白い砂のアクアトープを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
ペンギンの産卵が近づくティンガーラは、泊まり込みでそれを見守る。
それを特例で免除された知夢に、食ってかかるくくる。
何かと衝突の多い”イヤな女”がかかる、事情と秘密。
新世代の水族館ティンガーラは、誰に優しい職場であるべきなのか!?
そんな感じの時限爆弾炸裂! すまねぇ知夢サン俺が悪かったッ!!な、土下座の第16話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
初登場の第9話から、コリコリ反感を稼いできた現代主義者が、どんな事情でカリカリしてきたか。
その内情を、生命と職場の関わりを別角度から照らしつつ描くエピソードである。
明かされてみれば『あー!』と思うネタであり、今”お仕事”描くなら絶対触っておかなきゃいけない重要事項。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
第3話以来の登場となった竹下先生を上手く生かして、『母と労働』つうテーマに切り込む話となった。
パズルのピースがピタッとハマるような、構成の妙味を感じれるお話で、とても良かったです
というわけで職場復帰なった竹下先生と、知夢の距離が開いてる所からスタートである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
心理状況を物理的間合いに反射させて描写するスタイルは、情報の圧縮率が高くてありがたい。
今回は表情へのクローズアップも良くて、内心がよく伝わる描画だった
(画像は"白い砂のアクアトープ"第16話より引用) pic.twitter.com/sPAJjoLzeg
生き物の命を救い、ともに働く大事な仲間。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
そんな竹下先生への、陰りの中でのしかめ面。
一体何があってこんな表情をし、特例で仕事を休むのか。
物語は海咲野のジト目を追いかけるように、知夢の秘密に踏み込…もうとして、頑なに拒絶される。
休む事情を語らない、その頑なさはどこに理由があるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
一体何で、知夢はがまがまの古くて緩い共同体主義に反発するのか。
前クールから仕込まれた爆弾が、巧妙に連鎖爆発を始める感じである。
導火線の奥には、人間だれしも抱える事情、譲れぬ大事なものがあるが、くくるはそこに目が行かない。
しかし知夢の献身的な仕事ぶり、生き物への愛情を知るペンギンたちは、孤立しがちな飼育員にピョコピョコ寄り添う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
人間が悪感情に踊らされて見えていないものを、純朴な動物は既に嗅ぎつけていて、寄り添うように近寄ってくるカットが、示唆的で良い。好かれてるねー南風原さん。
視聴者は基本、主人公に視線を重ねて物語にはいるので、『がまがまを否定するイヤな女』である知夢にはいい印象がない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
それは巧妙な煙幕となって、他人の事情に想像力が伸びないくくるの未熟を際立たせ、その奥にあるものが見えた時の衝撃を強める。
しかしくくるの視界に入っていない”何か”を、上手く知夢からはみ出して描写を積んでいく巧さは既に発揮されていて、彼女になにか考えと事情がある事は、この話数が始まる前から推察できる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
ここら辺の印象と情報のコントロール、秘密が炸裂する効果を高めるレトリックは、このアニメかなり巧妙。
なんで、絶賛反感買いまくりな諏訪さんが理念の火薬庫であることを期待しつつ、現状を見ている感じではある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
目に前に見えてるものの奥に、籠もる思い。
そこに想像力を伸ばすのが大事…てのは、第2話の看板騒動でも書いてる。
なんだけど、人間なかなか広い視野、寛大な心ってのは掴めない。
くくるが一度非・身内認定した存在に防壁分厚いの、がまがまの家族主義で育った反動かもなー、と思ったりもするが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
凝り固まるからこそ推進力もあるが、それが見落とす所を補佐できるのが風花の強みであり、キャラクターとしての役割かなー。
凸凹上手くハマるよう造形されてるよね、主役二人。
さて贔屓とも配慮とも取れる南風原優遇シフトの裏には、何があるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
鋭い解像度で描かれる母ひとり子ひとりの生活が、問答無用に答えを突きつける。
メシは食わさなきゃいけねぇ部屋はシールでベタベタ熱は出す。
じゃーしょうがねぇなーーーーー!
