王様ランキングを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
ダイダ王子との試合に挑むボッジを、草陰から見守るカゲ。
湧き上がる衝動に戸惑いながら、蘇る反省は即ち、悲惨と屈辱の編み物。
世界の片隅で悪に塗れつつ、それでも伸ばした手を繋ぐべき相手を、暗殺者一族最後の生き残りは見つけた。
俺は、何があってもお前の味方だ。
という感じの、可愛い絵柄でハードコア! この人心荒廃がスゴイ2021!! 王様ランキング第二話であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
大変良かった。
世界に満ちる悪意と無理解、理不尽にズタズタにされながら、微かな光を手繰り寄せ、傷だらけで涙し笑う子供二人が、運命の契りを結ぶエピソードであった。
烙印を刻まれ生まれてきた子供、そこに確かにあった温もり、残酷なる死の手触り。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
それでもなお、何かを求め空をかく掌。
自分のツボをズコズコ突かれたのもあるが、カゲちゃんにもボッジ王子にも一切容赦のない暴力、偏見を恐れず叩きつけることで、その奥にあるものを描こうとする姿勢が刺さった。
『コイツぁ絵柄を変えた…あるいは手塚先生に戻した”どろろ”ですよ…』ってのが、この第2話での感想である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
打ちのめされ、嘲られ、涙してなお、王たるべき剣を掴もうとする子供に差し出された、影からの真心。
ずっと一人で立ち続けてきた少年が、心の底から欲しかったもの。
それを差し出すことで、カゲちゃんは短剣を捨てた両手で、もっと暖かなものを掴めるようになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
かつて母から与えられたプレゼント、一人で生きていくために差し出し、価値がないと唾棄されたものを掴み直すことが出来る。
互いの傷を見ていられず、手を差し伸べる行為が、己の傷を手当もする縁。
それが力強く、母亡き少年二人を結びつけるエピソードであった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
ボッジの健気、周囲に理解されない才気の描き方も良かったが、やはり堪えに堪えていた涙を笑顔に混ぜて、魂の盟友と出逢ったラストカットが、大変に良かった。
とんでもねぇ物語が始まっちまうぜ…(予感に震える、周回遅れマン)
というわけで、自分でも理解できない衝動に導かれ、光と闇の間に引っ張り出されたカゲちゃんの回想から、物語はスタートである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
だーからダメなんだって即死だから! 己を捨てて我が子を守る母の姿は!!
(画像は"王様ランキング"第2話より引用) pic.twitter.com/NAz4P7uya8
今回のエピソードは”掌”のお話であり、カゲちゃんがかつて掴んだもの、手放さざるを得なかったもの、新たに掴むものと手放すものを軸に、過酷悩みと強い光が混ざり合う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
愛のこもった人形と、母の手を握っている間は掴まなくてよかった、金貨と短剣。
カゲ一族が謀略に巻き込まれ虐殺された結果、カゲちゃんはその両方を失っていくことになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
一切情け容赦のない虐殺描写の中で、カゲちゃんは同じくぬいぐるみを抱えた令嬢に助けられ、一命を取り留める。
彼女は不気味に大人びた存在で、死体を前にした絶叫は演技、ぬいぐるみを裂いてカゲを匿う。
小さな両手で掴んだぬいぐるみが、死地を切り抜けるシェルターとしても機能することを、カゲはその身で知る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
が令嬢の賢さは未だ遠く、偏見と強欲に満ちた世界でどう生きていくか、その術を知らない。
自分にとってはとても大事なぬいぐるみを、決意を込めて差し出しても、世間はつばを吹きかける。
リンゴを盗む(と、市場の人間には認識される)時、カゲちゃんはぬいぐるみを対価として棚に置いている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
そこに籠もった思い入れ、縁、個人的な痛みは、市場においては考慮されない。
重要なのは万人に共通する経済媒介…金ピカのカネ一つである。
そしてそれを、母に守られてきたカゲは持ってない。
