陰影。
乙女の恋にも、色々ある。
そういう視点からも面白い回だ。
本番前、グルグルと廻る頭の中で彩子は、愛ちゃんと同じように過去に答えを探す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
奇跡がやってこないと、諦めていた自分。
『ずっと友達でいたい』と『恋人になりたい』
見逃していたロマンスの、土壇場での再放送。
(画像は"かげきしょうじょ!!"第12話より引用) pic.twitter.com/h15weRTbRD
彩子の弱気を指弾するように見えて、階段を登って対等の視線を強く合わせ、想像力の翼を羽ばたかせるよう勇気づける紗和の公平さが、逞しく心地いい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
優等生を気取って演じているわけでなく、背筋を伸ばして生きてたら自然、誰かを助ける立ち位置になっていた、というか…。
恋も夢もなかなか形にならない苦しさの中で、彩子は自分に期待するのを止めていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
でもずっと誰かが彼女を見ていて、それは哀れみではない。
素朴な立ち姿から花のように薫る輝きが、見るものを惹きつけるからだ。
自分も、煌く星なんだ。
かつて小野寺先生が託した期待が、この土壇場で彩子に戻る。
難役ジュリエットを前に、『恋とはどんなものかしら?』と問いかける必死さが、雨上がりの涙が恋だったことを、彩子に教える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
気付かれもしないで思いが空に溶けてしまった哀しさを、あくまで青春の1ページに収まるように笑い飛ばす、少女の強さ。
それは恋で友情を壊したくない…せめて友情だけは間近に置いておきたい、健気な努力で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
あの時は気づかなかった光が、彩子の芝居を支えていく。
こう…芽吹きすらしなかった恋こそが、確かに人生を左右する眩さで蘇ってくる強さがあって、屋上のやり取りは大変良いよね。
確かに、自分を見つけてくれる人はいた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
その手触りを胸に確かめながら、彩子は彩子だけのジュリエットを演じきる。
それに呼応するように、紗和も迫真のティボルトを己の中から引っ張り出し、”仮想敵”に叩きつける。
(画像は"かげきしょうじょ!!"第12話より引用) pic.twitter.com/PdbCDbEUYv
ただ気持ちだけで奇跡を引っ張ってくるのではなく、演劇人として客に届く”何か”がちゃんとあって、思いが形になるという書き方が良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
愛ちゃんがさらさへの気持ちでジュリエットを演じたように、彩子も紗和も体験の中から、今戦える武器を引っ張り出して、オーディションに挑んでいる。
ここで一瞬タメて、観客の気持ちが自分に前のめりになってから歌唱力で切り返す、表現の技法が冴える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
天性か、計算か。
どちらにしても、強弱見事に歌い分け、ジュリエットの純情を焼き付けた”歌の芝居”は、必殺の一撃として見事に突き刺さる。
そらー、小野寺先生も悶絶よ。
ここで彩子が見せた覚醒は、第5話で小野寺先生が託した信頼への返礼という感じもあり、物語の分厚さを感じた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
音楽学校での厳しい体験は、少女をへし折りもし、強くもする。
辛い日々に鍛えられたから、当時は気づかなかった涙の意味も、託された想いも、新たに受け取りなおせる。
悩んだり、迷ったり、逃げそうになったり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
堂々挑んでいるように思える薫や紗和だって、当然挫折や屈折を抱えて背筋を伸ばしている。
皆それぞれの輝きと陰りがあって、身近にいればこそ、信じたくもなる。
自分が見えていない光を、見つけてくれる人の意味。それを、彩子は掴んだのだ。
綺羅星二つが強い輝きを見せた舞台に、仲間たちも興味津々。ライバル宣言愛ちゃん、可愛いねぇ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
自分の中にはない影を掴むために、誰の背中を睨みつけたか。
紗和の悪戯な秘密も、チャーミングでいい。あと飯食ってる千秋。
(画像は"かげきしょうじょ!!"第12話より引用) pic.twitter.com/9yCvxcvzfu
紗和は『これ!』ってエピソードがないキャラなんだが、日常の立ち姿から気高い人格がよく見えるし、バレエというバックボーン、そこに宿る屈折も印象的に描かれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