(画像は"白い砂のアクアトープ"第16話より引用) pic.twitter.com/c9Utzu7PCs
毎回冴える美術は今回も元気で、南風原家の愛で満たされつつ大変な生活を、ズバッと差し込んでくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
ママ大好きな雫くんが、今まさに育ちつつある生命だということが、よく伝わる描写である。
この描写が、ここまで積んだ水族館のミッションと繋がるのも上手い。
あとくくるに家族特攻であることも既に書いているので、『この真実がぶっ刺さらないわけがねー!』と、後の変化を予測できるのも良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
あの子ほんっっと家族の絆に弱いので、これを持ち出されたら確実にコロッと行くわけで。
というか、これ知ってコロッと行かない海咲野くくるはイヤだ…。
序盤何気なく挟まれた、ペンギンの卵と竹下先生の息子を喜ぶ描写が、よく効いてて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
『見知った小さい生命には親身になれるのに、知らない場所で一人戦ってる人の事情には、目を向けねーのか?』つう足払いが、上手く入る構成だと思うのよね。
罪悪感は、最高の感情移入誘導体だなぁ…。
今までの反感を綺麗にひっくり返す母子の肖像を見ると、次なる疑問も湧いてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
『なんでこの人、事情話さないんだろう?』
そこに踏み込み、ツッパらないと生きていけなかった裏側を共有していくのが、ここからのお話を牽引するエンジンにもなっていく。
そんな事情もつゆ知らず、イヤな女への反発半分、身内へのお助け意識半分で、部署の枠超えて余計口出そうとするがまがまの子供。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
『自分の仕事終えてから手伝えば良いんじゃろが!』という無理筋を、諏訪さんが却下しないの、ポイントだと思うなぁ…。
(画像は"白い砂のアクアトープ"第16話より引用) pic.twitter.com/jYOkWoJCoB
テキトー極まる雅藍洞さんの口から、うっかり個人情報がパなされ、可能なら嫌いでいたかった人の事情を知ってしまったくくるの顔が曇る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
ここで事情が出ないと話が進まないとは言え、かーなり危険な情報意識なんでなかろうか、飼育部長殿…。
”我が家”たるがまがまでは当たり前だった、困っている人を助ける行為。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
それは他人同士が共に働く、資本経済においては危険な勇み足でもある。
働きたいのに働けない。
その間に居場所を取られる恐怖を、知ればこそ隠していた事情。
それをくくるの”当たり前の親切”は踏んでいるかも知れない。
しかしまぁ、こうして爆発し衝突することで知夢の事情が白日のもとに晒され、オフィシャルに対応できる状況になったのは怪我の功名…かなぁ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
この話隠す側も踏み込む側も、双方正しい。
そして人間である以上、完全に正しくあれないから軋轢が起こり、それをより良く解決することも出来る。
間違いや勇み足や頑なさ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
けして正しくはない部分もひっくるめて、人間であることを肯定的に描くこのお話は、基本光に満ちている。
だからこそ、知夢が回想する薄暗い過去、そこに満ちた腐臭は異質で…よく刺さる筆だ。い、居心地悪い…。
(画像は"白い砂のアクアトープ"第16話より引用) pic.twitter.com/drJtE786DT
魚の腸が散乱し、何もかもが乱雑なかつての職場。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
そこを離れた知夢に林檎を差し出してくれる人がいることも、既に描写されていた。
人生の重荷を預けれるかけがえのない人がいればこそ、正しさを見失ったとしても立て直せる。
それは知夢もくくるも同じである。
自分の親切心が、他人の大事なものを図らず踏んでいたこと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
自分が前のめりになることが、誰かを押し出し傷つけること。
未知の複雑さがくくるを打ちのめし、再び海へと連れてくる。
鳴らすのはいつもの番号、姉ちゃん聞いてくれよ~~。
…マージでズブズブ。素晴らしい。
電話を受ける風花の姿勢が正に盤石で、”港”としての圧倒的な落ち着きが漂う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
風花の誰かを支える資質、それが天分だと確信する気持ちはしかし、今支えられてるくくるが目覚めさせた(思い出させた)ものでもある。
こういう描写の中で”お互い様”を感じられるのは、とても良いね。
かくして相手の立場に立ってみることにしたくくるは、竹下先生の赤子を半日預かる体験学習に挑む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
一方風花は知夢の自宅に踏み入り、その事情を聞き出す。
『琉球一”来ちゃった…”が似合う女』は伊達じゃねーな、宮沢風花…。
(画像は"白い砂のアクアトープ"第16話より引用) pic.twitter.com/1V713RMr99
くくるのままごとのような”体験学習”を、同じく苦労しながら愛娘を育てただろう父母の遺影が、優しく見守っている描写が良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
身内以外に想像力が伸びないのはくくるの弱点だが、ならば体験を通じて身の内を広げていけばいいと考えれるようになったのは、館長代理の経験値、風花との出会いの結果か。
この『体験を通じて見識を広げて、価値観を広げる』ってのは水族館がそのミッション達成のために、タイドプールやバックヤードツアーをやってるのと同じだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
分からないから遠く感じるものを、近くに引き寄せて理解していく。その入口になる。
そういう拡張性は、人の交わる場所には必ず必要になる。
くくるは意固地だし見識も狭いが、その一本気が大きなパワーに繋がってもいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