ボコボコに殴り付けられ、裏路地に放り込まれ、差し出されたのは残飯。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
『陰の中では無敵だが、日の下では最弱』という一族の宿命は、少年が後ろ暗い稼業の手助けに、善悪の判断ないままに飛び込んでいくことを後押しする。
それは日の下にいられない生き方、いつ生きても死んでもおかしくない人生だ
そんな場所にも光はあり、その温もりは打算と欲望の余り物でしかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
悪党の下働きとして働く中で、カゲちゃんは金貨を投げ渡され、闇の中でその小指を握る。
かつて母とともにあった温もりを、せめてもう一度とすがる。
その掌の小ささが、哀しく痛ましい
(画像は"王様ランキング"第2話より引用) pic.twitter.com/uBpzf0fCeL
結局カゲちゃんは売られ、夢枕母の警告に目覚めて窮地を逃れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
悪党との日々はあくまで、利害によって繋がった関係でしかなかった。
しかし酒場でつまんねぇ死に方をした男の、死に際流れる涙に、カゲちゃんは掌を添える。
世間の連中は一切鑑みない、闇の中確かにあった光の残滓。
悪党にとって、カゲとの日々は簡単に切り捨てられるはずのもので、しかし死に際脳裏をよぎり涙を絞ったのは、その温もりだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
自分もこの小さな命と同じく、金でも刃でも無いものをその掌に握りたいと、願っている。
そう気づけていたのなら、二人の生き方も変わっていただろう。
しかし真実が判るのは死の瞬間だけであり、カゲちゃんは再び誰かと繋ぐ掌に虚無を握り、裏街道を進んでいくこととなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
もはや遠い親子の縁を、それでも追いかけていた瞳は荒み、その手には金貨袋が握られている。
(画像は"王様ランキング"第2話より引用) pic.twitter.com/q6Jz21CKeo
母を殺し悪党を殺した現世の世知辛さに同化してしまったカゲの、瞳に輝きを取り戻すもの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
それがボッジの奮戦であり、その不屈、その清廉はカゲの掌を、力強い拳に変える。
カゲはボッジを見ることで、空疎だった掌に希望を、決意を掴むことが出来るのだ。
同時に短剣すら握れぬボッジは”掴めない”存在で、己が目指す王の剣…世間一般に流布するスタンダードな権力のイメージと正面からぶつかるよう諭され、粉砕されていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
一切情け容赦なく、児童の柔肌を全力で殴打してて『WIT STUDIO…”覚悟”あんなぁ…』と思った。
それはさておき、見てて超つれぇ…。
ダイダ王子を翻弄していたボッジの牛若丸スタイルは、世間からは卑怯な玩弄と取られてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
正面から力で粉砕するマチズモ(その極限が、巨人たるボッス王なのだろう)を、横に受け流し傷を与えたい、ある意味フェミニンな戦い方。
その優しさを、世間は見ない。
(スタンダードな発声)言語なきボッジは、剣を用いた身体表現においても、己を理解されない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
コミュニケーションが困難な、孤独な世界。
その辛さが様々なハンディよりも強く、ボッジを追い込んでいる。
か弱い体は、既に克服されている。カゲが後に告げるように、ボッジは勝っているのだ。
しかしその勝利は、暴力的なマチズモのみを是認する王国において、極端に理解車が少ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
手話というコミュニケーション手段を持って、王子に歩み寄る立場にあるはずのドーマス指南役こそが、ボッジの”勝ち”が”負け”に変わる決定打を打ち込むのだ。
言葉が通じることは、己を解ってもらうと=ではない
それでも、ボッジは重すぎる剣を掴み、父のような王になることを望み続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
そこには金ピカの権勢、強さによる抑圧への憧れではなく、ただただ幼き家族への慕情故なのだろう。
健気であるがゆえに血が滲み、孤独に包囲された姿が痛ましい。ひどすぎるよッ!