芯と頼りがいがあるキャラだからこそ、彩子の不安を打ち消す信頼に説得力も出る、と。
愛ちゃんのヘンテコなライバル宣言も、彩子の可能性をずっと見つめてた証明であると思うし、サブタイトルは色んな人に反射しながら回収されていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
でもその視線は、必ずしも光だけに向いているわけではない。
(画像は"かげきしょうじょ!!"第12話より引用) pic.twitter.com/jI1iohvgS3
中学三年生のおめかしとしてあまりに”完璧”な出で立ちで、明るくスキップ楽しいデート。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
そのはずなのに、暁也と自分を取り巻く重たい鎖を、さらさは木の陰で聞いてしまうことになる。
水上バスを上手く使って、話題と問題が行き来する様子、それが二人を縛り付ける重たさが、上手く演出されていた。
いつもの軽口と思っていた話が、水上バスに乗っかって暁也の胸元に戻ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
さらさとの縁を切らず、一門に血縁のない自分の存在を刻む煌三郎兄さんの、ずっしりした圧力。
さらさと暁也の関係は、幼少期の因縁を横にのけても、白川一門の軛が残る重たいものだ。
さらさは性別での門前払いを食らったが、部屋住みに迎い入れられてもお家での立場、芸養子の横槍…男なら無条件で花道、というわけでもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
華やかな夢舞台の奥にある、ドロリと重い政治と思惑。
それを突きつける瞬間、声色が冷える子安武人の芝居が大変に良い。ザラつくんだよなぁ、その瞬間に…。
芸の鬼・白川歌鷗の泣き所であるさらさとの縁を、弟弟子に恋人関係を強要してでも繋ぐ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
煌三郎兄さんが善意の”赤い薔薇の人”であるのも嘘じゃないが、こういう腹芸が出来るからこそ、華やかでもいられるわけだ。
…中3のにねじ込むには、やっぱキツいんじゃないすかね!
星空めいて美しい水槽に、さらさはスタートラインに立った夢を映す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
名もなき晨星から、眩い綺羅星まで。
無限に続く夢を語りながら、さらさの瞳はひどく身近な暗闇を、横目でしっかり見据えている。
(画像は"かげきしょうじょ!!"第12話より引用) pic.twitter.com/h0i5tIDaqb
聞かれていないと思いこんで、言い出せないまま黙り込む暁也の重荷を、さらさは水槽に反射する未来の端っこで、しっかり見ている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
それでも、未来に夢中な無邪気な女の子を…いつもの”渡辺さらさ”を望まれるまま演じている。
だって、東京最後のデートだから。
告白するには、絶好の日だから。
人工的に影を作り、水に照り返すライティングを映えさせる水槽という劇場。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
ここで、渡辺さらさが滅多に見せない”地”が顕にされていること…暁也が重荷に瞼を閉じて、それを見れていないことがよく判る。
『歌舞伎は卒業です!』と旅立って、帰省した時どんな顔だったか。
これが過去の回想だからこそ、万華鏡のごとく複雑に、虚実が入り交じり生まれる奥行き。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
さらさが憎くて愛おしい幼馴染のために打った、一世一代の芝居。
ここに釣り合う”白川暁也”を差し出すのは、春のお別れから四ヶ月、夏の再開を待たなければいけない。
恐ろしいのは、これがティボルトを演じるための役固めとして回想されていることだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
紗和と同じく、負の感情に親しみがないさらさが、自分の中から引っ張り出した重たい泥。
それは二人が”恋人”になる瞬間に、闇の中眩く煌く星だ。
紗和がさらさへのライバル意識をテコに使った部分で…
さらさは歌舞伎との因縁、大人の事情、子供の弱さ、恋と友情と嫉妬…あまりに沢山のものがきらめいて、それでも綺麗な瞬間を思い出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
夢語り、恋語りにしては歪みすぎている、水槽前の二人。
水鏡は、さらさの顔を映し出さない。
(画像は"かげきしょうじょ!!"第12話より引用) pic.twitter.com/Lwuu9SkncO