色んな人に助けられつつ、自分の世界を広げ、出逢ったものと繋げていけるのは、彼女の美質であろう。
故郷離れてでもそれを助けたいと思う、北国産の変動重力源も間近にいるしな…。
風花が知夢の元を訪れたのは、親友を助けるためでもあり、がまがま組との軋轢を埋めるためでもあり、知夢のためでもあり、何より自分のためなのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
頑張る誰かを支えたい。
沖縄に流れ着いて見つけた、風花の大事な夢。
(画像は"白い砂のアクアトープ"第16話より引用) pic.twitter.com/MRsLSc6YyI
知夢が頑なに他人に預けなかった二つの夢を、風花に晒そうとする意志は、扉を開けてコーヒーを出した時に、もう動き出していたのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
あくまで知夢の意志を尊重しつつ、自分の望みを押し付けるでなく、しかし強く差し出す。
ネゴシエーターとしての風花の立ち回りに、余裕と熱量がある。
人生の荒波に揉まれ、夢の職場から弾き出された過去。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
幼子一人の生命を背負い、開いた片手で掴んだチャンス。
『代わりはいるから』と簡単に言われてしまう厳しい現場を、それでもそこにいたいと願う夢を、手放したくない思い。
それを、風花は間近で受け取っていく。
知夢の前の職場は、非常に悪い意味で都会的であり、そこで学んだものを引きずった結果、がまがまイズムと衝突してる感じはある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
たしかにおじいががっぽり開けた裏口を通って、がまがまの身内がティンガーラに集まり過ぎではあるからな。
作劇の密度を上げる関係上、必然の措置ではあるんだが。
こういう過去があるなら、”仕事”に対してシビアで必死にもなるし、その厳しさが薄い(あるいは近代経済のシビアさを飼いならせず、それに食われた)がまがまへの評価は、自然厳しくなると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
しかし事情を隠して生まれた窮地を、救っているのもがまがまの人材…そこにある身内的お互い様イズムだ。
経済機構をサバイブできるだけのシビアさと、共同体がかつて持っていた温情…そこから生まれてくる余力と優しさの同居。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
それが最新のビジネス環境として描かれるティンガーラには必要で、知夢も風花の訪問を突破口に、そこに接近していかなければいけない。
風花の穏やかで靭やか態度は、導きに十分だ
たった二時間の”体験学習”で、子供を背負う大変さを思い知ったくくるは、知りたいと思ったことを知った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
風花の訪問を通じて、知夢は重荷を職場と仲間に預ける決意を固めていく。
歩み寄ることで、”知らない”は”知ってる”に、”好きで大事”になりうる
(画像は"白い砂のアクアトープ"第16話より引用) pic.twitter.com/ZgbpBARQmH
愛しい寝顔を見ながら、親子を見守る光の魚が、閉じたがまがまに時折訪れた奇跡が、形を変えて舞い降りたみたいで良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
美しいファンタジーは、こんな小さな幸福の中にもあるのだ。
そして、それに膝を折って視線をあわせてくれる人は、必ずいる。
雫ボーイにみんな優しくて…俺は…。
あんま現場に出なくて存在感薄かった館長が、ここでティンガーラのおじいとしてめっちゃ良い立ち回りしたのも、すげー良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
話さえキッチリ通せば、従業員の幸福増進のために色々動いてくれる人で、ヴィジョンも器もあるんだろう。ありがてぇ…。
あと雫ボーイが”初めての水族館”に目を輝かせ、色んな体験をギュンギュン白紙の脳味噌に吸い上げてる様子が、可愛く逞しかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
やっぱ何も知らねーガキが、超楽しいことに全身使って、ガンッガンに魂のキャンバスを広げている描写を見るのは好きだ。
ティンガーラは、そういう事をする職場なのだ。
というわけで、相手の苦労と事情、己の未熟と可能性を知り、くくると知夢の間合いは縮まった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
『この人は自分と同じことで苦しみ、自分と同じことが大事なんだ』と体験すると、身内の範囲が広がって、図々しい手助け躊躇わなくなるのは、くくるの美質
(画像は"白い砂のアクアトープ"第16話より引用) pic.twitter.com/f1rXWrIuwX
ティンガーラ初めての出産の時、館長の手がワキワキと落ち着かない描写、最高に良いんだよな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
この人も、水族館バカじゃん、という。
知夢が何を守りたくて頑なになっていたのか、それを書いたエピソードの最後が、生まれでた生命を嘴で愛でる親鳥なのは、非常に収まりが良い。
そこは、みんな同じだ
かくして初めての生命と、それを寿ぐ人の輪がティンガーラを包み、物語は幕を閉じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
ええ話やった…。
第9話以来引っ張ってきた知夢の伏せ札を、最高のタイミング、最高の刺し方でオープンにしたなー、と思います。
やっぱ構成が良いよな、このアニメ。情報の出し入れで情動捻るのが上手い。
ティンガーラ編に移ってから、身内感覚では乗りこなせない”仕事”の荒波、それに負けずにくくるが挑む頼もしさ、確かに何かが変わっていく手応えは、凄く強くなっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
ツンが強かった知夢を”倒した”ことで、この心地よいうねりもさらに強まったと思う。
失敗と体当たりを繰り返し、色んな人に支えられ、色んな事を学び生み出す、くくるの挑戦。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年10月22日
がまがまという子宮を出たひな鳥の歩みは、まだまだ続きます。
それに寄り添う風花の、どっしり落ち着いた強さもよく見え、とても良いエピソードでした。つえーわあの女(ひと)…。
次回も楽しみですね。