その奮戦に目を開くことで、カゲはずっと閉じこもっていた世界の裏側から、光の中へ飛び込む決断をする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
それは暗殺一族である彼を無力にする、危険な領域だ。
しかしそこに飛び出さなければ、掴みたいものが掴めない。
(画像は"王様ランキング"第2話より引用) pic.twitter.com/B8SOL7Eb6H
槍使い・アピスの介入により、カゲの存在が白日にさらされるのは後になったが、ともかく自分を引き込み汚してきた闇から飛び出す決断を、カゲはボッジによって引き出された。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
剣を捨てて、希望を取る。
そうさせる何かを誰かに届けうるのが、ボッジの強さなのだろう。
一方蛇使いベビンは、勝利の栄光から離れた影の中で冷静に、状況を俯瞰している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
ダイダ王子の未来を、人格を鏡の中から左右する”あいつ”の存在に、どーも彼だけが気付いてるっぽいんだよなぁ…。
実体を持たない”あいつ”は、ボッジによりそうカゲの反存在…物語を闇に引き込むシャドウか。
つーかダイダボーイも、素直な性根を悪いやつの囁きで歪ませられ、ボッジをボコボコにしてしまってる感じで…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
こっから話がどう転がるかは判らんが、無責任に…あるいは悪意を持って囁く顔のない存在と、どう戦っていくかってのは、結構大事な柱なんだろうな。
さて、傷ついたボッジに寄り添うカゲには異形ながら、顔がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
何かを掴む掌があり、思いを伝える口があり、希望に輝く瞳がある。
一人格として、彼はボッジの傷と孤独に寄り添い、誓いを立てる。
(画像は"王様ランキング"第2話より引用) pic.twitter.com/XKam6RXfTd
カゲが掴むべきなのは短刀でも金貨でもなく、今差し出されている形のない思い、自分を弱くしない光だったのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
それは傷ついてなお剣を掴み、世間が認める価値観で孤独を埋めようとするボッジにとっても、真実必要なものだ。
母亡き傷ついた子供として、荒野に立つ一人の人間として。
カゲの誓いはボッジの心を穿ち、二人の瞳に炎が宿る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
奪われ、奪い続けてきたカゲがボッジの思いに引き寄せられる形で『もう何も貰わねぇ!』と叫ぶのは、あまりに気高く強い行いで泣いてしまった。
奪われたから奪い返す、殺されたから殺す。
そういう道のりから、カゲは二話にして降りたのだ。
あるいはそうして差し伸べられた掌が、ボッジが傷つきながら世間からの承認を求め、過酷なマチズモに手をのばす道から、彼を遠ざける手助けとなるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
それは、ここから先の物語である。
無理解、強制、嘲りと報復。
悪しき意味での”男性性”との決別は、多分大事な要素。
こうして考えると、第1話で窮地を越えるためにカゲちゃんが短剣を”投げた”こと、そこに追い込んだのがベビンさんなの、結構示唆的な場面だったんかな…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
今回選び取った新たな生き方の予兆は、一見敵対に見えるあのシーンにこそあって、そこにニヒルな蛇使いがいたってことが、今後どう活きるか。
大変楽しみです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
ボッジがどんだけ苦しんでいるか、心と体に包帯を巻いてしっかり見せた上で、それを越えられるたった一つの支え、新たな光としてカゲちゃんを描く。
二人は友情をその手のひらに新たに掴み、本当に欲しかったものを探し、取り戻していくのだ。
ジュ、ジュブナイル…ッ!
こんだけ強く、主役二人の縁が定めであると見せられちまうと、お話が乗っかって転がる足場固めも完璧でありますが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
彼らが立ち向かうべき嵐が、どんだけ血生臭く容赦ないか、カゲちゃんの辿ってきた地獄、ボッジを苛む傷で鮮烈に書いたのも、大変に良い。
かくして、二人の運命が始まる。次回も楽しみ
追記 涙腺を伝う宝石の意味を、世界でひとり解っているヤツってのが、俺は三度の飯よりも好き。
追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
ボッジが一人のときしか泣かない、泣けない強さと切なさをちゃんと書いた上で、カゲの隣では泣ける、カゲの存在だからこそ隠したかった辛さに寄り添えると、渾身の作画で魅せてきたラストは、やっぱ圧倒的につえぇ。
プライドがあるからこそ笑っている男の涙は、熱く重い。
それを唯一人理解し、手を差し伸べる決意がカゲを、ボッジの光に変えていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月21日
流れる涙をそのままにしておかねぇってのは、悪党最後の冷たい涙に何も出来なかった哀しみが、やっぱ背中を押してる感じするな。
かつて求め奪われたものを、少年たちは取り戻すのだ。このお話は、優しき復讐の物語…。