このときさらさが突き刺した”助六”を、ジクジクと痛めながら四ヶ月、暁也は歌舞伎役者でい続けたのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
差し出された恋人契約に、ただ甘酸っぱい慕情だけが混ざっていない苦さも、反芻していたかもしれない。
それでも、暁也は帰郷した”彼女”が、前に進めるものを差し出した。
彩子がジュリエットを演じる時、恋の形に見えていなかったものが恋めいた色合いで蘇った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
さらさが思い出すのは、恋というラベルを貼られているのに、そこに収めるにはあまりに不定形で恐ろしい、情感の怪物だ。
深海を泳ぐ魚のように、不気味で得体の知れないものが、自分の中にもある。
それをたった一人の昼食と一緒に飲み下すことで、さらさは自分だけのティボルトを降ろしていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
それは終わった思い出であり、現在進行系の残響であり、思い出すたびに意味を変えていく記憶。
雨上がりの涙だけが、恋の形ではないのだ。
恋人契約をさらさから切り出す形になってるのが、重荷を背負わせまいとする健気と、永遠に消えない共犯の重たさが入り混じって、ズシリと重い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
今ここで、水槽の泡と消えていく…ということにしておく無念を、”彼氏”である暁也くんはずっと忘れず、いてくれますよね。
そんな陰りがぬろりと香って、渡辺さらさがまた、好きになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
強い輝きと引力で衆目を引きつける太陽に思えて、その実くっそ暗くて重たい暗黒星でもあるというね…。
でもこの暗さが、暗いから渡辺さらさ唯一絶対の真実ってわけでも、また無いのよ。
そんな思い出を芸の肥やしと、図太く反芻していた素振りも見せずに。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
さらさは午後のオーディションへ、まんまる笑顔で挑んでいく。ほんっっっと奈良田は渡辺が好きだな…。
はたして”型”の呪いは、呪われた花道の記憶は越えられるか。
(画像は"かげきしょうじょ!!"第12話より引用) pic.twitter.com/qQRJl2UQSW
それは次回、花の舞台で咲き誇る夢。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
そうして成し遂げたものも、星空に至るまでの途中経過でしかなく、そんな歩みがあればこそ強く強く、星は輝く。
色んなものが複雑に混ざり合う、人生舞台の面白さが鮮烈な、思い出と未来のエピソードでした。
次回も楽しみ!
追記 共通モチーフの反転が上手いので、群像の処理が的確に、鮮烈にやり遂げられんのよね。
かげきしょうじょ追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
さらさが紅華に辿り着く前に、水槽前に埋めた夢の死骸、恋人の契約。
暁也に貸し一つ…という重さを後出しで回想して、夏の助言はそのお返しだったんだ、と解ってくる構造は、かなりテクニカルだと思う。
さらさに抱いてたイメージが、最終話一個前で反転すんのよね。
でも僕らがこれまで見てきた愛ちゃんの魂を救い、眩く才気を輝かすさらさが、それで消えてしまうわけでもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
むしろあの水槽に照らされた影こそが、さらさの顔立ちをより深く照らして、その人間を魅力的に見せても来る。
豊かに思いが育ったからこそ、見えていなかったものが見えてくる。
『だれかが見つけてくれるからこそ、未知の自分に出逢える』という彩子主演の物語は、さらさにおいては『未知のあなたを知ればこそ、あなたをもっと見つけられる』という形に反転する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
見ることと見られること、見つめて支える立場と見つけられて輝く立場は、複雑に侵犯するのだ。
煌三郎兄さんに背負わされた重荷を、なかなか言い出せない暁也を、知られないまま見ていたさらさ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
そんなさらさの重荷を、ずっと見つめていたから夏に助け舟を出せた暁也。
『見つけてもらって、前に進む』という立場が、彼氏彼女の間で公平にやり取りされていて、でも危うい嘘にも半歩、足をかける。
ここら辺の複雑さが、群像劇をまとめ上げる最後のオーディションに乱反射する構成は、綱渡りを見事にやってのけた感じを強く受ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月21日
OPに出るキャラ、全員物語にいる意味出すとするなら、こういう作りにするしか無いよなぁ多分…。
来週どう終わらすか、大変楽しみ。